日向の夢

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猫の地球儀

2005年04月29日 23時53分24秒 | 


猫の地球儀

イリヤの空 UFOの夏で有名な秋山瑞人氏の作品です。
簡単に言えば、夢追人(猫)のお話。

焔は二千五百三十三番のスパイラルダイバーで、スパイラルダイバーとは無重力状態で行う決闘のようなものであり、その優勝者は大きな権力を手に入れられるというもの。まぁ、焔の場合は「弱いスパイラルダイバーが息をしていていい理由は無い」という信念の下で戦っていただけですが。そして、そんな焔は一匹の痩せた白猫でした。

幽は三十七番目のスカイウォーカーであり、スカイウォーカーとは地球儀へ至ろうとするモノであり、教会の宣教舞台から命を狙われている存在であり、そんな幽は一匹のちっぽけな黒猫でした。

つまり、この「猫の地球儀」はこの二匹の猫の物語。
ちなみに、著者の秋山氏に言わせれば「ピーター・アーツVSガリレオ・ガリレイ」
もっとわかりやすい解説を拾えば、「ものすごく余裕のない社会に生まれてしまったものすごい天才が、その社会の価値観と真っ向ぶつかるような夢を追いかけようとすれば、その周囲には迷惑を被ったり不幸になったりする人が必ず出てきます。それでも、その天才は前に進むのか。この本はそういうお話です」というもの。
でも、「ピーター・アーツVSガリレオ・ガリレイ」のほうがおもしろいなぁ。

その他のキャラクターは、
幽の相棒で、天使型のロボット、クリスマス
焔の相棒で、おそらく二体同型のロボット、日光(にっこう)・月光(がっこう)←誤植にあらず
スパイラルダイバー焔のファンであり、茶トラの楽(かぐら)
楽の相棒で、のっぽで木偶の坊だけど無能じゃないロボットの、震電(しんでん)
いろいろ胡散臭そうだけど掴み所のない僧侶
三十六番目のスカイウォーカー、朧(おぼろ)
etcetc・・・

イリヤの空みたいに感動する話ではなかったし、笑える話でもなかった。けど、そういうわかりやすいものじゃない不思議な感覚があった。
不思議な感覚、よく分からない感覚と言いつつもなんだろなー、と思ってみる。
第一として、こういう「突飛だけど、どこか温かみのある世界」みたいなのが好きなんだとおもいます。
天使がアレだったり、昇天力がアレだったり、地球儀がアレだったり、金星儀がアレだったり、太陽儀がアレだったり、鉄枕がアレだったりする。ゴキゴキが大量に出てくるのは愛嬌だったとして、こういう「よく出来た世界」感がどうにも大好きなんです。
でも、覇威奴呂と辺理迂無はともかくとして「滅びの使徒である三つの支威とひとつの亞威」って、なんのこと?
これが天使(というかアレ)を全滅させたらしいんだけど・・・。支威はもちろん「C」で、亞威はもちろん「I」でしょうけど・・・。Cはつまり炭素のCで、Iは・・・ヨウ素? うーん、3つのCとひとつのIで天使を全滅させられるような化学物質を作れるのかな? 思い当たるモノはないんだけど・・・それに、アレを全滅させると聞くと核戦争ぐらいしか思いつかない俺の貧困な妄想力。でも、核といえばウラン。

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閑話休題

この本、面白いのは中身だけではなかったりする。
挿絵(各章の最初にある)と、秋山氏のあとがきもそれぞれ面白い。とくに、挿絵でのクリスマスの扱いなんか相当ヒドイもんである。設定上クリスマスは女の子型のはずなのだが、挿絵のクリスマスは半分くらいの確立で悪魔にしか見えない。焔の章206頁のそれなんかまさに悪魔。突き出されたチョキには「めつぶし」の4文字が・・・! う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁってなもんである。
それと、焔が異常に可愛らしい。俺、こんな猫飼いたいよ。

最後に、この物語を一言で言い表すならば、それは「ピーター・アーツVSガリレオ・ガリレイ」
って、これでもう3度目か。