宇宙の歩き方

The Astrogators' Guide to the Charted Space.

総目次

5625-04-18 | Traveller

 SFロールプレイングゲームの元祖的存在『トラベラー』の、膨大な宇宙設定や考察などを紹介しております。特段の断りがない限り《第三帝国》設定については、全て帝国暦1105年時点のものとして記述しています。
 これらの情報があなたの旅の指針となりますように―― Bon voyage!

【宙域散歩(OTU設定解説連載)】
第1回 268地域星域 概要編詳細編(スピンワード・マーチ宙域)
第2回 トリンズ・ヴェール星域(スピンワード・マーチ宙域)
第3回 モーラ~ルーニオン間(スピンワード・マーチ宙域)
第4回 グリッスン星域(スピンワード・マーチ宙域)
第5回 『Pirates of Drinax』特集1 ドリナックス王国(トロージャン・リーチ宙域)
第6回 『Pirates of Drinax』特集2 アウトリム・ヴォイド(トロージャン・リーチ宙域)
第7回 トビア星域(トロージャン・リーチ宙域)
第8回 ヴィラニ・メイン1 ヴォーダン星域(ヴランド宙域)
第9回 ヴィラニ・メイン2 アナルシ星域(ヴランド宙域)
第10回 ヴィラニ・メイン3 ヴランド(ヴランド宙域)
第11回 ヴィラニ・メイン4 シイグス・プリデン星域付近(ヴランド・リシュン宙域境界)
第12回 ヴィラニ・メイン5 グシェメグ宙域
第13回 パクト星域(ダグダシャアグ宙域)
第14回 シュドゥシャム(コア宙域)
第15回 キャピタル(コア宙域)
第16回 カムシイとレファレンス(コア宙域)
第17回 ソロマニ・リム宙域・概要編
第18回 リム・メイン1 ハーレクイン星域(ソロマニ・リム宙域)
第19回 リム・メイン2 ヴェガ自治区(ソロマニ・リム宙域)
第20回 テラ(ソロマニ・リム宙域)
第21回 ソル星域(ソロマニ・リム宙域)
第22回 リム・メイン3 アルバダウィ星域周辺(ソロマニ・リム宙域)
第23回 リーヴァーズ・ディープ宙域 前編後編ライブラリ
第24回 カレドン星域(リーヴァーズ・ディープ宙域)
(※この連載で記された星系データ(UWP)はT5SSによって改定される前のものです)

【コラム】
水界の量を決めるのは大気か規模か?
『通信機』で見るトラベラーの40年
SuSAG(メガコーポレーション解説)
フローリア人とフローリア連盟(群小種族解説)
ソロマニ・リム戦争概史
仮死技術と二等寝台
「人類」総まとめ
トラベラー協会
スピンワード・マーチ宙域開拓史

トラベラー(ホビージャパン版) 正誤表

【宙域図・星系データ集】
1105年版ヴランド宙域図
蘇る「ガシェメグ宙域」
2170AD, Man's Battle for the Stars(『インペリウム』時代の星域データ)
新訳最新版スピンワード・マーチ宙域UWPデータ
1/4スケール「スピンワード・セクター」を作る

【星の隣人たち(知的種族設定紹介)】
第1回 スピンワード・マーチ宙域の知的種族
第2回 ダリアン人の歴史
第3回 接触!ダリアン人
第4回 ソード・ワールズの歴史
第5回 接触!ソード・ワールズ人
第6回 接触!ヴァルグル
第7回 グヴァードン宙域の(帝国に関係する)諸勢力
第8回 接触!アスラン

【トラベラー40年史】
第1回 黄金の時代(~1987年)
第2回 反乱と苦難の時代(1987年~1993年)
第3回 新時代、そして暗黒時代へ…(1993~1997年)
第4回 夜明けの時代(1998年~2007年)
第5回 古典復興の時代(2008年~2015年)
第6回 三者並立の時代(2016年~)
追補A GURPS Traveller 17年の歴史を振り返る
追補B 2018年のトラベラー界隈まとめ

【メガトラベラー日本語版発売30周年記念企画】
知っておくべき新・3大「反乱期の注目の舞台」
ダイベイ宙域1119 ライブラリ・データ 私家版UWPデータ(1)(2)
ジュリアン保護領とアンタレス
ガシカン帝政とイレアン人
クーピッド星域とメンダン宙域
スナップショット ~回廊六景~(コリドー宙域解説)

【Cepheus Engine 解説記事】
トラベラー互換システム『Cepheus Engine』とは何か!?
『Cepheus Engine』で始めるロールプレイング・ゲーム入門
 
『Cepheus Engine Vehicle Design System』レビュー
『Cepheus Light』緊急レビュー

【ぶらりTL11の旅(ATU製品紹介)】
第1回 『Outer Veil』
第2回 『Clement Sector』
第3回 『2300AD』
第4回 『星々を我が手に(These Stars Are Ours!)』
第5回 『Hostile』

『異星人の街カストロバンクラ(Castrobancla, The City of Aliens)』
『Mindjammer: Dominion』
『ドラコニム星域(The Draconem Sub-Sector)』

【『2300AD』関連記事】
太陽系周辺宙域図(を『トラベラー』形式で)
Japan 2300 - 西暦2300年の日本
偶然の遭遇:モニク・ルーセル(と惑星ジョイの設定)

【自作ミニゲーム】
第五次辺境戦争風ミニゲーム「Grenzkrieg: Spinward」
ソロマニ・リム戦争風ミニゲーム「ソロマニ・リム戦役」
恒星間戦争風ミニゲーム「いんぺりうむしょうぎ」
『Traveller: Accelerated Edition』 (Alpha Version)

(※文章には私の意訳・誤訳・誤解・曲解が過分に含まれ、推測による記述や、非公式設定をあえて取り込んだ部分もあります。また、記載した情報は予告なく修正される場合があります)
Comments (7)
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宙域散歩(25) コーベ星域(クルーシス・マージン宙域)

2023-11-23 | Traveller
コーベ星域(クルーシス・マージン宙域I)

