百人一首のそれぞれの歌を解説し、時代背景や作者の他の歌などを紹介する本。
歌そのものの解説はごく簡単にして、歌人である著者の感想・感覚が語られていて、そちらの方が読みどころかと思います。かの有名な阿倍仲麻呂の「天の原…」の一首を望郷の歌として紹介することに疑問を示し、妻とHして、いや「妻と優しい営みを交わして眠りに就こうとした時」、妻の寝顔を眺めた後、ふと窓の外の月の光に涙して詠んだ(27ページ)という想像力には感嘆しました。
選者の藤原定家が、なぜこの歌を採ったのか、この歌の次にこの歌を配したのかについての著者の言及も度々あり、ライバルにはもっといい歌があるのにそれを採っていないなどの指摘に、考えさせられます。
百人一首には採られなかった歌として紹介されている歌が多数あり、凡河内躬恒の「わが恋はゆくへも知らずはてもなし あふを限りと思うばかりぞ」(71ページ)とか、権中納言匡房の「つねよりもけふの暮るるを惜しむかな いまいくたびの春と知らねば」(159ページ)とか、小説で使ってみたいと思いました。

水原紫苑 講談社現代新書 2021年3月20日発行
講談社PR誌「本」連載
歌そのものの解説はごく簡単にして、歌人である著者の感想・感覚が語られていて、そちらの方が読みどころかと思います。かの有名な阿倍仲麻呂の「天の原…」の一首を望郷の歌として紹介することに疑問を示し、妻とHして、いや「妻と優しい営みを交わして眠りに就こうとした時」、妻の寝顔を眺めた後、ふと窓の外の月の光に涙して詠んだ(27ページ)という想像力には感嘆しました。
選者の藤原定家が、なぜこの歌を採ったのか、この歌の次にこの歌を配したのかについての著者の言及も度々あり、ライバルにはもっといい歌があるのにそれを採っていないなどの指摘に、考えさせられます。
百人一首には採られなかった歌として紹介されている歌が多数あり、凡河内躬恒の「わが恋はゆくへも知らずはてもなし あふを限りと思うばかりぞ」(71ページ)とか、権中納言匡房の「つねよりもけふの暮るるを惜しむかな いまいくたびの春と知らねば」(159ページ)とか、小説で使ってみたいと思いました。

水原紫苑 講談社現代新書 2021年3月20日発行
講談社PR誌「本」連載