【米国市況】パウエル氏証言で株と国債上昇－ドル下げ149円40銭付近 2024年3月7日 6:45 JSTブルームバーグ

【米国市況】パウエル氏証言で株と国債上昇－ドル下げ149円40銭付近
Rita Nazareth
2024年3月7日 6:45 JSTブルームバーグ

利下げにはインフレに関するさらなる確信が必要とパウエル議長
ＮＹＣＢは値動き激しい展開－10億ドル以上の出資を受けたと発表


Wall Street near the New York Stock Exchange (NYSE) in New York, US. Photographer: Michael Nagle/Bloomberg

６日の米株式市場ではＳ＆Ｐ500種株価指数が３日ぶりに上昇。米連邦準備制度理事会（ＦＲＢ）のパウエル議長は、強い経済を理由に当面は政策金利を据え置く考えを示しつつ、年内に利下げが適切になる可能性が高いとの認識も示した。これを受け、市場には安堵（あんど）感が広がったもようだ。

パウエル議長、利下げにはインフレに関するさらなる確信が必要 (4)
株式 終値 前営業日比 変化率
Ｓ＆Ｐ500種株価指数 5104.76 26.11 0.51%
ダウ工業株30種平均 38661.05 75.86 0.20%
ナスダック総合指数 16031.54 91.95 0.58%

　　この日は株式のほか米国債も上昇。市場ではパウエル議長の発言について「ニュースがないのは良いニュース」と捉えた。パウエル氏は、政策緩和を始める上でインフレ率が当局目標の２％に達することは求めていないと発言した。

　　ＪＰモルガン・チェースのマイケル・フェロリ氏はパウエル議長の議会証言について、金融政策の方向性について新たなシグナルを送らないよう非常に慎重だったと指摘。次の連邦公開市場委員会（ＦＯＭＣ）会合までにインフレと雇用のデータがそろうことを考えれば、そうした議長の姿勢は「理にかなっている」とした。

　　モルガン・スタンレー傘下Ｅトレード・ファイナンシャルのクリス・ラーキン氏は、「パウエル議長は引き続き手の内を明かさず、市場も特に騒ぎ立てなかったようだ」と述べた。

　　テクノロジー株が主導する形でＳ＆Ｐ500種は上昇し、再び5100を上回った。米地銀持ち株会社ニューヨーク・コミュニティ・バンコープ（ＮＹＣＢ）は値動きの激しい展開となり、複数回にわたって売買が停止された。同行はムニューシン元財務長官が率いるリバティ・ストラテジック・キャピタルのほか、ハドソン・ベイ・キャピタル、レバレンス・キャピタル・パートナーズなどから10億ドル（約1490億円）超の出資を受けたと発表した。

ＮＹＣＢが10億ドル超の増資、ムニューシン元財務長官の企業主導 (1)
S&P 500 Reclaims 5,100 Mark

Ｓ＆Ｐ500種株価指数
出所：ブルームバーグ

　　パウエル議長はこの日、下院金融委員会で半期に一度の議会証言に臨んだ。商業用不動産に起因するリスクについては「管理可能」だと指摘。このほか、大手銀行を対象とした資本要件引き上げ案が大幅に変更される可能性が高いことを明らかにした。

　　ＦＯＭＣは現在、利下げの開始時期と幅について難しい判断を迫られている。時期尚早に金利を引き下げれば、経済活動の加速をあおり２％超のインフレ率が続く恐れがあると当局者らは懸念。一方、高水準の政策金利をあまりに長く続ければ、経済がリセッション（景気後退）に陥るリスクが生じる。

　　インタラクティブ・ブローカーズのホセ・トレス氏は「パウエル議長は近い将来の利下げについて明言しなかったが、現行の政策金利がピークにあるという確信が広がる中で、インフレ軌道に関して議長が示した前向きな認識は市場参加者にとって十分なものだった」と分析。「年内の利下げ開始が適切になりそうだとの議長の発言も、投資家のセンチメントにプラスとなった」と付け加えた。

　　この日のパウエル議長の発言を受け、市場ではＦＯＭＣが今年0.25ポイントの利下げを３回実施するとの見方が維持された。早ければ６月に利下げすると市場は引き続きみているが、市場の予想は今年初めよりもＦＯＭＣの予測に近づいている。
Fed, Traders Get on the Same Page | Markets have pared rate-cut bets to align with the Fed's dot plot

2024年の利下げ幅予測
出所：ブルームバーグ

　　米地区連銀経済報告（ベージュブック）は、米経済は今年の早い時期以降、緩慢なペースで拡大しているが、消費者は物価上昇に一段と敏感になっていると指摘した。

米地区連銀経済報告：経済活動わずかに増加、物価上昇には敏感に (1)

　　米求人件数は１月も高い水準となった。労働力の需要が依然強いことを示唆した。また２月の米民間雇用者数は緩やかなペースで増加し、全ての産業で労働需要が底堅いことを示唆した。

米求人件数、前月から減少も依然高水準－労働市場の強さ浮き彫り (2)

米ＡＤＰ民間雇用者数、２月は14万人増－予想下回るも幅広く増加 (2)

