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群馬の田舎から情報発信!

『強欲資本主義 ウォール街の自爆』(神谷秀樹)

2009-03-29 12:54:01 | 読書日記
 「社会の分裂」「共感のない社会」という「バブルとその崩壊が生み出す副産物」に深刻な危機感を持つ著者が、日本国民に一度立ち止まって、自分たちが望む経済社会はどんなものか考えなおしてもらおうとして記した作品です。

「今日の儲けは僕のもの、明日の損は君のもの」
 法律に触れなければ、儲かったものが勝ち。騙される方が悪い。そんな強欲な考え方が跋扈するウォール街。
 
 そのような考え方に基づく経済活動がアメリカや日本の社会に及ぼしてきた影響を、具体例に基づいて説いています。

 たとえば、長期信用銀行の破たん後の処理。結局は、アメリカの強欲な投資銀行が利益をかっさらって、最後にババを引かされたのが日本の納税者であるということ。

 そんな経済も、昨年のリーマンショックやオバマ政権の発足で変わってきている。今後、世界、特にアメリカと日本の経済はどのような方向に進もうとしているのか。その一つの方向性に対するヒントがこの作品なのかもしれません。

 

『サッカーボーイズ 再会のグランド』(はらだ みずき)

2009-03-28 10:55:01 | 読書日記
 サッカーを通して迷い、傷つき、悩み、友情を深め、成長していく遼介たち桜ヶ丘FCメンバーの小学校生活最後の1年と、彼らを支えるコーチや家族の思いをリアルに描く作品です。

 小学生ながら、サッカーの技術に悩み、チームメートとの人間関係に悩み、キャプテンになれないことに悩み、様々な悩みを抱えている。それでもサッカーを通じて逞しく成長していく。小学生であっても、自分の好きなことに打ち込み、上達しようと努力することは、人間として成長していくには効果的なことだと思います。
 どの時代でも”熱く”なれるものを持っているということはいいことですよねえ。

 サッカー、特に小学生時代はコーチの指導方法は重要でしょうねえ。強くなるためには、さまざまな指導方法があるのでしょう。
 本作品では、新しいコーチの指導方法により、試合開始前のかえ声が変わります。
 話の最後にそのかけ声が明らかにされます。「エンジョイ!」「フットボール」
いいかけ声ですよねえ。それまでの様々な苦しい練習、いろいろあった人間関係、それらを全て踏まえた上で、今、ここで始まる試合に向けた心構えとしては最高のかけ声だと思います。
 こんな風にサッカーの試合ができたら、きっと素晴らしいゲームができると思います。

『公立小中高から東大に入る本』(和田秀樹)

2009-03-28 10:33:17 | 読書日記
 公立高だから東大に合格できる理由とは?都会の子より時間がたっぷりあるから。空いた時間を勉強に充てればよい。

 就学前は「過保護」に育てよー幼児期に何を教えるか
 「過保護」に育てないと子どもはのびない。

 「自分はできる」という幻想を与えよー小学低学年で何を教えるか
・親は子どもの前で本を読め
・”できない子”にはどんなに簡単でも”わかる”問題を与えよ
・”できる子”と仲良くさせよ

 「試験に強い子」に育てよー小学校高学年で何を教えるか
・「ペーパーテスト学力」を重視せよ
・計算力だけはしっかりつけさせよー算数の教え方
・読んでいる本の内容を子どもに聞いてみよ

 「内申書」を気にするなー中学生活をどう過ごさせるか
・勉強は時間より”量”だと心得よ
・中学では、英語と数学だけは徹底して勉強させよ
・英単語を覚えられるだけ覚えよー英語の勉強術

 偏差値を信じるなー高校時代をどう過ごすか
・高校に合格した日から、受験生になれ
・どんな参考書を使うかで得点力が違ってくる
・親は、子どもを「依存」させてやれ

 「結局、受験というのは、親子が人生観や社会観を問われ、それに対して一定の解答をしていくプロセスではないかという気がします。
 このプロセスを経て、親も親として成長していくのだと思います。だからこそ受験は、家庭の課題なのだと思います。」

