goo blog サービス終了のお知らせ 

伊東良徳の超乱読読書日記

はてなブログに引っ越しました→https://shomin-law.hatenablog.com/

コテコテ論序説

2007-06-16 17:43:37 | ノンフィクション
 大阪、特にミナミ(なんば)の文化の歴史の本。
 タイトルや前書きからは大阪の現代文化を中心に議論するものかと思いましたが、中身は近代史=明治・大正と戦後復興期の話が中心。それも南海電鉄と吉本興業の社史かと思う話が中心。大阪の近代史の勉強と思って読む分にはいいですが、文化論として読むには焦点や論証の軸が絞れず散漫な印象を持ちました。


上田賢一 新潮新書 2007年5月20日発行
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

大阪のおばちゃん力5+1

2007-06-16 07:40:49 | 実用書・ビジネス書
 大阪のおばちゃんの特徴を、きちんと意思表示できる「きっぱり力」、相手の心をつかむ「人心わしづかみ力」、固定観念に縛られない「超・常識力」、買い物などで楽しむ「駆け引き力」、マイペースを貫く「どこでもじぶん力」に加えて「面白力」と捉え、肯定的に論じた本。
 みんなが大阪のおばちゃんのようになれば昔ながらの温かい人間関係の明るく楽しい社会になるとして、「大阪のおばちゃんになるための3ステップ改造講座」(108頁~)まで論じています。「おじさんを」改造するのではなく「おばちゃんに」改造するんですよ!
 転んでもそれをギャグのネタにできると喜ぶとか(53頁)、ちょっと言い過ぎの感じもするけど、いつも飴ちゃんを持って人にあげるとか、道を聞かれたら最後まで案内するとか、サービスを受けたらありがとうというとか・・・やっぱりいいなあと思います。私も最近風邪が長引いたこともあって、わりと日常的に飴ちゃん持って歩いてますけど。
 第Ⅲ章のビジネス応用編は、大阪のおばちゃん力がビジネスにも役立つというのをちょっとこじつけ気味に感じました。
 最後の「大阪のおばちゃん力検定」、私は25問中14問で「中級レベル」でした。あぁ・・・


前垣和義 すばる舎 2007年5月18日発行
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

美男の国へ

2007-06-15 08:15:10 | エッセイ
 ホーチミン市在住ベトナム人、ソウル在住韓国人(多数)、歌舞伎町在住中国人の愛人を渡り歩く生活を綴ったエッセイ。「新潮45」に3年近く連載したものの単行本化だそうです。
 う~ん、こういうことをあっけらかんと書いて商売できるセンスにただビックリ。
 ベトナムでは愛人男の妻も含めた親族郎党にたかられ、在日中国人青年には店からの連れ出し料も入れて1晩に10万円貢ぎ、ソウルにはアパートも借りて韓国人ホテルマンと同棲し、それを書いて金に換えてはまた貢いでいくという金の循環が美しいというか何というか。日本人の男は「頼むから書かないでください」「書いたら訴える」というから書いてないだけだそうです(197頁)。
 う~んう~ん・・・ただうなるだけのイトウでした。


岩井志麻子 新潮社 2007年5月20日発行
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

視聴率の正しい使い方

2007-06-14 08:11:14 | ノンフィクション
 日本ではビデオ・リサーチ1社が独占して調査提供しているTVの視聴率についての解説。
 冒頭で視聴率に対する神話の間違いを指摘していますが、少なくともサンプルが少なすぎることと「数」はわかっても「質」はわからないということは正しい批判のはず。それをサンプルを増やすとコストがかかりすぎるとか、本来「質」がわかる調査ではないと言って批判の方が間違っているというのは(34~39頁)、ビデオ・リサーチの商売としてはそうかもしれないけど理屈として反論になっていません。ずいぶんと偏った書き方をと思ったら、著者は元ビデオ・リサーチ社員。そのあたりで読む意欲半減・・・
 同じく冒頭でサンプル数から見て視聴率10%は95%信頼値で±2.4%の誤差付きの数字と説明していて(22~23頁)、それはなるほどと思うのですが、自分が視聴率を使って議論するときは平気でその誤差の範囲内のことを差があるかのように書いていたり(例えば111頁で大阪国際女子マラソン14%が別府大分毎日マラソン12.2%を上回ったと言ってみたりとか)しているのはちょっとねえ。
 今の調査方法が世帯視聴率なのでテレビが複数ある世帯で別々の番組を見ていると両方の番組でそれぞれ1世帯見ているとカウントされる(だから絶対視聴率を合計して総世帯視聴率を超えることもあり得る:視聴率って複数回答の統計と同じだったんですね)というのは(56~61頁)初めて知りました。


