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伊東良徳の超乱読読書日記

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小さな講演会2 向上心について

2009-07-04 23:12:43 | 人文・社会科学系
 哲学者が、哲学とはものごとの本質を探究するもので、人間の本質は向上心にあるということを語る講演会をとりまとめた本。
 子どもを対象とした講演会なので、哲学者とは「難しい(抽象的な)」ことを好みわかりたいという欲望が哲学の原動力であり、子どももまた(自分にとって)難しい困難なことを好んでそれを乗り越えることで成長していくのだから、子どもは哲学に向いていると、アピールしています。
 そして人間を特徴づけている、人間を人間たらしめているのは向上心、大きくなりたいという欲望であること、限界がある中で技術を身につけて向上していくことの大切さを論じています。同時に征服や蛮行もまた向上の名の下に行われることから「上を目指すこと自体がいいことだとは必ずしも言えません。でも、いいことというのはすべて、自分を高めたいという欲望に関わっているのです。」(110ページ)と結んでいます。向上心で悪いことが起こることもある、でも向上心を捨ててはいけないというところですね。
 向上心の対極として怠慢があり、ある程度の怠慢は避けられないししばらくさぼることで向上心が復活するけれども、テレビによって人の怠惰・怠慢がますます助長されていると戒めています。「テレビは、結局のところ怠け心をますます助長してしまい、見ている人に何もいいことをもたらさないどころかどんどん愚かな存在にしてしまうように思えてなりません。」(51ページ)。哲学者にとってテレビは敵というところでしょう。私自身、最近はテレビはほとんど見ていないのでわかりませんし、むしろ今後はインターネットの方がいい、テレビなんて見ないという子どもが増えるような気がしますけどね。


原題:DES PIEDS ET DES MAINS
ベルナール・スティグレール 訳:メランベルジェ眞紀
新評論 2009年5月10日発行 (原書は2006年)
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小さな講演会1 恋愛について

2009-07-04 01:28:34 | 人文・社会科学系
 フランスで子供たちを対象に行われている定期講演会のうち、哲学者が恋愛について語った回をとりまとめた本。
 講演の中心に座っているのは、「愛」の絶対性。「愛している」というのは「いわば完全表現で、それ以上何も付け加えることはできない」(21ページ)、量や程度を示せるのはまだ愛ではない(23~24ページ)、(ゲーム機を持っているとか金髪だとか)愛している理由が言えるのは愛ではない(29~30ページ)、人を愛するとはその人にただ存在していて欲しいということ(32ページ)とか、言っていることはわかるけどずいぶんと観念的。哲学者が愛を語るのですから、当たり前とはいえますが。
 愛を言葉で語ることの難しさと、「恋してる人の態度や行動は、その気持ちを雄弁に物語っている」(62ページ)とかの方が、愛する人の喜びと切なさを実感させます。
 質疑では、愛においては、与えることと求めることははっきり区別することはできない、見返りを求めない愛は難しい(52~53ページ)って、あるべき理想論から離れた議論も展開しています。こっちの方が読む側には興味深いところです。


原題:JE T’AIME, UN PEU, BEAUCOUP, PASSIONNEMENT...
ジャン=リュック・ナンシー 訳:メランベルジェ眞紀
新評論 2009年5月10日発行 (原書は2008年)
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