チベットの女 イシの生涯
2002年/中国
50年間の夫婦愛からチベットの精神性を描いたシェ・フィ
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shinakamさん
男性
総合
80点
ストーリー
80点
キャスト
80点
演出
80点
ビジュアル
90点
音楽
80点
中国の巨匠シェ・フィ監督がチベット人の心情や宗教観に魅せられ美しい情景をふんだんに取り入れ描いた女・イシの生涯。原作者ザシワダとともに脚本化したのはひとりの女が関わった3人の男をとおしてトキを超えて許し合う人間の寛容精神がいっぱいの人間ドラマだ。
3人とは夫のギャツォ、元荘園の若旦那クンサン、そして幼なじみだった僧侶サムチュ。イシ夫婦がチベット仏教の聖地・大昭寺(ジョカン)へお参りしたとき、観光案内していた男に衝撃を覚える。夫は知らぬそぶりだったが、イシには50年前寵愛を受けた荘園の若旦那クンサンではないだろうか?と気になって仕方ない。夫はいまは穏やかな老後を過ごしているが、若い頃はならず者でイシを略奪して夫婦になっている。
50年前のチベットが封建的であったことが再現されるが、あくまで中国が作ったチベット映画で政治色は極力抑えられているが、このあたりは見え隠れしているのが覗える。上映時間が105分と短いのもカットされた部分があったらしい。
イシは借金のカタで見受けされたが美しい歌声の持ち主であったのもクンサンのお気に入りの理由のひとつ。ツァンヤンギャオツ(ダライラマ6世)の恋歌が得意で、ならず者ギャツォも一目惚れ。その詩集をくれたのが初恋の人サムチュだった。
最大の魅力はチベットの透き通った風景とダライラマの住まいボタラ宮殿や大昭寺、元領主の館ギャンツェ博物館や八角街(バルコル)などの名所旧跡。なかでも若きイシが水浴びをするトルコ石の湖・ヤムドク湖や夫を追って旅する途中で映った標高4700Mにあるナムツォ湖の美しさは貴重な映像。こんな豊かな自然に囲まれたチベットだから自然崇拝と輪廻転生を信じる宗教観が生まれたに違いない。
フィ監督は50年後の中国を表現するために北京にいる孫娘の大学生ダワを登場させ現代の恋愛観やインターネット通信を取り入れたりしている。このあたりはワン・チュエンアン監督の「再会の食卓」(09)と比較しても弱い感じがするのは10年間の差が物語っているのかもしれない。
イシを演じたテンジン・ドカーは穏やかな老後を迎えながら波乱万丈な人生を思い出させる戸惑いとワクワク感の複雑な心情を演じていた。
夫の青年時代リンチェン・トゥンドュブが溌剌としていて、いかにもチベットのならず者らしい演技で目を引いた。
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