パワハラ・いじめについての概念や基礎知識と会社側からの防止・対応策について紹介した本。
弁護士の目から見ると、第1章の基礎知識、第3章の事後対応、第4章の防止策は抽象的な一般論でごく入門編的なものなのに対して、第2章の事例が内容的にも分量的にも圧倒的で、これと巻末付録のコンパクトにまとめた裁判例リストが便利です。
弁護士が書く本にありがちではありますが、その第2章の具体的な事例は、ほぼ全部現実の裁判例の事案のようです。だからこそリアリティがあるのですが、同時に読者にとってそれがよくあると感じられるか、自分が知りたいと思えるケースかという点ではどうかなという気がします。
そして、弁護士の目から見ると、パワハラ・いじめについて裁判になった場合にどうなるかについては実際のところ予測が難しい、どちらにも転びうるいわばグレイゾーンがかなり幅広くあるように思えるのですが、そういう部分についてこの本は基本的に「パワハラに該当しうる」つまり裁判所によって違法と判断され損害賠償責任が認められ得るという方向で書いています。それは、この本のタイトルにあるように、この本がもっぱら使用者側の弁護士が使用者側に安全に(裁判で負けるリスクを取らせないように)アドバイスすることを目的としているからです。こういう部分について、弁護士会での研修や会議での発言を聞いていても、使用者側の弁護士は使用者側が負ける危険があるということを重視し、労働者側の弁護士は労働者側が勝てるとは限らないことを重視しがちです。要するにどちら側も「実はわからない」と言っているのですが、それが使用者側の弁護士の口から出るとき(使用者側にアドバイスするとき)は損害賠償が認められ得るという表現になるのです。こういう本を読んで、自分のケースでも損害賠償が認められるものと判断した労働者が相談に来て、労働者側の弁護士が困ったり、難しいと思うと答えて相談者が怒ったりということがままあり、労働者側の弁護士としてはなんだかなぁと思ったりします。
ところで、この本でパワハラを受ける自分自身もやや問題を抱える社員は、すべて田中さんと山田さんですけど、西村あさひ法律事務所では、田中さんと山田さんが恨まれてるんでしょうか。

石井輝久編著 日経BP社 2011年3月21日発行
弁護士の目から見ると、第1章の基礎知識、第3章の事後対応、第4章の防止策は抽象的な一般論でごく入門編的なものなのに対して、第2章の事例が内容的にも分量的にも圧倒的で、これと巻末付録のコンパクトにまとめた裁判例リストが便利です。
弁護士が書く本にありがちではありますが、その第2章の具体的な事例は、ほぼ全部現実の裁判例の事案のようです。だからこそリアリティがあるのですが、同時に読者にとってそれがよくあると感じられるか、自分が知りたいと思えるケースかという点ではどうかなという気がします。
そして、弁護士の目から見ると、パワハラ・いじめについて裁判になった場合にどうなるかについては実際のところ予測が難しい、どちらにも転びうるいわばグレイゾーンがかなり幅広くあるように思えるのですが、そういう部分についてこの本は基本的に「パワハラに該当しうる」つまり裁判所によって違法と判断され損害賠償責任が認められ得るという方向で書いています。それは、この本のタイトルにあるように、この本がもっぱら使用者側の弁護士が使用者側に安全に(裁判で負けるリスクを取らせないように)アドバイスすることを目的としているからです。こういう部分について、弁護士会での研修や会議での発言を聞いていても、使用者側の弁護士は使用者側が負ける危険があるということを重視し、労働者側の弁護士は労働者側が勝てるとは限らないことを重視しがちです。要するにどちら側も「実はわからない」と言っているのですが、それが使用者側の弁護士の口から出るとき(使用者側にアドバイスするとき)は損害賠償が認められ得るという表現になるのです。こういう本を読んで、自分のケースでも損害賠償が認められるものと判断した労働者が相談に来て、労働者側の弁護士が困ったり、難しいと思うと答えて相談者が怒ったりということがままあり、労働者側の弁護士としてはなんだかなぁと思ったりします。
ところで、この本でパワハラを受ける自分自身もやや問題を抱える社員は、すべて田中さんと山田さんですけど、西村あさひ法律事務所では、田中さんと山田さんが恨まれてるんでしょうか。

石井輝久編著 日経BP社 2011年3月21日発行