オドー主義者という、共産主義もしくはアナーキスト(あるいは、原子共産主義者)の仲間たちが、ウラスという惑星からはなれて、170年以上前にアナレス(ウラスと連星になっている惑星、あるいは、衛星?)に移り住み、厳しい環境の中理想郷を作り上げたが、理論物理学者シェヴェックは、日常生活や婚姻などではなく、研究上の齟齬(権力関係か?にあきたらず)、母星のウラスに戻り、時間物理学の完成を目指す。この理論により、時間を超越した通信システムのアンシブルの理論を構築するものだった。本書は、いわば、アンシブルを前提とする全世界連盟の前史にあたる物語となる。
シェヴェックはウラスに移動するものの、ウラスにも適応できず、全世界連盟のテラ(おそらく地球のこと)の大使館の支援をえて、アナレスに帰還するところで物語をおえる。
本書が記された時代を反映していて、共産主義社会の問題点を暴いていると同時に、資本主義社会の限界も示していて興味深い。たとえば、人の名前は家族や個人がつけるものではない、婚姻や子育て、食事などの生活のあり方、職業、職場について、全体的な調整機関、シンジケートがおこなう。あるいは、ウラスの世界での貧富の差や国家間の関係などである。