Dr.keiの研究室2-Contemplation of the B.L.U.E-

恋愛交差点19-「片思い」の教育学的考察 人を成長させてくれるのは「両思い」か「片思い」か?

不定期連載【恋愛交差点】第19回。

前回の【恋愛交差点18】はこちら

いつか、「恋愛交差点」という本を出す時のために、地味に地道に書き続けています。(あと、このテーマで本を出してくれる出版社も探しています!(苦笑))

記念すべき第1回はこちら!(2008年4月!)


さて、、、

今回のお題は、「人を成長させてくれるのは、両思いか、それとも、片思いか」です。

片思いについては、前に一度哲学的に論じたことがあります

今回は、哲学的というよりはむしろ教育学的・教育人間学的に考えてみたいと思います。

1.

先日、ある学生が相談しに来ました「先生! どうしたら両思いになれますか? 私は彼のことが好きで好きで好きなんです。が、その気持ちを伝えることは恥ずかしくてできないし、彼はそもそも私のことなんて全く無関心なんです」、と。

僕はこの時、とっさにこう言いました。「両思い? 両想いになりたいの? 両思いがいいの?」、と。そうしたら、その学生は、あっけに取られて、「は? 当たり前じゃないですか。片思いのままでいいわけないじゃないですか。片思いは辛いし、苦しいし、いいことないんて全然ないですよ。先生、バカですか?(笑)」と言ってきました。

この学生の言葉を聞いて、「え? 片思いって、苦しいの? いいこと、ないの?」って思いました。これ以上、この学生に言っても埒があかないので、これ以上追及しませんでしたが、この学生はどうやら「片思い」をネガティブに捉え、「両思い」を価値の高いものと捉えているようです。

彼女から受け取った「問い」は、「片思いには、ポジティブな側面はないのか?」ということです。一応、教育学者なので、「片思いの教育学的意義」とか、「片思いの教育学的作用」とか、そういうことを考えたくなりました。(哲学的な意味については既に論じているので、今回は教育学的に若者たちの片思いを語ってみたいと思います。

若者たちが目指すべきは、両思いか、それとも、片思いか?!

2.

まず、若者たちの片思いと両思いの違いを語る上で、「成長」という観点を加えておきたいと思います。片思いと両思いとでは、どちらがその人を成長させてくれるか。教育学的に考えるとすれば、片思いと両思いとでは、どちらの恋愛の方が人を成長に導いてくれるか、どちらの恋愛の方が人間性を高めてくれるか、どちらの恋愛の方が人間形成上、よりよいと言えるかどうか、です。

片思いをしている時と、両思いになっている時とで、人の行動や心情はどうなっているのか。片思いをしている時と、両思いになっている時とでは、どう生活が異なっているか。その辺のことを思い浮かべながら、語っていきましょう。

まず、片思いをしている時は、「相手のこと」を考えています。相手のことを想い、考え、あれこれと想像します。想像するだけでなく、その相手のことを知ろうと努力しています。「あの人にはあんなところがある」「あの人はああいう時にああいう行動をする」「あの人はあんな本を読むんだ」「あの人はあんなこともできるんだ」…、と、相手のことをよく見て、小さなことまで気づくのです。(盲目の恋の場合は、そういう思考はせず、ただただ感情の奴隷となり、わけのわからない行動をとってしまいがちになりますが…💦)

多方で、両思いとなると、相手との関係性の中に入り、接触機会も一気に増えるので、相手のことをあれこれ考えなくなります。考える時間はなくなり、電話で話をしたり、LINEやメッセをひたすら繰り返したり、デートに行ったり、食事をしたり、男女の関係になったりして、「相手がどんな人なのか」を冷静に考える時間は消えてなくなってしまうのです。つまり、相手を知ろうとする努力や、相手を理解しようとする努力をしなくなるのです。なぜなら、もう相手も自分のことが好きだから、相手の気持ちをひくための努力をしなくていいからです。

こう考えると、両思いよりも片思いの方が、「相手を知る」「相手を理解する」という努力をしているように思います。両思いになって付き合ってしまえば、あとは徐々に「相手との差異」や「他者との根源的な隔たり」に気づいて、「私のことを分かってくれない」「俺の気持ちなんて、まったく分かってない」となるだけですからね。(ちゃんとしたオトナなら、そうした差異や隔たりを十分に熟知した上で付き合いますよね👆)

3.

