宇宙の歩き方

The Astrogators' Guide to the Charted Space.

総目次

5625-04-18 | Traveller

 SFロールプレイングゲームの元祖的存在『トラベラー』の、膨大な宇宙設定や考察などを紹介しております。特段の断りがない限り《第三帝国》設定については、全て帝国暦1105年時点のものとして記述しています。
 これらの情報があなたの旅の指針となりますように―― Bon voyage!

【宙域散歩(OTU設定解説連載)】
第1回 268地域星域 概要編詳細編(スピンワード・マーチ宙域)
第2回 トリンズ・ヴェール星域(スピンワード・マーチ宙域)
第3回 モーラ~ルーニオン間(スピンワード・マーチ宙域)
第4回 グリッスン星域(スピンワード・マーチ宙域)
第5回 『Pirates of Drinax』特集1 ドリナックス王国(トロージャン・リーチ宙域)
第6回 『Pirates of Drinax』特集2 アウトリム・ヴォイド(トロージャン・リーチ宙域)
第7回 トビア星域(トロージャン・リーチ宙域)
第8回 ヴィラニ・メイン1 ヴォーダン星域(ヴランド宙域)
第9回 ヴィラニ・メイン2 アナルシ星域(ヴランド宙域)
第10回 ヴィラニ・メイン3 ヴランド(ヴランド宙域)
第11回 ヴィラニ・メイン4 シイグス・プリデン星域付近(ヴランド・リシュン宙域境界)
第12回 ヴィラニ・メイン5 グシェメグ宙域
第13回 パクト星域(ダグダシャアグ宙域)
第14回 シュドゥシャム(コア宙域)
第15回 キャピタル(コア宙域)
第16回 カムシイとレファレンス(コア宙域)
第17回 ソロマニ・リム宙域・概要編
第18回 リム・メイン1 ハーレクイン星域(ソロマニ・リム宙域)
第19回 リム・メイン2 ヴェガ自治区(ソロマニ・リム宙域)
第20回 テラ(ソロマニ・リム宙域)
第21回 ソル星域(ソロマニ・リム宙域)
第22回 リム・メイン3 アルバダウィ星域周辺(ソロマニ・リム宙域)
第23回 リーヴァーズ・ディープ宙域 前編後編ライブラリ
第24回 カレドン星域(リーヴァーズ・ディープ宙域)
(※この連載で記された星系データ(UWP)はT5SSによって改定される前のものです)

【コラム】
水界の量を決めるのは大気か規模か?
『通信機』で見るトラベラーの40年
SuSAG(メガコーポレーション解説)
フローリア人とフローリア連盟(群小種族解説)
ソロマニ・リム戦争概史
仮死技術と二等寝台
「人類」総まとめ
トラベラー協会
スピンワード・マーチ宙域開拓史

トラベラー(ホビージャパン版) 正誤表

【宙域図・星系データ集】
1105年版ヴランド宙域図
蘇る「ガシェメグ宙域」
2170AD, Man's Battle for the Stars(『インペリウム』時代の星域データ)
新訳最新版スピンワード・マーチ宙域UWPデータ
1/4スケール「スピンワード・セクター」を作る

【星の隣人たち(知的種族設定紹介)】
第1回 スピンワード・マーチ宙域の知的種族
第2回 ダリアン人の歴史
第3回 接触!ダリアン人
第4回 ソード・ワールズの歴史
第5回 接触!ソード・ワールズ人
第6回 接触!ヴァルグル
第7回 グヴァードン宙域の(帝国に関係する)諸勢力
第8回 接触!アスラン

【トラベラー40年史】
第1回 黄金の時代(~1987年)
第2回 反乱と苦難の時代(1987年~1993年)
第3回 新時代、そして暗黒時代へ…(1993~1997年)
第4回 夜明けの時代(1998年~2007年)
第5回 古典復興の時代(2008年~2015年)
第6回 三者並立の時代(2016年~)
追補A GURPS Traveller 17年の歴史を振り返る
追補B 2018年のトラベラー界隈まとめ

【メガトラベラー日本語版発売30周年記念企画】
知っておくべき新・3大「反乱期の注目の舞台」
ダイベイ宙域1119 ライブラリ・データ 私家版UWPデータ(1)(2)
ジュリアン保護領とアンタレス
ガシカン帝政とイレアン人
クーピッド星域とメンダン宙域
スナップショット ~回廊六景~(コリドー宙域解説)

【Cepheus Engine 解説記事】
トラベラー互換システム『Cepheus Engine』とは何か!?
『Cepheus Engine』で始めるロールプレイング・ゲーム入門
 
『Cepheus Engine Vehicle Design System』レビュー
『Cepheus Light』緊急レビュー

【ぶらりTL11の旅(ATU製品紹介)】
第1回 『Outer Veil』
第2回 『Clement Sector』
第3回 『2300AD』
第4回 『星々を我が手に(These Stars Are Ours!)』
第5回 『Hostile』

『異星人の街カストロバンクラ(Castrobancla, The City of Aliens)』
『Mindjammer: Dominion』
『ドラコニム星域(The Draconem Sub-Sector)』

【『2300AD』関連記事】
太陽系周辺宙域図(を『トラベラー』形式で)
Japan 2300 - 西暦2300年の日本
偶然の遭遇:モニク・ルーセル(と惑星ジョイの設定)

【自作ミニゲーム】
第五次辺境戦争風ミニゲーム「Grenzkrieg: Spinward」
ソロマニ・リム戦争風ミニゲーム「ソロマニ・リム戦役」
恒星間戦争風ミニゲーム「いんぺりうむしょうぎ」
『Traveller: Accelerated Edition』 (Alpha Version)

(※文章には私の意訳・誤訳・誤解・曲解が過分に含まれ、推測による記述や、非公式設定をあえて取り込んだ部分もあります。また、記載した情報は予告なく修正される場合があります)
Comments (7)
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宙域散歩(23.5) リーヴァーズ・ディープ宙域(国家・企業・団体)(2025年改訂)

2025-03-12 | Traveller
 以下の文章は「極力公式資料に基づく最新の1105年設定」を解説したものです。「非公式設定をも取り込んだ古い1115年設定」こちらです。

【国家(主要国)】
カーリル合州国 Carrillian Assembly
総人口:141億人
公用語:銀河公用語(リム方言)
 リーヴァーズ・ディープ宙域で最も技術的に進んだこの独立国の起源は、517年まで遡ります。当時、ドレシルサーとファールナーの星々の領土紛争が宙域全体を不安定化させ、フトホァーの和約は崩壊の瀬戸際に立たされていました。アスランの後援を受けた第三帝国が和平仲介(と威圧)に動き、519年に中立の小惑星星系カーリル(2330)で開かれた一連の会談によって、経済連携と共同防衛のための単一国家建設の合意に至りました。新国家の首都にはこの調印の地、カーリルが選ばれました。
 その後合州国には楽観的で平等主義な気風が定着し、交易地域の拡大とともに加盟星系を増やし、そして国内全体の技術水準を劇的に進歩させました。800年には緩衝地帯で最先端のTL13に到達し、周辺星系に対する圧倒的優位を得ました。
 しかし1000年になると、合州国の急成長には陰りが見えるようになりました。この頃、カーリルのほとんどの会社は一握りの大企業に収斂し、これは確かに市場の効率化と経済成長に寄与はしましたが、一方で富の偏在によって社会不安を増幅させました。対外的には、ソロマニ・リム戦争が引き金となって第三帝国かソロマニ連合が合州国の主権を脅かすのではないかと思われました。これらの状況は、安定と現状維持を重視する愛国党(Assemblist party)と、経済軍事の両面で周辺星系を取り込もうとする拡大党(Expansionist party)の対立を先鋭化させていきます。
 1102年の総選挙は、経済の低迷、政治腐敗、相次ぐ労働争議が争点となり、検事出身で若く颯爽としたイーノ・ダルドリーム(Eno Daldreem)が率いる野党拡大党が僅差で勝利して悲願の政権交代を実現しました。拡大党新政権はこの機を逃さず、愛国党の復権を阻む法案を次々と可決していき、1103年と1104年の憲法改正で国家元首たる「大法官(High Justice)」への権限集中を加速させました。これらの改革には多くの加盟星系から非難が寄せられましたが、ダルドリーム大法官は意に介していません。加えて政権は帝国やソロマニ連合の脅威に対抗するため、イェホソー氏族や29選(※おそらくイェーリャルイオー)氏族に接近しています。

イスライアト支配圏 Islaiat Dominate
総人口:1450億人
公用語:イスライ語
 リーヴァーズ・ディープ宙域とエァリーオシーゥ宙域の狭間に広がる人類系国家です。首都イスライアト(0221)はテラに似て過ごしやすい世界であり、恒星間戦争初期に地球人によって入植されました。その後イスライアト入植地は近隣星系にも拡大を続けましたが、暗黒時代が訪れると彼らは衰退する技術を守るために周囲から収奪を始め、-1000年には数星系を支配する立派な《略奪者国家》となっていました。
 ところがアスランのロァホール氏族がディープに進出し始めると、イスライアトは次第に守勢に立たされるようになりました。-900年頃にトローヱァエァウィ氏族の家来となることで彼らは対抗しましたが、これによってイスライアト社会は大きく変容し、人類とアスランの伝統が融合した全く新しい文化を花開かせました。特に芸術や建築分野は見事な文化的偉業として名高いです。またこの頃に「アリエル教(Arielism)」が創始され、イスライアトの人々に広まりました。
 その後、アスランの間で文化粛清(-50年~50年)が起こるとロァホール氏族は逆境に立たされて弱体化し、フトホァーの和約(380年)の頃になるとイスライアトはロァホール氏族に対して領土の割譲と人類の家来の解放を認めさせるまでになりました。このような経緯もあり、イスライアト領のほとんどの星系にはアスラン風の名が付いています。
 前述の通りイスライアトはトローヱァエァウィ氏族と強い結びつきを持ちますが、他のアスラン氏族とも友好的です。一方で他の人類国家には宗教観の違いから若干の警戒心があります。
 首都イスライアトこそ先進技術世界ですが、他の星はアリエル教の影響で前星間技術に留め置かれています(唯一の工業世界ですらTL7です)。国内には小規模なTL13艦隊が配備されていますが、主な任務は海賊とイホテイ対策です。陸軍は現地の技術で運用されるため千差万別ですが、要人警護のためにTL14の精鋭部隊を持っています。
 イスライアトの終身政治指導者であるイスライアトコー(Islaiatko)(※コーとはアスランの言葉で「長」を意味します)は貴族らによって選ばれます。現職のアザール10世(Azar X)は1094年に就任し、国家の近代化を進めています。一方で精神的指導者である大神官ラジン(High Priest Razin)は、(イスライアト建築の最高傑作として知られる)マイジャーラ大寺院にあって政治への干渉は控えめですが、保守的なラジンと改革者アザールの間には大きな軋轢があると言われています。
(※元来ここは群小種族ヰスライ(Yislai)の国とされていましたが、長年ヰスライの設定が作られなかったことで人類国家になったようです。なお飛び抜けて人口が多いように見えますが、イスライアト(900億人)とマイジャーラ(500億人)でほとんどです)

カレドン公王国 Principality of Caledon
総人口:300億人
公用語:銀河公用語(カレドン訛り)
 カレドンとスコティアン・ディープの両星域の大部分を占める、リーヴァーズ・ディープ宙域最大の独立国です。直轄領に加えて4つの属領星系と、「ダグラス大公国」も(事実上の)傘下に持ちます。隣国の第三帝国とは緊密な関係を持ち、しばしば「商業王国」と形容されます。建国以来、2度の内戦期を除けば比較的安定した国です。
 現在の公王国を構成する地域は、恒星間戦争末期の(主に西欧系の)地球人入植地を起源とします。当時の地球連合に不満と不安を抱えていた人々は、著名な銀行家チャールズ・スチュアート・スコット(Charles Stuart Scott)の資金提供を受けて人類未踏の新天地への移民団を組織し、カレドン(1815)やその周辺に入植しました。その後長らく未知の環境との苦闘が続き、やがて長い夜(暗黒時代)が訪れるとジャンプ技術は失われました。
 -200年頃、カレドンを訪れたダイベイのある小国の貿易商からジャンプドライブを入手すると、いわゆる《略奪者》たちの無法を抑止するため、-102年にジェミスン・ダンダス(Jamieson Dundas)によってカレドン公王国は建国されました。建国直後、公王国はイルサラ帝国の侵攻に遭ってエァ星域を失いましたが、スコティアン・ディープ星域の中核への攻撃は跳ね返しました。その後、250年代に公王国はイルサラ支配下の星系での反乱を支援するなど反攻に転じ、第三帝国との共同戦線もあって、最終的にイルサラ帝国を滅亡に追いやりました。
 309年から328年にかけて公王国は第一次内戦に見舞われ、この影響でダンシニー(1624)などが公王国から離脱してダンシニー連合を結成しました。800年代には探検と拡張の新時代の幕が上がり、公王国は商業利益を大幅に拡大しました。
 1024年、コリン公王(Prince Colin)が世継ぎなく死去したことで「王朝危機(第二次公王国内戦)」となり、クラヴァース大男爵マクスウェル提督(Admiral Earl Maxwell of Claverse)とエドワード・キャンベル卿(Edward, Lord Campbell)が王位を争いました。マクスウェル卿は有力な家柄である一方、キャンベル卿は身分は低くとも財界の支持を受けていました。これは、かのダンバートンの戦いに勝利し、マクスウェル卿を国境外に追放するのに十分でした。翌年004日、エドワードはカレドンの公王として戴冠しました。
 現在のカレドン公王国は、貴族院(上院)・代議院(下院)・大元老院の三院制議会の上に国家元首として公王(Prince)を置く立憲君主国です。公王国のほとんどの星系は外交・防衛・貿易規制を国に委ねつつ、自治を大いに保っています。現在はエドワードの孫で名君との評判高いキース(Prince Keath, Lord Campbell)が王位に就いていて、その嫡男のフレイザー(Fraser)は公王国海軍に中佐として務めています。
 公王に忠誠を誓い、自領を治めるのが世襲の貴族たちです。称号は下から騎士(Knight)、領主(Lord)、辺境伯(Margrave)、子爵(Viscount)、伯爵(Count)、大男爵(Earl)となっていて、公王は絶対君主ではなく国を代表する貴族として(憲法の定める範囲内で)君臨しています。カレドンは古めかしい封建社会ではありますが、爵位は平民にとって手が届かないものではありません。王室への卓越した貢献が認められれば、誰でも貴族に採り立てられる可能性はあるのです。
 公王国は第三帝国やダンシニー連合とは友好的な関係を築いていますが、ソロマニ連合に対しては警戒心を抱いています。また、公王国とカーリルの企業同士による熾烈な競争で両国はますます対立を深めていて、キース公王はカーリル合州国の政変を注視しています。
 カレドン政府には王立郵便公社(Royal Mail Service)やカレドン研究所(Caledon Research Institute)や公王国偵察局(Principality Scout Service)のように、第三帝国を手本にした組織がいくつも存在します。同様に、カレドン国防軍(Caledonian Defence Forces)は陸軍・海軍・海兵隊の三軍制が採用されています。基本的にTL12(精鋭部隊はTL13)で編成される国防軍は帝国軍と共同訓練を実施し、同じ戦闘教義を採用しています。和約によって緩衝地帯の内側への軍艦の直接売却は厳しく制限されていますが、帝国とはジャンプ-3の旧式艦の設計図を共有していて、国防軍「独自」の艦艇を建造することができます。
 近年、公王国は貴族同士の派閥争いに揺れています。現王朝が下剋上によって誕生したという前例もあり、貴族たちはより安定した権力基盤を求め、そして対立派閥同士の抗争も目立つようになってきました。小規模な反乱や私兵の増強、政治的謀略は明らかに増加傾向にあり、そう遠くない将来に新たな危機を迎えるかもしれません。
(※Earlの一般的な訳語は「伯爵」ですが、カレドンには同じく「伯爵」と訳されるCountもあるため、Earlの元来の意味である「Baronの中のBaron」から「大男爵」を造語しました)

和諧同盟 Union of Harmony
総人口:330億人(アスラン6割、ウレーン極少数)
公用語:トロールなど様々(おそらく中国語も)
 リーヴァーズ・ディープ宙域とダーク・ネビュラ宙域の境界上にある、3星域にまたがる独立国です。この国には人類とアスラン、そしてウレーンが住んでいます。国民の多数派はアスランですが、政治の実権は人類が握っているため、周辺からは人類国家とみなされています。
 同盟の起源は、恒星間戦争時代に(主に華人系の)地球人がファースト・ロー(1037)に建設した入植地にまで遡ります。またウレーンは、-1400年頃にアスランと接触して協力関係を築きました。そしてアスラン国境戦争が勃発すると、人類は「天的聯盟(Celestial League)」の旗の下に集って抵抗していましたが、フトホァーの和約の締結によってこの近辺が緩衝地帯になると、明確な「敵」を失った聯盟は徐々に内部分裂を起こして崩壊していきました。
 時は流れてソロマニ自治区が設置されると、ソロマニ人は交易と「伝道」を兼ねて緩衝地帯の人類星系を訪れるようになりましたが、それは旧天的聯盟やウレーンが(人類と)住む星々も例外ではありませんでした。結果的にソロマニ主義は浸透しませんでしたが、やがてソロマニ連合との交易関係を深めるべく人類が主体となって再結集の機運が高まり、856年に現在の「和諧同盟」が誕生しました。同盟は複数首都制を採用し、1つは旧聯盟の首都だったギュスターヴ(0737)に、もう1つはウレーンの母星であるウル(ダーク・ネビュラ宙域 0603)に置かれました。
 同盟は領土規模の割に人口が少なく(加えて総人口の約4割が宇宙港のない1星系に住むという歪さが拍車をかけています)、産業基盤が弱いこともあって近隣世界との貿易に依存していますが、距離と人口比の事情で、ソロマニ系企業よりもアスラン系企業の方が優勢に活動しているのが現実です。一方でソロマニ寄りの外交方針によって、アスラン氏族との間に若干の緊張と抑止力を生んでいます。
(※Celestial Leagueは現設定ではCelestime Leagueとなっていますが、意図と意味が不明なので旧設定のままにしています)


【国家(中小国)】
カーター技術立国 Carter Technocracy
総人口:43億人
公用語:銀河公用語(エンリス訛り)
 マーフィー星団のドリンサール側に位置する、カーター(1740)とその植民地ジェファーソン(1840)・グリフィン(1839)で833年に建国された小国です。ここの経済は、首都カーターから8パーセク圏内の人類やアスランに、この近辺では最先端のTL11製品(宇宙船や兵器を含む)を輸出することで成り立っています。
 建前上は代議制民主主義国ですが、工業家党(Industrialist Party)の一党支配が続いています。党は主要企業全ての取締役会に加わり、行政機能も完全に支配しています。1088年から政権を握る、工業家党党首であり技術立国書記長のドーラン・トレント(Doran Trent)は広く人気を集めており、元企業幹部の経歴を活かして政府のあらゆる舵取りを厳格に制御し、支持者には様々な「便宜」を図っています。
 カーターは何世紀にも渡ってそれなりの繁栄と独立を享受していましたが、現政権はソロマニ連合やカーリル合州国の影響力増大を危惧しています。小規模ながら良く訓練された陸海軍を保有しており、海賊行為や近隣星系からの侵入を防ぐには十分です。
(※「エンリス」がどこなのか、そもそも地名なのかも不明です)

ダンシニー連合 Confederation of Duncinae
総人口:1.5億人
公用語:銀河公用語(カレドン訛り)
 リーヴァーズ・ディープ宙域中央部にある小さな独立国です。人口は少なく、初期星間技術しか持ちませんが、5つの農業世界と3つの富裕世界を持ちます。ちなみに、隣接するコベントリー(1723)は正式な領土ではありませんが、760年から連合の流刑星とされています。
 現在の連合領の多くの星々は第二帝国時代に入植され、暗黒時代に技術を失ったものの、-200年頃にカレドン系の貿易商と再接触して技術を取り戻しました。帝国暦100年代にはカレドン侵略を目指すイルサラ帝国の支配下に置かれてしまいましたが、257年にダンシニー(1624)、ラナルド(1526)、フルトン(1524)の住民はカレドンの支援を受けて反乱を起こしました。イルサラ帝国の滅亡後、これらの星は公王国に加わったものの、第一次公王国内戦(309年~328年)の発生で避難民が流入し、それを機にダンシニー連合が分離独立しました(※避難民を遮るためでなく、避難民らが中立を宣言するための独立と思われます)。
 連合は「母国」カレドンとあらゆる面で双方に利益のある密接な関係を構築し、第三帝国とも属領経由の農産物輸出等で交流を深めていますが、一方で、隣のマールハイム大公国との緊張は徐々に高まっています。
 ダンシニー連合は、星系自治権と個人の自由が(公共の福祉に反しない限り)非常に重んじられる緩やかな繋がりの星間国家として統治されています。技術と能力の制約でジャンプ-2宇宙船の建造しかできませんが、海賊対策の小艦隊を配備しています。

マールハイム大公国 Grand Duchy of Marlheim
総人口:85億人
公用語:プラット語(略奪者俗語語派)
 8つの世界を支配する拡大主義・全体主義国家で、最後の《略奪者》の一人であるカタリーナ・タン提督(Admiral Katarine Tang)によって-347年に建国されました。当時彼女は消耗した艦隊が身を隠すのに丁度いい根拠地を欲していましたが、暗黒時代の荒波に疲弊したマールハイム(1230)の住民が強力な守護者を求めているのを知ると、マールハイムの「救世主」として初代大公に即位しました。《略奪者》としての残忍で冷酷な悪名とは打って変わって、彼女は大規模な防衛力を整備して文明文化を守り、統治者としての名声を高めていきました。カタリーナ大公の後継者たちは《略奪者》やアスランやイルサラ人の襲撃を何度も撃退し、フトホァーの和約の際には(調印当事者ではないものの)第三帝国との間で外交交渉に奔走しました。この功績で大公国は繁栄する帝国に迎え入れられるものと期待していましたが、実際には緩衝地帯に「見捨てられる」格好となり、大いに失望しました。
 800年代に入るとようやくTL11に回復し、ジャンプ-2の小艦隊を編成できるようになりました。すると大公国は、第三帝国・アスラン・ソロマニ連合といった列強から脆弱な土着文化を「保護」するという名目で、近隣星系に積極的に進出していきました。まずドラン(1129)を植民地化し、セント・デニス(1031)を征服しました。831年には高人口世界ペンダン(1231)に侵攻しましたが、技術の優越で損害こそ少なかったものの併合までには時間を要しました。拡大が再開されたのは1000年代になってからで、テオドーラ(1030)、ファスク(1028)、ミラク(1127)を相次いで併合し、1091年にはレストロウ(0926)が大公国への加盟を申請しました。
 現在のフェリクス大公(Grand Duke Felix)はさらなる領土拡張に強い関心を持ってはいますが、今は併合星系の抵抗勢力(特にテオドーラとミラクは未だに軍政下にあります)を抑え込むことを優先しています。また緊張の度合いを増しているダンシニー連合との関係も今後の課題です。
 なお、全体主義国のマールハイムが「文化の守護者」であるのは建前ではなく、意外にも芸術や出版分野を建国以来手厚く保護しています。
(※ちなみにペンダン星系は-1950年頃に入植され、-1010年にはアスラン(のおそらくイホテイ)の侵入を退けた、という故事があります)

ランヤード入植地 Lanyard Colonies
人口:1000万人
公用語:銀河公用語(リム方言)
 元々ここは暗黒時代にアスランが開拓していましたが、フトホァーの和約によって放棄されました。その後、995年頃にソロマニ・リム戦争でダイベイから逃れてきたソロマニ人が入植し、それぞれの星には最初の知事の名が付けられています。
 当初ソロマニ連合は入植地の農水産物の品質を高く評価し、財政・技術の両面で支援を行いました。1008年までは各知事に統治は任されていましたが、連合はランヤードを宙域進出の足掛かりに考え、干渉を強めました。しかしダーク・ネビュラ宙域方面での苦戦から緩衝地帯への関心が冷め、1096年以降はランヤードへの干渉は形だけとなったようです。


【その他政府】(※UWPの国籍コードが与えられていない政体)
グラリン集権 Gralyn Assemblage
人口:1億人(ドロイン5%)
公用語:銀河公用語(グラリン訛り)
 ドリンサール・ループにあるグラリン(1735)とその衛星オスコーオポィ、そして直轄領ボタニー・ベイ(1734)からなる政府です。加えて、農業世界アイヒー(1634)を治めるアイヒー開発公社(Aikhiy Development Trust)を、ヴェニス(1534)と共に営んでいます。
 -1893年から人類はオスコーオポィのドロインと交流するためにそこに定住しましたが、やがて暗黒時代になると、自分たちの存在が交易利潤を生まず貴重な資源に負荷をかけるだけとなったのでグラリンに移住しました。両者は共同で《略奪者》やアスランに対する星系防衛網を構築し、暗黒時代を無事に乗り切りました(-250年には自力でジャンプ技術を回復させていたそうです)。ソロマニ・リム戦争後には、運営企業の撤退で進退窮まったボタニー・ベイを統治下に治めています。
 現在のグラリンはその好立地を活かし、ドリンサール・ループを通じた交易で栄えています(密輸業者も同じ航路を利用していますが)。
(※ちなみに、アスラン世界ハテァリェ(1733)にある人類入植地の一つはグラリンからによるものです)

ダグラス大公国 Grand Duchy of Douglass
 ダグラス(1617)およびペントランド(1616)・ラナルク(1518)は「ダグラス大公国」を名乗っていますが、カレドン公王国と緊密な政治的・経済的繋がりを持っています。つまりは、公王国の直轄領よりも自治権が少々強いだけの半独立国に過ぎません。事実、公王国海軍の3つの造船所の1つはダグラスにあります。
(※現行のT5SSでは国籍コードがカレドンと同一になっているのはともかく、ラナルクが公王国領となっている誤植が…誤植とは言い切れないぐらいに、両国は一体化されています)

カーン世界連盟 Khan World League
人口:30億人
公用語:ブラス語(略奪者俗語語派)
 《略奪者国家》の生き残りであるカーン(0817)は、マリー(0716)、テンボ(0717)、サイン(0816)の3星系を厳しく統治していますが、1031年にイェディダー(0616)が離反したことでAクラス宇宙港を失い、艦の新造はおろか維持補修にすら苦労しているようです。

コラス統治領 Kolan Hegemony
人口:4億人
公用語:銀河公用語
 コラス(2313)、クラット(2315)、ロック(2214)の3星系からなるこの「統治領」の法的地位は曖昧で、星図にどう記すかは制作者の考え方次第です。多くの星図では単なる中立星系で、時折第三帝国の領土や属領とするものもあります。そして当然、コラスでは「独立国」です。
 この問題はアスラン国境戦争の後期まで遡ります。当時のコラスは6つの世界を治める《略奪者国家》でしたが、帝国はコラスを宙域進出の格好の足掛かりとして交渉を持ちかけ、コラス領を帝国に併合するが主権を残す、という合意に至りました。しかし時が立つにつれてガッシュ(2216)がコラスから独立し、ジェリム(2416)とメル(2414)も帝国の工作で吸収されました。次はロックの番だとの噂も絶えませんが、それでもコラスは主権を振りかざし、伝統に従って領地を治めています。

清浄教区 Purity Union
人口:80億人
公用語:銀河公用語
 ピューリティ(2440)とその属領パーガトリー(2239)は、清浄教が治める「教区」とされています。厳格な祭政一致社会ゆえにこれらの星系はアンバーゾーンに指定され、ソロマニ連合による併合の試みもうまくいっていません。
 教団は女性の預言者たちに導かれ、男性は不浄な二級市民扱いです。軍隊に入れるのも女性のみですが、その練度は高く、教団に絶対的に忠実です。
(※狂的な信仰心の裏には、不信心者は極寒の「煉獄(パーガトリー)」に送られてしまう、というのもあるようです)


【アスラン氏族】
ロァホール氏族 Loakhtarl clan
 リーヴァーズ・ディープ宙域史に大きな影響を与えたアスラン氏族ですが、今は最盛期の半分以下の勢力しかありません。
 古のクーシュー(ダーク・ネビュラ宙域 1226)では野心的な小氏族に過ぎませんでしたが、宇宙時代になると他の氏族や人類との競争を避けてエァリーオシーゥ宙域の奥深くに移住しました。そこで数世紀をかけて29選入りを伺うほどの勢力にまで成長しましたが、やがてリーヴァーズ・ディープ宙域での企業活動を隠れ蓑にして他氏族の進出を妨害していた「アスランらしからぬ振る舞い」を咎められ、最終的にはディープ宙域からの完全撤退を余儀なくされました。

トローヱァエァウィ氏族 Tralyeaeawi clan
 アスラン4大氏族の一角を占め、巨大企業レァスティーラオと関係が深く、広大な領地と全氏族の中でも最大の人口を保有しています。その歴史は古く、かの「最初のトラウフー(-2083年)」や「フトホァーの和約(380年)」にも関わっています。そして、ソロマニ・リム宙域に初めて到達し、ムアン・グウィ(ソロマニ・リム宙域 1717)やテラ(同 1827)に至る貿易航路を最初に確立した氏族でもあります。
 この氏族は人類や群小種族の登用に積極的で、「蛮族」を名誉あるフテイレに導く宣教師のような存在を抱えています。また寛容的な文化を持ち、形式に囚われず、上下関係も厳しくないため人類とは容易に付き合えますが、保守的な氏族からは大氏族に相応しくないと異端視されています。歴史的にイェーリャルイオー氏族とは常に対立していて、614年から693年にかけて氏族間大戦に発展したこともあります。

イェホソー氏族 Yehaso clan
本拠地:ロァオ(0237)
 -1000年頃にイェーリャルイオー氏族から独立した氏族です(が、今も友好関係にあります)。ロァオ星系のエァロー地方を本拠にしてフリケ(0530)とヒシーホ(0232)を治め、トーレァ(1226)も事実上の属領としています。


【企業・団体】
カレドン・ハイランダーズ Caledon Highlanders
本拠地:カレドン(1815)
 リーヴァーズ・ディープ宙域および隣接する帝国やソロマニ領内で活動する、人類の傭兵連隊です。可能な限りこの連隊はまとめて雇われ、最前線の先鋒や、民兵や新兵の訓練を担います。
 この部隊は1098年に公王国海兵隊を退役したウィリアム・フレイザー大佐(Colonel Sir William Fraser)によって結成され、部隊の戦闘能力は常に高く評価されています。彼らはこの10年、宙域内の小規模戦をくぐり抜け、その合間に鉱山開発企業の警備や新規入植地への駐屯、小国の軍事顧問など多様な任務に就いています。
 彼らは柔軟で効率的な組織であり、あらゆる状況で自己完結型の独立部隊として機能するようになっています。数少ない欠点は、財政面の弱さからくる最新式重火器の不足と恒星間輸送艦の欠如で、雇用主は自前で輸送手段を手配しなくてはなりません。
 連隊は3個歩兵大隊、開拓大隊、砲兵連隊、補給部隊で編成されています。開拓大隊は精鋭の偵察部隊で、本隊に先行して道を拓くことを目的としています。ハイランダーズの装備水準はTL13で、歩兵は熱迷彩型戦闘アーマーに磁気ライフル、RAM榴弾などを装備しています。彼らは交戦相手が自分たちよりTLで劣るように契約先を選びますが、幸いにもディープ宙域ではそれが普通です。

カレドン・ベンチャーズ Caledon Ventures, Ltd.
本社:カレドン(1815)
 リーヴァーズ・ディープの全域で積極的に販路を広げている、比較的若い企業です。カレドン属領のダンマーロウ(0921)に交易拠点を置き、そこから他の貿易企業(特にアスラン企業ハテューウィ)が独占していた市場に風穴を開けようとしています。
 同社は探検的な貿易任務のために、いくつものA2型外航貿易商船を運用しています。

カーリル運輸 Carellines Ltd.
本社:カーリル(2330)
 ディープ宙域全域で事業を展開しているカーリル系商社で、費用を度外視してでも確実に利益を上げることで知られる成長企業です。そのやり口は海賊すれすれですが、ディープ宙域独特の「緩い」政治情勢に助けられています。同社はカーリル政府と強い政治的繋がりがあり、時には自社の利益になるような政策誘導も行います。

ダカアル・コーポレーション Dakaar Corporation
本社:ダカアル(1821)
 本社のあるダカアル星系そのものを所有する星域規模企業です。同社は約300年前、ダカアルで豊富なランサナム鉱山を掘り当てた数人の独立鉱夫らによって設立されました。
 傘下企業には、ダカアルのランサナム鉱山の運営や星域内他星系の鉱物資源開発を行う「ダカアル・ミネラルズ」、小規模な商船団を運行して貿易や事業を展開している「ダカアル・トレーディング」、宙域内の(帝国とカーリル領内を除く)Cクラス以上の宇宙港で貨物から宇宙船まであらゆる商取引を仲介する「ダカアル・ブローカーズ」、民間探査企業「ダカアル・サーベイズ」があります。ダカアル星系そのものは社の最大資産であり続けていますが、傘下企業が持つ知名度や利益の総計はそれを遥かに上回ります。
 現在のダカアル社は、業績向上のためには非倫理・不道徳的商法どころか明らかな違法行為も厭わない悪徳企業です。経営理念は「逮捕されそうにないなら、やる価値はある」であり、実際、ドレールサール(2029)では盗品や非合法商品をテロリストや犯罪組織に何の躊躇いもなく売り渡していますし、20年前にカサンドラ(1924)の採掘権を失ったにも関わらず、今でも時折小惑星帯の違法採掘を行っています。
(※ダカアル・ミネラルズ社の悪行については「ラングルジゲー(知的種族)」「ラジャンジガル(星系)」の項目を参照のこと)

ハテューウィ Khtyuwi'
本社:ロァオ(0237)
 イェホソー氏族の商社です。商圏は緩衝地帯全域(のアスランが開拓した星系)とされていますが、主にエァ星域です。同社はロァホーイ(1224)の香辛料トラオシエーロフロウ(シーズンゴールド)やトーレァ(1226)のリッス香(Risthscent)の販売で知られていますが、他にもガージパジェ(1124)のガラス製品や美術品を取り扱っています。現在、エァ星域の独占市場を巡って新興のカレドン・ベンチャーズ社と激しく争っています。
 なお、イェホソー氏族とイェーリャルイオー氏族の関係から巨大企業トロソイェーロテールの子会社(や手先)と思われていますが、正しくは別会社です。
(※当初はこちらの方がトロソイェーロテールとされていましたが、後に『Book 7: Merchant Prince』で設定競合が起きたため、社名と設定が修整されました)

ローレァフテァ・フラヤーワォウヤー Larleaftea Hryawaowya
本社:ロァオ(0237)
 数世紀の歴史があり、アスラン領内でも最高級とされるロァオ造船所を持つ独立系大手造船企業です。その造船所には数々のアスラン氏族や企業が様々な用途(通商、探査、軍事など)の宇宙船を求めて訪れています。同社製造の船には、エイアイケイオール(英雄)級強襲揚陸艦、トレイオトレ(武将)級戦闘指揮艦、ストヤーオーゥ(勇敢な斥候)級索敵艦などがあります。
 その品質の高さからリーヴァーズ・ディープ宙域で有名な企業ですが、他にダーク・ネビュラ、エァリーオシーゥ、イオファハの各宙域に支社を置いています。

スコティアン・ディープ貿易社(SDTC) Scotian Deep Trading Company
本社:スターリング(1415)
 800年代にレジャップール(1218)のジャイヘ貿易で財を成し、1024年の王朝危機の際には当時の経営者ロバート・アームストロング(Robert, Lord Armstrong)がキャンベル卿(後のエドワード公王)に味方したことで、同社はスコティアン・ディープ星域に響き渡る名声と権力を得ることができました(※この記述から、アームストロング卿が領主(ロード)となったのは戦後と思われます)。
 SDTCは公王国外にも多くの交易拠点を持っています。

テレーイホーイ Teahleikhoi
本拠地:(おそらく)ラウ(0234)
 約150年の歴史を持つ連隊規模の典型的なアスラン傭兵部隊で、その名は「夕闇の兵士達」などの意味を持ちます。TL14で編成された部隊はリーヴァーズ・ディープ宙域各地で作戦に従事しており、正規の氏族戦争から人類相手の「掟なき戦い」まで、1個中隊で十分な小規模戦から連隊全体の連携が問われる大規模戦まで、様々な任務を遂行できます。
 著名な造船企業であるローレァフテァ・フラヤーワォウヤー製の艦艇は部隊の機動力と補給能力を支え、活動に不可欠な存在です。部隊は中隊規模輸送艦9隻、指揮艦3隻、そして大規模作戦用の5000トン大型輸送艦を保有し、特に最後のものは戦闘機中隊や後方支援部隊も運ぶことができます。
 部隊はアスランに限らず様々な政府に雇われていますが、それには歴代(の未婚女性)経営者の出身であるイーフルァ氏族の意向が含まれており、氏族の影響力拡大に貢献しています。
(※イーフルァ氏族は、本拠地がラウ星系であることと、ディープ以外にエァリーオシーゥ宙域とイオファハ宙域に領地を持っていること以外に詳細な設定はありません)


【参考文献】
・Ascent to Anekthor (Gamelords)
・Pilots Guide to the Drexilthar Subsector (Gamelords)
・Book 7: Merchant Prince (Game Designers' Workshop)
・Double Adventure 6: Night of Conquest (Game Designers' Workshop)
・Journal of the Travellers' Aid Society #12 (Game Designers' Workshop)
・Travellers' Digest #16 (Digest Group Publications)
・Traveller Chronicle #5, #6, #7 (Sword of the Knight Publications)
・GURPS Traveller: Alien Race Vol.2, 4 (Steve Jackson Games)
・GURPS Traveller: Humaniti (Steve Jackson Games)
・Traveller20: The Traveller's Handbook (QuickLink Interactive)
・Deep and the Dark (Mongoose Publishing)
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宙域散歩(25) コーベ星域(クルーシス・マージン宙域)

2023-11-23 | Traveller
コーベ星域(クルーシス・マージン宙域I)

