スケルトンハウス‐きまぐれCafe

生活とビジネス

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『貼り紙』は寂しく・・・

2017-04-15 08:17:30 | 日記・エッセイ・コラム

 最近、家から街に出ると、「○○しないでください。」という貼り紙が目に付くようになりました。とくに、住宅街を歩いていると、「チラシお断り」といった郵便受けへの貼り紙が目に付きます。

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 ポスティングされるものには商売の宣伝チラシやフリーペーパー(フリーマガジン)があり、その殆どは個別には不必要と考えられるようなものだろうと思います。しかし、これらのもののうち、わずかではあるが、世の中の情報を伝えてくれるものがあります。この情報の有用度は受け取る人、受け取る時、夫々で違うと思います。

 「ほっといてくれ!」と言われるだろうとは思いますが、貼り紙によって社会とのを繋がりの一つを頑なに拒否し、孤立を厭わない姿勢・意思表示に、なんとなく寂しい思いがしてきます。

 朝日新聞‐金曜日の『生活』欄に「大人になった女子たちへ」という、コーナーがあります。伊藤理佐さんと益田ミリさんが交互に寄稿されています。
 2016年10月21日(金)に掲載されていた伊藤理佐さんは、そのコラムの中で、
「・・・貼り紙ってさみしいことが多い。・・・」、「ひとんちの『チラシお断り』系もちょっとさみしい。・・・」
と記述されています。

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 貼り紙にも必要な内容のものがあると思いますが、その意味はどうであれ、貼り紙を寂しいと思うのが自分だけではなかったと思い、“ほっ”とした気分です。


「チラシお断り」となっている郵便受けに関する件

 郵便受けとは、配達された郵便物や新聞などを受け取るために各戸別に設置された装置を指します。日本語でいう「郵便受け」は英語では"letter box"または"mailbox"と通常呼び、日本での玄関ドアに取り付けられた「ドアポスト」にあたるものは"mailslot"と呼びます。

 郵便受けに投函されるものは郵便物や、認可を受けた新聞などのほか、いわゆる投げ込みチラシがあります。郵便受けにチラシ等を投函することは「ポスティング」と言われています。商行為の競争が激しい地域などでは、郵便受けが宣伝チラシで埋め尽くされることがあり、このことが上述の『貼り紙は寂しい』に繋がっているのではないかと思います。

 『ポスティング』とは、広告・宣伝を目的に、ビラやチラシを、各個宅の郵便受けへ投入する行為であることは先に述べたとおりです。主な利用業種は、飲食店、通信販売、不要品回収、不動産会社、介護関係、美容室など、もはや全業種といっても良いくらい、多岐に亘っています。地域限定の行事案内やお知らせなど地方自治体によるものや、電力会社、ガス会社、水道局による利用料のお知らせや工事による使用不可期間等に関する公共性を有するお知らせなどがポスティングによって行われる場合もあります。

 最高裁判決によれば、何れの事件も政治色の強いビラを公務員宿舎や特定分譲マンションの各住戸のドアポストに投函するといった行為でした。塀やフェンスで囲まれている土地、即ち立ち入るのに困難な土地に入って敷地内のポストや建物の中にあるポストにビラ等を入れるために建物に立ち入ると住居侵入罪が成立することになります。

 ただし、誰もが立ち入れる状態の敷地内に設置された郵便受けや、個人宅の公道に面した郵便受けにビラ等を入れること自体は住居侵入罪の構成要件を満たさないと考えられています。
 この場合でも、他の法律・条令等に抵触する可能性があります。

 ポスティングについては、意思侵害説と平穏侵害説とに観点が分かれています。ポスティング行為は意思侵害説から捉えると明らかに刑法130条(住居侵入罪)に抵触するが、平穏侵害説から捉えれば、破壊や騒乱を伴っているわけではないので同法に抵触しないという見解になります。

 逆説的に言えば、先述した『貼り紙は寂しい』に繋がる結果になると思いますが、
ポスティングによるビラやチラシ等を受け取りたくない方は、郵便受けにその旨の意思表示をしておくのがいい
のではないかと思います。

 ポイ捨ては、条例違反、軽犯罪法違反、廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反などに抵触することとなります。
 また、強要罪は、刑法で規定された個人的法益に対する犯罪です。権利の行使を妨害し、義務なきことを強制することで成立します。

 受取拒否を表明している者に対して投函すると、ポイ捨てや強要罪に当たる可能性がある
ので、ポスティングを仕事としている方は注意しなければなりません。


○意思侵害説 ; 住居権者ないしは管理権者の意思に反する立ち入りを「侵入」とする考え方。
○平穏侵害説 ; 住居等の事実上の平穏を害する立ち入りを「侵入」とする考え方。

≪最高裁判決≫

 裁判となって、判決が出されその後の判例となったものには、政治色の強いビラのポスティング行為についての二件があります。

○住居侵入被告事件 平成17年(あ)第2652号 (立川反戦ビラ配布事件)

1.管理者の管理する公務員宿舎の共用部分及び敷地は刑法130条の「人の看守する邸宅」に該当するとされた事例。
 反戦平和を課題として宣伝活動をしている「立川自衛隊監視テント村」という団体の構成員である被告人らが,同団体の活動の一環として,2回にわたり,「自衛隊のイラク派兵反対!」「ブッシュも小泉も戦場には行かない」との標題のビラを,防衛庁(当時)の職員らが居住する東京都立川市所在の防衛庁立川宿舎の各室玄関ドアの新聞受けに投かんする目的で,同宿舎の敷地内に立ち入った上,各号棟の1階出入口から4階の各室玄関前まで立ち入った行為について,刑法130条前段の罪が成立するとされた事例。

2.反戦ビラを配布するため公務員宿舎の共用部分及び敷地に立ち入った者を住居等侵入罪で処罰しても憲法21条1項に反しないとされた事例。

○住居侵入被告事件 平成20年(あ)第13号  (葛飾政党ビラ配布事件)

1.分譲マンションの各住戸のドアポストに政党の活動報告等を記載したビラ等を投かんする目的で,同マンションの玄関ホールの奥にあるドアを開けて7階から3階までの廊下等に,同マンションの管理組合の意思に反して立ち入った行為について,刑法130条前段の罪が成立するとされた事例。

(上告棄却)本件マンションの構造および管理状況,玄関ホール内の状況,立入り禁止の貼り紙の記載内容,本件立入りの目的などから見て、本件立入り行為が本件管理組合の意思に反するものであることは明らかであり、被告人もこれを認識していたものと認められる。そして、事実に照らせば法益侵害の程度が極めて軽微なものであったということはできず、他に犯罪の成立を阻却すべき事情は認められないから、本件立入り行為について刑法130条前段の罪が成立する。

2.上記の立入り行為をもって刑法130条前段の罪に問うことは,憲法21条1項に違反しないとされた事例


≪憲法21条≫

第三章 国民の権利及び義務
第二十一条    集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
  2   検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

≪刑法130条≫

第十二章 住居を侵す罪(住居侵入等)
第百三十条   正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。


【関係法規】

 ○ 日本国憲法

 ○ 刑法

 ○ 軽犯罪法

 ○ 廃棄物の処理及び清掃に関する法律

 ○ 立命館法学2004年5号(297号)「論説 ポスティングと住居侵入罪」






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