9月議会最終日以来の更新になってしまい、ずいぶんあいてしまいすみません。
議会最終日の補正予算の議論の中で、国民健康保険(国保)の運営の件でやりとりがあったので、その事を紹介したいと思います。
まず取り上げたのは、「せめて子どもには、正規の保険証を」という点です。
国保税の負担が重くなる中で、「なかなか払いきれない」という方が増えています。
実際、和束の国保税は高いです。町長も担当課も高いと認めています。
年間の所得が250万くらいしかなくても、夫婦と子ども2人となれば、資産割を抜きに考えると、年間43万3000円もの負担になり、所得に対する割合は17.3%にもなります。今年から年10回払いになったので、1回43300円を、国保税だけで負担しなければなりません。
ある知り合いの方の場合、年間所得が70万くらいしかないのに、税額が20万を越えていました。所得の3割近くが国保税だけで消えるのです。
こんな感じですから、滞納が増えるのも無理はないし、払いきれない方が当然増えます。
国は、滞納世帯に対して、正規の保険証を渡さず、資格証明書の発行を指導しています。資格証明書は、「国保の資格」を証明するだけのもので、窓口負担をいったん全額払わなければなりません。あとで償還されるとはいえ、税さえ払いきれない人が窓口負担を払えるわけもなく、「税を滞納しているなら、医療を受けるな」に等しい状態になります。実際、全国では、医療を受けられずに、手遅れになるケースが続出し、社会問題になっています。
和束では、幸いにも資格証明書は発行していません。私も繰り返し「発行はするな」と要求してきました。
ただ、資格証明書は発行していませんが、「短期証明書」は発行されています。
「短期」はその名の通り、短期で効力がなくなる保険証で、和束の場合、6か月が期限です。短期にする事で、納税相談や催促する機会を増やし、少しでも徴収を強化するのが目的とされ、短期の場合は、窓口負担は正規と変わりません。
しかし短期の場合でも、安心医療を脅かしているのは同じです。それに、短期証明書には「短」という記号があり、正規のものとは区別されています。「うちは国保税を滞納している世帯です」と公表しているのと同じで、これは明らかに個人情報保護にも反し、人権侵害そのものだと思うのです。
資格証明書も短期証明書も、初めは、「悪質滞納者をなくす」が大義名分とされて導入されましたが、今では悪質かどうかに関係なく、ほとんど一律になっています。
払いきれないほどの高い負担を押し付けておきながら、払いきれないと、「公平公正」を盾にペナルティを課す、それが今の実態になっています。
前置きが長くなってしまいましたが、和束でも短期証明書が発行されている世帯が67世帯もあり、増えてきています。その中でも、小中学生が含まれる世帯が6世帯ある事が担当課の調べでわかりました。
私は、子どもには滞納の責任はないし、せめて子どもだけでも正規の保険証を発行するように求めました。和束では、今年度から、世帯に1枚でなく、被保険者1人1人に保険証を発行する方式に変更していて、子どもにも保険証が出されます。子どもたちは、修学旅行などの際に、保険証を携帯していると思いますが、滞納がある事を理由に、正規とは違う保険証を持たされる子どもたちの気持ちはどうでしょうか。
政府はこの間、資格証明書発行世帯でも、子どもには短期証明書を発行する法改正を行っています。子どもの扱いを別にする事はできるはずです。
町は消極的な姿勢でしたが、子どもにまで滞納の責任をかぶせるようなやり方は一刻も早く改めてほしいと思います。
この質問に関連して、国保において、適切な減免を行うよう求めました。
具体的には、この間厚生労働省が示した、一部負担金(窓口負担)の減免基準に基づく、減免の実施を最低限行うよう求めました。
国が示した基準は、①入院患者がいる②収入が生活保護基準以下③預貯金が生活保護基準の3カ月以下、という3条件をすべてクリアしているというもので、この対象になるケースは、かなり深刻なケースで、限られたケースと言えます。それでも、国がこういう基準を示したのは初めての事で、それだけ国保の実態が厳しい事を表しています。国は、この基準を「最低限」とし、これ以上の基準での減免も認めており、減免を実施した場合、半額を国が持つとしています。
私は、まず最低でも、国が示した基準に基づく減免は実施するよう求めたのですが、町の答えはそれでも「NO」でした。
町長が言うのは、国が半分出すと言っても、半分は町が負担しなければならない、国保財政が厳しい中では、半額でも厳しいし、とても出来ないとの事です。
私が「減免は国保法でも認められており、やらないのは行政の怠慢だ」と言うと、町長は「減免をやるかどうかは各自治体が選べるようになっている」と答え、あくまでも減免を実施する意思がない事を強調しました。
国保法では、生活困難や低所得など「特別な理由」の場合、法44条で一部負担金、法77条で国保税の減免や徴収猶予ができると定めています。減免は被保険者の命と健康、生活を守るための制度であって、いざという時に使えないでは、何のための保険かとなります。高い保険税を払わせる一方で、法で認められた減免さえも適用しないのは不当でしかありません。減免のための財源を確保する事は当たり前の事で、それさえ満足にせずに、「選択の自由」をふりかざす町長の姿勢には唖然とします。
こういうやり取りをする際に、町長が必ず持ち出すのが「小さな自治体が国保を運営するのは無理。府でなど、広域でやるべきで、そうすれば安定する」という「論理」です。
私は聞きました。
小さいから無理だ、大きければ安定するというが、その根拠はどこにあるか。
大きければ安定するというが、京都府の半分以上の人口を占める京都市の国保は安定しているのか?負担は少なくなっているのか?