オカヤ      0121 A6298C9-A                    A 104 Gf M3V        
スワ        0123 D7C5305-9   低人・非水         100 Na M1V        
ウダ        0124 C641238-5   低技・低人・貧困   703 Na F4V        
キルチュ    0129 C431141-6   低人・貧困         400 Na F3V M1V    
オーダテ    0222 A541643-A   非工・貧困         400 Gf M0V        
コーベ      0225 A5536B9-B K 非工・貧困       A 601 Ko M1V M3V    
イイダ      0227 D8C4894-9   非水               300 Na M3V M9V    
ニッコー    0321 E764887-6   富裕               420 Na M2V        
ミト        0322 D8B9410-9   非工・非水         214 Na M0V        
ホンジョー  0324 C527598-8   非工               810 Na G0V M0V    
アキタ      0326 B568779-A   農業・富裕         604 Ko K6V M3V    
オキ        0330 B424699-B   非工               600 Na M1V        
ビワ        0421 D527899-7                      122 Na F9V M0V    
クジ        0423 B566624-8   農業・非工         600 Na K8V        
ドーゴ      0428 E434878-6                      624 Na G8V M1V M3V
キターレ    0521 D310487-9   非工               114 Na M1V        
モリ        0526 C560547-4   砂漠・低技・非工   100 Na G9V        
ドーゼン    0530 C664612-7   農業・非工         300 Na M3V        
マララル    0621 C564773-8   農業・富裕         304 Na K4V        
クレ        0623 A544758-B K 農業               720 Na M3V        
ツ          0627 D536767-7                      302 Os K1V M3V    オーサカが統治
ガーブラ・トゥーラ 0722 A696775-A   農業               800 Na F8V M8V    
ムッド・ガシ 0724 C424502-A   非工               904 Na M2V        
ワジール    0725 A310642-B   非工・非農         300 Na A6V G1V    
オーサカ    0727 A867884-C K 高技・富裕・緑地   613 Os M1V        
イセ        0729 B641538-9   非工・非農         100 Sy F5V        
カムチナ    0823 C000461-7   小惑・非農         520 Na F5V M1V M4V
ブーラ      0827 B310487-A   非工               312 Os M2V        
ガリッサ    0829 A6A9844-B   非水               400 Sy M3V        
タナ        0830 C8A7627-9   非工・非水         404 Sy M2V        

 コーベ星域には30の星系があり、総人口は約28億人です。最も人口が多いのはドーゴとオーサカの6億人で、最も高いTLはオーサカの12です。全星系が帝国の傘下にはなく、人類以外の知的種族はほぼ居住していません。

【ライブラリ・データ】
クルーシス・マージン宙域 Crucis Margin sector
 この宙域は帝国領の外、銀河辺境/回転尾(リムワード/トレイリング)方面に位置します。ここへはククリーがある程度の影響力を持っていますが、それ以上に影響を持つ大国は(宙域内に領土を持たない)ハイヴ連邦です。ハイヴの貿易船は宙域内の至る所で見かけられます。なお、ハイヴは何事も裏から操りたがる特性があるため、どの星がどの程度ハイヴの影響下にあるかは見た目にはわかりません。
 この方面へ入植が始まったのは「人類の支配(第二帝国)」期で、この時はまばらに入植地が作られただけでしたが、やがて帝国の内情が悪化していくと人々はより良い住処を求めて難民となって押し寄せてきました。暗黒時代にはいくつかの星が恒星間航行を維持し、中には新たに植民地を抱えることもありましたが、やがてそのほとんどは独自の道を歩んでいきました。-200年頃には隣接するゲイトウェイ宙域からの入植が始まり、特に銀河核(コアワード)方面の星系に大きな影響と強固な結びつきを与えましたが、結局、宙域全体を覆うような統一国家は誕生せず、今もクルーシス・マージン宙域は独立星系と小国が散在したままです。
(※ちなみに、コーベ星域の辺りともなると他所よりはハイヴ船が訪れることは少なく、むしろソロマニ連合籍の貿易船の方が見られるそうです。それは通商や旅行目的だけではなく、対帝国を睨んだ調略や謀略も含まれ……)

大オーサカ Greater Osaka
 かつてシズリン帝国(Syzlin Empire)の一部であったオーサカ(0727)は、778年の流血革命によって独立しました。これを発端に崩壊したシズリン帝国はツ(0627)やブーラ(0827)を放棄したため、オーサカ軍は抵抗されることなくそれらに進出することができました。
 前星間技術だったツ星系はオーサカによる「解放」を歓迎し、進んでその傘下に入りました。ブーラ星系は帝国支配下では単なる前哨基地に過ぎませんでしたが、撤退後には小さな入植地が建設されてオーサカ海軍の補給拠点となりました。やがてそれは人口3万の街にまで発展し、星系自治が営まれるまでになりました。
 こうして誕生した大オーサカは、恒星間国家というよりも小植民地を抱える星系政府と言った方が適切です。しかしながらオーサカの星域内最高の技術基盤と「2星系を支配している」という事実は一定の威信を得ており、外世界との取引において有利に働いています。
 大オーサカは領土拡大に興味を持っていませんが、シズリンによる再併合を阻止するために惑星防衛艦主体の防衛力を保持しています。ジャンプ能力を持たないこの惑星防衛艦を輸送するのはオーサカ特有の「ジャンプ・スピンドル」と呼ばれる商艦で、平時はこのスピンドルに燃料タンクと貨物モジュールを接続して貨物船として運用しながら、戦時には砲塔や戦闘機格納庫のモジュールを施したり、惑星防衛艦を4隻接続して運ぶなど、星系間防衛作戦の機動力を担保する存在です。
(※オーサカは「Overlords」が治めているらしいのですが、今も昔も政治形態は8(官僚制)なので、大阪っぽくするなら「五大老の下に官僚機構がある」ような感じでしょうか)

コーベ企業共和国 Corporate Republic of Kobe
 コーベ(0225)は「企業国家」であり、全人口が「コーベ・コーポレーション(Kobe Corporation)」の従業員でもあります。企業共和国は小さいながらも非常に繁栄しており、クルーシス・マージンとグリマードリフト・リーチの両宙域に商圏を持っています。貿易船は主に近隣星域しか行き来しませんが、コーベの資本は数々の星系の事業に分散投資されています。
 大オーサカとの関係は今のところ良好で、人材交流も盛んであり、毎年のようにモリ(0526)で合同軍事演習も行われています。
 コーベ軍は小規模ではありますがTL12艦艇を購入配備しており、また企業共和国が危機にさらされた際には複数の友好星系から艦船を借用できるよう提携を結んでいます。つまりコーベとの戦争はその背後の様々な勢力を敵に回すことになり、そのこと自体が抑止力になっているのです。
 またコーベは非対称戦を得意とし、通商破壊や軍基地へのテロ攻撃、離間の計など何をしてくるかわからない不気味さがあります。そしてコーベが外交や通商や政治の道具として秘密工作を普段から使っているのではないかという疑惑すら持たれています。
(※「企業共和国(Corporate Republic)」とは、巨大化した企業が政府に成り代わった政体を指す言葉で、共和制であることを意味しません)
(※コーベ星系の政治形態は、旧設定では1(企業統治)でしたがB(非カリスマ独裁制)に変更されたということは、社長職や経営幹部が世襲ないしは特権階級化しているのを表しているのかもしれません)
(※ちなみに「corporation」には株式会社と地方自治体の両方の意味があります)


シズリン共和国 Syzlin Republic
 クルーシス・マージン宙域にあるシズリン共和国は、宙域の中でも新参の、しかしながら広い領土を持つ国です。
 帝国暦-150年に誕生したシズリン帝国は、最盛期の500年頃には24星系を治める大国でした。しかし778年のオーサカの反乱がきっかけとなって帝国は崩壊し、その後は内戦と改革の嵐が吹き荒れました。803年に「共和国」として再興したシズリンは、旧帝国時代の気風と野心はそのままに再拡大に転じ、950年には14星系、現在では17星系を治めるまでに回復しています。
 共和国の首都はシズリン(0831)にあり、そこから傘下星系が統治されています。政治形態はどの星でも民主主義のはずですがその濃淡は星系ごとに異なり、官僚化や形骸化が進んでいる星もあります。そして特徴として、加盟星系は警察権を除いていかなる軍事力の保有は許されず、それらはシズリン大統領の直接管理下に置かれることです。
 外交政策は尊大かつ拡大主義的です。貿易船や軍艦は「自由航行権」を主張し、力でそれを押し付けようとします。共和国から派遣された「顧問団」が近隣の様々な独立世界に現れては、シズリンに靡きそうな政府(や反体制派)に軍事・経済・技術のあらゆる面で援助を行うことも有名です。そして、それらが不調に終われば軍事侵攻も辞しません。

グリマードリフト連邦 Glimmerdrift Federation
 グリマードリフト宙域(とクルーシス・マージン宙域の極一部)に広がるグリマードリフト連邦は、1090年に旧グリマードリフト交易組合(GTC)を核にして周辺星系が加盟して誕生した恒星間国家です。
 政治組織は旧GTCを継承し、加盟世界の自治権と経済連携を重んじた上で相互防衛活動による結束を高めています。領内には人類以外に、数世代を経て地元文化に溶け込んだヴァルグルや様々な種族が住んでいます。また、ククリーの〈二千世界〉とは以前から友好関係にあります。
 連邦船籍の商船は宙域を越えて〈第三帝国〉領内まで出向いていますが、加盟星系外に企業が進出することはまずありません。逆に、外国企業は加盟星系では事実上締め出されています。
(※GTC自体は公式設定ですが、連邦に関する部分は非公式設定の帳尻を合わせた独自設定です)

イセ Ise 0729 B641538-9 非工・非農 Sy
 シズリン海軍の遊撃艦隊(Ranger Fleet)はこの世界を拠点とし、最前線であるこの星の防衛任務と同時にトレイリング方面国境内外にも睨みを効かせています。
(※UWP上では海軍基地は存在しませんが、Bクラス軌道宇宙港でどうにかしているのでしょうか)

アキタ Akita 0326 B568779-A 農業・富裕 Ko
 100年ほど前はこの星の全ては(コーベ社の意を汲んだ)民主議会が統治していました。しかしその後の旺盛な人口増加によって、今では(あくまで星系内では)コーベ社に対抗しうるだけの力をつけた地元有力企業らがそれぞれ「企業城下町」をつくり、独自の「社則」を制定している有様です。
(※政治形態が4(間接民主制)から7(小国分裂)に変更されましたし、人口がコーベの10倍になってしまったのでこんな独自設定をこしらえてみました)

クレ Kure 0623 A544758-B K 農業 Na
 ツァボ・リーチ(Tsavo Reach)の端に位置するクレは、人口7000万の有力星系です。統治を担う評議会は企業経営者や行政各局の長で構成され、全ての問題において市民投票の結果を尊重することが法律で義務付けられてはいますが、立法と行政の二権を握っています。
 経済立国を標榜するクレは軽武装路線を採り、駆逐艦程度の艦艇しかない海軍は主に地場航路を守るためにあります。商業は星系収入の大きな柱であり、宇宙船の建造や、ツァボ・リーチを抜けてグリマードリフト・リーチ宙域方面に向かう貨物船の入港料などで利益を得ています。
 クレは定期航路のあるコーベと友好関係にある一方、長年の貿易紛争の相手である大オーサカとはそうではありません。

ツァボ・リーチ Tsavo Reach
 クルーシス・マージン宙域の4星域・29星系に跨る星団の名称です。星図上ではちょうどシズリン共和国や大オーサカの外側を迂回するかのように並んでいます。

カーヒリ Karhyri
母星:スフィリ(クルーシス・マージン宙域 0439)
 カーヒリは平均身長2メートル弱で直立二足歩行をする温血の知的種族で、人類からは「嘴のある爬虫類」のように見えます。彼らには男性と女性に加えて「護性」と呼ぶべき第三の中性が存在します。護性のカーヒリには子育てや子供を守る役割がありますが、生殖にも関わっているという説もあります。また、全てのカーヒリは性とは別に遺伝的に定められたと思われる3つの社会層(翼、尾、一般)のどれかに属し、それぞれ微妙に体格や精神性に差異があります。
 カーヒリは-2500年頃に亜光速宇宙船でカルド(同 0440)に進出した際、遥か昔に遭難したハイヴの宇宙船を発見しました。その50年後には彼らは拙いながらもジャンプ宇宙船を完成させ、近隣5星系への植民も果たしました。そして-2000年代には、難破船の乗組員の遺骨を故郷に帰すために当時の技術では途方もない旅に赴きました。しかしこれは、彼らにとって当然の行いなのです。
 なぜなら、カーヒリの社会は名誉をあらゆる物事の規範に据えています。一例として、彼らには商取引規制の概念がありませんが、これは誠実さや正しさによって信頼が担保されているからです。そして同時に彼らは他種族であっても自分たちと同じ高潔さを求め、監視を怠りません。
 話を戻して、とうとうカーヒリはハイヴ領まで遺骨を届けられたのですが、カーヒリにとっては崇高な行いであっても、ハイヴにしてみれば忘れ去られた大昔の行方不明者の死亡が確認されたに過ぎませんでした。この「冷たい対応」に加えて、無駄足となった帰路でカーヒリ乗組員に殉職者が出たこともあって、カーヒリは今もハイヴを軽蔑し、全く信用していません。たとえ彼らの基準ではあっても、名誉を解さない「獣に等しい」ハイヴは対等の知的種族とは見なせないのです。また、隣接する人類国家シズリン共和国とは緊張関係にあるため、シズリンを挟んで反対側にあり共通の敵を持つ大オーサカと協調しています。
 種族としてのカーヒリは「名誉への奉仕者」と呼ばれる司祭と行政官を併せ持ったような社会階層によって統治され、保守的で厳格な変化の少ない社会を構築し、現状に満足して領土拡大にも興味はないのですが、個人や小集団が気ままに宇宙を放浪していることはよくあります。宙域内で最もよく見られるのは300トン級の小型船です。