オカヤ      0121 A6298C9-A                    A 104 Gf M3V        
スワ        0123 D7C5305-9   低人・非水         100 Na M1V        
ウダ        0124 C641238-5   低技・低人・貧困   703 Na F4V        
キルチュ    0129 C431141-6   低人・貧困         400 Na F3V M1V    
オーダテ    0222 A541643-A   非工・貧困         400 Gf M0V        
コーベ      0225 A5536B9-B K 非工・貧困       A 601 Ko M1V M3V    
イイダ      0227 D8C4894-9   非水               300 Na M3V M9V    
ニッコー    0321 E764887-6   富裕               420 Na M2V        
ミト        0322 D8B9410-9   非工・非水         214 Na M0V        
ホンジョー  0324 C527598-8   非工               810 Na G0V M0V    
アキタ      0326 B568779-A   農業・富裕         604 Ko K6V M3V    
オキ        0330 B424699-B   非工               600 Na M1V        
ビワ        0421 D527899-7                      122 Na F9V M0V    
クジ        0423 B566624-8   農業・非工         600 Na K8V        
ドーゴ      0428 E434878-6                      624 Na G8V M1V M3V
キターレ    0521 D310487-9   非工               114 Na M1V        
モリ        0526 C560547-4   砂漠・低技・非工   100 Na G9V        
ドーゼン    0530 C664612-7   農業・非工         300 Na M3V        
マララル    0621 C564773-8   農業・富裕         304 Na K4V        
クレ        0623 A544758-B K 農業               720 Na M3V        
ツ          0627 D536767-7                      302 Os K1V M3V    オーサカが統治
ガーブラ・トゥーラ 0722 A696775-A   農業               800 Na F8V M8V    
ムッド・ガシ 0724 C424502-A   非工               904 Na M2V        
ワジール    0725 A310642-B   非工・非農         300 Na A6V G1V    
オーサカ    0727 A867884-C K 高技・富裕・緑地   613 Os M1V        
イセ        0729 B641538-9   非工・非農         100 Sy F5V        
カムチナ    0823 C000461-7   小惑・非農         520 Na F5V M1V M4V
ブーラ      0827 B310487-A   非工               312 Os M2V        
ガリッサ    0829 A6A9844-B   非水               400 Sy M3V        
タナ        0830 C8A7627-9   非工・非水         404 Sy M2V        

 コーベ星域には30の星系があり、総人口は約28億人です。最も人口が多いのはドーゴとオーサカの6億人で、最も高いTLはオーサカの12です。全星系が帝国の傘下にはなく、人類以外の知的種族はほぼ居住していません。

【ライブラリ・データ】
クルーシス・マージン宙域 Crucis Margin sector
 この宙域は帝国領の外、銀河辺境/回転尾(リムワード/トレイリング)方面に位置します。ここへはククリーがある程度の影響力を持っていますが、それ以上に影響を持つ大国は(宙域内に領土を持たない)ハイヴ連邦です。ハイヴの貿易船は宙域内の至る所で見かけられます。なお、ハイヴは何事も裏から操りたがる特性があるため、どの星がどの程度ハイヴの影響下にあるかは見た目にはわかりません。
 この方面へ入植が始まったのは「人類の支配(第二帝国)」期で、この時はまばらに入植地が作られただけでしたが、やがて帝国の内情が悪化していくと人々はより良い住処を求めて難民となって押し寄せてきました。暗黒時代にはいくつかの星が恒星間航行を維持し、中には新たに植民地を抱えることもありましたが、やがてそのほとんどは独自の道を歩んでいきました。-200年頃には隣接するゲイトウェイ宙域からの入植が始まり、特に銀河核(コアワード)方面の星系に大きな影響と強固な結びつきを与えましたが、結局、宙域全体を覆うような統一国家は誕生せず、今もクルーシス・マージン宙域は独立星系と小国が散在したままです。
(※ちなみに、コーベ星域の辺りともなると他所よりはハイヴ船が訪れることは少なく、むしろソロマニ連合籍の貿易船の方が見られるそうです。それは通商や旅行目的だけではなく、対帝国を睨んだ調略や謀略も含まれ……)

大オーサカ Greater Osaka
 かつてシズリン帝国(Syzlin Empire)の一部であったオーサカ(0727)は、778年の流血革命によって独立しました。これを発端に崩壊したシズリン帝国はツ(0627)やブーラ(0827)を放棄したため、オーサカ軍は抵抗されることなくそれらに進出することができました。
 前星間技術だったツ星系はオーサカによる「解放」を歓迎し、進んでその傘下に入りました。ブーラ星系は帝国支配下では単なる前哨基地に過ぎませんでしたが、撤退後には小さな入植地が建設されてオーサカ海軍の補給拠点となりました。やがてそれは人口3万の街にまで発展し、星系自治が営まれるまでになりました。
 こうして誕生した大オーサカは、恒星間国家というよりも小植民地を抱える星系政府と言った方が適切です。しかしながらオーサカの星域内最高の技術基盤と「2星系を支配している」という事実は一定の威信を得ており、外世界との取引において有利に働いています。
 大オーサカは領土拡大に興味を持っていませんが、シズリンによる再併合を阻止するために惑星防衛艦主体の防衛力を保持しています。ジャンプ能力を持たないこの惑星防衛艦を輸送するのはオーサカ特有の「ジャンプ・スピンドル」と呼ばれる商艦で、平時はこのスピンドルに燃料タンクと貨物モジュールを接続して貨物船として運用しながら、戦時には砲塔や戦闘機格納庫のモジュールを施したり、惑星防衛艦を4隻接続して運ぶなど、星系間防衛作戦の機動力を担保する存在です。
(※オーサカは「Overlords」が治めているらしいのですが、今も昔も政治形態は8(官僚制)なので、大阪っぽくするなら「五大老の下に官僚機構がある」ような感じでしょうか)

