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応援する価値

2017年09月22日 | 雑記帳
 多くの休場者を出した今場所の大相撲。週刊誌の見出しに「学級閉鎖」とあったのには笑ってしまった。相撲ファンならずとも、これだけ看板力士が休むということには何か理由があると思うだろう。解説する多くの人が語るように、体重の問題、巡業の問題、稽古の問題等々に違いない。このままでは廃れてしまう。



 三横綱初め人気力士が休場し、興味がその分失せるのは当然だが、別の見方もある。普通だとこういう場合はどんな競技であれ、たいていラッキーボーイ的な存在が出現するものだ。しかし、序盤はともかくそうはならずに誰も予想しなかった大混戦のままに終盤へ。その拮抗が相撲界の現状を示しているのだろう。


 その中でひと際目を惹くのが嘉風である。幕内二番目の高齢、けして恵まれていない身体…しかし、その相撲は本当に観る者を沸かせてくれる。「勝ち負けよりも内容」と繰り返し語っており、内容とは「観客に拍手をもらえる」ということを指している。従って、立ち合いの変化についてきわめて否定的なのである。


 その意味で三日目の某大関戦は残念であった。嘉風の相撲とは一言でいえば「退かない相撲」。その姿はずばり「闘志」。単なる格闘技ではないが、格闘技の一つの典型だ。ひるまず顔面に張り手をうけ続け、鼻血を出すことも多い。顔を腫らして戦い続けた場所もあった。月並みであるが、それは勲章のようにも思える。


 ちょうど去年の秋場所、国技館で観戦した折、傍に陣取った一組の家族連れが横断幕を掲げ盛んに嘉風を応援していた。嘉風が見事に勝ち、大喜びするその家族に対して、周囲の観客が送った温かい拍手も印象深い。応援する動機は人様々だが、その中で応援する価値をしっかり見つけられる喜びは捨てがたいものだ。