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伊東良徳の超乱読読書日記

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モリオ

2011-04-12 22:34:16 | 小説
 映画監督の著者の第一小説集だそうです。
 表題作は2010年公開の著者の監督作品映画「トイレット」に登場する引きこもりの青年モーリーの元になったストーリーで、映画でも母親のミシンの下にこもるのが好きだった少年時代とそのミシンを発掘してスカートを縫いはじめ、スカートをはきスカートをはく自分を肯定することで前向きになっていく姿が描かれています。
 もう1作の「エウとシャチョウ」でもアルバイトをしてはクビになり続ける「使えないやつ」の青年エウが猫のお相手役という仕事を得て前向きになっていく姿が描かれています。
 どちらの作品も引っ込み思案で社会性に乏しい青年が主人公の形なのですが、ちょっと変わった感性の、というか物怖じしない女性が主人公の背中を押しています。「モリオ」で「一緒にスカートを穿いて、デートしよう」と提案する小学生、「エウとシャチョウ」で自分の両手の小指の長さが違うとずっと見比べている初対面のエウに対して「もしかしたら、あなた、睾丸も左より右のほうが大きいのかしら?」と尋ねる耳鼻科医のヨーコさん。この女性のキャラがぼんやり気味の流れをちょっと締めているようでいい感じです。


荻上直子 光文社 2010年8月25日発行
コメント
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