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群馬の田舎から情報発信!

『借金取りの王子』(垣根涼介)

2009-11-23 18:22:05 | 読書日記
 『君たちに明日はない』の続編。リストラ請負人・村上真介とその恋人陽子を中心とした短編集です。

 真面目で仕事もできるのになぜか辞めたがるデパガ。女性恐怖症の生保社員。秘められた純愛に生きるサラ金勤めのイケメン。都会に憧れつつも、今一つはばたききれない地方の旅館に努める娘。ただのリストラ請負から人材派遣業に手を出す真介。

 どれも、人間観察を十分にしたことが伺えるような心理描写が素晴らしい。特に「山里の娘」が都会に憧れる気持ちをもちながらも、決して思い切って人生を変えてしまうような選択をしない、田舎の普通の女の子の気持ちの描き方がいい。
 「ときどきおれ感じるんだけど、本当に満足のいく人生かどうかは、結局のところ本人じゃないと分からない。たぶん他人が見た状況じゃない。彼女だってそうだと思う」と主人公に語らせています。

 「たしか曲名は、『人にやさしく』だ。うん。だから今、この瞬間があれば、あたしは満足だ。」

 「普通の人間が、自分のもつ枠組みの中で、満足して生きていけばいいじゃないか。そういう生き方でいいじゃないか」という、多くの普通の人への応援歌です。

『ROMES06』(五條瑛)

2009-11-23 18:05:25 | 読書日記
 世界最先端の施設警備システムROMESを擁する西日本国際空港に届いた複数の脅迫状。そしてある日、ROMESの警報装置が作動した!だがROMESの全貌を知るのは、西空警備チームでも最高運用責任者の成嶋優弥ただひとり。愛犬ハルとシステムしか信じない若き天才・成嶋と、テロリストたちの知と情を賭けた攻防の行方は…?

 テロリストの攻撃を受ける度に、徐々に明らかになるROMESの能力。そして少しずつ明らかにされるテロリストの素顔。

 システムはどこまでの能力があるのか。そして、そのシステムを人間はどこまで使いこなせるのか?

 人間よりもシステムを信じる天才であり変人である主人公が魅力的である。「警備の仕事は犯人を捜すことではない。この空港を如何に守るかだ」と言い切る当たり、まさにプロフェッショナルである。
 そんな主人公と愛犬「ハル」との交流は微笑ましい。

 いあや~、本当に面白かったです。01~06まで章毎にROMESの能力が明らかにされていくので、一気に読んでしまいました。

 続編も早く読みたい!!!

『告白』(湊かなえ)

2009-11-14 16:17:36 | 読書日記
 一人の中学校教師の告白から始まり、主人公それぞれの告白が続くという変わったスタイルで書かれています。
 しかし、それぞれの立場の告白から事件の真相が少しずつ明らかになる構成は実に巧い。

 人間のドロドロとした感情の歪みが、恐ろしいほどに描かれていて、ミステリーというよりホラー小説に近いほどです。

 人間の心理をうまく利用した犯罪小説とでもいうのでしょうか。

 しかし、どんでん返しの結末をもってくるあたりは、読者サービス満点のエンターテイメント小説になっています。

 

『人を動かす質問力』(谷原 誠)

2009-11-14 14:07:01 | 読書日記
 質問力により得られる6つの力
①思いのままに情報を得る
②人に好かれる
③人をその気にさせる
④人を育てる
⑤議論に強くなる
⑥自分をコントロールする

 7つのフィードバッククエスチョン
①よくできた点は何か
②それはなぜうまくいったのか
③今後も続けた方がよいことは何か
④うまくいかなかった点は何か
⑤それはなぜうなくいかなかったんか
⑥今後やめた方がよいことは何か
⑦今後改善すべき点はどこか

 問題可決のための8つのクエスチョン
①視点を変えた場合、この問題のよい面は何か
②この問題を解決したら、どのような力が身につくのか
③解決するには、どのような方法があるか
④解決するために自分がしなければならないことは何か
⑤そのために今始めなければならないことは何か
⑥解決の過程で、自分が代償として差し出さなければならないことは何か
⑦その代償を差を差し出したとしても、この問題を解決した方がよいか
⑧この問題を解決するプロセスを楽しめるようにするには、どのように考えたらよいか

