SJesterのバックステージ

音楽関連の話題中心の妄言集です。(^^)/
もしよろしければ、ごゆっくりどうぞ。

リスト没後120年特集 (その29 孤独の中の神の祝福編2)

2006年12月31日 00時00分10秒 | ピアノ関連
★リスト:詩的で宗教的な調べ 
                  (演奏:アルド・チッコリーニ 2枚組)
1.詩的で宗教的な調べ 全10曲
2.2つの伝説
3.コンソレーション 全6曲
4.オペラのパラフレーズ 4曲
                (1968年、1970年、1971年、1982年録音)

チッコリーニが「自信作と自負している」と言明している作品です。
このブログでももう既に“伝説:波を渡るパオラの聖フランシス”を語ったときに採り上げています。
本人が言うだけあって、全編素晴らしいリストの演奏が展開されています。
それは、それぞれの曲のありようを弾き表すのに必要な経験は既に十分積んで、かといって老成しているわけでもなく、という絶妙のタイミングで記録を残せたためだと思います。
概ねじっくりと曲の深奥を意識して演奏されています。

また“詩的で宗教的な調べ”“コンソレーション”の全曲が収められているディスクってありそうでありません。その意味からも、とても貴重なディスクといえるのではないでしょうか。
そしてそれが名演であるが故に、どうしてこんないい曲がめったに全曲録音なされないのだろうと疑問に思えてしまうほど・・・。

さて“孤独の中の神の祝福”ですが温かみに溢れた解釈で、ピアノの音も装飾音といえどもあまりキラキラさせないで、最初の部分は気持ちゆっくり目に進行していきます。そして展開につれ情感は高まっても、決して音が毛羽立たないところが素晴らしい。中間部のテンポをそれとわかるほどに速め、変化をつけて、元のテンポにもどして再現部、流麗にしかし本当に曲の表現しているところを余すところなく伝えてくる・・・。
聴き手の心にエネルギーがあれば、いい曲・素晴らしい曲と聴こえ、エネルギーがなかったらふっと心に入り込んで潤してくれるに違いありません。

私も疲れたときに聴くにはこれがいいかな。
最後に触れるこの曲の“最高の演奏”と比べると重くないので・・・。

★リスト:詩的で宗教的な調べ S.173 全曲
                  (演奏:スティーヴン・オズボーン 2枚組)

1.指摘で宗教的な調べ S.173 全10曲
                  (2002年録音)

スティーヴン・オズボーンは、今世紀に入って俄かにメジャー以外で最も注目されるレーベルと認知されるに至ったハイペリオンが、イチオシと踏んでいる若手ピアニストのようです。
このディスクでは2枚に渡って“詩的で宗教的な調べ”全曲が演奏されています。
こうやってみると“孤独の中の神の祝福”の他、比較的演奏されるのは第7曲の“葬送曲”ぐらいかなぁ。ブレンデルの新しい方の“ロ短調ソナタ”の盤にカップリングされてましたね。ショパンの亡くなった少し後に発表されたので、ショパンへの葬送かという話もあるようですがどうも違うようですね。。。

ところで、ハイペリオンのピアニストのラインナップってすごいですよねぇ。
分けてもアムラン、ヒューイット、ハフなんて面々は名実ともにメジャーですよね。知名度では劣っても実力的には決して先ほどの面々に“そうは”引けを取らない連中もいっぱいいる。。。(要するにちょこっとだけ劣るのはしょうがないと言っているのですが)
決して忘れられないのは晩年のニコラーエワ女史のバッハ演奏が、すこぶる付きの名演で遺されていること。
人気があるのは至極当然であると再確認。

さてオズボーンの“孤独の中の神の祝福”はつや消しの音色と、残響を巧みに取り入れた録音(マイクを立てる位置を工夫したんでしょう)により、ピアノの音の真は残しながらも刺激的な音がマスクされています。弾きぶりも極めて淡々と進められているおかげで却って素朴なイメージが膨らんで“ほの温かい”神の祝福が感じられました。
そんなに入れ込んで神に祈っているわけでもなく、日常の中でときにふと感じられるちょっといい感覚ですね。
あくまでもつや消し、華美さとは無縁です。それも全曲に渡ってその傾向がある。
私は決してジミとは言ってませんよ!

