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「ロウソクの科学」を読んだ感想文:大阪・佐藤くん(後に阪大医学部・合格!)

2023-05-18 | ブログ

『ロウソクの科学』は、マイケル・ファラデーが1830年代に行ったロウソクの研究に基づいて書かれた本です。この本は、ロウソクの炎がどのように燃え、どのような化学反応が起こるかを解説しています。

本書を読んで、私はロウソクの炎の美しさに感動しました。炎が揺らめいたり、光を放ったりする様子は、まるで芸術品のように美しく、その美しさは誰もが共感できるものだと思います。

また、本書からはロウソクの炎が、実は化学反応の結果であることがわかります。燃焼に必要な酸素をキャンドルの周りから吸い込み、炭素や水素を酸素と結合させて二酸化炭素や水を生成しているのです。このような科学的な知識が、私たちが日常的に使っているものにも関わっていることを改めて感じました。

ただ、本書を読むと、炭素の粒子が燃焼する際に、有害な物質が発生することもわかりました。そのため、ロウソクを長時間燃やし続けることは、室内の空気質に悪影響を与える可能性があるということが示唆されています。

『ロウソクの科学』を読んで、ロウソクの炎の美しさと、その科学的な背景を深く理解することができました。私たちが普段何気なく使っているものにも、化学反応や科学的な知識が関わっていることを改めて意識することができました。

The Science of Candles is a book based on Michael Faraday's research on candles in the 1830s. This book explains how a candle flame burns and what chemical reactions occur.

After reading this book, I was struck by the beauty of candle flames. The way the flames flicker and emit light is as beautiful as a work of art, and I think everyone can sympathize with its beauty.

The book also reveals that the candle flame is actually the result of a chemical reaction. The oxygen necessary for combustion is sucked in from around the candle, and carbon and hydrogen combine with the oxygen to produce carbon dioxide and water. I once again felt that this kind of scientific knowledge is related to the things we use on a daily basis.

However, after reading this book, I also learned that harmful substances are generated when carbon particles are burned. Therefore, it has been suggested that burning candles for a long time may adversely affect indoor air quality.

By reading Candle Science, I was able to gain a deeper understanding of the beauty of candle flames and their scientific background. I was able to realize once again that chemical reactions and scientific knowledge are involved in the things we use casually in our daily lives.


数学の歴史(1)(さくら教育研究所)

2023-05-18 | ブログ

 

古代ギリシャ数学の伝統は近代数学に脈々と続いています. 古代ギリシャの代表的な算術書はユークリッド (Euclid, 330-275 BC) の 「原論」(Elementa) ですが, その他, ヘレニズム時代の算術書, 古代インドの算術書, 古代中国の算術書, イスラム帝国時代の算術書などと 近代数学や理論計算機科学との繋がりを眺めることは楽しいことです.

ユークリッドの「原論」

古代ギリシャのピタゴラス学派やプラトンらの数学的な蓄積を引き継いで, ユークリッド(Euclid, 330-275 BC) は紀元前300年ごろに「原論」(Elementa) を 著しました. この書物は13巻からなっており, 幾何学と数論を展開しました. 古代ギリシャ数学の集大成であった「原論」は, 幾何学や数論の経典として, 二千数百の長き間, 不朽の価値を持ち続けました. また, この書は多くの学者に研究され, 注釈されてきたばかりでなく, 学校数学の教科書として近年まで実際に使われてきました. しかし, 「原論」の形成過程についてはよく分かっていません. ユークリッドに先立って, 複数の学者達によって「原論」の編集が 行われていたという説もあります. 「原論」の第1巻は23個の「定義」, 5個の「公準」, 9個の「公理」から始まります. 第2巻~第7巻, 第10巻, 第11巻もいくつかの「定義」から始まります. 「定義」, 「公準」, 「公理」は, ギリシャ語のヒュポテシスが分化したものです. ヒュポテシスは英語のhypothesis (前提) の語源です. 「定義」が議論を進める上での共通の前提に対して, 「公準」は弁証法において, 相手が自明のこととして受け入れることに疑問があるかもしれないことを, 前提とすることを意味する用語です. 「公理」は共通概念で, 「公準」に近い意味です.

「原論」に与えられている結果は, 「定義」, 「公準」, 「公理」から演繹されたものです. すなわち, この書は, 厳密な公理的論証の体系を与えています. このような手法は, 紀元前5世紀のエレア学派の弁証法に影響されて形成されたと 考えられています. エレア学派というのは, 紀元前5世紀頃にイタリア半島南部に開花した哲学の一派で, パルメニデス(Parmenides, 515-450 BC頃) やゼノン(Zenon, 490-430 BC頃) 等に 代表されます. ヨーロッパで生まれた近代数学の厳密さは, 古代ギリシャ数学を基礎としていると云われているのは, 近代数学は「原論」に見られる公理的論証法の精神を受け継いでいると 見なされているからです.

