宇佐山城は滋賀県大津市錦織町にあります。織田信長の命により森可成によって築かれたとされ、山下の大津方向から見える面には石垣が多用され見どころとなっています。今回は東海古城研究会の見学会で、琵琶湖畔の坂本城なども併せて訪れました。今回の参考資料は (1)見学会当日資料 (2)「図解 近畿の城郭 Ⅰ」城郭談話会編2014 (3)「近江の山城ベスト50を歩く」中井均編2006 (4)「米原文化協会『城歩会』宇佐山城見学会資料」長谷川博美2018 などです。
宇佐山城 志賀の陣では壺笠山の浅井・朝倉軍と対峙したとされる
森可成は侵入してきた浅井・朝倉連合と宇佐山城を降り下って戦って討ち死にし、宇佐山城の出丸(端城)も落とされたが本城は落城を免れ、戦いは膠着状態に陥り両軍は和議を結んだと伝わります。その後、明智光秀が比叡山焼き討ちまで在城し、坂本城に移ったことにより宇佐山城は廃されたとされます。
宇佐山城 宇佐八幡宮からは踏跡をたどる山道(見学路a)になる
山下の近江神宮でバスを降り、宇佐八幡宮の参道を登りました。宇佐八幡宮からは踏跡が明確な山道でした。aが見学路になっていますが往時の城道の一つかもかもしれません。城域から南尾根方向に下る城道も在った可能性もあるようです(未確認)。
宇佐山城 虎口Aと石垣が見どころ
Ⅰ郭(本丸)は放送施設が建っていますが城郭遺構の保存のために床下に空間が設けられていました。Ⅱ郭からⅠ郭に入る通路cは二度折れる虎口Aで見どころでした。資料(4)によるとV郭は櫓台とされ、石垣①の上に櫓が建っていた想定がされていました。
宇佐山城 Ⅴ郭の石垣① 東から
石垣①は南東隅の石が失われていました。いわゆる「破城」が行われたのように見えますがどうでしょう。往時は山下から最も目立つ石垣と櫓の建物だったかもしれませんね。
宇佐山城 Ⅳ郭 東辺の石垣② 南から ここも見どころ
最も石垣の残りが良いのがこの石垣②でした。この石垣も山下の大津方向からはシッカリ目立っていたと思われます
。
宇佐山城 Ⅱ郭 南東隅の石垣 一部崩落 南東下から
Ⅱ郭の南東隅にも石垣がのこっていました。一部崩落していますが、転落石が下部にころがっていました。石垣上部の隅は残っていますので「破城」による崩落ではなさそうでした。
宇佐山城 Ⅰ郭 南東下の落石? 北東から
Ⅰ郭の南東斜面の下部には大きな岩が沢山ゴロゴロしていました。Ⅰ郭の南東法面に築かれていた石垣が転落したものかもしれないと想像しました。廃城時に取り壊された可能性がありそうですが、ここも山下の大津方面からはバッチリ見える場所です。
宇佐山城 Ⅱ郭東面 途中の石垣⑤
石垣⑤は部分的にⅡ郭の東側法面に残った石垣ですが、往時はこの法面全体に石垣が築かれていたのではないかと想像しました。この面も山下の大津方面からはよく見えたと思われます。
宇佐山城 Ⅶ郭石垣③ 東下から
Ⅶ郭は堀切などでⅠ郭とはハッキリ分離されているようでしたが、東面には石垣が築かれていました。この面も山下からよく見えた場所だと思われます。
宇佐山城 虎口A Ⅱ郭から二度折れてⅠ郭へ入る 東から 見どころです
虎口Aは幅広で、途中に石段がわずかに残っていました。写真の右奥にⅠ郭に建つ放送設備の建物が見えますが、床下の遺構を保護するため高床になっていて、覗き込めるようになっていました。
宇佐山城 櫓台⑦と貯水槽⑧ 東から
虎口Aの南側には土壇⑦があり、資料(2)によると櫓台の可能性が高そうでした。貯水槽⑧は一見堀のようですが資料(4)によると「タタキ」と呼ばれる漆喰層が検出されて、貯水の設備と考えられるようです。
宇佐山城 Ⅰ郭 南から 放送設備は高床で遺構が保護されている
Ⅰ郭には多くの建物が往時には建っていたと考えられるようですが、現在は写真のような設備建物がありました。建設時に遺構がいくらかは改変されたと思われますが、遺構の保存に注意が払われているのを感じました。
宇佐山城 Ⅰ郭北辺下の堀状地形のⅥ郭 左上にⅠ郭 南東から
Ⅵ郭はⅠ郭法面からの土砂の流れ込みが見られ、堀状地形が少し埋まっている様に見えますが、資料(2)では塹壕とは考えにくいので、懸造りの建物が在った可能性を大胆に述べています。
宇佐山城 Ⅶ郭 北辺の犬走り 東から
Ⅶ郭の北辺には犬走りがありました。この斜面は大津方向の山下からは見えませんので石垣はなさそうでした。
宇佐山城 Ⅶ郭西下の竪堀⑩ 東上から
宇佐山城には何条もの竪堀がありましたが竪堀⑩もその一つです。
宇佐山城は、北側の尾根上に出丸が築かれ、Ⅶ郭の存在や遺構の状況も併せて考えると北側に向けて厳重な守りの体制になっていたようで、志賀の陣で本城の落城が免れた理由ともなっていたように思いました。
見学会の時間の制約がある中での駆け足での見学となりましたが、多数の石垣を堪能することが出来て良かったです。