コーベ企業共和国 Corporate Republic of Kobe
 コーベ(0225)は「企業国家」であり、全人口が「コーベ・コーポレーション(Kobe Corporation)」の従業員でもあります。企業共和国は小さいながらも非常に繁栄しており、クルーシス・マージンとグリマードリフト・リーチの両宙域に商圏を持っています。貿易船は主に近隣星域しか行き来しませんが、コーベの資本は数々の星系の事業に分散投資されています。
 大オーサカとの関係は今のところ良好で、人材交流も盛んであり、毎年のようにモリ(0526)で合同軍事演習も行われています。
 コーベ軍は小規模ではありますがTL12艦艇を購入配備しており、また企業共和国が危機にさらされた際には複数の友好星系から艦船を借用できるよう提携を結んでいます。つまりコーベとの戦争はその背後の様々な勢力を敵に回すことになり、そのこと自体が抑止力になっているのです。
 またコーベは非対称戦を得意とし、通商破壊や軍基地へのテロ攻撃、離間の計など何をしてくるかわからない不気味さがあります。そしてコーベが外交や通商や政治の道具として秘密工作を普段から使っているのではないかという疑惑すら持たれています。
(※「企業共和国(Corporate Republic)」とは、巨大化した企業が政府に成り代わった政体を指す言葉で、共和制であることを意味しません)
(※コーベ星系の政治形態は、旧設定では1(企業統治)でしたがB(非カリスマ独裁制)に変更されたということは、社長職や経営幹部が世襲ないしは特権階級化しているのを表しているのかもしれません)
(※ちなみに「corporation」には株式会社と地方自治体の両方の意味があります)


シズリン共和国 Syzlin Republic
 クルーシス・マージン宙域にあるシズリン共和国は、宙域の中でも新参の、しかしながら広い領土を持つ国です。
 帝国暦-150年に誕生したシズリン帝国は、最盛期の500年頃には24星系を治める大国でした。しかし778年のオーサカの反乱がきっかけとなって帝国は崩壊し、その後は内戦と改革の嵐が吹き荒れました。803年に「共和国」として再興したシズリンは、旧帝国時代の気風と野心はそのままに再拡大に転じ、950年には14星系、現在では17星系を治めるまでに回復しています。
 共和国の首都はシズリン(0831)にあり、そこから傘下星系が統治されています。政治形態はどの星でも民主主義のはずですがその濃淡は星系ごとに異なり、官僚化や形骸化が進んでいる星もあります。そして特徴として、加盟星系は警察権を除いていかなる軍事力の保有は許されず、それらはシズリン大統領の直接管理下に置かれることです。
 外交政策は尊大かつ拡大主義的です。貿易船や軍艦は「自由航行権」を主張し、力でそれを押し付けようとします。共和国から派遣された「顧問団」が近隣の様々な独立世界に現れては、シズリンに靡きそうな政府(や反体制派)に軍事・経済・技術のあらゆる面で援助を行うことも有名です。そして、それらが不調に終われば軍事侵攻も辞しません。

グリマードリフト連邦 Glimmerdrift Federation
 グリマードリフト宙域(とクルーシス・マージン宙域の極一部)に広がるグリマードリフト連邦は、1090年に旧グリマードリフト交易組合(GTC)を核にして周辺星系が加盟して誕生した恒星間国家です。
 政治組織は旧GTCを継承し、加盟世界の自治権と経済連携を重んじた上で相互防衛活動による結束を高めています。領内には人類以外に、数世代を経て地元文化に溶け込んだヴァルグルや様々な種族が住んでいます。また、ククリーの〈二千世界〉とは以前から友好関係にあります。
 連邦船籍の商船は宙域を越えて〈第三帝国〉領内まで出向いていますが、加盟星系外に企業が進出することはまずありません。逆に、外国企業は加盟星系では事実上締め出されています。
(※GTC自体は公式設定ですが、連邦に関する部分は非公式設定の帳尻を合わせた独自設定です)

イセ Ise 0729 B641538-9 非工・非農 Sy
 シズリン海軍の遊撃艦隊(Ranger Fleet)はこの世界を拠点とし、最前線であるこの星の防衛任務と同時にトレイリング方面国境内外にも睨みを効かせています。
(※UWP上では海軍基地は存在しませんが、Bクラス軌道宇宙港でどうにかしているのでしょうか)

アキタ Akita 0326 B568779-A 農業・富裕 Ko
 100年ほど前はこの星の全ては(コーベ社の意を汲んだ)民主議会が統治していました。しかしその後の旺盛な人口増加によって、今では(あくまで星系内では)コーベ社に対抗しうるだけの力をつけた地元有力企業らがそれぞれ「企業城下町」をつくり、独自の「社則」を制定している有様です。
(※政治形態が4(間接民主制)から7(小国分裂)に変更されましたし、人口がコーベの10倍になってしまったのでこんな独自設定をこしらえてみました)

クレ Kure 0623 A544758-B K 農業 Na
 ツァボ・リーチ(Tsavo Reach)の端に位置するクレは、人口7000万の有力星系です。統治を担う評議会は企業経営者や行政各局の長で構成され、全ての問題において市民投票の結果を尊重することが法律で義務付けられてはいますが、立法と行政の二権を握っています。
 経済立国を標榜するクレは軽武装路線を採り、駆逐艦程度の艦艇しかない海軍は主に地場航路を守るためにあります。商業は星系収入の大きな柱であり、宇宙船の建造や、ツァボ・リーチを抜けてグリマードリフト・リーチ宙域方面に向かう貨物船の入港料などで利益を得ています。
 クレは定期航路のあるコーベと友好関係にある一方、長年の貿易紛争の相手である大オーサカとはそうではありません。

ツァボ・リーチ Tsavo Reach
 クルーシス・マージン宙域の4星域・29星系に跨る星団の名称です。星図上ではちょうどシズリン共和国や大オーサカの外側を迂回するかのように並んでいます。

