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世間体と心の貧相さ『貧しき人』

2019-06-10 07:58:44 | 人生を「生かす」には

@「貧しい人というものは気難しく、世間を見る目も人と違う。他人のどんな言葉にも、あれは自分のことを噂していると感じる」また、「貧しい人でも人間としての名誉と自尊心はあるのにグルになって侮辱する」とある。最近世間ではそう言った貧相な心の隙間に堂々と何の責任もなく入り込んで言いたいことを言っていく人がいるが、言われる、あるいは「覗かれる」の立場の人間から見れば最大限の侮辱に値し、場合によっては恨みにだって跳ね返る。最近の「閉じこもり」は社会環境、特に「世間体を気にする社会」になっているからではないだろうか。多数派から見れば少数派は「世間体が狭く、貧相に値する」程に人の評価を軽んじるが、一人では何もできないでいる「集団行動」だけで盛り上がる人も多いと聞く。不自由さのない生活から生まれた「閉じこもり」は個人の問題以上に現代の社会システムが誘導しているのかも知れない。「心の孤独」はこれからの大きな問題になるだろう。

『貧しき人』ドストエフスキー ・「貧しき人」はドストエフスキー23歳の時の処女作品

  • 世間から侮辱の目で見られている小心で善良な小役人マカール・ジェビンスキンと薄幸の乙女ワーレンカの不幸な恋の物語。往復書簡という体裁をとったこの小説は、ドストエフスキーの処女作であり、都会の吹き溜まりに住む人々の孤独と屈辱を訴え、彼らの人間的自負と社会的卑屈さの心理的葛藤を描いて「写実的ヒューマニズム」の傑作と絶賛され、文豪の名を一時的に高めた作品
  • ワーレンカは父の仕事が倒産、借金で家を追われ、その苦労で父は亡くなる。何もなくなったワーレンカと母にある人物の誘いで狭く汚い都会の下宿先に住むが、母もその後亡くなり孤独となる。そんな折、筋向いの男性マーカルがその貧相生活ぶりに心を打たれワーレンカに手紙を出す。いつの間にか社会から屈辱を持ったお互いがその手紙で支え合うようになり、マーカルは貧相な暮らしの中で何とか恋するワーレンカを助けたいと贈り物とお金を差し出すようになる。ところがマーカルが小役人で仕事仲間からも酷い罵りされるような最低の暮らしの中、自分の服も靴もボロボロでもワーレンカを支えたいが為に給与等を ワーレンカに贈っていたことを知る。ワーレンカはマーカルのその生活ぶりを知ることで、逆に内職で稼いだ少額をマーカルに渡すことで互いの「貧しさ」を支え合うことにした。ある時マーカルはワーレンカからもらった生活の有り金全部を元仕事仲間が困っていると聞きて渡してしまう。
  • マーカルはワーレンカを何とか幸せにしてあげたいと考えながらの仕事で大失敗、だが上司からあまりにも貧相な服装に対しお金と励ましの握手を貰う。それは今まで誰も握手などしてもらったことのないマーカルにとって人生への希望と仕事への意欲が蘇り、もらった金額の半分をワーレンカに贈った。ワーレンカもある日親類を頼って訪問した金持ちの人物から結婚の申し出を受ける。それは昔、いい噂を聞いていなかった人物だったが、話を聞くことでその噂が真実ではなく「貧しさ」である捻くれた妄想だったことを知理、結婚を決断する。
  • マーカルは良き日の二人の思い出にワーレンカが結婚で下宿先を去るその部屋に引越しすることを決める。だが、 二人の手紙はワーレンカが結婚で引越しする直前まで続けるが・・・