 著者の経験から、東大受験のための具体的アドバイスを子どもの年代ごとにまとめた作品です。
 実際、東大に合格された方の勉強法は千差万別でしょうが、基本的な勉強法を頭に入れておくことは効果的だと思います。

 とはいえ、この作品は、受験生本人を対象としたものというより、親の心構えを説いた作品だと思います。

 解説で蔭山さんが述べていますが、受験はきわめて「家庭」の問題であるということ。親と子どもが人生観・社会観を作り上げ、実現していく過程であるということ。家族が成長していく過程であること。
 だからこそ「受験」というちょっと暗いイメージのある行為も、前向きに、価値あるものとして家族で取り組むべきものなのでしょう。
 決して、受験は子どもだけが頑張ればいいというものではなく、家族みんなで取り組むべきものだということです。 

『新世界より』(貴志佑介)

2009-03-24 19:39:27 | 読書日記
 今から1000年後の世界といいながら、どこか昭和の風景を思い浮かばせる設定。
 そして、バケネズミやミノシロモドキなど、不思議な生物が登場する。
 これはファンタジーなのかと読み始めると、SF的なストーリーが展開する。

 特殊な能力を持つ人間が、それ以外の人間をバケネズミに変えることで、奴隷のごとく扱う。不自然な世界を作り上げ、無理に維持していくと、その閉鎖された世界の中に特殊変異した物体が登場すると、一気のその世界を維持することが難しいこととなる。そんな危うい基盤の上に作り上げられたユートピア。そこは、本当のユートピアなのか。

 正直、このような世界を描く著者の頭の中はどうなっているのか?どうしてこのような世界を想像しえたのか?不気味な世界に読者をぐいぐい引き込みながら、スピード感ある展開で決して飽きさせない。
 SFやホラーといったジャンルでは分類しきれないほど、たくさんの要素が詰まった作品です。
 

『会社に人生を預けるな』(勝間和代)

2009-03-21 11:50:16 | 読書日記
 私が提案するリスク・リテラシーとは、
1 身の回りにあるリスクを予測、計量すること
2 そのリスクに見合ったリターンを得られるかどうかを判断し、当該リスクを取るか、取らないかを決定すること
3 リスクを取る場合、リスクをどうモニターし、制御するのかを決めること

 ITや社内教育が短期での人材育成を可能にしたため、終身雇用によるメリットが大きく薄れてきてしまったばかりか、逆にへいがいになってきているといえます。

 ワーク・ライフ・バランスとは、
1 就労による経済的自立が可能になる社会
2 健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会
3 多様な働き方・生き方が選択できる社会

 ワーク・ライフ・バランスは、本来、優秀な人材を戦略的に囲い込むため、さらに創造的な能力を発揮してもらうためにあるのに、日本の終身雇用の仕組みの中では、人がなかなか辞めず、帰らず、滅私奉公をしてくれるのですから、企業側にとってワーク・ライフ・バランスは、従業員の健康管理か福利厚生くらいの位置づけでしかなくなるのです。

 共産主義はなぜ失敗に終わったのでしょうか。それは、共産主義社会では政府がリスクの管理を集中化、一元化しましたが、そのリスクを管理しきれなかったことが原因です。現代はリスクが分散されすぎて誰も把握することができないが、分散させずに集中管理しようとしても、管理しきることはできないのです。

 ここでのリスク・リテラシーとは、これまで私たちが「お上がやってくれる、政治家がやってくれる、上司がやってくれる」と外発的なリスク管理をしていたことを改め、もう少し内発的なリスク管理に上げていこうではないかという発想です。

 自分がリスクを取らずに開発した、従業員を管理できる初めての仕組みが非正規雇用だったのです。ところが、非正規雇用の最大のリスクは、もともと日本にはリスクマネジメントの仕組みが従業員の側にも企業にも国家にも存在しなかったために、ワーキングプアが大量に発生するという事態を招いたことです。本人たちもそのリスクをどう管理するかという教育を受けていない上に、会社もリスクを取らない、国も面倒を見てくれないのです。

 リスクの考え方についてもパラダイムシフトが必要。
 自分の人生を会社に預けないということもしかり、国に頼りすぎないということもしかり、自分の人生は自分でコントロールするという発想が大事です。人生は癒すものではなく、コントロールするものです。

