晴れ、ときどき映画三昧

「エリート・スクワッド」(07・ブラジル)70点


 ・ ブラジルの社会派ポリス・アクションは、ベルリン金熊賞受賞作品。

                   

 リオのスラム街を描いた「シティ・オブ・ゴット」(02)を観て、大都会の歪みによる悲惨な犯罪事情を知らされたが、本作は97年のブラジル軍警察の特殊警察作戦大隊(BOPE)という組織の視点で描いた社会派ポリス・アクション。監督はジョゼ・パリージャ。

 BOPEは江戸時代の<火付盗賊改方>のような組織で、犯罪撲滅のためには容赦なく殺害を認められている。云わばブラジル版「鬼平犯科帳」。

 隊員ナシメント大佐(ヴァグネル・モーラ)はローマ法王来訪に伴い、危険なスラム街・トゥラーノの麻薬ディーラー一掃命令を受ける。

 日々の過度な勤務で神経が消耗し、妻の妊娠を機に後継者を探し引退しようとしていた矢先だった。折しも野外ダンス・パーティ会場で警察・ギャング・市民を巻き込む銃撃銭となり、2人の若い警官マチアス(アンドレ・ハミロ)とネト(カイオ・ジュンケイラ)がBOPE入隊を決意する。

 BOPEとはどのような組織で何故存在するのか?リオの実情を如実に表している。貧富の差は著しく、スラム街は犯罪の温床で、麻薬ディーラーと警察は癒着状態、。大学構内にまで麻薬が横行、NGO活動すら元締めに牛耳られている有様。

 正義感溢れる2人の警官は「フルメタル・ジャケット」を彷彿させる壮絶な訓練を受け、続々と脱落者が出て行くなか生き残って行く。

 パリージャ監督は、ドキュメンタリータッチの映像で有無を言わせずストーリーを引っ張って行く。命懸けの緊迫感溢れる展開は隊員3人を取り巻く人間にも及ぶ。一般市民の正義感が如何にも偽善に満ちたもので無意味だと警鐘を鳴らしているようにも見える。

 それほど混迷した当時のリオには、隊員の人格をも歪め犠牲にするBOPEは不可欠な存在となっている。だが、力ずくの行動は抜本的解決にはならないのも事実。

 本作はブラジルで大ヒットし続編が製作されたが、筆者は満腹状態でしばらくはスルーすることにする。

 ブラジルは14年ワールド・サッカーを無事終了したが、今年は南米初のオリンピック・パラリンピック開催を控えている。未だに政治・経済も不安定でジカ熱の流行も懸念されている。無事に開催されるだろうか?成功を願って已まない。

 
                 
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