カーヒリ Karhyri
母星:スフィリ(クルーシス・マージン宙域 0439)
 カーヒリは平均身長2メートル弱で直立二足歩行をする温血の知的種族で、人類からは「嘴のある爬虫類」のように見えます。彼らには男性と女性に加えて「護性」と呼ぶべき第三の中性が存在します。護性のカーヒリには子育てや子供を守る役割がありますが、生殖にも関わっているという説もあります。また、全てのカーヒリは性とは別に遺伝的に定められたと思われる3つの社会層(翼、尾、一般)のどれかに属し、それぞれ微妙に体格や精神性に差異があります。
 カーヒリは-2500年頃に亜光速宇宙船でカルド(同 0440)に進出した際、遥か昔に遭難したハイヴの宇宙船を発見しました。その50年後には彼らは拙いながらもジャンプ宇宙船を完成させ、近隣5星系への植民も果たしました。そして-2000年代には、難破船の乗組員の遺骨を故郷に帰すために当時の技術では途方もない旅に赴きました。しかしこれは、彼らにとって当然の行いなのです。
 なぜなら、カーヒリの社会は名誉をあらゆる物事の規範に据えています。一例として、彼らには商取引規制の概念がありませんが、これは誠実さや正しさによって信頼が担保されているからです。そして同時に彼らは他種族であっても自分たちと同じ高潔さを求め、監視を怠りません。
 話を戻して、とうとうカーヒリはハイヴ領まで遺骨を届けられたのですが、カーヒリにとっては崇高な行いであっても、ハイヴにしてみれば忘れ去られた大昔の行方不明者の死亡が確認されたに過ぎませんでした。この「冷たい対応」に加えて、無駄足となった帰路でカーヒリ乗組員に殉職者が出たこともあって、カーヒリは今もハイヴを軽蔑し、全く信用していません。たとえ彼らの基準ではあっても、名誉を解さない「獣に等しい」ハイヴは対等の知的種族とは見なせないのです。また、隣接する人類国家シズリン共和国とは緊張関係にあるため、シズリンを挟んで反対側にあり共通の敵を持つ大オーサカと協調しています。
 種族としてのカーヒリは「名誉への奉仕者」と呼ばれる司祭と行政官を併せ持ったような社会階層によって統治され、保守的で厳格な変化の少ない社会を構築し、現状に満足して領土拡大にも興味はないのですが、個人や小集団が気ままに宇宙を放浪していることはよくあります。宙域内で最もよく見られるのは300トン級の小型船です。


余談:コーベ星域になぜ和名星系が多いのかについては、正しくは元ネタを書いたJudges Guildの人に聞くしかないのですが、公式設定から想像すると、地球連合か第二帝国の時代に探査を行った際に日系ソロマニ人の担当者が深い意味もなく命名していった……あたりが妥当ではないかと思います。初期入植者が日系人ばかりだったというのは、入植者の多くが「第二帝国からの難民」という公式設定と照らし合わせると無理がありますし。とはいえ「どことなく和風文化がある(靴を脱いで家に入るとか、ライスを箸で食べるとか、名字が名前の先に来るとか、訛りが関西弁とか……)」とするのが、わざわざこの星域で遊ぶ理由の一つにはなろうかと思います。ここは〈帝国〉の外ですし、公式設定もこの先おそらく増えないでしょうから、好き勝手にしても大丈夫でしょう(実際、今回もブーラやアキタの設定で拡大解釈をしていますし)。
 また、オーサカ視点で星図に貿易航路を引いてみると色々と見えてくるものがあります。TL12のオーサカが持ってておかしくないのはジャンプ-3なので、次の寄港星はワジール、モリ、ドーゴのどれか(星域外はとりあえず無視)。モリ経由でコーベ方面に向かう航路よりも、ワジールからガーブラ・トゥーラに抜ける(クレとは仲が悪い設定があるので、行きたければワジールで乗り換え)航路の方が栄えている感じなので、コーベとの関係は設定ほどには仲良くはない(そこそこ程度?)でしょうし、ワジールは物流の拠点として栄えていそうです(環境的には輸入依存社会に見えるので、何か有力資源がある?)。リム方面ではイセ港が使えないオーサカの船はドーゴをハブとして様々な星に行くことになりますが、そのドーゴはEクラス宇宙港ですから明らかにガスジャイアントで燃料補給だけして去っています。ということはドーゴには魅力的な貿易産品が本当になさそうです。その割に人口は星域屈指の多さなので何か理由が考えられそう……。
 一方、コーベから見るとクジ経由クレ行きの航路は太そうだからクジとも友好的だろうとか、いくら重商主義のグリーマードリフト連邦でもコーベ~オーダテ間の定期航路ぐらいはありそうとか……こうやって設定を詰めていくのは大変ですが(好きな人には)楽しい作業ですので、空想の宇宙を旅してみるのはいかがでしょうか。繰り返しになりますが、おそらく公式設定は今後増えないでしょうから何をやっても安心です(笑)。


【参考文献】
・Gateway to Destiny(Quicklink Interactive)
・Traveller Wiki
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宇宙港 ~未知への玄関口~ 第4集:宇宙港での遭遇

2022-07-15 | Traveller

「開拓者は未開の荒野で生計を立て、勇敢な貿易商人は辺境で商売する。とは言うものの、宇宙港は良くも悪くも人と人が触れ合う場所であることに変わりはない。6週間、誰とも会わなかった事がある。その時、ある男が錆びついたボロ貨物船でやってきて燃料を買い、何かの動物の毛皮と怪しげな異星の文献を売ろうとし、そして足を引きずりながら帰っていった。そいつの隣りにいた奴は少し風変わりだった――何と言うか、普通だったんだ」
――辺境港の二等整備士、ジム・ドゥガン


 「宇宙港への旅」は、見知らぬ人々との出会い、異星の品々の売買、そして新たな冒険に巻き込まれる機会でもあります。宇宙港の利用者は、普段なら決して接点がないような平凡な日常の枠を超えた特別な人々です。もちろん、ほとんどの人はただの利用客に過ぎませんが、中には常人が経験できないようなことを見たり聞いたりしてきた人たちもいます。貴族、官僚、芸能人、写真家、帰還兵、新婚夫婦、逃亡者、諜報員…等々。彼らには語られるべき物語があり、明かされるべき秘密があり、実現すべき夢があります。そういった人々と同じ時を過ごせるのが宇宙港の特性です。
 更に、宇宙港での日常には大小様々な事件がつきものです。多くの場合、港の内部では地元よりも多くの物事が起きていますし、新開発の技術産品、知られざる生物、神秘的な宝物といった物が宇宙港に流れ込んできています。港内では陰謀が練られ、犯罪が捜査され、探検が企図され、個人では到底解明しきれないほどです。実際、宇宙港内をうろうろしていれば面白いことが起こるのは時間の問題です。もちろん「面白い」にはかなりの幅があって、そのどれもが安全というわけでもありません。しかし、冒険をしたくないのなら、なぜ「旅人(トラベラー)」になったのですか?