藤平芳紀 朝日新書 2007年4月30日発行
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

受験勉強は役に立つ

2007-06-14 07:34:25 | 実用書・ビジネス書
 受験勉強は、自己の学力を客観的に評価し、志望校の試験システムと傾向に応じて対応策を考え、必要なレベルの能力をいかにつけていくかという工夫が要求され、そのような思考と訓練こそ社会で役に立つというのが著者の主張の基本線。受験勉強がなければそのような能力が身に付かないし、逆に内申書重視の推薦入学は自分で工夫することなく教師の言うことだけを聞く使えない秀才を作るとも。
 受験秀才への批判はまとはずれで、むしろ数学的思考なしでは解けない問題や多くの読書をしなければ解けない問題を入試で出せば数学的思考ができ読書量の多い学生ができるのにそれをしない大学側にこそ問題がある、現に英語だけは社会の変化にあわせて入試にリスニングを入れたから学生の英語力はアップしたではないかという指摘は考えさせられます。
 弁護士の業界も、経済界と大学の圧力の下、「厳しい」司法試験一発選考からロー・スクール(法科大学院)+ゆるい試験に移していくことになりましたが、同じような批判が当てはまりますでしょうか・・・


和田秀樹 朝日新書 2007年4月30日発行
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「労基署調査」これが実際だ!対応策だ!

2007-06-13 22:01:52 | 実用書・ビジネス書
 労働基準監督署の制度上のしくみと労働基準法、労働安全衛生法の解説書。
 タイトルからは労基署の立会調査の実情が書かれていると期待されますが、書かれているのは制度のしくみと統計、抽象的なことばかりで実務が書かれているとは読めません。「違反例と違法かどうかの判断ポイント」と題しているところも、単純に労働基準法と労働安全衛生法について説明しているだけで、実務的に役に立つ感じはしません。一番実務的と思われる送検事例も、事例の出所はほとんどが新聞報道。もちろん、特に中小企業の経営者に労働法を知ってもらうことはとても大切だと思いますが、それなら別のタイトルを付けるべきでしょう。


セルバ出版編集部 セルバ出版 2007年3月20日発行
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

テロリストのパラソル

2007-06-13 08:16:09 | 小説
 22年前爆弾事件で指名手配され都会の片隅でひっそりとバーテンとして生きる島村圭介こと菊池俊彦が、爆弾テロに巻き込まれ、その死者にはかつての恋人や友人がいたことから真相解明に奔走するというストーリーのハードボイルドミステリー。
 ミステリーとしては、最後の犯人の人物設定や動機に情けなさが漂いスッキリしませんが、主人公菊池、元警察官の経済ヤクザ浅井、菊池の元恋人の娘塔子の人物設定で読ませています。
 全共闘世代の作者が全共闘世代としての生き様を問うた作品と私には読めました。巻き込まれた過去の事件での指名手配のため強いられたとはいえ、帝大解体を叫んだ全共闘世代が観念的にはそうあれかしと思う、東大を中退して高卒の資格で肉体系の労働を続ける菊池に対して、その後も「闘争」を続けながら敵を見失い何でもありの心境に至るある意味で全共闘世代の悪い見本の1パターンとなった桑野くんに「これが宿命なんだよ、きっと。これがあの闘争を闘ったぼくらの世代の宿命だったんだ」と語らせ、菊池に「私たちは世代で生きてきたんじゃない。個人で生きてきたんだ。それはお前の方がよく知っているだろう」と語らせるエンディング(369頁)は、含蓄があり、また切ない。いつの間にか元通産官僚に「団塊の世代」などという名称を与えられ、その大半が企業戦士になりきって自分に対する言い訳さえ必要としなくなって久しい今、黙って生き様を示す菊池の「きょう、友だちをひとりなくした」という寂しさは、身に染みました。
 江戸川乱歩賞と直木賞のダブル受賞は妥当でしょう。
 1995年の作品で講談社文庫から出ていたものが最近角川文庫になったのを機会に読みましたが、この5月に作者が亡くなったのは残念。


藤原伊織 角川文庫 2007年5月25日発行
(1995年 講談社文庫1998年)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