 「会社に人生を預けるな」という表題のとおり、終身雇用制度の問題点についての記述はかなりありますが、リスク・リテラシーを身に付けることの重要性を説いた作品です。
 個々人が少しづつリスクを意識することで、企業・社会・国家レベルでリスクをきちんと把握した上で、リスクをとった活動をし、発展を遂げることができる。

 まず、個々人がリスク・リテラシーを磨くことが必要。とは言え、今の私がいきなり今の立場を全て投げ出すリスクを取ることは、自分の意識の面でも、社会の受容能力の面でも、とてもじゃないけど無理。小さなリスクから意識することから、訓練してくことがいいのでしょう。

『「未納が増えると年金が破綻する」って誰が言った?」』(細野真宏)

2009-03-20 13:07:46 | 読書日記
 
 勉強法というのは、いかに「理解度」を上げて、「”分かったつもり”から抜け出すことができるのか」にかかっているのです。

 実社会で生きていく上で必要不可欠な「思考力」を身につけるために必要なことは意外とシンプルなのです。一つ一つの事柄に対して「なぜ、そのようになるのか?」ということを段階的に整理していく習慣を身に付けるようにすればいいのです。

 「数学的思考力」とは?
①「論理的思考力」→情報をフローチャートにまとめる思考力
②「情報の本質を見抜く思考力」→「直感力」によって「仮説」を出し、それを論理的に「検証」していく思考力

 著者の前著「数学嫌いでも「数学的思考力」~」の思考手法を、具体的な問題で使ってみせてくれる、いわば応用編てきな作品です。

 サブプライムローン問題を発端とする経済普及の大元がアメリカの住宅価格の値下がりであれば、アメリカの住宅価格が上がれば、景気の回復も近づくという風に、知っていて当然のように新聞を賑わしている言葉の本質を簡単に解説してくれています。

 さらには、難解不可解そうで、何となく近づきづらい社会保険問題もその本質から分かりやすく解説してくれています。

 「数学的思考力」が身に付くと、普段の様々な場面でコミュニケーション能力が高まるのだと思います。
 自分の思いを、分かりやすく、順を追って話すことで、より理解が進むのですから。
 
 もう一度、前著を読み返してみようと思います。



 

『面倒くさがりやのあなたがうまくいく55の法則』(本田直之)

2009-03-15 11:29:04 | 読書日記
 「あらゆる発明は人々に『面倒くさい』を解消するために生まれました」
 「面倒くさいから、面倒が起らないように工夫する」
 「小さい面倒をやっておくことだけで、負の連鎖から抜け出し、日々のストレスからも解放されます。」

 基本的な生活スタイルを55の法則として語っています。
例えば、
 ・面倒くさいから変えられないものに執着しない
 ・面倒くさいからメモする
 ・面倒くさいから全部予約する
 ・面倒くさいからマニュアルを熟読する
 ・面倒くさいからやらないことを決める
 ・面倒くさいからパソコンを頻繁に買い替える

 特別、面倒くさがりやの人にだけに当てはまるアドバイスではなく、広く一般のビジネスマンにも有効なアドバイスが満載です。
 自分の生活スタイルを一度点検するために読んで確認するのに有効では。

『ジェネラル・ルージュの凱旋』(海堂尊)

2009-03-15 11:04:44 | 読書日記
 医師不足が叫ばれているなか、医療現場では何が起きているのか。
 救急医療、ドクターヘリなどは採算の採れない分野。大学病院も独立法人化され、不採算部門は切り捨てられる?
 救急医療は確かに患者が運ばれてこないと仕事にならない。しかし、いつ何時患者が運ばれてきても対応できるよう、しっかりとした体制を整えて置かなくてはならない。そういった意味では不採算にはなりがちなのでしょう。
 そんな中で医師や看護師といった現場で働く人たちが疲弊していく。

 後半のタンクローリー炎上事故の救急医療の場面は圧巻です。「すべてうちで引き受けろ」という速水部長の言葉がカッコイイ。「患者を俺のところへ連れてこい。そうすれば、俺が助けてやる!」という医師としての気概が素晴らしい。

