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散歩絵 : spazierbilder

記憶箱の中身

夢遊 Ⅴ

2005-10-25 15:18:31 | 夢遊
暗い森の中だ。
あたり一面、深い黒に近い緑で、まるでルソーの絵の中の森のようだ。
ピカピカと光ってなめし皮のような葉を持った植物は“ツワブキ”だという。
それは花を咲かせている最中なので、まるで艶のある暗闇に黄色い星がちりばめられているかのようである。
“ツワブキ”が見渡す限り生えているその森は“ハンミョウの森”と呼ばれている。
“ハンミョウ”といえば昆虫である筈なのにハンミョウの森の中ではサラマンダーの形をしていて、それはツワブキの葉色の体に、ツワブキの花色の斑点をつけて潜んでいる。

森の奥には差し渡し2メートルほどの池があり、水は原油のようで黒々とぬめった表面が息づくように動く。
その中には森の主という鯰が住んでいてハンミョウはその主を守っているのだ。
ごわごわした葉の中を歩き進んでいるうちにハンミョウが私の手の甲に噛み付きあまりの痛さに目が覚めた。
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別に意味は無いのに、昔から”ハンミョウ”という語感は何故か私に怖いものを連想させる。
子供の時分に親戚を訪ねて田舎に行った時の事だ。
庭に通ずる踏み固められた道に直径5mmほどの穴が幾つも開いているのを見つけた。
傘の先端で地面にぶすりぶすりと差してあけたかの様な穴だ。
誰がこんなに穴を開けたのだろうと不思議に思いしゃがんで眺めているとフッと、目の前に影が差し「ほら、穴に韮の葉を入れてごらん」とその影は教えてくれた。
それが誰だったのかもう覚えてもいない。
丁度そこに生えていた韮を千切って穴に差し込み何が起こるのだろうか?と興味深深に待っていると、やがて風も無いのに韮の葉はかすかにゆらゆらとゆれながら持ち上がって来る。
そこで葉先を持ってすーっと持ち上げると、不恰好で奇妙な虫が韮にかじりついて持ち上がってくるのだ。
その時「ニラムシだよ」と教わったのだが、これが美しいハンミョウの幼虫である事はまだ知らなかった。
私はその虫は韮が好物なのだろう、だから韮で釣れるのだと信じていたが、後にそうではない事が解った。
別段韮でなくとも他の草の茎でもかまわない。
彼等は穴の中で獲物の気配をキャッチしよう忍耐強く潜んでいるのに邪魔物が入って来たので放り出そうと一生懸命だったわけだ。
そんな苦労を知らずに人間が面白半分にひょいと穴から釣りだして遊ぶのだから、たまったものでは無いと虫は思っていたに違いない。

兎に角、ニラムシ釣りを教わったその日、私は長い事飽きもせず見つけた穴という穴、全てに韮の葉を一本ずつ差して監視を続けた。
乾ききった庭先で韮の葉が何本も地面から突き出しているのを、目を皿のようにして監視を続けた。
しかしその後どういうわけか、ゆれたと思えどそれは風の仕業か、一匹も釣る事が出来ず、初夏の日差し中で韮の葉がしおれて行くのを残念な思いで見ていた事がある。
埃っぽい空気が黄色っぽく焼けた匂いのする夏の思い出だ。

ハンミョウ頭部の拡大写真これにかまれたら痛いだろう。


*ハンミョウの森の夢はもう大分前の見た夢だが、今朝はどういうものかモーガン・フリーマンが美味しいと有名な屋台のフライドポテトを買ってくれるという夢をみた。