「原論」が紀元前300年頃に世に出るや, すぐに普及しました. アルキメデス(Archimedes, 287-212 BC) などは, 「原論」に記述されている命題を巻数と番号で引用していました. 3~5世紀頃のエジプトのアレキサンドリアや小アジアでは, 「原論」の体系的な注釈本がいくつか世にでました. 8~10世紀頃のイスラム帝国黄金時代には, 「原論」はアラビア語に訳され, アラビア数学の発展に貢献しました. 11~12世紀頃に, アラビア語で書かれた「原論」がラテン語に翻訳され, ヨーロッパに伝承されました. ギリシャ語の原典から直接ラテン語に翻訳された「原論」も見つかっておりますが, 当時のヨーロッパでは, アラビア語からラテン語への翻訳本の方が普及していました. この頃のヨーロッパはいわゆる暗黒時代で, イスラム文化圏の方が, 経済, 学問などで ヨーロッパよりかなり進んでいました. 1450年にドイツ人のグーテンベルグ(Johannes Gutenberg, 1398-1468頃)が, ぶどう絞り機にヒントを得て活版印刷機を発明しました. それ以後, ヨーロッパでは宗教書や学術書の出版が盛んになり, 「原論」のギリシャ語の復刻版やラテン語の翻訳版, 各言語の翻訳版もヨーロッパの各地で相次いで出版されました. 例えば, 「原論」のドイツ語訳, フランス語訳, 英語訳, スペイン語訳は 16世紀に出版されています. 因みに, 中国語訳は17世紀に, 最も古い日本語訳は1884年に出版されました.

ユークリッドの「原論」の7巻に2つの自然数の最大公約数の求め方が 与えられています. ユークリッドのアルゴリズムといえば, この手順を指します. ユークリッドのアルゴリズムでは, 2つの自然数, r0r1の最大公約数は 次のように求めます. r0r1で割り, 余りがなければr1が最大公約数です. 余りがあれば, そのときの余りをr2とし, r1r2の最大公約数を 同じ方法で求めます. すなわち, r1r2で割ったときに, 余りがなければr2が最大公約数です. 余りがあれば, そのときの余りをr3とし, r2r3の最大公約数を 同じ方法で求めます. このようにして, 割り算のときに余りがなくなるまで続けます. 余りはだんだん少なくなるので, このアルゴリズムによる計算はいずれ終了し, 最後の除数が最大公約数です. このアルゴリズムは再帰的な構造をしており, 計算の効率も極めてよいのです. 多くの計算機アルゴリズムの教科書には, このアルゴリズムが記述されています. 二千数百年も前に, このようなアルゴリズムが存在していたことは, 驚くべくことです.

「原論」では, 素数についても論じています. 素数が無限個あることの証明は「原論」の9巻に与えられています (命題20). 整数の中でどれだけの頻度で素数が現れるかは, 当時でも興味があったであろうと想像できますが, この問題は近代数学の時代になってからやっと解決しました. 1798年に, フランスの数学者ルジャンドル (Andrie-Maria Legendre, 1752-1777) は整数x以下の素数の数の近似値として, x/(ln x - 1.08366) を与えました.

ドイツの数学者ガウス(Johann Carl Friedrich Gauss, 1777-1855)は, ルジャンドルよりもよい近似式を与えました. ガウスの与えた近似式は, x以下の素数の数は 1/(lnx)の2からxまでの積分値です. ガウスの近似式はxが大きくなるにしたがい, 漸近的に正しい値に近づくことが予想されていましたが, その証明は難解でした. この命題は「素数定理」(Prime Number Theorem)と呼ばれ, ドイツの数学者リーマン(Georg Friedrich Bernhard Riemann, 1826-1866) も その証明に取り組みました. 彼は「リーマン予想」と呼ばれる命題を考え, それが正しいことを証明しようと試みました. その命題とは, ゼータ関数と呼ばれる複素関数に関するものです. 「リーマン予想」が正しければ, 「素数定理」も正しいことがいえます. しかし, 「リーマン予想」は解析学の難問で, 21世紀の今日でも未解決です. フランスの数学者アダマール(Jacques Salomon Hadamard, 1865-1963) と ベルギーの数学者ポアソン (de la Vallee Poussin, 1866-1962) は独立に, 「リーマン予想」を用いないで, 1896年に「素数定理」が正しいことを 証明しました.

ユークリッドはエジプトのプトレマイオス王に, 「原論」よりも手っ取り早く幾何学を学ぶ方法はないかと訊ねられ, 「幾何学に王道なし」と答えた話は余りにも有名なエピソードです. 19~20世紀に活躍したイギリスの著名な数学者であり, 哲学者であったラッセル(Bertrand Russell, 1872-1970) は 彼の自伝の中で次のように述べています. 「私は11歳のときに兄と一緒にユークリッドの原論を学び始めました. このことは, 私の人生で経験した偉大な出来事の一つです. それは, 初恋のときに味わうような目も眩むような感動でした. この世の中にこんなにも素晴らしいことが存在しようとは, それまで想像することも出来ませんでした」. 近代ヨーロッパの科学者の多くは, 彼らの少年, 少女時代に ユークリッドの「原論」を学び, 大きな感動を覚えたであろうことは, この文章からも想像できます. 近代ヨーロッパで, 自然科学や数学の分野での素晴らしい成果が次々と生まれたのも, このような下地があったからだと思います.