町長は具体的な根拠を示せず、「大きければ安定する」とは言えませんでした。
答弁を受けて私は「自治体の規模は関係ない事は明白になった。今後は、それを理由にした答弁はしないでほしい」と「釘」をさしました。
それでも町長は「一般的に、広域や大規模の方が安定するのは常識だ」と言い張り、「岡本議員は小さい方が良いというが、区単位で運営してもうまくいかない」等と、「架空」の話を持ち出して、とにかく大きい方が良いという理屈を振り回す始末でした。
町長が「根拠」を示せないのは当たり前です。
国保財政が厳しく、困難になっている原因は、自治体の規模の大小にあるのではなく、国の財政支出の縮小にこそ根本的な原因があるからです。
国保の加入者は、農家や自営業者、年金生活者など、もともと経済的に不安定な方や低所得者が多く、そこに、この間の不安定雇用や失業者の増大が重なり、ますます国保財政を支える基盤が弱くなっています。国保はもともと、国が強く関与しないと運営できないのに、国がどんどん負担をカットしてきた中で、財政が大変になったわけです。
和束でも私が和束に来た頃の国の支出割合は40%以上ありました。
当時は、今とは逆に「カネ余り」状態で、2~3億ほどの基金があり、その時は、「小さいから大変」なんて話はこれっぽっちもありませんでした。
ところが、どんどん国が支出を減らし、21年度の決算では国の負担割合は20%台前半にまで落ち込んでいます。これと並行して、国保財政が厳しくなり、被保険者の負担が増えてきたわけです。
町長は「広域化すれば、負担も平均化して、国保税が高い和束は負担が軽くなる」とも言いましたが、これも何の根拠もありません。
いま政府は、国保を都道府県単位に統合する方向を強めていますが、その中で言われているのは、自治体の一般会計からの繰り入れをなくすという点です。自治体は、国の支出が減った分、繰り入れを行う事で、負担増を抑制してきたのに、それがなくなったら、一気に値上げになる危険性があります。国は都道府県単位での運営にする事で、国の財政負担をさらに減らそうとも考えています。
そうなれば、広域化して負担が減るどころか、ますます負担が増える可能性の方が大きいわけです。
このように、国保財政が厳しい一番の原因は、国が財政をカットしてきた事にあるわけで、ここを改めない限り、運営規模がどうであれ、ますます大変になるというのが、実際のところなんですね。
結論を言うと、「広域化すれば、国保は安定する」というのは、まったく根拠がないし、被保険者にとってみれば、ますます大変になるというのが本当だと言えます。
町長には「要求すべきは、広域化ではなく、国の財政負担を増やす事。それをしっかりと声をあげてほしい」と指摘しましたが、町長は「岡本議員が言うように、国が全部負担してくれたらいいことだが」と、私が言ってもいない事をあげてごまかし、国、府にまともに要求する気がない姿勢があらわになりました。
極端な事を言ってごまかすのは、「広域化すれば安定する」という事にまったく根拠がない証拠でもあります。
町長は「このままでは値上げも必至」と、来年度の国保税値上げもにおわせています。これ以上の国保税値上げはとんでもない!この声を大きくして行かないといけない時だと思います。