水底の仮面 ヴェヌス秘録1

2007-06-11 09:03:14 | 物語・ファンタジー・SF
 裕福な生家を捨てて無頼人として生きるフリアンと生まれながらに顔面の筋肉が動かないデスマスクの女で仮面ギルドの陰謀の手先の高級娼婦として生きるエウリュディケのロマンスと冒険を描いた小説。
 海の都ヴェヌス(ヴェニス)を舞台に、謝肉祭期間中は仮面を付けなければならない(素顔で人前に出ることは犯罪とされている)という設定で物語が進められています。その必需品となる仮面を作る職人組合が、呪術を用いて人々を支配し殺害するという陰謀を企み、その陰謀に用いられた呪いの仮面をフリアンが拾ったところから、フリアンが陰謀に巻き込まれていくといったストーリーです。
 淫蕩などこか邪教っぽい呪術の世界が、キリスト教圏では独特の意味があって読者を惹きつけるのでしょうけど、そういう文化的背景のない読者には後半の魔術・呪術の世界が嘘っぽくて付いていけない感じ。
 原文のせいか翻訳のせいかわかりませんが、今時の文章にしてはまわりくどくて不親切ですし。


原題:Faces Under Water ;The secret books of Venus 1
タニス・リー 訳:柿沼瑛子
産業編集センター 2007年3月31日発行
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

行政訴訟の実務

2007-06-10 17:52:45 | 人文・社会科学系
 行政訴訟について、被告となる行政庁側で訴訟を担当する役人のための解説書。
 前書きには「法律実務家だけでなく、行政訴訟に関心のある方々」も対象にしているように書かれていますが、はっきり言って法律の逐条解説書の類を読むのが苦でない業界関係者以外が読み通すのはとても無理。中身も、匿名の「研究会」で構成員も執筆者も全く書かれていませんが、内容が明らかに行政側寄りで、法務省の訟務局(行政訴訟で国の代理をする部局)とその他の役人で書いていることはほぼ確実。
 ふつうこの種の実務解説書では、学説が別れているところではそれを並べて書いて、単に裁判例ではこの見解が取られているという事実を指摘するものですが、この本では、行政側に不利な見解を批判して誤っていると言い切ったり(原告適格について77頁、当事者訴訟による違法確認訴訟について114頁など)、かなり異例。裁判例も最高裁判決でも意に沿わないものは紹介されていなかったり(判断過程統制方式は取り得ないと主張する202頁で、「調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤欠落がある」ときには違法とした伊方原発訴訟最高裁判決に触れなかったり、文書提出命令で文書の取調の必要性なしとして却下されたときに申立人が抗告できないことを指摘する246頁で、文書提出命令が出されたときに所持人も取調の必要性がないことを理由に抗告できないとする最高裁判例には触れないなど)、中立性にはかなり疑問あり。
 行政訴訟を担当する役人と、この本が行政側の視点で書かれていることを前提に役所がそういう考えで行政訴訟を見ていることを勉強しようとする弁護士には、役に立つかなという本です。


行政事件訴訟実務研究会 ぎょうせい 2007年3月30日発行
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ピアニシモ・ピアニシモ

2007-06-09 21:29:34 | 小説
 中学校での生徒の失踪・殺人事件を背景に、子どもの頃から他人には見えない友人ヒカルと過ごしてきた少年トオルの揺れ動く心と、少年の心と少女の体を持つ性同一性障害のシラトへの想いを描いた小説。
 失踪・殺人事件から幽霊の登場、異次元と思われる地下の中学の登場と、オカルトっぽい舞台が用意されていて、ミステリー風に展開しますが、ミステリーとして読むと、最後まで解決も謎解きもなく歯がゆい思いで終わります。最後まで読んでもどこまでが客観的事実でどこからがトオルの空想なのか判然としませんし。
 むしろこの作品のメインテーマは、思春期の揺れ動く心、自分の中に潜む悪意・破壊衝動や募る恋心と相手の気持ちを読み切れぬ(思いやる余裕のない)焦りにあると思います。すべてが結局は自分の頭の中の悪意の問題で、希望を持ち続ければいい、その希望の源は愛ということに収斂していく感じなのは、いろいろ難しく問題と舞台を設定した割りにはちょっとあっけない気がしますけどね。その愛も、性同一性障害でひねってはありますが、キスして抱き合うことでエネルギーをもらえるって位置づけは、予想外に純情。
 でも、中学生時代の揺れる思いや不器用な恋愛感情を割りと上品に描いていて、私たちの世代にはちょっと甘酸っぱくもほほえましいノスタルジーに浸れる作品ですね。


辻仁成 文藝春秋 2007年4月15日発行
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする