Dr.keiの研究室2－Contemplation of the B.L.U.E-

🌎BUCK-TICK【異空－IZORA－】通算23枚目のフルアルバムがリリース！温故知新型のハイブリッドなサウンドで世界旅行へ！

Visual-Kei/J-ROCK

2023-04-14 10:15:46

2023年4月12日。

遂に、通算23枚目のアルバムをリリースしました！＊

BUCK-TICK
異空－IZORA－

です！

（＊HURRY UP MODEを入れて23枚目、メジャー作品としては22枚目）

1987年のデビュー時から一度もメンバーチェンジなし、一度も活動休止なし。

デビューして35年、ずっと変わらず活動し続けているモンスターバンド。

もう、説明や解説なんて不要ですよね。

僕自身は、1988年に知って以来、一度も離れることなくB-Tファンを続けています。

っていうか、もう死ぬその時まで、BUCK-TICKへの愛は変わりません💖

…

前作【ABRACADABRA】が出たのが、2020年9月のことでした。

なので、おおよそ2年半ぶりのフルアルバムとなります。

＞前作のレポ＆レビューはこちら！

前作は、まさに「コロナ・パンデミック」の只中でのリリースとなりました。

そのコロナの影響も、この作品には入り込んでいます。

…

今回の作品は、多分コロナの影響もなくはないと思いますが、ウクライナ戦争の影響を受けて既にベストアルバムにて発表されている「さよならシェルター」も入っていて、多分、色んな要素が入り込んでいることと思われます。

CATALOGUE THE BEST 35th anniv. [通常盤] [5SHM-CD]

4988002923588

BUCK-TICK

ビクターエンタテインメント

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結論から言えば、今回のニューアルバムもとてつもなく凄かった…。壮大だった。そして、「温故知新」だった。

僕がすごく感じたのは、「darker than darkness」～「Six/Nine」あたりの要素がいたるところに散りばめられているなぁということかな。個人的にすごく大好きな（超暗黒系の）アルバムで、その暗黒な感じがしました。

が、その一方で、これまでのどのアルバムの曲よりもメロディアスでポップでキャッチ―な曲も入っていたりして、そのロマン主義的な世界観は確実に進化を遂げています。かつてのダークな感じはありつつも、「密室」じゃなくて、「世界」を俯瞰しているかのような音世界になっています。まるで世界旅行をしているような？？！！

キーワードはやっぱり「空」かな？！

先行シングル二枚の影響もあって、最初から最後まで、安心して楽しく聴けたかな？…（というのが、僕のファーストインプレッションでした）

異空というタイトルの由来は、内林武史さんの「異空への窓」という作品みたいです。（今井さん談）

本の中のもう一つの世界… pic.twitter.com/q1X180EAy5
— 内林武史/Takeshi Uchibayashi (Art,Object) (@garag_takeshi) September 24, 2021

素敵ですね！！😂

なんか、師匠の言う「世界への導入としての芸術」って感じがします。

本の中の異世界への導入としてのBUCK-TICK World。

では、早速その世界の中に入ってみましょう。

【全曲解説】

01 QUANTUM I

23枚目のアルバム【異空】は、幾何学的な「音」を感じる近未来的なエレクトリックサウンドで幕開けです。「量子」を意味するQuantum。サイバー空間や近未来的宇宙都市を感じるサウンドで、一気にB-Tワールドに引き込まれて行きます。色んな音が入り込んでいて、片時も油断できません。最後の「ビュ～ン」っていう効果音が好き💓

02 SCARECROW

タイトル通り、「かかし」の気持ちを謳った曲（？）。「かかし」はメタファーであり、それに類するような人の気持ちを謳っている曲で、いきなり一曲目から「大当たり」の曲でした。サビがむちゃくちゃ突き抜けててカッコいいです。「逃げられない　逃げられない」っていうところの疾走感がとてつもなく気持ちよい。そして、その後のギターのきらめくアルペジオがとてつもなく心地よい。これこそ「シングル曲」に相応しい曲じゃないかなぁ。久々にこういう系のB-Tロックを聴いたかも。今回のアルバムの中で一番みんなが好きそうな曲かな？！　旅が始まるって感じ！

