ラフカディオ・ハーン/小泉八雲と関わる3人の女性、出生地のギリシャの島で幼少期にともに暮らした母ローザ・アントニア・カシマチ、20代の頃にアメリカのシンシナティ、ニューオーリンズで新聞記者をしていたときに下宿先の料理人をしていて知り合い結婚した黒人アリシア・フォーリー、日本に渡った後結婚した小泉セツの語りの形式で、3人の女性の人生と思い、ハーンの人生と人柄の断片を描いた小説。
ローザはハーンが成長した後に読ませるための記録として、アリシアはインタビューに応じて、セツは死んだ八雲への報告の形でこれまでのできごとを語るのですが、ハーンの父とのできごとやハーンとの暮らしよりも自分の人生の話の方に入り込んでいき、人はやはり自分のことを聞いて欲しい/語りたいものだということをにじませ、作品としても、ハーンを描くことよりもこの時代に生きた女性の方に関心を寄せているように感じます。
女性たちの語りの後に、エリザベス・ヒズランドによる伝記「ラフカディオ・ハーンの生涯と書簡」からの関連部分要約引用があり、その頃のハーンの状況についてはそっちの方がわかりやすかったりします。そういうことも含めて、ハーンの人生を知りたいというニーズではなく、ハーンは狂言回しというか設定として、同じ時代を生きた立場を異にする女性の生き様を描くフィクションとして読むべきなのだろうと思います。
原題:The Sweetest Fruits
モニク・トゥルン 訳:吉田恭子
集英社 2022年4月10日発行(原書は2019年)
ジョン・ガードナー小説賞、ジョン・ドス・パソス賞受賞作
ローザはハーンが成長した後に読ませるための記録として、アリシアはインタビューに応じて、セツは死んだ八雲への報告の形でこれまでのできごとを語るのですが、ハーンの父とのできごとやハーンとの暮らしよりも自分の人生の話の方に入り込んでいき、人はやはり自分のことを聞いて欲しい/語りたいものだということをにじませ、作品としても、ハーンを描くことよりもこの時代に生きた女性の方に関心を寄せているように感じます。
女性たちの語りの後に、エリザベス・ヒズランドによる伝記「ラフカディオ・ハーンの生涯と書簡」からの関連部分要約引用があり、その頃のハーンの状況についてはそっちの方がわかりやすかったりします。そういうことも含めて、ハーンの人生を知りたいというニーズではなく、ハーンは狂言回しというか設定として、同じ時代を生きた立場を異にする女性の生き様を描くフィクションとして読むべきなのだろうと思います。
原題:The Sweetest Fruits
モニク・トゥルン 訳:吉田恭子
集英社 2022年4月10日発行(原書は2019年)
ジョン・ガードナー小説賞、ジョン・ドス・パソス賞受賞作