ヒト遺伝子想定的生活様式実践法

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〔メモ〕「低線量放射線の生体への影響と食の重要性」へのコメント

2013年08月10日 |  今日のメモ

 今週は残念ながら週一更新へダウンしたところ、バテバテのリハビリのため手抜きで、ちょっと気になるツイートをみかけたのでメモしておこう。

 その内容は、宇野加津子氏(生物学者。ルイ・パストゥール医学研究センター所属)による「低線量放射線の生体への影響と食の重要性~"低線量放射線と対峙して生きる"を支える~」という文章に関するものである。全文5頁はツイートに添付されたフォトで確認できるのだが、それによれば

   「Schneller No.84, 2012. Autumn」の14-18頁

の部分らしいので、多分そのような名前の雑誌の2012年の秋号に掲載された文章なのだろう(初めて聞くけど・・・)。

 宇野氏の同文章は、全体としてみれば支持できないのだが(いわゆる御用系の主張であるため)、嘘と真実とが混じっているという感じがするのが興味を引いた点である。


 そのツイートは6つあって、以下のとおり。 
 
@horiuchiyo 7月28日
低線量放射線の生体への影響と食の重要性~"低線量放射線と対峙して生きる"を支える~ 宇野加津子 "低線量放射線リスクについては、大きく2つに別れます。医者はこの程度は大丈夫と言い、物理学者や分子生物学者の一部は危ないというのです。” https://twitter.com/horiuchiyo/status/361624136671444992/photo/1 [14頁]

@horiuchiyo
宇野加津子 "低線量放射線の影響の学問的研究は、広島・長崎の原爆被災者の研究結果から明らかにされています。100ミリシーベルト(mSv)以下の低線量の明確な影響は検出されていません。" …意図があるからです。
https://twitter.com/horiuchiyo/status/361624522736140288/photo/1 [15頁]

@horiuchiyo
宇野加津子 "研究者たちが「一つでもウィルスがいれば(ウィルスが含まれる血液が一滴でも付着すれば)感染のリスクがある」と言って、感染者(およびその確率の高い血友病者)の社会生活を困難に追い込んだのと同様の過ちを犯すものであると思いました。" …代弁不要。追い込まれたとの自覚はない。

@horiuchiyo
宇野加津子 "エイズでの経験から、今回の低線量放射線の影響についてリスクを過小に言うのも過剰に言うのも私は無責任だと思います。科学的なリスク評価に基づいて伝えることこそ、科学者の役割であると今回更に確信しました。” 勘違いされております https://twitter.com/horiuchiyo/status/361625030930620416/photo/1 [16頁]

@horiuchiyo
宇野加津子 "慢性的なストレスが続くと免疫機能の低下をもたらし、感染症にもかかりやすくなるし、がんの発症リスクも高くなるのです。" "サプリメントではなく、「放射能測定で特に問題なしとされた福島県産の旬のものを積極的に食べよう」" https://twitter.com/horiuchiyo/status/361625314213908480/photo/1 [17頁]

@horiuchiyo 7月28日
宇野加津子 "私自身は、低線量放射線の影響として活性酸素の害となるがんリスク以上に、炎症による心疾患リスク上昇の可能性を心配しています。広島・長崎の結果でも、最近では炎症による心疾患のリスクは報告されています。" 退場、引退がよろしい。 https://twitter.com/horiuchiyo/status/361625581093265408/photo/1 [18頁]
(強調は引用者で、ツイート主のコメントとみられる部分。なお、ツイート主は血友病を患っているらしい)


 とりあえず全文を読んだ限りでは、個人的に真実と評価できる部分で、このブログ的に関心がある点は、以下の3点であろう(番号は便宜上付与)。

(1) 
 放射線 →H2O →ヒドロキシルラジカル ・OH、スーパーオキシドアニオンラジカル O2・- 活性酸素ということになます。しかし、この活性酸素の影響というのは多様です。活性酸素は、身体の「さび」の原因として一番の悪者にされています(図1)。動脈硬化、心筋梗塞、アルツハイマー、がん、糖尿病、胃潰瘍、白内障など、老化に伴い増えてくる多くの病気と活性酸素が関わっていることが明らかにされています。 (前掲資料15頁)

(2)
・・・私[宇野氏]の研究はヒトの免疫機能の測定ですが、自然免疫機構(非特的免疫機構)、あるいは初期免疫と言われている部分は、常に私たちの身体を色々な感染や、発がんから守っているシステムです。意外にも、加齢の影響よりもストレスなどの影響を受けやすいのです。慢性的なストレスが続くと、免疫機能の低下をもたらし、感染症にもかかりやすくなるし、がんの発症リスクも高くなるのです。 (前掲資料16-17頁。)