03 ワルキューレの騎行

ヨーロッパの教会の中にいるかのような「パイプオルガン」の美しい旋律から、エレクトリックボディービート風のテクノロックへと！？！？　なんだ、このむちゃくちゃカッコいいエレクトリックビートは…😂　これ、ソフトバレー（Soft ballet）みたい？！　Aメロのあっちゃんの歌は、どこか「Six/Nine」っぽい感じで、キュンってきました。あるいは「No.9」か？　これ、遠藤さんが歌ってもカッコいいかも？　ベースが徹底的に淡々としていて不気味なところも多々。あっちゃんはきっと、あのジョン・チャールズ・ドールマンの絵を見ながら、この歌詞を書いたんだろうな。音のアートです🎵）

04 さよならシェルター destroy and regenerate-Mix

これ、最初、覚悟しておいた方がいいですよ（苦笑）。これまでのB-Tになかった始まり方です。最初、「えええ？？」ってなりましたもん。この曲自体は、前にベストアルバム【CATALOGUE THE BEST 35th Anniv.】の「RIBELO」の最後（16曲目）に収録されていた曲で、ウクライナ戦争の中を生きる人たちのことを謳った歌なんですよね。ただ、「破壊と創造ミックス」となっていて、全く違う曲に聴こえます（この辺もすごく凝ってて、B-Tっぽいなぁ…）。「色を無くした　音も無い世界　愛の歌　震える声で　あの子は歌う」という歌詞がすごくずしっと来て、戦争の愚かさと平和の尊さを感じずにはいられませんでした。また、「誰かが僕らを　殺しに来るよ　狂っている・・　狂っているよ」というところがもう苦しくて苦しくて。

05 愛のハレム

ヨーロッパから旧ソ連エリアを経て、次はイスラム世界へ？　この曲では「ハーレム」ではなく「ハレム（harem）」という語が使用されています。日本人が使う「ハーレム」とは全く違う意味であることがまず大事👆（詳しくはこちらを参照）。アラブ風というか、中東っぽさを若干感じる曲テイストになっているかな。ものすごくエキゾチックな香りのする曲で、どことなくグラスバレー（GRASS VALLEY）っぽい感じもしますね。ソフトバレーにグラスバレー…。凄い…、温故知新であり、また当時に共に生きた伝説のバンドにも通じているという…。最後はもうカオスというか混沌というか…。凄い曲です…💦

06 Campanella 花束を君に

この曲も05と同じく、「戦争」がモチーフの曲？　「兵隊さん」のお父さんをもつ子どもの目線に立った曲で、これもこれまでのB-Tにはなかったタイプの歌詞世界かも。B-Tで「おとうさん」「おかあさん」がサビに出てくるって、軽くショックを受けましたもの…。「男の子　女の子」もぶっ飛んでましたが、今度は「おとうさん　おかあさん」…。あっちゃんの深い愛を知ることのできる曲…かも。決して絵空事的な話ではなく、リアルな現実の中で見る夢、みたいな…。曲的にはすごくかわいい曲で、ほっとする感じではあります。カンパネラの花言葉は、、、

07 THE FALLING DOWN

このタイトルを見て、「悪の華」を思い出した人はきっと僕だけじゃないはず（苦笑）。このタイトルで、往年のファンなら分かりますよね？　今井さんTIMEの楽曲だって😊。本作でも、今井さんヴォイスは健在です。今回の「異空ツアー」は、堕天の飛翔体に乗って、「エデン」に向かいます。なんか、酒池肉林的な極楽浄土の世界に入り込んだ感じがする。酒を呑んで、飯を喰らって、大暴れ！みたいな。面白い曲ですね～。

08 太陽とイカロス

そして、ここでシングル曲が投下されます。07との流れの中でこの曲を聴くと、突出した名曲だなぁって思いますね。音楽ってやっぱり、「連関」の中で聴くものですからね。シングル曲で聴くと、あんまりピンと来ませんでしたが、こうやってアルバムの中で聴くと、すっごく突き抜けてます。「戦争が終わった後の平和」がどこか表象されていて、なんとも言えない気持ちになります。戦争も永遠には続かない。やがて、終わるときは来る。ただ、それでみんなが笑えるわけじゃない。戦争で、多くの人が「大切な人」を失うんです。パパとママを失くす子どももいっぱいいるんです。ギリシャ神話と今の世界の状況をうまく掛け合わせたすごい歌世界だなぁって思いました。で、やっぱり星野さんの曲は大好きです💖（途中、ギターのカッティングが"Seventh Heaven"時代のカッティングに似てて、嬉しい気持ちになりました😂）