■地元対策
 「地元対策」というと、宇宙港と地元政府との関係のみを指すと思われがちですが、そうではありません。港長は地元住民の懸念にも向き合わなくてはなりません。多くの場合は騒音や公害への苦情に耳を傾け、地元企業や労働組合の代表との折衝を行います。宇宙港があること自体は帝国にとっても星系経済にとっても良いことですが、(真実でも妄想でも)不満を持つ人は必ずいます。当然ながら、連絡室は港長や広報課、その他の適切な部署と連携して、こうした懸念の多くを処理します。このような問題はしばしば頭痛の種となり、多くの事務処理を必要としますが、一般的に宇宙港運営を脅かすことはありません。とはいえ、港長を生き地獄に落とす個人や集団はいくらでもいて、こういった連中の多くは地元住民からも支持されていませんが、それでも彼らやその主張を簡単に無視するわけにもいきません。宇宙港は必然的に誰かには迷惑をかける存在ですが、迷惑を受けた人が逆に港や他人の迷惑にならないようにするのが港長と連絡室の仕事なのです。

 広大な敷地に多くの人々が行き交い、様々な物質が保管されている地上港が、色々な意味で汚染源となることは否めません。人にも環境にも安全な港にするためにあらゆる努力が払われていますが、間違える可能性は常にあります。野生動物の生息地が破壊されたり、貴重な水源が枯れたり、飛行生物が宇宙船の離着陸で悪影響を受けたりすることもあります。他にも燃料や危険物質の流出で、周辺の環境はおろか住民に危険をもたらす可能性もあります。
 そのため、宇宙港はこれら潜在的脅威を危惧する団体に責められることがあります。そういった団体の中には、「汎銀河生命友愛協会(Pan-Galactic Friends of Life)」のような真っ当で、帝国でもかなりの影響力を持つものから、理解や解決が不可能な主張を並べ立てる先鋭過激派まであり、それらを的確に識別して丁重に扱い、最善の利益に繋げなくてはなりません。

 ほとんどの港長は地元の経済や雇用を最大化しようとしていますが、経済が不安定な世界では宇宙港が雇用を奪っていると見られることもありえます。例えそれが真実ではなくとも、港務局はその懸念を払拭するためにできる限りのことをします。広報課や連絡室が公開講座や教育啓発を行って、宇宙港がどのようにして地元世界を星間経済に結び付けているかを広めることで、「地元に有害なもの」と思われていた宇宙港を少しずつでも「おらが星のもの」に変えていくのです。
 そして、宇宙港は義務教育時の職場見学(や修学旅行)でよく選ばれる場所であり(※帝国宇宙港は基本的にTL12以上で運用されていますから、特に低TL世界の子供たちにとっては帝国市民として「標準的星間文明」に触れられる良い機会になります)、港務局はその幼少期の体験を大切にしています。少なくとも、港務局職員の多くが自己の職業人生の原点として挙げています。
 このような広報の苦労は必ずしも報われるとは限りませんが、港長の心労を少しは減らしているのは間違いないでしょう。

 上記のように、プレイヤーキャラクターが全員、港長を含めた宇宙港幹部となるシナリオ(キャンペーン)は興味深いものとなります。幹部には大きな責任と権限があり、これを利用しない手はありません。確かにその仕事のほとんど退屈なものですが、そういったものを再現するのではなく、港長を「一地方の領主」と捉えるとシナリオの焦点が見えてきます。災害の防止や初期対応、政府高官の視察、地元問題への対処は、頻発こそしないものの物語を盛り上げる要素となりえます。
 そして、平凡な日常も一工夫があれば波乱に満ちたものとなります。宇宙船の定時運行は整備員が職場放棄してしまえば困難になりますし、儀礼にうるさいアスラン使節団を満足させながら悪徳記者に対処するのは腕前を試される局面です。いくら権限があってもそれは万能ではなく、能力と物資と職責の限界から来る二律背反に苦しむこともあるでしょう。宇宙港の日々は常に刺激に満ちているわけでがありませんが、面白くなる時は実に面白くなるのです。

■港内従業員
 販売店や各種窓口、宿泊施設に勤務する従業員は、己がよく接する客層に応じた様々な噂や情報を見聞きしていることが多いです。特に「大人の遊び場」で働く人々は格好の情報源となりえます(港務局はあからさまな歓楽街を港内にはなかなか建設させませんが)。

■犯罪への誘惑
 違法の物品をいかにして安全・確実に税関を通過させるか、犯罪者や闇の商売人たちは常に頭を悩ませています。宇宙港にいる旅客や失業した船員に「うまい話」を持ちかけるだけでなく、旅行者本人すら気付かぬうちに密輸の片棒を担がせようともします。
 また、宇宙港で旅客は多額の金品を持ち歩きがちですし、普段は容易に近付けない支配階層や富裕層も出入りするので、スリや窃盗、時には(極めて異例ですが)暗殺すら行われる場所でもあります。
 逆に、警察が「おとり捜査」を仕掛ける場合もあります。もし港で倉庫への侵入など「簡単で妙に美味い話」を耳にしたのなら、それは覆面捜査員から流された罠かもしれません。そして捕まれば、長期の服役を強いられるか、内通者として捜査機関に情報を提供する危険な役目を引き受けるかのどちらかです。

