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『新ネットワーク思考:世界のしくみを読み解く』

バラバシ、アルバート=ラズロ、2002、『新ネットワーク思考:世界のしくみを読み解く』、NHK出版

本書の原題は「Linked: The New Science of Networks」で、邦題は直訳に近く「結ぼれ:世界のしくみを読み解く」とでもした方が、よかったかもしれないと思う。
本書については、インターネットや複雑性、六次の隔たりなどについての関心から、書評も書かれているので、繰り返しは避けておこう。ここで注目するのは、911事件を起こしたとされるアルカイダの実行犯たちのネットワークに関する言及である。著者はハイジャック犯19人と当局が関わったとするその他の15人に関するマップをつくったというヴァルディス・クレブスの分析を紹介している。
この中で、主犯とされたモハメッド・アダは実行犯と直接のリンクを持っていなかったが、実行犯の中では多数のリンクを持つノードであった。つまり、39人のネットワークのなかで形成される23のノード(複数のリンクを持つ)のうち、16のノードとリンクしていて最多である。第二位のマルワン・アルシェヒは14のノードとリンクしていて、アダのそれに継いでいる。39人からなるネットワークでノード数が23ということは、のこる13がいずれかのノードにひとつのリンクで結びついていることになる。これらが、スーサイド・アタックの任務を担った末端兵士なのである。
軍事組織は、命令がトップから末端に至る階層上のツリー構造を持っていることが一般である。しかし、アルカイダは違っていた。もっとも、アルカイダの発想というよりも、非正規軍の組織とはそういったものと言えよう。一般に、正規軍組織は、さらには近代社会の従来型の組織は、ツリー状の階層構造を持ったものである(軍事組織の類型については2月26日の書評『軍事組織と社会』)。
2002年のNHKの番組「変革の世紀」で取り上げられていたが、ツリー構造の組織からネットワーク状の組織への変革が米軍の21世紀モデルとしてあげられていた。これは、情報通信機器を持ち、分析判断能力を持っ戦闘現場のコンバット・ユニットが状況を判断し、階級上位の指揮に基づかず戦闘を継続するというモデルである。アルカイダ組織の要諦と類似しているのは、何とも皮肉なことではある(というか、これは、911事件と米軍改革が表裏一体という田中宇のレポートを見た方がよかろう)。
話を戻す。著者は実行犯の中心であったアダをネットワークから取り除いたとしても「細胞は機能する」という。中心的なハブ(ノード)であったアダが取り除かれたとしても、39人のネットワークは結ばれたままになるので、攻撃は遂行可能であるだろうという。
ネットワークという概念、さらには、ノードやハブといった概念を使うことによって、そうした言葉が生まれるより前から存在した組織のあり方あるいは人間関係のあり方を改めて世界中にあふれる共通の概念として説明できること、これが、本書が明らかにしたことである。本書のタイトルは、ややもすると本書を手に取る読者を制限したのではないか。実は、私もそのひとり。取っ付きは、これは、コンピュータ・ネットワークの理解ための本だと思って書架においていただけだった。しかし、今は、とても刺激的な本であることが分かった。
冒頭のタイトルだったら、本書が出版されたすぐに読んだだろうな。

新ネットワーク思考:世界のしくみを読み解く

NHK出版

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2006-03-30 17:10:27 | 読書 | コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )


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