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2024-06-19 | ブログ

 

 

 

文章19 結婚の理想と現実とは? 千葉大学

 ある人が、理想の結婚相手を考えるとしよう。「理想」とは【理性】による想像で、ある対象の最上の状態を思い描くことをいう。だが普通、実在の相手とこうしたイデアの観念は合致しないものである。それに、人を好きになることは、理性より【感性】の力に促される面が随分と大きい。絶対にこういう人でないと惚(ほ)れない、と理性的に恋愛をとらえていた人が、理想とはかけ離れただれかと結婚することがある。一時の気の迷いという場合もあるようだが、恋愛結婚には往々にして感性を主とした相手の選択が見られる。「虫が好く」とか「馬が合う」といわれるように、合理的に説明のできない好みが、結婚相手を選ぶ際の基準になっているとも考えられるのである。こうした好みは、もって生まれた【アプリオリ】な嗜好(しこう)といってよいのかもしれない。
 上(うわ)っ面(つら)の容貌(ようぼう)や経済力といった【形而下】の魅力に見向きもせず、理想は優しくて真面目な人、そんな曖昧(あいまい)で【形而上】的な恋人の面影を胸に抱いていた深窓の令嬢が、粗野で酷薄な男と結ばれたりもする。そこに人生の妙味や機微があろうというものだが、理想を抱く理性的な判断よりも、情熱にほだされ、勢いにまかせて相手を選択し、失敗をしてしまう例でもある。こうして元・深窓の令嬢は結婚生活の挫折(ざせつ)という経験を糧(かて)として、【アポステリオリ】なかたちで、悟性に基づく理想の結婚像を改めて胸に抱くようになるのである。しかし彼女が今度出会い、恋におちる相手が、そのような理想に近接するとは言い切れない。恋は感情の力に抗(あらが)えない熱病のようなもので、理性的な判断からは生じない。そうして悟性は必ず後からやってくる。人はアプリオリな嗜好から逃れられず、性懲(しょうこ)りもなく失敗をしては、アポステリオリな人生の知恵を身につけつつ、齢(よわい)を重ねていくものである。