天空の草原のナンサ
2005年/ドイツ
失いつつある遊牧民生活への郷愁
shinakamさん
男性
総合 75点
ストーリー 75点
キャスト 80点
演出 75点
ビジュアル 85点
音楽 75点
モンゴルのビャンバスレン・ダバー監督・脚本によるドイツ映画。遊牧民バットチュルーン一家の伝統的生活を重んじながら雄大な自然のなかに暮らす深遠な世界を描いている。
素人でありながらカメラを意識していない一家の自然な演技は監督との信頼感の賜物だろう。
原題は「黄色の色の洞窟」で監督が祖母から聴いたモンゴルに伝わる「黄色い色の伝説」がヒントとなっている。病気の娘が犬を洞窟に置いてくると元気になった。犬は人間に生まれ変わる最も近い動物とされ、娘の結婚を邪魔した犬のハナシだ。モンゴルの輪廻転生思想と遊牧民の大切な羊を襲う天敵・狼を近ずけないという教えの比喩なのだろう。ここでは一家の長女ナンサが犬とともに迷子になり独り暮らしのおばあさんからその話を聴く。
都市化が進むモンゴルでは一家の暮らしは決して楽ではない。父は街で働こうかというが母はそれでは一家が食べて行けないという。幼い妹、よちよち歩きの弟の世話をするのはナンサの役目だが実家から学校へ通うことが決まっているらしい。子供たちはこうして離れて行くのだろうか?移動住居・ゲルでくらす遊牧生活は10年続いたTV番組「世界ウルルン滞在記」を思い出させるシークエンスだ。
何気に感動したのは母の逞しい生活力と夫や子供への愛情の深さ。一日中働き詰めだが、大らかな自然に育まれた優しさに満ちている。ナンサに手のひらをかませようとさせ、できないと人間に生まれることはそのぐらい難しいことだと言って生まれたことを感謝しなさいと諭す。おばあさんの「針の上の米」といい人生哲学を子供へ伝えるモンゴル文化は同じモンゴリアンである日本の心にも通じるものがある。雲を観て動物を想像する姉妹、豊かな想像力をもった大人に成長して欲しいと願わずにはいられない。
カンヌ映画祭でパルムドッグ賞を受賞したツォーホルの名演技も犬好きには見所のひとつ。
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