■ロボット
 よほど低TLで運用されていない限り、宇宙港では動く歩道や小型の乗り物で人や物の移動が行われています。よくあるのは2~6人乗りの電動車両「ポートサイダー(Portsider)」で、後部コンテナに荷物を積んで運ぶ「ポートサイダー・ミュール(Portsider Mule)」や、それら客車・貨車を複数連結して牽引する「ロングサイダー(Longsider)」もあります。基本的にこれらは特定経路を走行する自動運転か、職員による手動運転です。基本的に密閉空間である港内施設では反重力化する利点が乏しいため、安価な車輪型が一般的です(もちろん構内の造りによっては反重力化した方が良い場合もありますが、その際は必ず規定された航路を走行します)。
 また、旅客の手荷物を運びながら付いていくことに特化した「キャリーボット(Carrybot)」もあり、基本的には車輪型ですが、大量の荷物を空中で運べるように大型化・反重力化されたものを運用している宇宙港もあります。

 他に、警備、清掃、販売、医療などの分野でも(TL次第で)ロボットが活用されていることがあるでしょう。順調に動いている時は非常に頼もしい存在ですが、故障や誤動作、そして悪意を持って意図的に操られた時は――

■はぐれ人
 巨大港はもはや一つの都市ですから、当然のように行き先を見失う人も出てきます。迷子を保護すれば御礼や接点が得られるかもしれませんし、待ち合わせた相手がいつまでたっても来ないかもしれません。これぐらいなら笑い事で済ませられるかもしれませんが、では、警備責任者が勤務中に突然失踪したのなら……?

■騒乱
 地元惑星で内戦が起きて難民が宇宙港に押し寄せる、テロ組織が警備の隙を突いて宇宙港を占拠する、はたまた貧富の差への怒りで「富の象徴」である宇宙港を目指して暴徒となった住民が――。このように、いくら高度な警備体制を誇る宇宙港でも、攻撃に晒されることは(極稀とはいえ)ありえます。攻撃に至らなくても、宇宙港職員の舌禍で地元住民を怒らせてしまい、宇宙港に通じる幹線道路を抗議で封鎖されるようなことも起こり得ます。
 他に、地元政府が転覆して「外世界人の排除」に傾き、宇宙港および帝国との関係が一気に悪化することもありますし、宇宙港が対立する2つの種族(国家)の唯一の中立地帯であることもあるでしょう。「爆弾を仕掛けた」という情報が一つ寄せられただけでも、真偽を抜きにして様々な部署が動いて、無数の人々に影響が及ぶのは想像に難くありません。

■自然災害
 宇宙港で「遭遇」するのは人だけではありません。地震、洪水、酸性雨、地滑り、竜巻、熱波、豪雪、そして恒星フレアに隕石……。宇宙には様々な自然環境があり、人の脅威になるものも様々です(地盤沈下の原因が地下を掘り進む巨大生物のせいだとしたら…?)。また、爆発事故や飛散破片衝突といった人為的な災害も起こり得ます。ただし、まともな宇宙港は何重にも冗長性と安全性を確保しているので、何千人もの犠牲者が出たり、宇宙港の存続が脅かされるようなことはまずありませんし、そもそも物語として意外と面白みがないものです。天災、人災を問わず、災害を物語に利用するための要点は、キャラクター本人だけでなく、そのキャラクターが大切にしているもの(物品や知己、愛着ある地域そのもの)を危険に晒すことです。そうでなければほとんど機能しません。
 一方で、敵対し合う集団同士が悪天候で宇宙港に足止めされるなど、部外者や宇宙港職員の立場でも気まぐれな天候に振り回される物語の作り方はあります。他に、深刻な渋滞に巻き込まれたり、星系独自の祝日で思わぬ事態(店舗が全て休業するだけでも影響は甚大です)になるのも、一種の災害と言えるでしょう。

■軌道港
 宇宙港には地上港と軌道港の2種類がありますが、どちらも起こりうる出来事に大差はありません。しかし、プレイヤーに飽きられないためにも軌道港ならではの要素を知っておくのは、レフリーにとって損はありません。
 最もわかりやすい違いは、軌道港では巨大な宇宙船と出会えることです。大型船は基本的に非流線型のため、惑星地表への着陸が原則として不可能です。修理補修や補給のためには軌道港に寄るしかありません。ということは巨大な宇宙船を見られるだけでなく、その乗組員とも出会える可能性があるのです。彼らは零細の自由貿易商人とは違って「選ばれし者」であることを自認しており、大規模な貨物にも日常的に接しています。また、規模が大きくなることで、密航や密輸の隙も大きくなりがちです。
 軍艦もその多くが大型船の範疇に含まれるので、その乗組員と接触するには軌道港や軌道上基地に出向かなくてはなりません。弩級戦艦のような特別な艦は特別な港を母港としていますが、「異例の事態」がいくらでも起こりうるのが帝国というものなので、母港ではない港に居るだけで冒険の発端や現況を示す要素として使えます。
 そして軌道港の管理された脆い環境も、冒険として使えます。地上港で起こりうる災害は軌道港ではより破滅的なものとなりますし(火災一つでも深刻な事態になりえます)、悪人は環境をも人質に取ることができます。未知の生命体が大型船から軌道港に逃げ込むことだって――

■監査室が対処するもの
 宇宙港を舞台にした冒険をするなら、最もやりやすいのがプレイヤーを全員「港務局監査室」の所属にしてしまうものです。監査官と班員には独立した大きな権限が与えられていますし、任務に必要な装備品も支給されます。何よりも、導入が命令型になるのでせっかく用意したシナリオを拒否される恐れがないのが利点です。
 監査室の本来の仕事は諜報活動ではなく、宇宙港業務が滞りなく行われているか査閲することです。備品の数に間違いはないか、エアロックは確実に作動するか、食堂の衛生管理は適切か、職員の服務姿勢に問題はないか等々、宇宙港内部の不備不正に目を光らせ、腐敗する前に事前に摘み取るのが役目です。これらは確かに冒険にはなりそうもありませんが、たった一つの工作機械の紛失が大公暗殺計画の発端かもしれないのです。
 監査官のもう一つの仕事が、宇宙港事故の鑑識調査です。火災、倒壊、衝突など、宇宙港内で重大な事故が起きた際には監査官が現場に向かい、何が起きたのか、なぜ起きたのか、どうすれば再発を防げるのかを調べます。えてして関係者は責任を他人に押し付け合いますし、法律や雇用問題といった様々なしがらみも絡んできます。そんな中で監査官は科学的に客観的に、事故の真相を突き止めていくのです。