若者たちにとって、最も大事なのは「自分自身が成長すること」です。中高年たちは、もう身体的には退化の一方ですし、「成長せよ!」と言われても、その努力をする人はほぼほぼいません。日々の生活に疲れ切っているからです(苦笑)。

若者たちの成長を導いてくれるのは、片思いか、両思いか。次に「時間」という観点を加えて考えてみましょう。

片思いの時は、基本的に「ひとりの時間」が多くあります。恋はしているけれど、相手と付き合っているわけではないので、デートの時間も、日々の電話やLINE等の時間もありません。その恋について、友達と電話で長話することもあるでしょうけど、それは「友情を育む時間」といえるでしょう(素敵です✨)。

多方、両思いになると、とたんに忙しくなります。時間泥棒に時間を奪われます。毎日、週に数回、週末に毎週…、と会う「義務」が発生します。自分が会いたくなくても、相手が「会いたい」と言われれば、会いに行かなければなりません。一度や二度、「疲れているから」という理由でお誘いを断ることもできるかと思いますが、それを何度も繰り返ししていると、相手はそれを不審に思い、また不安に思い、「もう俺(私)のこと、好きじゃないの」と問い詰めてきます。

両思いになると、「時間を割いて、相手と会う時間」が義務として発生するのです。その結果、本来しなければいけないこと=学業がおろそかになっていきます。大学生であれば、親から(あるいは奨学金で)毎年100万円(生活費込み)くらい学費として出しているわけです。その100万円は、その人の「成長」のための「投資」です。成長しないのに、大学に100万円払う「アホ」はいないでしょう(いや、「大卒・学士という学歴」が欲しいだけ…という人もいるかも…)。

若者たち(とりわけ学生たち)はまず、将来に向けて、自分自身の人生をよりよくするために、あれやこれやと学ぶこと、そして成長することが求められます。学生なら、本を読んだり、仲間とディスカッションしたり、旅に出かけたり、労働社会では出逢えないような変人や奇人と出会ったり、レポートを書いたり、小論文~論文を書いたり、先生の研究世界に触れたりすることが何よりも大事なことで、それ以外のことは「余剰」「おまけ」なんです。

そう考えると、片思いであれば、時間の制約がないので、恋するココロを抱えながらも、しっかり学業に専念できます。別にデートとかするわけでもないので、時間的なゆとりもありますし、その恋心をばねにして、思い切り学問に打ち込むこともできます。

両思いでも、それをばねにして、勉強を頑張る、ということもできます。これはこれで尊いですが、そうした「頑張り」は、自分も相手もどちらもがしっかりと「すべきこと」が見えている場合に限られます。自分は「しっかり学問したい」と思っていても、相手がクズなら「ベンキョーなんていいじゃん~ 会お~~~よ~~~~」と言ってくることでしょう。両思いの恋愛を維持させつつ、しっかり学業に専念できるカップルは、ほとんど見たことがありません(いなくはないですが…)。

4.

時間軸に続いて、金銭的な観点から、この問題を考えてみましょう。

片思いをしている時は、お金はほぼ出ていきません。好きな人に気に入ってもらえるよう、カッコいい服やかわいい服を買ったりすることもあるでしょうけど、まぁ、今の時代、ユニクロやGUやZOZOなどで安くていい服を購入することができるので、そんなに負担にはならないでしょう。

なので、特にアルバイトの量を増やす必要もないし、本や教材をケチる必要もありません。自分を成長させるための投資もすることができます。よく例で挙げるのは、「語学」。語学は、若い時でないと、なかなかモノになりません。第二外国語となると、学生時代に習得する以外に道はなかなかありません。語学学校に行くこともまた、(僕にとっては)大きな成長につながりました。