（その後、何度も聴いていたら、「戦争が終わった後の曲」ではなく、「戦争の中で散っていった命の曲」なんだと気づかされました。まさに「イカロス」のような悲劇の歌だったんだと分かって、愕然としました。それと同時に、この曲の「極端な二面性」に気づけた気がしました。「悲しくはない　これで自由だ」という言葉が脳内をリフレインしています）

09 Boogie Woogie

ブギウギ？？　ええ？　B-Tがブギウギ？？！！　何気にすごく聴きたかった曲でした。B-Tがブギウギサウンドを？！　ザクザクに歪んだエレキギターサウンドがとっても心地よいですね～。70年代のロックンロールを感じるB-T風ロックンロール？！　曲的にもすごく凝ってて、曲の展開も激しくて、B-Tじゃないみたい（笑）。ギターソロもめっちゃブルースロックって感じで、驚くことばかり…。異空ツアーは遂に「アメリカ大陸」へ？！？！　1920年代の黒人ブルースをどこか感じる渋～いロケンローを楽しみましょう。往年のファン的には、楽し過ぎるわ～。

10 無限 LOOP -IZORA-

そして、ここで再びシングル曲へ。異空ツアーは、アメリカからハワイ～グアム～あたりを通って、日本に戻って来る感じ？！（妄想入ってます）。歌詞に「南国」ってあるから…。なんか、どこか「太平洋」の上空を飛んでいる気分になりますね。これは、大西洋じゃない！（苦笑）　

11 野良猫ブルー

で、なんか日本に戻って来ちゃった感のある曲に…（苦笑）　日本のどこか、狭くてごちゃごちゃしていて（一見きれいそうに見えて）汚い路地裏に…（苦笑）。で、野良猫がこっちを見つめてる、みたいな。こういうジャジーな曲も、かつてのB-Tにはあった！！　あっちゃんの歌うブルースソング。これはもう、真夜中に膝を抱えて、ヘッドホンで聴くしかないなぁ。「全部　デタラメ」って…。なんか、これまでの世界旅行がただの「妄想」のような気もしてきた…💦　でも、これはこれでめっちゃ渋くてカッコいいなぁ～。今回のアルバムって、これまでにないくらいに「渋さ」もあるなぁ…

12 ヒズミ

この曲を聴いた時、やっぱりdarker than darkness～Six/Nineの時代のB-Tを思い出したなぁ。妄想的な世界旅行の後に、また密室に入り込んでいく感じ。デカダントで刹那的な感じのギターリフが心地よいですね～。でも、この歌詞を読むと、あっちゃんのテーマの一つである「自殺」の歌なのかな、とも。お父さんやお母さんの期待に応えられない青年の苦しみの果ての…。最後の「次の電車が…」というところと、その後の歪んだエレキギターの音がもうなんとも…。日本の若者の自殺の原因の多くが、「学業不振」「進路不安」と言われています。

13 名も無きわたし

そして、歌入りの曲としては最後の曲。最後に、この「名も無きわたし」をもってきたか…。この曲は既にシングルのカップリングで発表されていました。その時は、なんていうかアンビエント系というか、エレクトリック系だったんですが、こちらのアルバムバージョンだと、れっきとしたB-Tロックサウンドになっていて、ほっとしました（苦笑）。歌詞を読んでいると、「赤ちゃんポストに赤ちゃんを預けに来た母親」の歌のように聞こえて来て、、、。「名も　無い　わたしに　あなた　と　お別れ　来た」って…。もしあっちゃんが「赤ちゃんポスト」や「内密出産」のことを知っていて、それを謳ってくれていたら、すごく嬉しいな…。こういったらあれだけど、BUCK-TICKの世界観を持っていたからこそ、赤ちゃんポスト研究にのめり込んでいった部分って実は結構あって、、、。

14 QUANTUM II

本編の楽曲が終わり、再び「量子の世界」へ。密室から世界に飛び出て、そして一周してまた密室に戻り、そして、モニターの世界に引き戻されていく、っていうイメージ？！　それが無限にループしていくっていうイメージ？　世界中で鳴り響く銃や爆撃機の音と重なり合って、なんとも言えない気持ちになりますが…。でも、それだけ、今、世界はおかしな方向に向かっているんですよね。壮大な音世界はやがて「沈黙」へと戻っていきます。