 個人的にはロジカルモンスター白鳥があまり活躍していないのがちょっと不満。
 しかし、収賄の告発という事件だけで、大学病院内にあるエシックス委員会やリスクマネジメント委員会といった仕組みや、さまざまなドロドロとした人間関係が盛りだくさんに詰め込まれていて、ミステリー色は薄いが一級のエンターテイメント小説に仕上がっています。 

『断る力』(勝間和代)

2009-03-12 20:24:30 | 読書日記
 断るのは自己を高めるため。自分の高めるための努力することにエネルギーを集中するため。
 しかし、闇雲に断って人間関係を悪くするのではなく、断っても許されるような常日頃の環境づくりが大切。
 断るには自己の確固たる確立が必要。
 
 3毒追放「怒る、愚痴る、妬むを止めること」

1 断るの効用
●言葉を使って言わなければ、絶対相手は分からない
●断ることで失うものよりも、得られるものの方が大きい
●「なぜ嫌われるのか」の原因を分析しよう
●嫉妬されるぐらいの人になろう
●「悪意」の奥底にあるバックグラウンドを理解しよう
●私たちは自分の扱い方を人に教えている
●「断る力」を身につけるには、相手との「対等」な人間関係が必要

2 自分の揺るぎない軸を持つ
●自分に対して責任をすべて持てるのは、自分一人だけ
●上手に「断るリスク」をとる具体的なコツを学ぶ
●自己評価に始まって自己評価に終わる
●自分の得意・不得意が何か、明文化しよう
●「努力」の量はかけた時間で評価できる
●まずは身近な人の意見を聞く
●客観テストを使う
●職場の人事評価を利用する
●顧客や取引先の評価を活用する
●インターネットの評価を利用する
●「不得意」なものは放っておく割り切りと強さが必要
●「自分の軸」を持つのは30代前半までに
●自分の「コーチ」は「自分」しかいない

3 相手への建設的な影響力を発揮する
●「空気」を読んだ上で、その空気とは違うことをあえて言い切る勇気を持つ
●「影響の輪」を常に意識しよう
●相手の力をうまく引き出し、「協力関係」を築く
●「交渉力」は「思考のクセ」である
●あなたの利害だけでなく、相手の利害も考え「ウィンウィン」を築く
●「断る力」の発揮は「ロー・リスク」の場から実践しよう
●「断る力」が「自己確信」を高める

4 「断る力」で自分と周囲の好循環を作る
●「自分の軸」を持った人同士が「得意分野」を出し合い、「不得意分野」を補うことで「好循環」が生まれる
●人との関わりの中で「自分の軸」が革新していく
●間違った考え方や社会にNOと言える力を養う

 「断る力」という表題ではありますが、自分の軸を定め、自分に人生を生き抜くために、気持ちよく自己主張をしながら、相手の能力をより引き出し、長期的ないい関係性を築くことを説いた作品です。 

『向日葵の咲かない夏』(道尾秀介)

2009-03-12 20:15:17 | 読書日記
 夏休みを迎える終業式の日。先生に頼まれ、欠席した級友の家を訪れた。きい、きい。妙な音が聞こえる。S君は首を吊って死んでいた。だがその衝撃もつかの間、彼の死体は忽然と消えてしまう。一週間後、S君はクモに姿を変えて現れた。「僕は殺されたんだ」と訴えながら。僕は妹のミカと、彼の無念を晴らすため、事件を追いはじめた。

 なぜ、人が生まれ変わってクモになるのか?友人を名前で呼ばずになぜ”S君”と呼ぶのか?
 不思議な雰囲気のどっぷり浸かりながら最後まで読み進めていくと、衝撃のラストで全ての謎が明かされる。

 思わず「そうだったのか~」うなってしまいました。
 こういうトリック(?)もあるんですねえ。

 著者はしばしば、本格ミステリーは人間を描くのに最も有効な手段だと言っているそうです。
 世界とは常に、主観や幻想に蝕まれる脆いものだそうだ。

 人間の主観を巧みに屈指し、著者が読者に挑戦する作品も”あり”なのでしょうねえ。参りました。