　　ハリス・フィナンシャル・グループのジェイミー・コックス氏は、「労働市場にひびが入り始めるまでＦＯＭＣには高金利を続ける余裕がある」と指摘。「利下げの面から２大責務について考えると、最大限の雇用の方が強い。よって現時点で利下げを迫られるということはない。今のところＦＯＭＣはインフレとの闘いにおいてフリーパスを手にしている」と述べた。
国債

　　米国債相場は上昇。10年債利回りは一時７ベーシスポイント（ｂｐ、１ｂｐ＝0.01％）余り低下した。米民間雇用者数の伸びが予想を下回ったことや、卸売売上高の減少、昨年12月の求人件数の下方修正に反応した。
国債 直近値 前営業日比(bp) 変化率
米30年債利回り 4.24% -5.1 -1.19%
米10年債利回り 4.11% -4.7 -1.12%
米２年債利回り 4.56% 0.2 0.04%
米東部時間 16時38分

　　ＮＹＣＢが増資を検討しているとのウォールストリート・ジャーナル（ＷＳＪ）報道後、国債価格はこの日の高値を付けた。その後、ＮＹＣＢが10億ドル以上の出資を受けたことが明らかになると、上げをやや縮めた。
為替

　　ニューヨーク外国為替市場ではドルが下落。ブルームバーグ・ドル・スポット指数は１カ月ぶり水準に下げた。軟調な経済データなどに反応して米国債利回りが下げ、ドルは売られた。

　　シティグループ・グローバル・マーケッツのストラテジスト、ダニエル・トボン氏はパウエル議長の証言について「サプライズがなかった」ことから米国債利回りが低下し、ドルの重しとなったと分析した。
為替 直近値 前営業日比 変化率
ブルームバーグ・ドル指数 1236.48 -4.28 -0.34%
ドル／円 ¥149.43 -¥0.62 -0.41%
ユーロ／ドル $1.0897 $0.0040 0.37%
米東部時間 16時38分

　　ＮＹＣＢが増資を模索していると報じられると、ドルは対円での下げを一時拡大し、
0.6％安の１ドル＝149円10銭を付けた。
原油

　　ニューヨーク原油先物相場は反発。年初来高値に近づく場面もあった。夏季のドライブシーズンを前に燃料需要が高まっている兆候が統計で示された。

　　ウェスト・テキサス・インターミディエート（ＷＴＩ）先物は１バレル＝79ドルを上回って終えた。先週分の米ガソリン在庫は446万バレル減少した。サウジアラビアがアジア向け価格引き上げを決定したことや、パウエルＦＲＢ議長の議会証言で株価が上昇したことも買い材料となった。

　　原油相場はここ数日、80ドルの心理的水準を試してきたが、決定的に上抜けてはいない。シティー・インデックスのマーケットアナリスト、ファワド・ラザクザダ氏はＷＴＩが79ドルを「きれいに」上抜けた今、「テクニカル的に最も抵抗の少ない道は上向きであることが確認された」と述べた。

Oil Trading Near 2024 Highs | Crude's rally finds resistance at the $80 psychological level
ＷＴＩ原油先物


　　ニューヨーク商品取引所（ＮＹＭＥＸ）のＷＴＩ先物４月限は、前日比98セント（1.3％）高の１バレル＝79.13ドルで終了。ロンドンＩＣＥの北海ブレント５月限は1.1％上げて82.96ドル。
金

　　金スポット相場は６日続伸し、この日も最高値を更新した。パウエルＦＲＢ議長が年内に利下げを実施する可能性が高いとの認識を示したため、買いが続いている。

　　金スポットは一時１オンス＝2152.25ドルと、最高値を更新した。２月の米民間雇用者数が予想を下回る伸びにとどまったことも買いを誘った。

　　サクソバンクの商品戦略責任者オレ・ハンセン氏は「パウエル議長の中立あるいはややハト派的な発言により、金と銀は米国時間に勢いを増した」と述べた。

Gold Surges to Record | The precious metal has risen rapidly over past five sessions
金スポット価格
出所：ブルームバーグ

　　シティグループのアナリスト、アーカシュ・ドシ氏は「パウエル議長は年内に利下げが実施されることを確認した。タカ派的なリスクは低下している」と指摘した。

　　シティは今後３カ月の金の見通しを2200ドルに、今後６－12カ月の見通しを2300ドルに上方修正した。「特に最近の株式とクレジット市場の上昇を考慮した上で」、第２四半期のリセッション（景気後退）リスクを理由に挙げた。

　　金スポット価格はニューヨーク時間午後１時46分現在、前日比１％高の2149.90ドル。ニューヨーク商品取引所（ＣＯＭＥＸ）の金先物４月限は16.30ドル（0.8％）上げて2158.20ドルで引けた。

原題：Stocks and Bonds Rise as Powell Sticks to Script: Markets Wrap（抜粋）

Treasuries Hold Gains as Revived Regional Bank Concern Supports

Greenback Sinks To One-Month Low After Data, Powell: Inside G-10

Dollar Slips to Lowest in a Month as Powell Embraces Status Quo

Oil Rises Near 2024 High on Signs of Growing US Gasoline Demand

Gold Hits Fresh High After Powell Says Rate Cut Likely This Year

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