 話はずれますが、企業の「工作員」も宇宙港を活動の場としています。有名なところでは、巨大企業テュケラ運輸の警備部門である「ヴィミーン(Vemene)」が挙げられます。ヴィミーンは公的には海賊行為や乗っ取り、貨物の盗難や破壊工作を防ぐのが任務とされていますが、実際には合法・非合法を問わない手段で競合企業を潰そうとしているとの悪評は常にあります。近年ではオベルリンズ運輸との暗闘が囁かれていますが、規模では遥かに格下が相手であっても彼らに容赦はないのです。
 巨大企業に限らず企業は本音では独占を好み、他社を叩こうと虎視眈々と狙っています。そのため宇宙港では(極力)秘密裏に陰謀や交戦が繰り広げられる可能性が高いのです。レフリーはこのような紛争の存在と、それがプレイヤーキャラクターがいま居る宇宙港に波及する可能性を頭の隅に置いておく必要はあります。そして「通商戦争」が宇宙港の利益に反するのであれば、監査室はそれが燃え広がる前に鎮火させないとならないのです。
(※通商戦争では交戦社以外を巻き添えにするのは禁じ手とされていますが、工作員の不注意や失敗、活動の余波などで「貰い火」を食らう可能性はあります。そのせいで宇宙港の評判が落ちては港務局は堪りません)

■宇宙港を舞台にした「挑戦」
 海軍は時折、基地の保安体制を確かめるために「潜入者(スニーカー)」を雇い入れることがあります。帝国最難関の警備網を相手に腕試しをする潜入者は、宇宙船で封鎖線を破り防衛線すり抜け、基地の中枢に迫れば迫るほど報酬が増していきます。もちろん潜入者であることを示す特殊な信号は海軍から発給されていますが、身元を示す前に撃墜される恐れはあります。
(※同様のことを港務局が宇宙港で行っていても不思議ではないと思います)

 近年、帝国宇宙港では「ポートクール(Portkour)」という地下運動競技が流行しています。参加者は乗り物等の移動手段を使わずに、主催者が競技開始直前に指定してくる目的地まで一着を目指して走ります。どのような「道」を進むかは参加者の自由と自己責任であり、即興で待合室や危険物倉庫や屋上を飛び跳ね、あらゆる「障害」に構わず駆け抜けていくのです。もちろん港務局がこんな迷惑な競技を認める訳もなく、捕まれば厳しい罰を受けることとなります。
 もし貴方がこの開催情報を知ったら、誰かの勝ちに賭けますか、港務局に通報しますか、それとも自ら参加者となって賞金を掴もうとしますか…?


【参考文献】
・GURPS Traveller: Starports (Steve Jackson Games)
・Starports (Mongoose Publishing)
・Referees Briefing 3: Going Portside (Mongoose Publishing)
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宇宙港 ~未知への玄関口~ 第3集:港内施設と宙港街

2022-06-16 | Traveller

 宇宙港はその星の「顔」であるため、ほとんどの港では可能な限り清潔で整然とした状態を保とうと心がけています。例外は鉱石の積み込みのために建てられたような工業港ぐらいです。荒れ果てて整備が行き届いていない港は、訪れるのに危険なだけでなく、その星の政府や経済状況が荒れ果てていると見られます。そのため地元政府も、他の支出を切ってでも宇宙港への財政支援をやめないのですが、その結果、綺麗で効率的な宇宙港と荒廃した下町との間に激しい落差が生じることもありえます。
 訪問客の関心を惹くために何十、何百といった企業が競い合う宇宙港では、広告や呼び込みも派手になる傾向があります。注目を集める色や音だけでなく、人やロボットも時に活用されます。当然、行き過ぎた宣伝行為(客引きなど)は負の感情を呼び起こすので宇宙港当局も規制に乗り出しますが、いつの世もその規制のぎりぎりを攻める業者が最終的に勝つため、よほど厳格な統制が行われない限りは、港内は常に騒々しくも賑やかな様相を呈します。

■商業施設
 Cクラス以上の宇宙港には何らかの商業区画があります。ここで宇宙港で手に入る物やサービスを列挙するのは無理ですし、そもそも意味はありません。なぜなら旅人たちは、今、自分が必要な物があるかないかを知りたいだけなのですから。
 基本的にA・Bクラス宇宙港では、その経済規模と店舗の数ゆえにあらゆる商品(小物から宇宙船まで)を提供できるはずです。簡単に手に入らないのは、あまりに遠方の星で産出されるような稀少品か、違法な物か、レフリーの都合が悪い物ぐらいでしょう。
 逆にDクラスの小規模港では、商店の存在も含めて望む商品があるかどうかは運次第で、大抵はあっても地場産の土産物店程度です。Eクラス港に商店はなく、XT線を越えて街まで出掛けなければなりません。
 Cクラス港はその中間で、星間物流でありふれた商品や地元産品といった入手が容易な物なら手に入れられるでしょう。
 理髪店、修理屋、銀行などのサービス業は港の経済力に左右されます。大規模港には様々な業者が揃っていますが、小規模港では運輸会社の券売所しかないか、もしくはそれすらないかもしれません。
 なお帝国の宇宙港では基本的に関税がかからないため、港内の「免税店」というものもありません。

■宿泊施設
 旅行者が多くの時間を過ごすことになる宿泊施設は、休息と取引と社交と密会と陰謀の場です。多くの宇宙港では乗り換え客やしばらく滞在する人のために宿泊施設が用意されています。そのほとんどは港務局と契約した民間業者によるものです。
 宇宙港内にある宿泊施設は港の雰囲気に応じて様々であり、港の規模に比例して大型化・豪華化していきますが、粗末だが安い宿の需要がなくなるわけでもないので、探せば自分の身の丈に合った宿はきっと見つかります(Dクラス港以下では何もないことが多いので、近隣の街まで向かう必要はありますが)。

