伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

マキリ

2011-04-22 22:36:54 | 小説
 故郷を離れ裏家業に生きる四〇男騎寅が、襲ってきた通り魔を夢中で返り討ちにしたが、その日から自分の肉体が腐敗し続けるように自分には見えることの恐怖と殺人事件の捜査から逃げようと故郷に舞い戻り、鍛冶屋を継いだ父の妻となっていた元カノの竜子と再会し、逢瀬を重ねながら、消息不明の父や裏の氷室に隠されていると言われる即身仏をめぐる事件に巻き込まれていくという小説。
 家族とのしがらみから思いを持ちながら別れた男女の別れとその後の重ねた齢と再会の微妙な愛情と切なさと苦渋と諦念が一番の読みどころとなっています。別れの思い出と再会をめぐる思いの複雑さは、竜子の側で重く渦巻くように描かれ、騎寅の側では、元カノが父の妻となっていたという事情への葛藤はあるものの、そのような展開にしてはあまりにも単純な感じ。男って単純、なのかなぁ。作者が女性で竜子の側の視点で書いているからかも知れませんが。
 騎寅が自分の体が腐敗していくように見えるという設定、即身仏、イザナギ・イザナミの神話といった道具立てがおどろおどろしい雰囲気を作っていますが、そっちは竜子の強さ・図太さのイメージを引き立てる役割としてはわかるけど、という程度に読んでおくところかなと感じました。


安達千夏 講談社 2010年10月18日発行

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