オズボーンはこの他メシアンの“幼な子イエズスにそそぐ20の眼差し”やドビュッシーの“前奏曲集第1巻・第2巻”をリリースしていますが、どのディスクを聞いてもこの人の弾き出してくる音には独特のものがありますね。
いぇ、私は決して・・・。

★アラウ・エディション:リスト
                  (演奏:クラウディオ・アラウ 5枚組)

(曲目のご紹介は省略させていただきます。)

大トリは我らがクラウディオ・アラウです。
思えばこのエディションにも収録されている“ペトラルカのソネット104番”や“オーベルマンの谷”が収められた小品集から、今回の特集はスタートを切ったんでしたね。

アラウによる“孤独の中の神の祝福”は深々としたタッチから醸し出される巨大で奥行きのある音色、温かさ、温度感が違います。
もちろん重厚な演奏でありますが、人間関係に疲れたときなどでもやはり人間が好き・人しか愛せないという思いにまで駆られるものです。

このような演奏ができたアラウとは、どれほどの心のキャパシティーを持っていた人なのか・・・。
どうやってそれを身に付けたのか?

平素聴くにはちょっと重いかもしれませんが、心の暖炉に火をくべたいとき、聴き手の心の中で最も燃焼力の高い薪となってくれる演奏です。
最後にこれを紹介できて、嬉しく思います。


さて29回にわたって“リスト没後120年特集”を連載しましたが、今回が最終回です。
いかがだったでしょうか?
目にしていただいた方、すべてのかたに感謝するとともに御礼を申し上げます。
本当にありがとうございましたっ!!!

年が明けたらまたこんな企画を -今は絶対したくありませんが- やってみ・・・
まぁ、ぼちぼちやりますわ!

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
リストといえば (ロイヤルトランペット)
2006-12-31 08:33:56
おはようございます
コメントありがとうございます

リストといえば、私の知ってる範囲では揚原祥子さん。
ハンガリーに留学していた人です。
前にも言いましたが、音楽の友社から「クリスマス・ツリー」のCDが出ているので探してみてください。
(私は揚原さんではモーツアルトのピアノ協奏曲21番のCDの方が好きですが)

ブログ、冬休みのうちに研究してみますが、gooは画面が見やすいのですがコメントが別画面になってしまうのがちょっと難がありますね。

返信する
揚原祥子さん (クラウディオ アラウ)
2006-12-31 10:58:48
モーツァルトは聴いたことがあります。
(持ってませんがさるところで・・・。)

評論家のW先生がデビュー時のラーンキにもなぞらえておられましたが、ラーンキより音がきれいでもっと素敵だったように思います。

さすがの東京でも店頭在庫をさがすのはちょいと難しそうなので、いよいよ入手するとなれば音楽乃友社に直接アクセスするしかないかもですね。

gooブログはコメント欄は、コメント横の件数数字をクリックして書き込もうとすると確かに別ウィンドウが開きますが、今の私のように最近のコメント欄の表示をクリックした場合には同一画面上で書き込むことが出来ますよ。

自分の記事に最初に自分でコメントすることはないでしょうから、ご自身でコメントする時のことを考えるならおっしゃることは障害ではないと思います。

おぉ、なんという使い手のことを無視した発言!!
とりあえず事実のご説明ということでご理解ください。(^^)v

モーツァルトの件のリタニアが入荷したとの連絡が来ました。
帰省先から戻ったら、配送してもらうよう手配しました。
生誕251年目に聴くのが楽しみです。
返信する
リタニア他 (ロイヤルトランペット)
2006-12-31 16:49:41
揚原さんのCDは音楽の友社のHPhttp://www.ongakunotomo.co.jp/cds/index.html
から入手できます。

荘厳なリタニアは年頭に心をこめて聴くのもいいかもしれませんね。
返信する
了解しました★ (クラウディオ アラウ)
2006-12-31 21:23:03
ありがとうございます。

東京から戻ったら手配します。
聴いたことのないディスクが2枚あって、それぞれリストの伝説、シューベルトの即興曲と興味津々のプログラム並んでて困りましたねぇ。
どうしましょう・・・。

周年行事に迎合したくないと思ってモーツァルトは意識して聴かなかった今年、来年は解禁してちょいと勉強したいと思います。
私の場合は、メジャーな曲がメインになるでしょうが
・・・。
またいろいろ教えてくださいませ。

ともあれ大変お世話になり有難うございました。
良いお年をお迎えください。
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