南の国の会社社長の「遅ればせながら青春」

50を過ぎてからの青春時代があってもいい。香港から東京に移った南の国の会社社長が引き続き体験する青春の日々。

不都合な真実を見ました

2007-11-13 00:13:38 | Weblog
先週末にプレゼンがあって、ブログを書く余裕がありません
でした。どうも、お待たせしました。え、誰も待ってなど
いないって?それは失礼いたしました。

週末に『不都合な真実』の映画を見ました。映画というより、
講演記録なのですが、これは素晴らしいと思いました。へた
なフィクションを見るより、よほど感動しました。これは
ドキュメンタリーというよりも、様々に用意された伏線が
巧妙に仕組まれており、見た人を行動に駆り立てる力を持っ
た映画ということで感動しました。

この上の地球の写真は、アル・ゴアさんの講演の最初のほう
で使われる写真資料です。一番多く使われた地球の写真とい
うことで、この写真は、パワーポイントのクリップアートの
ライブラリーの中にもある(オンライン)版権フリーの
写真です。こんなに貴重な地球の写真が版権フリーの
クリップアートに入っているというのは象徴的ですね。
地球は誰のものでもない。みんなのもの、なのですね。

まずは、これをまだ見ていない人のために、どんなものか
映画の予告編(トレーラー)へのリンクをご紹介します。
http://www.youtube.com/watch?v=5yI8R_L7_TM

この中に出てくるアル・ゴアさんの説明の中で、誤った
認識であるとされるものがいくつか指摘されていますが、
これを見終わった私から見ると、それはまさに重箱の
コーナーをつつく行為に見えてきます。

例えば、地球温暖化のために南極やグリーンランドの氷が
溶けて、海面がそんなに上昇するというのは嘘だと言って
せせら笑っている人たちがいます。そういう批判派の学者
の映像がYou Tubeに出ていましたが、何か醜悪な気がしま
した。そのような誤謬は問題であるとしても、地球の問題
をきちんと認識し、危機を防ぐためにみんなが協力しない
といけないのに、彼らは、全くの批評家として、結局は何
もしないのです。そういうの何か好きになれません。

アル・ゴアさんは、命がけで地球を危機から救おうとして
いる、ように私の目からは見えるのですが、それを政界へ
カムバックするための野心があるからだと見る人もいます。
マイケル・ムーアの『華氏911』のようなブッシュ批判が
随所に出てきます。そういうところは政治的野心ととられ
かねないのかもしれませんが、政治にこそ環境に対しての
問題があるので、これは元大統領候補アル・ゴア氏として
は、当然の立場ですね。しかし、この作品の中でほんの
かすかに現れるブッシュ大統領の姿は、知性の全くない
悪魔のように見えてしまいます。

しかし、ゴアさんはプレゼンがうまい!派手な立ち回りが
あるわけでもなく、すごいCGを使ったり、立体グラフや
未来的な図解は全く使われておらず、写真や映像資料、
グラフが淡々と使われていくだけなのですが、この組み立
てが見事です。

言葉でプレゼンテーションを作るのではなく、事実をどん
どん積み重ねていってプレゼンテーションを組み立てている
その技術に感動してしまいました。また随所に使われている
引用、グラフを強調するためのクレーンの使用、氷を求めて
泳ぐシロクマのアニメなど(実際に漂流して死んだシロクマ
はまだいないと批判されていますが)、見ている人を飽きさ
せず、しかも印象的な仕掛けが実にタイムリーに使われてい
ます。これはうまいなあと感心しました。

また、映画の中で時々出て来るドキュメンタリー映像。ゴア
さんの語りがまた渋くて素晴らしいです。子供が事故にあい、
自分にとてって守るべきものの大切さを実感したときの事、
父親が飼っている牛の世話をしによく帰省したという事、
たばこを吸っていた姉が早く死に、たばこの栽培を家でして
いたことに罪悪感を感じた事、各地を旅して講演を繰り返し
ていてもなかなか行動をしてくれる人がいないという嘆き、
ぬるま湯の中に入れられたカエルは徐々に湯の温度が高く
なっていって熱湯になってもそれに慣れてしまって茹蛙に
なってしまうという話し、大統領選挙のときフロリダの票
があいまいなことになって負けてしまうという事などの
いくつかのエピソードが非常に効果的に挿入されます。
それぞれが短編映画、あるいは長編コマーシャルという
感じです。この部分があって全体が映画として成立して
いるのでしょう。見事です。

ゴア氏の話しの中でも、小学生の頃、同級生が先生に、
アフリカ大陸と南アメリカ大陸はくっついてたんじゃないの
と言ったら「そんな馬鹿なことはない」と言って怒られた
エピソードのだいぶ後で、二酸化炭素の量のグラフと気温の
変動のグラフの一致の話しをするところなどとてもおもしろ
かったです。つまり、いろんなエピソードが伏線として関連
しあっており、それが最後のメッセージ=地球を危機から
救う為にみんな行動をしないといけない、ということに
効果的に繋がっているのです。

これはプレゼンテーションのお手本としてもっと研究する
価値があると思いました。言葉の選び方、立ち居振る舞い、
原稿を全くみないで話すということ、美辞麗句ではなく、
事実で伝えようとする態度、発声法、視線、話しの組み立て
など、さまざまに勉強になります。

ゴアさんは、日本のテレビ番組にも出ていたのですね。
世界一受けたい授業(アルゴア)
そして後編の
世界一受けたい授業(アルゴア)後編
です。
日本の番組はわかりやすいですが、つくりが実にやすっぽい。
これは是非、映画のほうを見ていただきたいと思いました。

この映画の最後に、字幕スーパーで、行動をするための
メッセージが出てきて、これがまた広告コピーとしては
実によくできています。ユーモアもきいています。
アフリカのことわざとして紹介されている「祈るときは
祈りだけでなく、行動もしましょう」という言葉(正確な
言葉ではないかもしれませんが)とっても素敵でした。

そして、このブログにこの映画の紹介を書いたこと、これ
もこの映画で言うところのアクションの一つです。あまり
影響力はないかもしれませんが。