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伊東良徳の超乱読読書日記

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原発事故 自治体からの証言

2021-06-16 20:26:30 | ノンフィクション
 福島原発事故当時とその後の地元自治体の状況と対応に関して、大熊町の前副町長と浪江町の前副町長へのインタビュー、自治労の調査等に基づいてレポートした本。
 大熊町の前副町長(事故時は農業委員会事務局長)の話で、役場と福島第一原発をつなぐホットラインは地震で断線したのか通じず、災害対策本部が本来設置されることになっていた部屋は確定申告で使われていたので別の部屋に設置、その部屋にしかないオフサイトセンターとのテレビ会議システムはセットできず、ファックスはなぜか17時まで動かず、訓練では東電からファックスを送ったという連絡が来るが本番では連絡もなく、動き出したファックスは大量の文書を吐き出し、地震関係の情報が大量にある中でわずかに混じる原発関係のファックスは紛れて気がつかなかった(59~63ページ)とか、役所には放射能漏洩の情報は全然来ず、かえって避難所では東電の協力会社の作業員がもうヤバいから逃げなくちゃというのを職員が聞いていたが、当然そういう情報は役場に入っていると思っていたので役場には報告しなかった(64~65ページ)、放射線量が上がっているとは誰からもいわれなかったのでマスクもせずに住民の避難誘導をしていたし放射線測定器も持ち出さなかった(69ページ)など、事故が現実に起こると想定していた対策・対応ができず、機能せず、情報がうまく入手できず伝わらないという実体験がとても貴重に思えます。書類上の、机上の計画なり対策がいくらきちんとできているように見えても、本当の事故災害の際にはそのとおりには行かないもの。対策があるから安全ですなんて考えで、対策がうまく行くことを前提に進めてはいけないということですね。
 自治体職員が住民のために献身的に働く様子、住民からの激しいクレームに消耗する様子、一部には出勤しなくなる職員、その後も続々と退職していく人たち、他方で住民からの感謝や労いの言葉に励まされモチベーションを保つ様子などにも、大変だなぁという思い、頭が下がる思い、仕方ないよねぇという思いを持ちました。


今井照、自治総研編 ちくま新書 2021年2月10日発行
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