案外しっかりした小説だな、と読み始めて思った。
最初の方の訓練シーンとか、作者が狙撃兵のことを良く知っているんだなあ、と感心した。
軍事オタクのようにやたらと蘊蓄を並べるのではなく、最小限の情報で狙撃兵の育成とはどういうものなのかが描かれていて、これは凄い小説かも、と思った。
だが、だんだんそうでもないか、という気持ちが強くなった。
女性が女性言葉をしゃべるのが違和感。「〇〇だわ」、「〇〇なのよ」、兵士であり軍隊なので実際はもっと荒っぽい喋り方になるのではないか。今時の女性が使わない女性言葉に違和感があった。
女言葉を使うのが時代を感じさせるため、だとしたら、もっと古風な話し言葉を使えばよかったと思う。
あと、作者がもろにリベラルな進歩的文化人的価値感を持っているように思えて、そこが好きになれない。
満州国のことは傀儡国家の一言で片づけているし、ユダヤ人虐殺についても途方もない犠牲者数を上げてナチスドイツの罪としており、主人公がソ連人だからということを差し引いても、戦勝国側の価値観で第二次大戦を評価しているらしい文章が随所に現れる。
戦争で犠牲になる女性、についても描かれるが、だったら男性主体の軍隊の中の女性兵士の生活をもっと描けばいいと思うのだがそれはない。
あと主人公たちが若い女性だからって、生理のことを中途半端に言及しているのも鬱陶しい。
作者は男性だと思うが、結局生理の事なんて男にはしっかり理解できないのだから、ほうっておけばいいのにちょっと書いてしまっている。
逆に誰だったか忘れたが、女性作家が少年の精通だったか夢精だったかの事を書いていて、分かってないのに書く必要あるか?と思ったことがあるが本作でも同じように思った。
結論としては、読書をあまり楽しめなかった。
比べる事がおかしいが、ソ連、赤軍ときたら、ショーロホフの「大いなるドン」がやはり私のとっては最高の作品である。
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