(3)
 結論として月並みですが、生き甲斐を持ってストレスをためないように生活し、抗酸化作用の高い食生活を提案します。私自身[宇野氏]は、低線量放射線の影響として活性酸素の害となるがんリスク以上に、炎症による心疾患リスク上昇の可能性を少し心配しています。広島・長崎の結果でも、最近では炎症による心疾患のリスクが報告されています 5)。 (前掲資料18頁。上記引用の最後のツイートでは何故か非難されているけど・・・)


 また、個人的にいかがなものかと評価する部分で、このブログ的に関心がある点は、以下の2点である(番号は便宜上付与)。

(4)
・・・低線量放射線の影響の学問的研究は、広島・長崎の原爆被災者の研究結果から明らかにされています。100ミリシーベルト(mSv)以下の低線量の明確な影響は検出されていません。これは、「ない」と言い切れるわけではありませんが、分からないほどに小さいとはいえるでしょう(分からないと言ってしまうと、誤解を招くと考えます)。 (前掲資料15頁)

(5)
 そこで、低線量放射線の影響を考えるための分かりやすいスライドの作成に取り組みました。この資料作成の過程で、私[宇野氏]の周辺(生物系、特に医療関係者が多い)の研究者は、「放射線障害よりも(原発の中は別として)、タバコの害の方がずっと大きいよ。がんの放射線治療では10グレイぐらい(γ線ならば10 Svに対応)照射することもあるし」と言いました。
 そこで、放射線のリスク評価を表現するのに、タバコのリスクと対比することにしました 1)。実際、がんのリスクとなれば、タバコは30%程度、放射線と紫外線で2%程度の寄与率と言われています。放射線の害の6~7割は生体を構成する水分子に放射線が当たってできる活性酸素によるものですから、活性酸素を指標としてタバコの害と比較できると考えました。 (前掲資料15頁)


 それぞれの評価の理由を簡単に述べておこう。(1)については、以前から多くの記事で、

●の影響 →酸化ストレス(活性酸素)の亢進 → 交感神経の緊張

が問題だと指摘してきたところである。関連の過去記事は、例えば、

電離の直接障害と酸化ストレス障害  2012/5/9
酸化ストレス(活性酸素)による生体の障害  2012/5/11
交感神経の優位と粘膜・組織破壊 (1)  2012/5/13

タバコ、アルコールでこれらが起こるなら・・・  2013/5/7  [動脈硬化関連]
交感神経の緊張と発がん  2012/5/26
糖尿病と酸化ストレス  2012/5/18

「コルチゾール過剰症候群」 (8-1) 消化性潰瘍  2013/4/18


 (2)については、「慢性的なストレスが続くと、免疫機能の低下をもたらし」の部分がポイントで、「慢性的なストレス」というのは、慢性的な●の影響による連続的な酸化ストレスのことだろうと解される。この点についての関連の過去記事は、次のとおり。

「コルチゾール過剰症候群」 (7-1) 易感染性   2012/08/22
連続性のある慢性型ストレスの影響  2013/2/20


 (3)については、がんのリスクより心疾患リスクの方が大きいと暗に指摘していと解釈できるので、少しは評価できるだろう(心疾患以外もあるけど・・・)。ただ、高汚染地からは少なくとも子どもたちは避難させる必要があると考えるので、「生き甲斐を持ってストレスをためないように生活し、抗酸化作用の高い食生活を提案」というのは、全ての人々にではなく、四国・九州や北海道などに住んでいる人々に言えることだと理解しているけど・・・


 いかがなものかと評価した方に行くと、(4)については、「広島・長崎の原爆被災者の研究結果」だけをみればこう言えるのかもしれないが、他の研究報告、例えば、アリス・スチュワート氏の報告をみれば明らかにおかしいことがわかるだろう。なお、アリス・スチュワート氏についての過去記事は、〔メモ〕昔は妊婦へのX線照射をよく使っていたらしいが・・・  2012/03/24「『ない』と言い切れるわけではありませんが」と書いて保険をかけているところわみると、当然他の研究報告も知っているのだろう。

The daily olive news@olivenews 7月24日
妊娠している女性にレントゲン撮影をしない理由は、1958年に英国のアリス・スチュワートさんが出した論文で、「妊娠中の母親がレントゲン撮影を受けた枚数に応じて、わずか数百μSvでも、生まれた子のがんや白血病罹患率が上昇する」ことが疫学的に証明されたからです。


 (5)については、タバコの害を語っているけど、タバコの発がんリスクがこれほど高くなるのは、タバコ容器説以外では上手く説明できない気がしている。なお、タバコ容器説(隠れ蓑容器説)についての過去記事は、〔推測〕 タバコ、アルコールは隠れ蓑だったのか? (3/5)  2013/5/19


 リハビリのつもりだったけど、こうしてみると本ブログも少し記事がたまったかなという雰囲気が漂い、よけいサボりそうな気になったのは良かったのか、悪かったのか・・・