我が家には母が嫁に来てからすぐに購入した 50年もののアイロン が健在なのであるが、それより古いもの・・・・といえば、この桐箪笥であろうか。
この箪笥は、母が嫁に来たときに持ってきた道具の中で、唯一現存しているものである。
何度か削りなおしをして、だいぶ板が薄くなっているような気もするが、さすが昔の職人さんの仕事は違うね。 まだまだ母の着物を守り続ける現役家具である。
さて。 この箪笥の中身はもちろん着物なワケだが、着物好きだった母もそこそこ歳をとってからは普段に着物を着るのがメンドウになったのか、せいぜい冠婚葬祭に着る程度。
よって、中身の着物はここ 20 年、箪笥の肥やし状態となっている。
しかも大して着物に入れ込んでいなかった娘の私は、母が倒れてからのち、毎年樟脳だけはせっせと取り替え続けているものの虫干しすらすることなく、ちょっとした開かずの桐箪笥と化していた。
しかしながら、最近多少なりとも着物に興味が出てきた私としては、本当に箪笥の中で コヤシになって朽ち果てている のではないかと心配になり、ここ数ヶ月少しずつではあるが、虫干しを兼ねての確認作業を続けていた。
着物を縫うこと、着物を着ることが好きだった母は、娘の私によく言っていたものだ。
「着付けを覚えろ」 「和裁は直線縫いだけで簡単だから浴衣ぐらい縫ってみろ」
母が元気なときは、 「そのうちねー」 とはぐらかしていたわけだが、その母の願いを今、私は叶えてあげたいと思いたった。
それは、母の着物を着て、母に見せてあげること。
脳梗塞や硬膜下血腫を乗り越えた母なので、頭の中身はダメージだらけのはずなのに、不思議と認知症の症状は重篤ではなく、意思の疎通はそこそことれる。
しかも最近のことは覚えていないが、昔のことは覚えているので、母の枕元で着物の話をすると、わずかながらも会話が続く (笑)
最近は動く楽しみも、食べる楽しみもなくなっている母。
現在は 「話しかけてもらうこと」 (←自分ではあまり喋らない) が唯一の楽しみらしい。
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その桐箪笥の中で、ちょっと気になる反物を見つけた。
着物地ではなく、帯地である。
・・・・っていうか。 単に興味がなかっただけで、私は大昔から箪笥の中にこの反物があることを知っていた。
しかしあらためて眺めると・・・・これは。
この特徴的な柄は。
おそるおそる、近所の着物屋さんへ持って行って鑑定 (爆) を依頼してみた。
正絹献上柄の博多帯。
あはははは! 本物だってー。 しかも結構イイものらしい (笑)
多分 40 年は経過している反物なのだが色落ちもなく、すれも少なく、いい帯が出来そうである。
出来上がりは8月中旬。
この帯を母の大島紬に合わせて母に見せてあげたいと思う。
・・・・その前に帯結びの練習しろよ、自分。