余談:コーベ星域になぜ和名星系が多いのかについては、正しくは元ネタを書いたJudges Guildの人に聞くしかないのですが、公式設定から想像すると、地球連合か第二帝国の時代に探査を行った際に日系ソロマニ人の担当者が深い意味もなく命名していった……あたりが妥当ではないかと思います。初期入植者が日系人ばかりだったというのは、入植者の多くが「第二帝国からの難民」という公式設定と照らし合わせると無理がありますし。とはいえ「どことなく和風文化がある(靴を脱いで家に入るとか、ライスを箸で食べるとか、名字が名前の先に来るとか、訛りが関西弁とか……)」とするのが、わざわざこの星域で遊ぶ理由の一つにはなろうかと思います。ここは〈帝国〉の外ですし、公式設定もこの先おそらく増えないでしょうから、好き勝手にしても大丈夫でしょう(実際、今回もブーラやアキタの設定で拡大解釈をしていますし)。
 また、オーサカ視点で星図に貿易航路を引いてみると色々と見えてくるものがあります。TL12のオーサカが持ってておかしくないのはジャンプ-3なので、次の寄港星はワジール、モリ、ドーゴのどれか(星域外はとりあえず無視)。モリ経由でコーベ方面に向かう航路よりも、ワジールからガーブラ・トゥーラに抜ける(クレとは仲が悪い設定があるので、行きたければワジールで乗り換え)航路の方が栄えている感じなので、コーベとの関係は設定ほどには仲良くはない(そこそこ程度?)でしょうし、ワジールは物流の拠点として栄えていそうです(環境的には輸入依存社会に見えるので、何か有力資源がある?)。リム方面ではイセ港が使えないオーサカの船はドーゴをハブとして様々な星に行くことになりますが、そのドーゴはEクラス宇宙港ですから明らかにガスジャイアントで燃料補給だけして去っています。ということはドーゴには魅力的な貿易産品が本当になさそうです。その割に人口は星域屈指の多さなので何か理由が考えられそう……。
 一方、コーベから見るとクジ経由クレ行きの航路は太そうだからクジとも友好的だろうとか、いくら重商主義のグリーマードリフト連邦でもコーベ~オーダテ間の定期航路ぐらいはありそうとか……こうやって設定を詰めていくのは大変ですが(好きな人には)楽しい作業ですので、空想の宇宙を旅してみるのはいかがでしょうか。繰り返しになりますが、おそらく公式設定は今後増えないでしょうから何をやっても安心です(笑)。


【参考文献】
・Gateway to Destiny(Quicklink Interactive)
・Traveller Wiki
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宇宙港 ~未知への玄関口~ 第4集:宇宙港での遭遇

2022-07-15 | Traveller

「開拓者は未開の荒野で生計を立て、勇敢な貿易商人は辺境で商売する。とは言うものの、宇宙港は良くも悪くも人と人が触れ合う場所であることに変わりはない。6週間、誰とも会わなかった事がある。その時、ある男が錆びついたボロ貨物船でやってきて燃料を買い、何かの動物の毛皮と怪しげな異星の文献を売ろうとし、そして足を引きずりながら帰っていった。そいつの隣りにいた奴は少し風変わりだった――何と言うか、普通だったんだ」
――辺境港の二等整備士、ジム・ドゥガン


 「宇宙港への旅」は、見知らぬ人々との出会い、異星の品々の売買、そして新たな冒険に巻き込まれる機会でもあります。宇宙港の利用者は、普段なら決して接点がないような平凡な日常の枠を超えた特別な人々です。もちろん、ほとんどの人はただの利用客に過ぎませんが、中には常人が経験できないようなことを見たり聞いたりしてきた人たちもいます。貴族、官僚、芸能人、写真家、帰還兵、新婚夫婦、逃亡者、諜報員…等々。彼らには語られるべき物語があり、明かされるべき秘密があり、実現すべき夢があります。そういった人々と同じ時を過ごせるのが宇宙港の特性です。
 更に、宇宙港での日常には大小様々な事件がつきものです。多くの場合、港の内部では地元よりも多くの物事が起きていますし、新開発の技術産品、知られざる生物、神秘的な宝物といった物が宇宙港に流れ込んできています。港内では陰謀が練られ、犯罪が捜査され、探検が企図され、個人では到底解明しきれないほどです。実際、宇宙港内をうろうろしていれば面白いことが起こるのは時間の問題です。もちろん「面白い」にはかなりの幅があって、そのどれもが安全というわけでもありません。しかし、冒険をしたくないのなら、なぜ「旅人(トラベラー)」になったのですか?


■地元対策
 「地元対策」というと、宇宙港と地元政府との関係のみを指すと思われがちですが、そうではありません。港長は地元住民の懸念にも向き合わなくてはなりません。多くの場合は騒音や公害への苦情に耳を傾け、地元企業や労働組合の代表との折衝を行います。宇宙港があること自体は帝国にとっても星系経済にとっても良いことですが、(真実でも妄想でも)不満を持つ人は必ずいます。当然ながら、連絡室は港長や広報課、その他の適切な部署と連携して、こうした懸念の多くを処理します。このような問題はしばしば頭痛の種となり、多くの事務処理を必要としますが、一般的に宇宙港運営を脅かすことはありません。とはいえ、港長を生き地獄に落とす個人や集団はいくらでもいて、こういった連中の多くは地元住民からも支持されていませんが、それでも彼らやその主張を簡単に無視するわけにもいきません。宇宙港は必然的に誰かには迷惑をかける存在ですが、迷惑を受けた人が逆に港や他人の迷惑にならないようにするのが港長と連絡室の仕事なのです。

 広大な敷地に多くの人々が行き交い、様々な物質が保管されている地上港が、色々な意味で汚染源となることは否めません。人にも環境にも安全な港にするためにあらゆる努力が払われていますが、間違える可能性は常にあります。野生動物の生息地が破壊されたり、貴重な水源が枯れたり、飛行生物が宇宙船の離着陸で悪影響を受けたりすることもあります。他にも燃料や危険物質の流出で、周辺の環境はおろか住民に危険をもたらす可能性もあります。
 そのため、宇宙港はこれら潜在的脅威を危惧する団体に責められることがあります。そういった団体の中には、「汎銀河生命友愛協会(Pan-Galactic Friends of Life)」のような真っ当で、帝国でもかなりの影響力を持つものから、理解や解決が不可能な主張を並べ立てる先鋭過激派まであり、それらを的確に識別して丁重に扱い、最善の利益に繋げなくてはなりません。

 ほとんどの港長は地元の経済や雇用を最大化しようとしていますが、経済が不安定な世界では宇宙港が雇用を奪っていると見られることもありえます。例えそれが真実ではなくとも、港務局はその懸念を払拭するためにできる限りのことをします。広報課や連絡室が公開講座や教育啓発を行って、宇宙港がどのようにして地元世界を星間経済に結び付けているかを広めることで、「地元に有害なもの」と思われていた宇宙港を少しずつでも「おらが星のもの」に変えていくのです。
 そして、宇宙港は義務教育時の職場見学(や修学旅行)でよく選ばれる場所であり(※帝国宇宙港は基本的にTL12以上で運用されていますから、特に低TL世界の子供たちにとっては帝国市民として「標準的星間文明」に触れられる良い機会になります)、港務局はその幼少期の体験を大切にしています。少なくとも、港務局職員の多くが自己の職業人生の原点として挙げています。
 このような広報の苦労は必ずしも報われるとは限りませんが、港長の心労を少しは減らしているのは間違いないでしょう。

 上記のように、プレイヤーキャラクターが全員、港長を含めた宇宙港幹部となるシナリオ(キャンペーン)は興味深いものとなります。幹部には大きな責任と権限があり、これを利用しない手はありません。確かにその仕事のほとんど退屈なものですが、そういったものを再現するのではなく、港長を「一地方の領主」と捉えるとシナリオの焦点が見えてきます。災害の防止や初期対応、政府高官の視察、地元問題への対処は、頻発こそしないものの物語を盛り上げる要素となりえます。
 そして、平凡な日常も一工夫があれば波乱に満ちたものとなります。宇宙船の定時運行は整備員が職場放棄してしまえば困難になりますし、儀礼にうるさいアスラン使節団を満足させながら悪徳記者に対処するのは腕前を試される局面です。いくら権限があってもそれは万能ではなく、能力と物資と職責の限界から来る二律背反に苦しむこともあるでしょう。宇宙港の日々は常に刺激に満ちているわけでがありませんが、面白くなる時は実に面白くなるのです。

■港内従業員
 販売店や各種窓口、宿泊施設に勤務する従業員は、己がよく接する客層に応じた様々な噂や情報を見聞きしていることが多いです。特に「大人の遊び場」で働く人々は格好の情報源となりえます(港務局はあからさまな歓楽街を港内にはなかなか建設させませんが)。

■犯罪への誘惑
 違法の物品をいかにして安全・確実に税関を通過させるか、犯罪者や闇の商売人たちは常に頭を悩ませています。宇宙港にいる旅客や失業した船員に「うまい話」を持ちかけるだけでなく、旅行者本人すら気付かぬうちに密輸の片棒を担がせようともします。
 また、宇宙港で旅客は多額の金品を持ち歩きがちですし、普段は容易に近付けない支配階層や富裕層も出入りするので、スリや窃盗、時には(極めて異例ですが)暗殺すら行われる場所でもあります。
 逆に、警察が「おとり捜査」を仕掛ける場合もあります。もし港で倉庫への侵入など「簡単で妙に美味い話」を耳にしたのなら、それは覆面捜査員から流された罠かもしれません。そして捕まれば、長期の服役を強いられるか、内通者として捜査機関に情報を提供する危険な役目を引き受けるかのどちらかです。

■ロボット
 よほど低TLで運用されていない限り、宇宙港では動く歩道や小型の乗り物で人や物の移動が行われています。よくあるのは2~6人乗りの電動車両「ポートサイダー(Portsider)」で、後部コンテナに荷物を積んで運ぶ「ポートサイダー・ミュール(Portsider Mule)」や、それら客車・貨車を複数連結して牽引する「ロングサイダー(Longsider)」もあります。基本的にこれらは特定経路を走行する自動運転か、職員による手動運転です。基本的に密閉空間である港内施設では反重力化する利点が乏しいため、安価な車輪型が一般的です(もちろん構内の造りによっては反重力化した方が良い場合もありますが、その際は必ず規定された航路を走行します)。
 また、旅客の手荷物を運びながら付いていくことに特化した「キャリーボット(Carrybot)」もあり、基本的には車輪型ですが、大量の荷物を空中で運べるように大型化・反重力化されたものを運用している宇宙港もあります。

 他に、警備、清掃、販売、医療などの分野でも(TL次第で)ロボットが活用されていることがあるでしょう。順調に動いている時は非常に頼もしい存在ですが、故障や誤動作、そして悪意を持って意図的に操られた時は――

■はぐれ人
 巨大港はもはや一つの都市ですから、当然のように行き先を見失う人も出てきます。迷子を保護すれば御礼や接点が得られるかもしれませんし、待ち合わせた相手がいつまでたっても来ないかもしれません。これぐらいなら笑い事で済ませられるかもしれませんが、では、警備責任者が勤務中に突然失踪したのなら……?

