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『軍事組織と社会』

スタニスラウ・アンジェイエフスキー、2004、『軍事組織と社会』、新曜社

アンジェイエフスキーは、ポーランドに生まれ、南アフリカのローズ大学で社会学の教鞭をとり本書をあらわしたが、その生涯は不明であるという。
私は本書の全貌を紹介する能力を持たないが、興味を持った点を指摘しておくことにする。まずは、本書が軍事に関する歴史的地理的に広範な社会の比較研究である点である。ギリシャ・ローマのヨーロッパ戦史を引くにとどまらず、ヨーロッパ以外の国々の戦史やさまざまな地域の民族例にいたるまで広範に資料を渉猟し、軍事組織の比較研究を試みたのである。そして、その上で類型化を試みる。
彼の注目したのは、軍事参与率(高いものをM、低いものをm)、社会への服従性(高いものをS、低いものをs)、社会の凝集性(高いものをC、低いものをc)である。その上で、6個の軍事組織の類型を得る。「一般徴兵型」(MSC)、「職業戦士型」(mSC)、「スパルタ型」(msC)、「騎士型」(msc)、「マサイ型」(MsC)、「タレンシ型」(Msc)である。もちろん、これらは純粋型であるので、特定社会では歴史的な変容や中間系が存在することになる。
本書が書かれたのは1950年、出版は1952年であったという。冷戦体制を背景にした著作ということになるが、軍事組織の類型を背景に社会を分類し、その政治・軍事の手法について分析を試みるという手法は、現在も決して古びてはいないとおもわれる。彼の研究の後に起きた産軍複合体の誕生、高度の技術的背景を持つ軍事、また、軍事のアウトソーシング(新たな傭兵制)などの要素を加えて、軍事組織に関する分析を精緻化するの必要があるではないだろうか。
本書の冒頭、著者は言う。「ひとがこの問題(軍事の問題=評者による補足)を等閑に付してきたのは、社会学者の心に潜在している理想主義の結果である。軍事組織は、主として裸の権力、言い換えれば暴力執行の権限の配分を通じて社会構造に影響を与える。今日学者の多くは平和主義者であり、むき出しの暴力は永遠に追放されたと考えがちである。・・・(中略)・・・さらに、疑いもなく最近まで人々を支配してきた進歩の観念には、人間性は次第に平和的になりつつあるという確信が含まれていた。したがって、幸いにして消滅しつつある野蛮な過去の遺物である組織的暴力などは、もはや問題にするに足らないと考えられてきたのであった。・・・(中略)・・・社会科学は人間の悪意を排除することはできないが、・・・(中略)・・・戦争という社会生活のおそらくは最も悲劇的な一側面を、客観的に、不愉快な事実であってもそれから目をそらすことなく、また何ら為にすることなく研究することによって、この怪物を押さえ込む手助けをすること」が社会学研究の目的などだという。


軍事組織と社会

新曜社

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2006-02-26 22:25:10 | 読書 | コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )


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