 
 質問力というと、他者とのコミュニケーション能力向上を目指す手法かと思いましたが、自己に問いかけることで、自分を鍛え・成長させるツールになることを教えてくれます。
 
 例えば「あなたのマイナスの口癖は何ですか?」
 これについては、「金輪際使うのをやめましょう。マイナスの口癖は、あんたの無意識の世界に侵入してきます。あなたの精神を蝕むのです」

 

『職場で感情は変わる』(高橋克徳)

2009-11-14 13:46:51 | 読書日記
 4つの組織感情に分けることができる。
 「イキイキ感情」「あたたか感情」「ギスギス感情」「冷え冷え感情」

 「良い職場、良いチームであるかどうかを最終的に決めるのは、その職場やチームがお客さんや社会に必要とされる高い価値を提供したかどうかです」

 良い職場には三つの要素がある。
①一人ひとりがイキイキと前向きな感情を持って、職場やチームに参加できているかどうか
②お互い認め合い、支え合い、学び合う良い関係を築けているかどうか
③自分たちがやっていること、自分自身を肯定できる

 組織感情を意図的にマネジメントすることが必要。そのためには、自分たちの中で広まっている感情が何かを客観視するとともに、理想とする組織感情の分布と比較して、何が足りないのか、見つけだすことが必要。

 「ルールではなく、自主的に従うべきマナーを共有することで、お互いの行動の不確実性を減らしていくことができる」

 「一人ひとりの変化に気づくこと、何かあった時にただその人の行動を非難するだけでなく、その人の感情を知ろうとすることが、人と人のつながりを生む」

 組織にも感情があるという発想は新鮮でした。しかし、その組織の感情をつくっているのは、構成員一人ひとりの感情です。
 いつでも笑顔でいられるよう、一人ひとりが努力することで、それが伝播して、組織全体が明るくなるのでは。

『夢をかなえるサッカーノート』(中村俊輔)

2009-11-14 13:27:07 | 読書日記
 「変わっていないもの。それは絶対に自分を過大評価しないこと。」
 「もうひとつは向上意欲」

 「変わったもの」
 「さまざまな面で感情をコントロール出来るようになった」
 
 「ノートは結果に直結していないと思う」
 
 「人間は年を取れば取るほど自分に甘くなるから、これからの僕はそこに気をつけなければいけない」
 
 試合や練習の結果だけにとどまらず、精神的なものまで、いろいろなことをノートに記している。

 それを事あるごとに読み返して、自分を鼓舞することで、サッカーを極めようとする真摯な態度に感銘しました。

 華やかなプレーをする日本のファンタジスタが、そのプレーをするために、泥臭いまでに思い悩み、それをノートに記すことで、自己を磨いている。そのことが分かっただけでも、この本を手にした価値があります。

 

『沈まぬ太陽』(山崎豊子)

2009-11-14 13:17:14 | 読書日記
 組織・会社の繁栄と個人の尊厳を保つことをいかに両立させるか。
 時として、会社は、組織の論理を前面にだし、社員に過酷な仕打ちをすることがある。そんな時、個人としていかに防衛し、対処すべきか。

 この作品の主人公の心情に今一同調できないのは、この主人公の行動の動機が労働条件の改善を目的とした労働組合がベースになっているからで、利用者の安全のために会社に立ち向かうという構成であれば、もっとのめり込めた気がします。

 とは言え、組織の論理の前では、個人はここまで無力なのか。”こわれてしまう”人間が増えているのも頷ける話です。

 御巣鷹山の事故処理の場面は、当時の悲惨さを十分に伝えてくれていて、あまりの重苦しさに、ページをめくるスピードも落ちてしまいました。

 この場面が映画でどのように描かれているか気になります。

 一人の人間として、最後まで自分の主義主張を変えずに生きていくことも一つの生き方だと思います。
 自分の人生ですから、自分で生き方を選ぶべきです。
 そして、納得して行った行動であれば、後悔も少ないのでは。