■騒乱
 地元惑星で内戦が起きて難民が宇宙港に押し寄せる、テロ組織が警備の隙を突いて宇宙港を占拠する、はたまた貧富の差への怒りで「富の象徴」である宇宙港を目指して暴徒となった住民が――。このように、いくら高度な警備体制を誇る宇宙港でも、攻撃に晒されることは(極稀とはいえ)ありえます。攻撃に至らなくても、宇宙港職員の舌禍で地元住民を怒らせてしまい、宇宙港に通じる幹線道路を抗議で封鎖されるようなことも起こり得ます。
 他に、地元政府が転覆して「外世界人の排除」に傾き、宇宙港および帝国との関係が一気に悪化することもありますし、宇宙港が対立する2つの種族(国家)の唯一の中立地帯であることもあるでしょう。「爆弾を仕掛けた」という情報が一つ寄せられただけでも、真偽を抜きにして様々な部署が動いて、無数の人々に影響が及ぶのは想像に難くありません。

■自然災害
 宇宙港で「遭遇」するのは人だけではありません。地震、洪水、酸性雨、地滑り、竜巻、熱波、豪雪、そして恒星フレアに隕石……。宇宙には様々な自然環境があり、人の脅威になるものも様々です(地盤沈下の原因が地下を掘り進む巨大生物のせいだとしたら…?)。また、爆発事故や飛散破片衝突といった人為的な災害も起こり得ます。ただし、まともな宇宙港は何重にも冗長性と安全性を確保しているので、何千人もの犠牲者が出たり、宇宙港の存続が脅かされるようなことはまずありませんし、そもそも物語として意外と面白みがないものです。天災、人災を問わず、災害を物語に利用するための要点は、キャラクター本人だけでなく、そのキャラクターが大切にしているもの(物品や知己、愛着ある地域そのもの)を危険に晒すことです。そうでなければほとんど機能しません。
 一方で、敵対し合う集団同士が悪天候で宇宙港に足止めされるなど、部外者や宇宙港職員の立場でも気まぐれな天候に振り回される物語の作り方はあります。他に、深刻な渋滞に巻き込まれたり、星系独自の祝日で思わぬ事態(店舗が全て休業するだけでも影響は甚大です)になるのも、一種の災害と言えるでしょう。

■軌道港
 宇宙港には地上港と軌道港の2種類がありますが、どちらも起こりうる出来事に大差はありません。しかし、プレイヤーに飽きられないためにも軌道港ならではの要素を知っておくのは、レフリーにとって損はありません。
 最もわかりやすい違いは、軌道港では巨大な宇宙船と出会えることです。大型船は基本的に非流線型のため、惑星地表への着陸が原則として不可能です。修理補修や補給のためには軌道港に寄るしかありません。ということは巨大な宇宙船を見られるだけでなく、その乗組員とも出会える可能性があるのです。彼らは零細の自由貿易商人とは違って「選ばれし者」であることを自認しており、大規模な貨物にも日常的に接しています。また、規模が大きくなることで、密航や密輸の隙も大きくなりがちです。
 軍艦もその多くが大型船の範疇に含まれるので、その乗組員と接触するには軌道港や軌道上基地に出向かなくてはなりません。弩級戦艦のような特別な艦は特別な港を母港としていますが、「異例の事態」がいくらでも起こりうるのが帝国というものなので、母港ではない港に居るだけで冒険の発端や現況を示す要素として使えます。
 そして軌道港の管理された脆い環境も、冒険として使えます。地上港で起こりうる災害は軌道港ではより破滅的なものとなりますし(火災一つでも深刻な事態になりえます)、悪人は環境をも人質に取ることができます。未知の生命体が大型船から軌道港に逃げ込むことだって――

■監査室が対処するもの
 宇宙港を舞台にした冒険をするなら、最もやりやすいのがプレイヤーを全員「港務局監査室」の所属にしてしまうものです。監査官と班員には独立した大きな権限が与えられていますし、任務に必要な装備品も支給されます。何よりも、導入が命令型になるのでせっかく用意したシナリオを拒否される恐れがないのが利点です。
 監査室の本来の仕事は諜報活動ではなく、宇宙港業務が滞りなく行われているか査閲することです。備品の数に間違いはないか、エアロックは確実に作動するか、食堂の衛生管理は適切か、職員の服務姿勢に問題はないか等々、宇宙港内部の不備不正に目を光らせ、腐敗する前に事前に摘み取るのが役目です。これらは確かに冒険にはなりそうもありませんが、たった一つの工作機械の紛失が大公暗殺計画の発端かもしれないのです。
 監査官のもう一つの仕事が、宇宙港事故の鑑識調査です。火災、倒壊、衝突など、宇宙港内で重大な事故が起きた際には監査官が現場に向かい、何が起きたのか、なぜ起きたのか、どうすれば再発を防げるのかを調べます。えてして関係者は責任を他人に押し付け合いますし、法律や雇用問題といった様々なしがらみも絡んできます。そんな中で監査官は科学的に客観的に、事故の真相を突き止めていくのです。

 話はずれますが、企業の「工作員」も宇宙港を活動の場としています。有名なところでは、巨大企業テュケラ運輸の警備部門である「ヴィミーン(Vemene)」が挙げられます。ヴィミーンは公的には海賊行為や乗っ取り、貨物の盗難や破壊工作を防ぐのが任務とされていますが、実際には合法・非合法を問わない手段で競合企業を潰そうとしているとの悪評は常にあります。近年ではオベルリンズ運輸との暗闘が囁かれていますが、規模では遥かに格下が相手であっても彼らに容赦はないのです。
 巨大企業に限らず企業は本音では独占を好み、他社を叩こうと虎視眈々と狙っています。そのため宇宙港では(極力)秘密裏に陰謀や交戦が繰り広げられる可能性が高いのです。レフリーはこのような紛争の存在と、それがプレイヤーキャラクターがいま居る宇宙港に波及する可能性を頭の隅に置いておく必要はあります。そして「通商戦争」が宇宙港の利益に反するのであれば、監査室はそれが燃え広がる前に鎮火させないとならないのです。
(※通商戦争では交戦社以外を巻き添えにするのは禁じ手とされていますが、工作員の不注意や失敗、活動の余波などで「貰い火」を食らう可能性はあります。そのせいで宇宙港の評判が落ちては港務局は堪りません)

■宇宙港を舞台にした「挑戦」
 海軍は時折、基地の保安体制を確かめるために「潜入者(スニーカー)」を雇い入れることがあります。帝国最難関の警備網を相手に腕試しをする潜入者は、宇宙船で封鎖線を破り防衛線すり抜け、基地の中枢に迫れば迫るほど報酬が増していきます。もちろん潜入者であることを示す特殊な信号は海軍から発給されていますが、身元を示す前に撃墜される恐れはあります。
(※同様のことを港務局が宇宙港で行っていても不思議ではないと思います)

 近年、帝国宇宙港では「ポートクール(Portkour)」という地下運動競技が流行しています。参加者は乗り物等の移動手段を使わずに、主催者が競技開始直前に指定してくる目的地まで一着を目指して走ります。どのような「道」を進むかは参加者の自由と自己責任であり、即興で待合室や危険物倉庫や屋上を飛び跳ね、あらゆる「障害」に構わず駆け抜けていくのです。もちろん港務局がこんな迷惑な競技を認める訳もなく、捕まれば厳しい罰を受けることとなります。
 もし貴方がこの開催情報を知ったら、誰かの勝ちに賭けますか、港務局に通報しますか、それとも自ら参加者となって賞金を掴もうとしますか…?


【参考文献】
・GURPS Traveller: Starports (Steve Jackson Games)
・Starports (Mongoose Publishing)
・Referees Briefing 3: Going Portside (Mongoose Publishing)
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宇宙港 ~未知への玄関口~ 第3集:港内施設と宙港街

2022-06-16 | Traveller

 宇宙港はその星の「顔」であるため、ほとんどの港では可能な限り清潔で整然とした状態を保とうと心がけています。例外は鉱石の積み込みのために建てられたような工業港ぐらいです。荒れ果てて整備が行き届いていない港は、訪れるのに危険なだけでなく、その星の政府や経済状況が荒れ果てていると見られます。そのため地元政府も、他の支出を切ってでも宇宙港への財政支援をやめないのですが、その結果、綺麗で効率的な宇宙港と荒廃した下町との間に激しい落差が生じることもありえます。
 訪問客の関心を惹くために何十、何百といった企業が競い合う宇宙港では、広告や呼び込みも派手になる傾向があります。注目を集める色や音だけでなく、人やロボットも時に活用されます。当然、行き過ぎた宣伝行為(客引きなど)は負の感情を呼び起こすので宇宙港当局も規制に乗り出しますが、いつの世もその規制のぎりぎりを攻める業者が最終的に勝つため、よほど厳格な統制が行われない限りは、港内は常に騒々しくも賑やかな様相を呈します。

■商業施設
 Cクラス以上の宇宙港には何らかの商業区画があります。ここで宇宙港で手に入る物やサービスを列挙するのは無理ですし、そもそも意味はありません。なぜなら旅人たちは、今、自分が必要な物があるかないかを知りたいだけなのですから。
 基本的にA・Bクラス宇宙港では、その経済規模と店舗の数ゆえにあらゆる商品(小物から宇宙船まで)を提供できるはずです。簡単に手に入らないのは、あまりに遠方の星で産出されるような稀少品か、違法な物か、レフリーの都合が悪い物ぐらいでしょう。
 逆にDクラスの小規模港では、商店の存在も含めて望む商品があるかどうかは運次第で、大抵はあっても地場産の土産物店程度です。Eクラス港に商店はなく、XT線を越えて街まで出掛けなければなりません。
 Cクラス港はその中間で、星間物流でありふれた商品や地元産品といった入手が容易な物なら手に入れられるでしょう。
 理髪店、修理屋、銀行などのサービス業は港の経済力に左右されます。大規模港には様々な業者が揃っていますが、小規模港では運輸会社の券売所しかないか、もしくはそれすらないかもしれません。
 なお帝国の宇宙港では基本的に関税がかからないため、港内の「免税店」というものもありません。

■宿泊施設
 旅行者が多くの時間を過ごすことになる宿泊施設は、休息と取引と社交と密会と陰謀の場です。多くの宇宙港では乗り換え客やしばらく滞在する人のために宿泊施設が用意されています。そのほとんどは港務局と契約した民間業者によるものです。
 宇宙港内にある宿泊施設は港の雰囲気に応じて様々であり、港の規模に比例して大型化・豪華化していきますが、粗末だが安い宿の需要がなくなるわけでもないので、探せば自分の身の丈に合った宿はきっと見つかります(Dクラス港以下では何もないことが多いので、近隣の街まで向かう必要はありますが)。

 「簡易宿泊所(Hostel)」は最低限の寝床を最低限の値段で提供する場所です。宿泊客は寝台と小さな私物入れ、共同のトイレとシャワーと洗濯機を利用することができます。経営形態によっては個室ではなく四人部屋、それどころか多数の寝台を一つの大部屋に並べてカーテンで仕切っているだけのこともありえます(団体は同じ部屋にしてくれますが、保証はありません)。衛生面などの理由から食事は提供されませんし、外部から持ち込むことも許されません。ただし港内の宿泊所は宙港街の安宿と違ってその衛生面には気を配っており、過度に不潔な人は(警告を経て)返金無しに警備員に追い出されることもあります。宿泊料は1泊10クレジット、1週間で50クレジットが定番です。長期滞在はお勧めできない環境ではありますが、禁止もされていません。また、民間の慈善団体や宗教組織が運営している場合は寄付金で運営されているので、無料か館内清掃の手伝いで宿泊できます。この手の慈善団体は隣接して無料の炊き出しを行っていることも多いのですが、全ての港長が風紀などの理由でこういったことに寛容というわけでもありません(逆に、公然/非公然に資金面等で支援する港長もいます)。

 Cクラス以上の一般的な宇宙港ホテルの一般的な客室には、快適に過ごすための清潔で平凡な調度品と映像投影媒体、通信回線への接続口が備えられています。よく「宇宙港ホテルの客室」と言われるものの9割方がこういった部屋で、特に軌道港では画一的な規格として建設されています。これにより建設期間が短縮され、価格も安価で済むのですが、多くの旅行者は行く先々で出くわす同じような部屋に飽き飽きし、より趣のある部屋を求めるようになります。このような部屋は1泊50クレジットで、1週間以上の滞在で1割引となります。

 宇宙港にいることを忘れるような最高級の部屋となると、豪華な浴室、大きな寝台、壮大な景色(本物か立体映像)、美食を誇るレストラン、様々な娯楽設備、24時間体制のルームサービス(ロボット化されている場合もあり)を備え、非常に広くて快適を極めます。こういった部屋の有無は港の交通量や経済力に左右されますが(主にBクラス港以上)、意外にもDクラス港でも不意の賓客に応対するために「貴賓室」の1つはあることもあります。この手の部屋は1泊250クレジットが最低線で、富裕層向け保養地の超豪華スイートルームともなると青天井です。
 余談になりますが、こういった豪華な部屋は星々を股にかけた詐欺の舞台にもなります。詐欺師たちはえてして、ジャンプ-10ドライブや超光速通信機や大裂溝の貴金属鉱山への投資を呼びかける際に、地元の人々に感銘と説得力を与えるためにここを利用するのです。

 長期滞在者向けの貸し部屋は、一般の賃貸物件を利用するほどでもない、数週間程度宇宙港やその近辺に滞在する必要のある出張者(遠方から派遣された建設現場の監督など)のために用意されています。部屋の広さや備え付けの家具は場所と料金次第で様々で、最低2週間の利用が求められます(早期退出は返金されないこともあります)。

