遅ればせながら、村上氏の「半島を出よ」を読みました。
北朝鮮のコマンド9人が開幕戦の福岡ドームを武力占拠し、2時間後、複葉輸送機で484人の特殊部隊が来襲、市中心部を制圧した。彼らは北朝鮮の「反乱軍」を名乗り、九州を日本から独立させようとする・・・・。
北朝鮮問題は、現在六カ国協議が進展中であり、現時点でも旬な話題である。
かなり斬新なテロのアイデアであり、現実味がどれほどあるか分かりませんが、「危機管理」という意味では、常日頃からの、様々なシミュレーションが大事であり、可能性を一つ一つ検討することが必要なのでしょう。
では、果たして、テロ事件が勃発し、野球場を犯人が占拠した場合、現在の日本政府はどのような対応策をとるのか。(あるいはとれるのか。)
少数の人命を犠牲にしてでも、国家あるいは多数の国民を守り抜こうとするのか。それとも、この小説のように、少数の人命を守るという大義名分を掲げつつも、何もできずに、結局さらなる大きな犠牲を招くようなことになってしまうのか。当然、この両極端の手法以外にも、中間的は策はいろいろあるわけですが、結局は「政治」が果たすべき役割を、もっと真正面から見つめ直すべきことを我々に突きつけている気がします。都合の悪いことは、とりあえず結論を先送りしてばかりいずに、「国民を守る」ための基本的考え方を「政治」あるいは「政府」は国民に示すべきではないでしょうか。
この小説では、日本の危機を結果的に救ったのは「国家」ではなく、「イシハラグループ」という若者の集団です。
イシハラは、「何のために生きるか。それは破壊のためだ。この世の中には2種類の人間しかいない。こつこつと爪の垢に火を灯すように防波堤や堤防や防風林や灌漑用水を作る人間と、脳天がぶち割れ金玉が打ち震えるような感動と情熱とパッションと激情と情欲とパッションフルーツを持って既得権益層と旧来のシステムと悪の砦を破壊する人間の、2種類だ」と言う。
確かに、本当の「危機」が起きたときには、旧態依然としたシステム及びそれを守ろうとする既得権益層には、対応が難しく、破壊をも厭わない強力な個性を持つ人物が英雄となるのかも・・・・
たくさんのテーマが詰め込まれた小説で、村上氏の小説らしく、重厚で読み応えのある作品に仕上がっています。
最後に、この作品の中で一番気になったのが、北朝鮮が福岡県民の個人情報をいかにして集めたかの謎解きがあります。なんと、市役所をはじめとしたさまざまな機関等から出された排出ゴミの処理を、めぐりめぐって北朝鮮が行っており、その中から個人情報を丹念に拾い集めたとのこと。
この小説の中で最も現実味のある危機はこれではないでしょうか。個人情報が含まれた資料の処分は十分気をつけましょう。
北朝鮮のコマンド9人が開幕戦の福岡ドームを武力占拠し、2時間後、複葉輸送機で484人の特殊部隊が来襲、市中心部を制圧した。彼らは北朝鮮の「反乱軍」を名乗り、九州を日本から独立させようとする・・・・。
北朝鮮問題は、現在六カ国協議が進展中であり、現時点でも旬な話題である。
かなり斬新なテロのアイデアであり、現実味がどれほどあるか分かりませんが、「危機管理」という意味では、常日頃からの、様々なシミュレーションが大事であり、可能性を一つ一つ検討することが必要なのでしょう。
では、果たして、テロ事件が勃発し、野球場を犯人が占拠した場合、現在の日本政府はどのような対応策をとるのか。(あるいはとれるのか。)
少数の人命を犠牲にしてでも、国家あるいは多数の国民を守り抜こうとするのか。それとも、この小説のように、少数の人命を守るという大義名分を掲げつつも、何もできずに、結局さらなる大きな犠牲を招くようなことになってしまうのか。当然、この両極端の手法以外にも、中間的は策はいろいろあるわけですが、結局は「政治」が果たすべき役割を、もっと真正面から見つめ直すべきことを我々に突きつけている気がします。都合の悪いことは、とりあえず結論を先送りしてばかりいずに、「国民を守る」ための基本的考え方を「政治」あるいは「政府」は国民に示すべきではないでしょうか。
この小説では、日本の危機を結果的に救ったのは「国家」ではなく、「イシハラグループ」という若者の集団です。
イシハラは、「何のために生きるか。それは破壊のためだ。この世の中には2種類の人間しかいない。こつこつと爪の垢に火を灯すように防波堤や堤防や防風林や灌漑用水を作る人間と、脳天がぶち割れ金玉が打ち震えるような感動と情熱とパッションと激情と情欲とパッションフルーツを持って既得権益層と旧来のシステムと悪の砦を破壊する人間の、2種類だ」と言う。
確かに、本当の「危機」が起きたときには、旧態依然としたシステム及びそれを守ろうとする既得権益層には、対応が難しく、破壊をも厭わない強力な個性を持つ人物が英雄となるのかも・・・・
たくさんのテーマが詰め込まれた小説で、村上氏の小説らしく、重厚で読み応えのある作品に仕上がっています。
最後に、この作品の中で一番気になったのが、北朝鮮が福岡県民の個人情報をいかにして集めたかの謎解きがあります。なんと、市役所をはじめとしたさまざまな機関等から出された排出ゴミの処理を、めぐりめぐって北朝鮮が行っており、その中から個人情報を丹念に拾い集めたとのこと。
この小説の中で最も現実味のある危機はこれではないでしょうか。個人情報が含まれた資料の処分は十分気をつけましょう。