
本日NHKの日曜美術館で竹内栖鳳を放映していた。私は竹内栖鳳の名は聞いたことがある程度で、どのような作品を描いた画家かなど基本的知識がまったく無かった。今回の放映で初めて作品をいくつか知った。その程度の素人である。
さて竹内栖鳳は昨年没後70年ということで、山種美術館で回顧展が行われたらしい。私は考慮の外で、昨年秋に開催されていたということすら記憶になかった。
日曜美術館を見ていて「蹴合」が映し出された。どこかで見たことがあると思い、乏しい記憶をたどってみたら、大倉集古館の収蔵品展「画の東西」で展示されていたのを思い出した。
「画の東西」展ではこの絵、他の収蔵品に較べて色彩も鮮やかで画面が新しいので、明治期以降の画家だろうと検討をつけて名前を見たら竹内栖鳳とあった。画家の名に関しては聞いたことがあるなぁという程度の思いだった。絵については丁寧な写生と色の鮮やかさ、躍動感に目を瞠ったが、二つの点で私には不満であった。
それはまず、二羽の鳥の関係が実に平面的で、二羽が闘っている関係とは思えなかったことがある。同じ平面で向き合って闘っているには、遠近感がなさ過ぎる。左の鳥の脚の先には絵では対する鳥が描かれているものの、その相手の鳥は少し奥に位置しているのではないだろうか。だから脚は宙を蹴っている感じだ。眼もお互いににらみ合ってはいない。視線がずれている。
テレビの放映によると、鳥と同じ高さの目線で観察を入念にしたという。一羽一羽の動きにはそれが十分に伝わるのだが、二羽の関係が私にはとても気になる。
もうひとつ気になったことがある。二羽とも脚の位置が見れば見るほどちぐはぐに見える。それぞれ左右がはっきりしない。左の鳥の脚など見入れば見入るほど左右が逆に思えてくることがある。目の錯覚なのかと思ったが、一羽の鳥自体にも遠近感が少ない。不思議な感じがする。
そんな感じを受けて、この「画の東西」の感想を記したブログにはこの作品を取り上げなかった。
放映では、日本画の革新を求めて、西洋画の写実、遠近感、奥行きの表現にこだわったとの解説であった。確かに他の作品をテレビの画面で見るかぎり、その評価は間違っていないと思った。しかしこの絵だけについてはどうも納得がいかない。
この作品は65歳ころの作品で充実していた頃に描かれたようだ。私の鑑賞眼がダメなのかと、ふと落ち込んでしまった。が、是非他の方の感想も聞いてみたいものだ。
同時に放映されたこの竹内栖鳳の革新性については、それなりに興味がわいた。次の機会がいつあるかわからないが、機会があれば是非ともまとめて作品を鑑賞してみたいものだ。
あ、あと、斑猫だったかな、猫の絵がありましたっけね。
あれは結構好きでしたが…。
猫族の描写がいいですから、葦原の山姥様にはピッタリかも。