多方で、両思いになると、お金が湯水のように流れて消えていきます。両思いになって付き合いだすと、食事に行ったり、映画を見たり、買い物に行ったり、テーマパークに行ったり、外泊したり、旅行に行ったりと、もう大変です。お金がいくらあっても足りなくなります。それはほぼすべて「消費活動」となり、お金が消えていくわけです。

そうなると、学生たちはアルバイトの量を増やします。アルバイトの量が増えれば増えるほど、大学等の講義中は、「お休みタイム」になり、すやすやと寝ることになります。「バイトが忙しくて、勉強できない!」って叫んでいる学生もいました。その学生も、彼女のために一生懸命アルバイトに励んでいる学生でした。そして、土日に彼氏・彼女に会う時には、そのアルバイトで稼いだお金を放出するんですね。

結果、両思いの人たちは、勉強以外のことで忙しくなり、本来すべきこと(成長すること)から離れていくわけです。こう言うと、「恋愛だって、成長させてくれますよ!」と反論されるわけですが、こっち(大人側)から見れば、「全然、成長しているようには思えないのですが…」と思うわけです。親から見れば、100万円払っていて、バイトと恋愛に没頭している息子や娘を見ると、ため息しか出てこないでしょう(そういうまともな親がどれだけいるか、怪しいですが…。ほとんどの親が無関心かも…)。

5.

中高生や大学生たちにとって一番大事なのは、自分が成長することです。自分自身のことだけを考えていればいいのです。他人のことを考えるのは、社会人になってからで十分です。結婚して、子どもができれば、子どもだけに専心しなければいけません。なので、若い時は、自分自身のためだけにあれこれ考えて、動くことが大事なのです。

その観点からすれば、片思いの方が両思いよりも成長させてくれるのではないか、と思わざるを得ないのです。というより、両思いになり、特定の誰かと付き合うことで、その成長が阻害されてしまう、と言うべきでしょうか。

長年、恋愛論を読んで書いてきた身からすれば、男女の恋愛(あるいはそれに類する恋愛)は、ちゃんと成長した人間とちゃんと成長した人間との間でしか、持続しないのです。簡単に言えば、おバカちゃんには恋愛はできませんよ、ということです。しっかりと自立し、自律的に生きられる人間同士でなければ、「最高に豊かな恋愛」はできません。むしろ、人生を台無しにしたり、むちゃくちゃにするような恋愛に陥る可能性もあるのです。

素敵な恋愛をするためにも、まずは自分自身が成長すること。それなしに、最高の恋愛も最高の結婚も最高の夫婦関係も実現することはできません。男女の恋愛(あるいはそれに類する恋愛)は、双方が十分に成長していることが条件となります(頭がいいかどうかではなくて)。

「恋愛経験を増やせば増やすほど、人として成長できる」、という反論には応じません。だいたい、恋愛経験が多い人というのは、同じ失敗を繰り返している人であり、愛する能力の高さとは全く関係ないのです。100人と付き合った、というのは、自慢ではなくて、自分が愚かだということを示しているだけです。

6.

冒頭で、ある学生の言葉を取り上げました。「先生! どうしたら両思いになれますか? 私は彼のことが好きで好きで好きなんです。が、その気持ちを伝えることは恥ずかしくてできないし、彼はそもそも私のことなんて全く無関心なんです」。

その後、彼女とのやり取りの中で、彼女は、徐々に気づいていきました。そして、こう言いました。

彼がもし(先生の言う)まともな人であればの話ですけど、私がしっかり魅力的な人間になってさえいれば、私の魅力に気づいてくれるはずですよね。彼に「素敵な人だな」って思われるよう、頑張ります! 見た目ももっと磨きたいし、中身ももっともっと磨きたいです。あ、あと、英語も学びたいです。それに、ダイビングもしたいんです!」、と。

そして、最後にこう言いました。

海外の綺麗な海でダイビングをしていたら、そこでもっと素敵な人と出会っちゃうかもしれませんね💛」

って。

「うおおおおお!!!!」

と、僕は叫びました。

素敵な恋をするためにも、もっともっと自分を成長させてあげてくださいね🎵

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