■遊技施設
 賭博事業は宇宙港運営において、多大な利益も問題ももたらします。良い面は、賭博は収益性が高い上に諸経費が安く付きます。悪い面は、莫大な量の現金が動くことで詐欺や窃盗、賭博中毒の温床となることです。しかし、賭博を排除しても結局非合法賭博が開帳されるだけ、という考えもできますし、規制の中で運営される合法賭博の方が安心して遊べるともいえます。実際、合法カジノには「社交界的な」雰囲気があり、警備員によって暴力沙汰も抑止されているのは事実です。
 賭博事業を許可するかどうかは港長の判断次第で、大規模港の5%程度が禁止しています(その半分は軍基地からの要請です)。帝国宇宙港のカジノは全てが民間業者によるもので、その約7割はプロヴァース(Provace)、フィレンツェ(Firenze Ltd.)、シュバルツブッフ・レクリエーションズ(Schwarzbuch Recreations, LIC)といった星間大手遊技企業によって運営されています。なお、現地の法律を尊重するため、賭け事が禁止されている星系の住民は港内カジノを利用することはできません。

■娯楽・飲食施設
 劇場、映画館、水族館、展望台、音楽堂、格闘興行、庭園、美術館、水泳プール……、宇宙港の規模が大きくなり人通りが多くなれば多くなるほど、提供される娯楽も多種多彩となります。また、その星が観光業に力を入れているのなら、宇宙港から観光名所に向かうための旅行代理店や案内所もあることでしょう。
 同様に、飲食施設もDクラス港では軽食・立ち飲み程度だったのが、Aクラス港ともなれば宇宙各地の高級料理を堪能することができます。大衆向けの星間チェーン店も多く、ブリューベック(Brubek's)やアストロバーガー(Astroburgers)は各地の港で見かけます。

■礼拝施設
 ほとんどの大規模港には、数十~百名が収容可能の礼拝施設(通称「チャペル」)が少なくとも2つは用意されています。一つは無宗教で、旅行中に誰でも休憩したり瞑想したりできる簡素で静かな部屋です。もう一つは、様々な宗教の象徴物(もしくは立体映像)を配した部屋で、要望があれば特定の宗教の礼拝所に早変わりできます(※近隣にいれば聖職者も呼び出せます)。
 公共の礼拝施設は港務局が管理していますが、特定の宗教団体が港内の区画を借りて運営することも認められています。このような施設は建前上利潤を生むものではないため、賃料は港長の裁量で減免されることが多いです。その代わり、港内の一等地に置かれることもないでしょう。
 港内の礼拝施設には、他の公共空間とは異なる作法が存在します。中で静寂を破ったり、武器を公然と身に着けることは大変な無作法とされます(世の中には決闘の儀式がある宗派もありますが、それでも他者と同じ場にいる際には作法があります)。また商談や謀議など、精神的・宗教的なこと以外の雑談も無作法とされます。
 礼拝施設は罪人の逃亡先ではなく、もし逃げ込んでも警備員が実力で排除します(が、自首をしに来たのであれば別です)。また、港内で銃撃戦に巻き込まれた際に逃げ込み、自分が「無関係の第三者」であることを表明することもできます。このように非常時には人々が助けを求めてくる傾向があるため、所によっては耐火構造にしたり壁や扉を厚くするなど、安全面の配慮が行われることもあります。
(※『トラベラー』と宗教については後述します)

■求人施設
 全ての宇宙港には、失業中の乗組員と人手を求める船舶を引き合わせるために「斡旋所(Hiring Hall)」があります。Dクラス以下の宇宙港では、求職者が自分の資格や連絡先を載せるための単なる電子掲示板に過ぎませんが、大規模港になるとれっきとした就職案内所になり、その場で求職者が面接を受けることもできますし、帝国商務省から派遣された担当者が労働条件などの相談や苦情を聞いてくれます。
 ただし、多くの世界(特に辺境)では雇用主が零細の独立商人に偏りがちであることに注意が必要です。商船企業は一定の経済規模のある星にしか立ち寄らないからです。
(※ちなみに、技術者の人手不足と離職率の高さはいつの世も変わらないらしく、〈エンジニアリング〉技能持ちは宇宙船と宇宙港の双方で人材の奪い合いが起きているそうです)

■工場
 港務局が自ら工場を設置することはまず考えられませんが、土地を借りた民間業者が港内に、例えば輸出製品の製造工場を置くことはありえます。

■造船所
 恒星間宇宙船や小艇の建造・整備・改装・年次全般検査(オーバーホール)を行う機能を備えた施設です。役割の重複を避けるために造船所はほぼ民営化されており、平時は帝国海軍の軍艦すら民間企業に発注が行われていますが、基地司令官には有事の際に造船所を接収する権限があります。
 ほとんどの造船所は主要世界の周回軌道上(もしくは軌道港内)にありますが、真空の惑星・衛星の地表、または小惑星に置かれていることもあります。建造能力が小艇のみなら、地上港に併設されているかもしれません。

■重要区画
 「重要区画」とは、発電所(核融合・恒星光・風力…等々)、中央通信所、監視施設、管制塔など、そこが失われれば宇宙港の機能が著しく低下しかねない施設のことです。そういった区画は港の他の場所よりも警備が厳重になっています。
 宇宙港の設計段階から、重要区画はまとめて停止しないように分散して置かれる傾向がありますが、初めからテロや軍事攻撃が想定される場合は警備の負担を和らげるために集中されることもあります。

■通信回線
 帝国の宇宙港内には通常、地元の通信網に接続するための公共端末が(少額料金で)提供されています。これらの端末は普通はコンピュータを兼ねていますが、低技術世界では昔ながらの公衆電話に置き換えられています。
 ちなみに宇宙港内部の通信回線はこの公共回線とは別系統になっていて、公共端末で今いる宇宙港に関する様々な基本情報は得られても、内部の機密情報を直接見ることはできません。なお港務局職員は、基本的にTL10以上の無線機器で常に連絡を取り合っています。

■XT線
第7条 帝国領における治外法権
 帝国に譲渡された宇宙港および領土の統治と運営は、帝国に留保される。このような領土と加盟星系との間の物体および知的生命の移動は、その移動を管轄する帝国法に従い、加盟星系によって制御されるものではない。そしてこのような領土は加盟星系の管轄からも除外されるものとし、いかなる物体および知的生命も、その領土を管轄する帝国当局の明確な同意なしに立ち入ってはならない。
――帝国暦0年001日、「建国の勅令」より

 治外法権(extraterritoriality、略してXT)とは、主権国家内のとある場所が法律上他国の領土である、という概念です。大使館とその敷地が最たる例ですが、宇宙港の境界線内でも同様にその惑星の法律ではなく帝国法が取って代わります。
 その境界線(XT線)を表すものは、友好的な世界では簡易的なフェンスで事足りますが、そうでない世界では厳重に警戒された巨壁となるかもしれません。いずれにせよ、XT線は港長にとって最も複雑で頭を悩ませる問題の種です。
 もしも帝国と地元政府との間に政治的な摩擦が加熱したなら、港長には経済封鎖という奥の手があります。自らの権限で宇宙港を閉鎖して旅客や物流を止めることで、帝国市民が紛争に巻き込まれるのを抑止したり、武器類の流入を阻止したりするのです。ただしこれは同時に食料など生活必需品も滞ることになり、住民はおろか宇宙港職員も危険に晒すため、滅多に行使されません。そしてそれでも関係の悪化が止まらない場合は、港長は最後の手段として海兵隊の出動を要請することとなります。

 帝国への亡命を希望するなら、単にフェンスを掴んで「保護を!」と叫ぶだけでは不十分で、実際にXT線を越えなくてはなりません。港の警備員は、地元当局に追われている亡命者がこちらに向かって発砲でもしてこない限り、亡命の邪魔をすることはまずありません。ただし、亡命が受け入れられるかは帝国の判断次第であり、地元当局に引き渡される可能性も十分あります。治外法権の概念は、各宇宙港が帝国文明の前哨基地となるためのもので、少なくとも(帝国法上の)犯罪者を匿うためのものではないのです。

「クレオン・ズナスツによる帝国建国から1000年以上経った今、我々は彼が帝国を成功させるために行った小さな事を見逃しがちである。例えば星系への不干渉原則、そして宇宙港の治外法権のような些細な事を。この2つを併せ、私は『クレオン・ドクトリン』と呼びたい」
「彼の天才性は、世界の統治をその世界の住民に任せると同時に、各世界に帝国の存在を確保する方法を編み出したことだ。クレオンは、自由放任主義と父権主義を両立させる方法を見出したのだ」
――ノリス・イーラ・アレドン公爵
聖リジャイナ大学での講演より

 治外法権の原則は第一帝国の時代にまで遡りますが、その教訓はクレオン1世にも受け継がれていました。恒星間国家では貨物が目的地まで複数の星系を経由して運ばれるものですが、もし経由地ごとに関税が課されることを許していては、最終価格が莫大なものになってしまいます。そのため宇宙港は「自由貿易特区」である必要があり、更にこの関税停止権が、地方自治権を例外的に無視するための法的根拠となったのです。
 この治外法権は貿易以外の問題でも有用であることが示されています。いざという時に地元住民が帝国の庇護を求める亡命先になりますし、人道支援団体が安全な活動拠点を確保することができます。帝国企業が星系政府の干渉を受けずに商売を行うことで、その星系への影響力を高めるだけでなく、宇宙規模の視点で活動を調整することができます。そして、帝国当局の秘密諜報活動もよりやりやすくなるのです。

 他国の大使館もXT線内に設置される傾向があります。特にスピンワード・マーチ宙域でのゾダーン大使館に顕著で、これは帝国市民の過去の辺境戦争の記憶や超能力に対する偏見から、大使館職員の安全を気遣っての措置です。

■港内での武器所持について
 帝国では熱核兵器と生物兵器以外の武器は誰でも所有することができるので、理屈の上ではXT線の帝国側の治安レベルは実質1です。しかしながら、国営施設内での武器所持は禁止されています。宇宙港やその関連施設内では(軌道港では特に)厳格な管理が行われていますが(治安レベル7~9相当)、例外は存在します。宇宙船に搭載された各種兵器は当然問題ありませんし、荷物として適切に梱包された武器も同じですが、それは特定の重要施設や公共空間には持ち込めない決まりです。もちろん爆発物は厳禁です。違反があれば武器を没収された上で退去処分となりますし、その情報が共有されて今後は各地の税関でより厳しい検査が行われるようになります。
(※護身用の拳銃や短剣の所持が仮に許可されていても、常に鞘に入れ、周囲からそれが見えるようにして携帯しなくてはなりません)
 一方で、港長は独自に治安レベルを引き下げる裁量を持っています。例えば、地上港の屋外空間でのみ治安レベルを地元星系と揃えて、武器類の港外との搬出搬入時に無駄な確認作業を省くことができます。誰もが銃器を常時携帯しているような星系、もしくは警備員の手が足りない小規模港では、公共空間の治安レベルを下げることもあります(仮に発砲があれば警備員が即座に制圧できるようにはしていますが、誰が騒動の発端で誰が善意の加勢者かを識別するのは厄介です)。

■宙港街
 「宙港街(Startown)」とは宇宙港近辺にある特殊な街区の総称で、安宿や薄汚れた酒場、違法賭博場、怪しい店舗などがあり、地元社会にも港にも属さないが双方に関わる人々、つまり失業中の乗組員や港湾労働者、小悪党や詐欺師、売春婦、逃亡者、各方面に顔が利くと称する者、はたまた彼らを食い物にする元締めなどが巣食っています。ここでは多額の現金を持ち歩きがちな旅行者を狙った商売や犯罪が広く営まれていますが、旅行者にしか需要のなさそうな商い(例えば旅人特有の病気を診る医師)や、仮に合法であっても地元では後ろめたい職種(身体改造など)もここに店を構えます。その独特の雰囲気は、旅行者のみならず地元住民にとっても「刺激的な」街と見られています。それゆえに宙港街は、噂や情報を得たり、仕事を見つけたり、人材を確保したりするのに適した場です。
 宙港街、という(蔑称めいた)一般名詞は星間旅行や貿易に関わる人なら誰でも知っているものですが、当然そこには地元住民から呼ばれる地名もあります。多くの場合、それは宙港街の成立、時には港の建設前からあるもので、皮肉なことに遥か昔に過ぎ去った華麗なる理想――キャッスルヒル、パークサイド、シルバーグローブ等々――を表していることも多いです。そして住民が「本当の名前」で呼ぶことにこだわるのは、醜い現状を認めたくないか、酒場での喧嘩の口実を求めているかです。

