『おそめ(新潮文庫)』

石井妙子、2009、『おそめ(新潮文庫)』、新潮社
さきごろ読んだ著者の『日本の血脈』の作品紹介から本書を知って読んだ。比べてはなんだが、本書の方が大変面白かった。著者の筆力や取材力もさりながら、登場人物自身の持つ魅力が輝いていたということだろう。明治女の母「よしゑ」、大正女の娘「秀」、秀が惚れぬいた男「俊藤」、そして、本書に登場する女たち。「秀」の妹の「掬子」と娘の「高子」、銀座「エスポワール」のマダムの「川辺るみ子」ほかの銀座のマダムたち。かれらの生き方が交錯しつつ、戦前、戦中、戦後(戦争直後からバブル頃まで)の世相とかれらの生活感を背景として、「おそめ」こと「秀」の生涯が綴られる。
自分自身と照らしてみると時代がずれているので、本書によって、様々と新しく知ることが多かった。とくには、戦後の京都と東京のバーやクラブ、お茶屋における人と人との結びつきといったところか。もちろん、酒と女をめぐるものではあるが、バー「おそめ」をめぐる「俊藤」と「おそめ」の成功と崩壊の過程は、人と人とをつなぐ場としての場の役割が期待され、その狂言回しとしてのマダムの役割が時代とともに変化してきたことによっている。バー「おそめ」の最末期には東映「仁侠映画」の大プロデューサーとして君臨することになる「俊藤」が颯爽と登場してそれまでの「ヒモ」の姿をかなぐり捨てる。しかし、かれもまたバー「おそめ」で知り得た人脈と自身の若かりし頃の極道な生活経験を結びつけたのだ。「俊藤」の本妻との娘「純子」が銀幕のスター(緋牡丹博徒のお竜)となるというオチもあって、息もつかせず睡眠時間を削らされたのであった。
さきごろ読んだ著者の『日本の血脈』の作品紹介から本書を知って読んだ。比べてはなんだが、本書の方が大変面白かった。著者の筆力や取材力もさりながら、登場人物自身の持つ魅力が輝いていたということだろう。明治女の母「よしゑ」、大正女の娘「秀」、秀が惚れぬいた男「俊藤」、そして、本書に登場する女たち。「秀」の妹の「掬子」と娘の「高子」、銀座「エスポワール」のマダムの「川辺るみ子」ほかの銀座のマダムたち。かれらの生き方が交錯しつつ、戦前、戦中、戦後(戦争直後からバブル頃まで)の世相とかれらの生活感を背景として、「おそめ」こと「秀」の生涯が綴られる。
自分自身と照らしてみると時代がずれているので、本書によって、様々と新しく知ることが多かった。とくには、戦後の京都と東京のバーやクラブ、お茶屋における人と人との結びつきといったところか。もちろん、酒と女をめぐるものではあるが、バー「おそめ」をめぐる「俊藤」と「おそめ」の成功と崩壊の過程は、人と人とをつなぐ場としての場の役割が期待され、その狂言回しとしてのマダムの役割が時代とともに変化してきたことによっている。バー「おそめ」の最末期には東映「仁侠映画」の大プロデューサーとして君臨することになる「俊藤」が颯爽と登場してそれまでの「ヒモ」の姿をかなぐり捨てる。しかし、かれもまたバー「おそめ」で知り得た人脈と自身の若かりし頃の極道な生活経験を結びつけたのだ。「俊藤」の本妻との娘「純子」が銀幕のスター(緋牡丹博徒のお竜)となるというオチもあって、息もつかせず睡眠時間を削らされたのであった。
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