


先ほど中島清之展の中で「「和春」(1947) この作品は水墨画である長谷川等伯の「竹林猿猴図屏風」の右双、牧谿の猿猴図を念頭に置いていると思われる。色彩特に中央下の緑がいい。金網や遊び具の金属質の描写と、羽毛に覆われた猿の描写の対比も気に入っている。しかし猿のボリュームがあまりに痩せすぎなのは少々気になっている」と記した。
このブログでは確か等伯の「竹林猿猴図」については取り上げていなかったので、牧谿の観音猿猴図とともに掲載してみることにした。
長谷川等伯は牧谿の作品は、寒さに震える母子猿であり自然の中にある厳しさと動物のしたたかさを表現しているとすれば、等伯は母子猿と父猿を配し家族の親愛を表現していると云われる。私もそのとおりだと思えるが、中島清之の作品も等伯の流れに位置づけられると思う。これをどう評価するかは鑑賞者次第である。
私は家族の親愛の情云々の評ではなく、動と静、金属の硬質と毛並みの表現の対比の妙を楽しめればいいと思っている。
等伯の猿猴図は淡い金の箔を背景とした水墨画だと思われるが、実に温かみのある柔らかい画面である。中島清之の猿猴図も彩色はあるものの水墨画に近い表現に見える。猿も金網も墨が主体である。オスの胸の微かな赤みが猿に生気を与えているが、基本的にはそれ以外の緑や青の配色は3頭の猿の関係では重きを置いていない。