 ほとんどの星系政府は宙港街を俗悪と考えていますが、治安当局がよほどの弾圧でもしない限り自然発生するのが宙港街というものです。賢明な政治家や港長なら、人々が文化を越えて移動する(つまり帝国から地元へ、またはその逆)際に必要な「玄関口」の機能を果たしているのを理解しています。
 意外にも宙港街は宇宙港に隣接しているとは限りません。外世界での風聞や体裁を気にした星系政府が宇宙港から見える範囲の「いかがわしい店」を徹底して排除した結果、数キロメートル先に宙港街が成立することもあります。他に、宇宙港の隣にその星唯一の集落があるような場合、街全体は宙港街にはなりませんが、それでも一本の通りだけが独特の空気感を漂わせたりするのです。
 港務局が望まずしてXT線内もしくは線を跨ぐように宙港街が発展していることもあります。理由としては、港務局が既存宇宙港を引き継いだ時点で街が存在していたか、地元政府が宙港街の成立を帝国の責任にして押し付けたことが考えられます(※他に、宇宙港の拡張で宙港街が取り込まれたとか、何らかの理由で巨大港の一部がスラム化したとか色々あるでしょう)。こういった宙港街には地元政府の法律がもちろん一切及ばない上に、帝国法は元々必要最小限のものしかないため、ここを訪れるには細心の注意と度胸と交渉力が必要となります。また、こういった港での税関や警備部の職員は、交通や物流の規制などで大きな課題に直面しています。

 ほとんどの星系政府は、宙港街については「見て見ぬ振り」をする傾向があります。そこで行われる数々の悲喜劇は自己責任や自業自得で済ませ、悪影響が「自分たち」に広がらないよう願っています(所によっては隔離措置も行われます)。しかし、宙港街の悪印象は誇張されて伝わっていることも多いです。確かに宙港街の犯罪発生率が特に高いのは事実ですが、そもそも多くの住民は強盗される価値もないほど貧しいのです。そしてあまりに犯罪が横行すると、いつかは地元政府が法律を盾に介入してくることを弁えています。
 宙港街の中に警察署がある所もあります(が、民間警備会社や傭兵部隊に丸投げされていることも少なくありません)。愚かな旅行者を救ったり、目に余る犯罪行為を止める立場ではありますが、多くの警官が低賃金と過重労働に喘いでおり、賄賂が通用しやすい環境にあります。その結果、警察署の前で堂々と違法行為が行われることも珍しくありません(と言っても、盗品売買など非暴力なものに限られますが)。
 宙港街の外の地元警察は多勢に無勢なのがわかっているので、よほど重要な任務がない限りは突入を避けます。逃げ込んだ指名手配犯の追跡は基本的にプロの賞金稼ぎ(バウンティハンター)に委ねられ、彼らは危険に見合った報酬を得ているのですが、標的がよほど住民に見放されていない限り、賞金稼ぎが宙港街で歓迎されることはないでしょう。
 近くに軍事基地がある宙港街では憲兵による巡回もよく見かける光景ですが、これは治安維持のためではなく、羽目を外した非番の兵士が門限を破らないように見張っているのです。
 一方で「小綺麗な」宙港街も存在します。高治安星系では思想や活動の多様性に不寛容であることも多く、宇宙港を出入りする余所者もその同類とみなされます。そういった星の宙港街には、宇宙港で働いたり地元社会で異端視されたりしている人々が流れ着きます。住民の多くは底辺層ではなく労働者層で、可能な限り町を整えています。裏社会が生じやすいのは同じですが、他に行き場がないことと「町衆の誇り」があるので、怪しい輩の存在を少なく抑えています。こういった街区は「星見町(Starview)」や「港村(Down Village)」と呼ばれていて、一般的な宙港街とは区別されます。

 ほとんどの世界の市民は、地元の宙港街で営まれている不適切な商業活動の大きさを認めたがらないでしょうが(そもそも地下経済を正確に測れてもいません)、どうしても社会には必ず闇が生ずるものです。現実として多くの帝国世界は、農業、工業、鉱業、製造業など何らかの経済活動に特化しているので、とある商品は余り、別の商品は不足することがよくあります。星間市場は無数の文化の集合体なので想像しうる限りの商品が存在しますが、その大部分を「自分たちの文化では不要・不適切な物」としていることもよくあります。
 つまり、ほとんどの世界では欲しい物が作られていないか、欲しくても手に入れられないのです。これを埋めるのが宙港街です。一般商店には公に並んでいない品物が、宙港街に行けば価格はともかく無数に存在するのです。ただし、宙港街での商品取引は一般的なものよりかなり難しいです。まず欲しい物の売り主を(〈交渉〉や〈接触〉で)探さねばなりませんし、物によっては下手をすれば警察の注意を引きます。そして売り主と接触できたとしても、定価の3倍程度から(〈交渉〉や〈貿易〉での)価格交渉が始まります。
 一般的に地下経済は犯罪組織によって統御されています。もし旅人が彼らの顧客を害したり、彼らを騙そうとすれば、強大な敵となるのは間違いないでしょう。逆に、十分な度胸を持って道徳心を脇に置けば、「コスモス・ノストラ(cosmos nostra)」の歓心を得る仕事を見つけることもできるでしょう(その代わり、警察や港務局や税関が敵となります)。


【付録:『トラベラー』と宗教についての考察】
 元々がSFゲームであり、これまで主に星系の雰囲気作りのために設定が起こされたこともあってか、〈第三帝国〉における宗教というものはほとんどが星系規模の域を出ていません。宇宙を旅するような帝国人はあまり信心深くなさそうだ、というのが推察できますが、宙域規模以上の宗教となると、GDW時代は「星神教会(Church of the Stellar Divinity)」が唯一と言ってもいい存在でした(※星域規模でも『黄昏の峰へ』の「八角教団(Octagon society)」ぐらいでしょうか、絶えてしまいましたが)。
 その後、マングース社の『Supplement 15: Powers and Principalities』(2014年)で宗教設定が大量に紹介されたのですが、これはBITS(British Isles Traveller Support)の『101 Religions』(1998年)の合本再販であり、扱いとしてはほぼ同人誌です(実際、後の設定に影響を与えていません)。加えて、これは、元々『Marc Miller's Traveller(T4)』の「帝国暦0年(Milieu 0)」用の設定集であり、帝国暦1105年で使うには鵜呑みはできません(その調整すらやらない当時のマングース社の姿勢も問題ですが…)。この資料からは「シレア教会(Church of Sylea)」(とその分派)の設定が使えそうではあるのですが、千年後に全帝国規模でシレア教会が信仰されているかどうかは考えものです(少なくとも公式設定に昇格はしていません)。ちなみにこのシレア教会は、シレア人が信仰する「道の書(マール・キ・ゾン)」とは別で、テラ起源の宗教(おそらくキリスト教)の末裔らしいです
 結局のところ、宗教がシナリオに絡むなら自作する(公式設定との整合性が気になるなら星域規模までに留める)、絡まないなら適当に済ます、というのが当面の結論となりそうです。
 ちなみに、ソロマニ連合ではソロマニ主義の影響で信心深い人が多いらしいです。様々な宗教団体が(それも小国規模すら)ありますが、中でもソロマニ・カトリック教会(Solomani Catholic Church)は、ソロマニ圏の帝国側にも伝道されていそうな教団です。


【ライブラリ・データ】
ブリューベック Brubek's
 ソロマニ圏を中心に、主にA・Bクラス宇宙港(稀にCクラスも)に数百店舗を展開するチェーン酒場です。帝国外ではソード・ワールズ領内に20店があります。どの店も間取りや内装は「古き良き」テラ様式で統一されていて(人通りの多い店舗は拡張されることがありますが)、従業員もソロマニ人を優先的に雇用していますが、これは内規があるわけではなく単に店の雰囲気に合うのがソロマニ人だからです。
 ブリューベックは自社でビールを醸造しており、熱心な常連客が付いています(むしろ常連客しかいないと言っても過言ではありません)。人気メニューはハンバーガー、皮付きフライドポテト、オニオンリングといったところで、サラダもありますがあまり売れていないようです。客層はソロマニ人が主体ですが、他の人類や(赤身肉目当ての)ヴァルグルも出入りしています。
 宇宙港酒場にありがちな「乱闘」はここでは御法度です。従業員につまみ出されるなら運がいい方で、常連客から袋叩きにされても文句は言えません。この落ち着いた雰囲気ゆえに、常連客との出会いや人脈作りに最適な場となっていますし、バーテンダーから噂話を聞き出すのもやりやすいのです。
(※原文では、出店先の半分は「Solomani space」とあります。普通に解釈すれば「ソロマニ領」となりますが、帝国企業(もしくは帝国に展開している企業)がソロマニ領内に支店を持っていることは、ソロマニ/ソラー運輸やSuSAG社の例を見ても明らかなようにかなりの禁忌とされています。よって、意図的に「ソロマニ圏」と曲解することで整合性を取りました)

アストロバーガー Astroburgers
 帝国はおろか、既知宇宙最大のファストフード店と言われているのがこのアストロバーガーです。歴代の経営者たちは派手で節操のない広告宣伝と、それに相応しい低価格戦略で(なぜか)大成功を収め、数万店舗に及ぶ今の地位を築き上げました。今では「コルセアバーガー」の商標でヴァルグル諸国にも展開しています。
 また巨大飲食企業の例に漏れず、アストロバーガーも食品産業に進出しています。意外にもその投資計画は倫理的で、弱小な農産業に多額の資金を投入して作物の安定供給を実現しているのです。農場に同社の巨大で恥ずかしい看板を掲げることは、零細農家にとっては土地を守ってきちんとした生活を送ることと相殺されているようです。

道の書 Maar Ki Zon
 現在では省略されてマール・ゾンと呼ばれる『道の書(マール・キ・ゾン)』は、偽書との指摘がありながらもシレア文化の復興に重要な役割を果たした哲学書であり、聖典です。-1866年にシレア(現在のキャピタル)で発見されたこの『道の書』は、ヴィラニ人との接触前の古代王国の宗教に関する書物と思われました。これが当時のシレア語に訳されて出版されると民族主義者の間で大いに広まり、シレア人の間に『道の書』の戒律に従った宗教運動が勃興しました。
 『道の書』はある哲学者の教えと考えられていますが、それが誰なのかは歴史記録が存在せず、謎となっています。『道の書』は全ての人類を霊的に平等な存在と捉え、来世よりも現世を重んじて倫理的な生活を送ることを説いています。『道の書』の信者は「ラン・キ・ゾン(求道者)」と呼ばれ、創造神が宇宙を創造した理由を求めるために高い意識を目指しています。
 敬虔な信者は質素倹約に努め、毎日祈りを捧げ、酒類を断ち、貞操を守り、収入の一部を慈善団体に寄付しなくてはなりません。また、利子を取ることを禁じない一方で「知的財産」から利潤を得ることを禁じています(※ヴィラニ人による搾取的な知財法の反動と考えられています)。暗黒時代には何の問題もなかったこれらの戒律ですが、現在の帝国では古臭く窮屈に思われているのは否めません。そもそも彼らは、非シレア人の改宗にかなり消極的です。

ソロマニ・カトリック教会 Solomani Catholic Church
 トリノ(アルファ・クルーシス宙域 0630)発祥で、現在はアミアン(同 0731)を総本山としている教団です。有名なのはトリノの観光名所にもなっている12基の空中聖堂ですが、一方で彼らはアミアンでは意図的にTL4の質素清貧な生活を送っています。
 元々トリノ星系は、恒星間戦争時代に異星種族の救済を巡る考えの違いからバチカンと袂を分かったカトリック信者が入植してきた星系で、暗黒時代の間にその教義はより強固となって「トリノ教会(Turin Church)」という独自の宗派となりました。
 その後この地域へのソロマニ主義の浸透によって、トリノ教会の人類優越主義宗派であるこのソロマニ・カトリック教会が帝国暦700年代から台頭し、「新ソロマニ聖書(New Solomani Bible)」を掲げてソロマニ圏各地で布教活動や政治的関与を強めています。
(※ちなみにトリノ教会とバチカンは数百年前に和解しており、教義の違いはそれほどないそうです(ローマ・カトリックの方がソロマニ主義に染まったのかもしれませんが…))
(※トリノ教会の分派で最も過激なのが暗黒時代末期に成立した「ファーストクロス教会(Church of the First Cross)」とされていて、ソロマニ人を至上とする教義と強引な改宗で悪名高いです(傭兵ならぬ僧兵部隊すら抱えていて、帝国政府がこれをテロ組織に指定するほど)。このことからソロマニ・カトリックの教義はあくまで「人類のみが神の子である」止まりと思われます)


【参考文献】
・Solomani & Aslan (Digest Group Publications)
・GURPS Traveller: Starports (Steve Jackson Games)
・GURPS Traveller: Humaniti (Steve Jackson Games)
・Starports (Mongoose Publishing)
・Supplement 15: Powers and Principalities (Mongoose Publishing)
・Referees Briefing 3: Going Portside (Mongoose Publishing)
・Solomani Front (Mongoose Publishing)
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