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アダムスミスの「人間道徳」論『アダムスミスを読む・人間を学ぶ』

2022-12-07 08:55:47 | 世界の動きから見えるもの
アダムスミス=「国富論」だが、その前にこの「道徳感情論」があったと言う。国を豊かにする前に国民一人一人が「どう人間関係を築き、どう生きたら良いのか」があったと言うのは感動的な書物だ。特に「人間道徳」に切り込んだ人間社会のあるべき姿を描いている
『アダムスミスを読む・人間を学ぶ』滝川好夫
「概要」『国富論』と並ぶアダム・スミスの主著『道徳情操論(道徳感情論)』は、人間関係についての鋭い洞察にあふれた人生哲学の名著である。
「人生哲学」は生活指針「道徳」(他人との関わりの中で、どう生きていけばいいのか)
ー「同情・悲しみ」
    同情は喜びを増大し、悲しみを減少する
    喜びは同情を必要としないが、悲しみは同情を必要とする
    他人を愛する以上に自らを愛してはならない
    肉体的痛みはすぐに忘れるが、言葉の起こした苦悩は持続する
    悲しみの下振れは、喜びの上振れよりも大きい
    注目を浴びることが幸福の源泉
    競争心には正義と貪欲の2つの異なる性格がある
ー「感謝・助力」
    他人へ同情しない人は他人から同情されない
    正義は消極的な美徳に過ぎない
    市場メカニズムがあれば社会は繁栄し幸福である
    社会は仁恵がなくても存立するが、正義がなければ崩壊する
    人は自己に敏感であり、他人に鈍感である
    世話をしようとして失敗した人は友人とみなされ、成功した人は恩人と見なされる
    「公明正大な原則」と「実際」の食い違いは「運」である
ー「平静・享楽は幸福の源泉」
    我々は自己の情操・行為を他人の目を借りて眺める
    我々が恐れるのは「軽蔑される」ことよりも、「軽蔑すべきものになる」ことである
    「是認されなければならない」と言う欲望は、悪徳に対する真の嫌悪を吹くこむ
    「競争心」は他人の優越性を感嘆することから始まる
    利己心の衝動を抑制するものは「良心」である
    老いた人は世間の称賛、非難に対して無視できる心構えができている
    自己統制さえできれば、悲惨・困窮を克服できる
    困難な境遇にある人は自己統制という厳しい美徳を持つことができる
    孤独でいる時には幸運に有頂天になりやすく、悪運に見舞われると著しく落胆しやすい
    自己欺瞞は致命的な弱点であり、人生における諸混乱の源泉である
    道徳の一般原則は経験から形作られる(正義・正直・忠義など)
    希望・恐怖・疑惑は同情によって人々に伝播され教育によって人々の心の中で強化される
    野心は慎慮・正義と言った美徳の領域を越えなければ世間から感嘆される
    想像力、苦しい時は自分の範囲内に限定、楽しい時は自分を取り巻くものに広がる
    困難に慣れている人は情感に対して譲歩しないよう教育されている
ー「悪徳は気まぐれであり、美徳は規律・秩序を維持している」
    慎重な人と交流するときは積極的に質問をしなければならない
    友達を選ぶ時には、謙譲、思慮分別、善行に対して抱く尊敬の念を指針するすべきである
    親子が離れて生活することになる教育は家庭道徳を破壊し、家庭の幸福を破壊する
    社会の平和と秩序は悲惨な人々の救済よりもはるかに重要である
    愛国者は最も厳密な道徳的適性を持って行動するように見える
    賢明な有徳の人は常に進んで自らの私的利益を犠牲にする
    慎慮、正義、仁愛に関する知識を有していても自己統制できない人は実践できない
    死の恐怖を克服した人は冷静を失うようなことはない
    感受性は鈍感であるよりも敏感であることに悩まされる
    憤怒は人々を分断させる性向であり、過度になれば、人々を憤慨させる
    不幸を感じない人は他人に対しても感受性が鈍く救おうという気持ちになりにくい
    自負心は重苦しく、陰気な、熾烈な情感である
    虚栄心は威勢のいい、陽気な、温和な情感である
    虚栄心の強い人は、不必要な自慢、根拠のない嘘勢などを常用している
    「慎慮・正義・仁恵」3つの美徳