 「簡易宿泊所(Hostel)」は最低限の寝床を最低限の値段で提供する場所です。宿泊客は寝台と小さな私物入れ、共同のトイレとシャワーと洗濯機を利用することができます。経営形態によっては個室ではなく四人部屋、それどころか多数の寝台を一つの大部屋に並べてカーテンで仕切っているだけのこともありえます(団体は同じ部屋にしてくれますが、保証はありません)。衛生面などの理由から食事は提供されませんし、外部から持ち込むことも許されません。ただし港内の宿泊所は宙港街の安宿と違ってその衛生面には気を配っており、過度に不潔な人は(警告を経て)返金無しに警備員に追い出されることもあります。宿泊料は1泊10クレジット、1週間で50クレジットが定番です。長期滞在はお勧めできない環境ではありますが、禁止もされていません。また、民間の慈善団体や宗教組織が運営している場合は寄付金で運営されているので、無料か館内清掃の手伝いで宿泊できます。この手の慈善団体は隣接して無料の炊き出しを行っていることも多いのですが、全ての港長が風紀などの理由でこういったことに寛容というわけでもありません(逆に、公然/非公然に資金面等で支援する港長もいます)。

 Cクラス以上の一般的な宇宙港ホテルの一般的な客室には、快適に過ごすための清潔で平凡な調度品と映像投影媒体、通信回線への接続口が備えられています。よく「宇宙港ホテルの客室」と言われるものの9割方がこういった部屋で、特に軌道港では画一的な規格として建設されています。これにより建設期間が短縮され、価格も安価で済むのですが、多くの旅行者は行く先々で出くわす同じような部屋に飽き飽きし、より趣のある部屋を求めるようになります。このような部屋は1泊50クレジットで、1週間以上の滞在で1割引となります。

 宇宙港にいることを忘れるような最高級の部屋となると、豪華な浴室、大きな寝台、壮大な景色(本物か立体映像)、美食を誇るレストラン、様々な娯楽設備、24時間体制のルームサービス(ロボット化されている場合もあり)を備え、非常に広くて快適を極めます。こういった部屋の有無は港の交通量や経済力に左右されますが(主にBクラス港以上)、意外にもDクラス港でも不意の賓客に応対するために「貴賓室」の1つはあることもあります。この手の部屋は1泊250クレジットが最低線で、富裕層向け保養地の超豪華スイートルームともなると青天井です。
 余談になりますが、こういった豪華な部屋は星々を股にかけた詐欺の舞台にもなります。詐欺師たちはえてして、ジャンプ-10ドライブや超光速通信機や大裂溝の貴金属鉱山への投資を呼びかける際に、地元の人々に感銘と説得力を与えるためにここを利用するのです。

 長期滞在者向けの貸し部屋は、一般の賃貸物件を利用するほどでもない、数週間程度宇宙港やその近辺に滞在する必要のある出張者(遠方から派遣された建設現場の監督など)のために用意されています。部屋の広さや備え付けの家具は場所と料金次第で様々で、最低2週間の利用が求められます(早期退出は返金されないこともあります)。

■遊技施設
 賭博事業は宇宙港運営において、多大な利益も問題ももたらします。良い面は、賭博は収益性が高い上に諸経費が安く付きます。悪い面は、莫大な量の現金が動くことで詐欺や窃盗、賭博中毒の温床となることです。しかし、賭博を排除しても結局非合法賭博が開帳されるだけ、という考えもできますし、規制の中で運営される合法賭博の方が安心して遊べるともいえます。実際、合法カジノには「社交界的な」雰囲気があり、警備員によって暴力沙汰も抑止されているのは事実です。
 賭博事業を許可するかどうかは港長の判断次第で、大規模港の5%程度が禁止しています(その半分は軍基地からの要請です)。帝国宇宙港のカジノは全てが民間業者によるもので、その約7割はプロヴァース(Provace)、フィレンツェ(Firenze Ltd.)、シュバルツブッフ・レクリエーションズ(Schwarzbuch Recreations, LIC)といった星間大手遊技企業によって運営されています。なお、現地の法律を尊重するため、賭け事が禁止されている星系の住民は港内カジノを利用することはできません。

■娯楽・飲食施設
 劇場、映画館、水族館、展望台、音楽堂、格闘興行、庭園、美術館、水泳プール……、宇宙港の規模が大きくなり人通りが多くなれば多くなるほど、提供される娯楽も多種多彩となります。また、その星が観光業に力を入れているのなら、宇宙港から観光名所に向かうための旅行代理店や案内所もあることでしょう。
 同様に、飲食施設もDクラス港では軽食・立ち飲み程度だったのが、Aクラス港ともなれば宇宙各地の高級料理を堪能することができます。大衆向けの星間チェーン店も多く、ブリューベック(Brubek's)やアストロバーガー(Astroburgers)は各地の港で見かけます。

■礼拝施設
 ほとんどの大規模港には、数十~百名が収容可能の礼拝施設(通称「チャペル」)が少なくとも2つは用意されています。一つは無宗教で、旅行中に誰でも休憩したり瞑想したりできる簡素で静かな部屋です。もう一つは、様々な宗教の象徴物(もしくは立体映像)を配した部屋で、要望があれば特定の宗教の礼拝所に早変わりできます(※近隣にいれば聖職者も呼び出せます)。
 公共の礼拝施設は港務局が管理していますが、特定の宗教団体が港内の区画を借りて運営することも認められています。このような施設は建前上利潤を生むものではないため、賃料は港長の裁量で減免されることが多いです。その代わり、港内の一等地に置かれることもないでしょう。
 港内の礼拝施設には、他の公共空間とは異なる作法が存在します。中で静寂を破ったり、武器を公然と身に着けることは大変な無作法とされます(世の中には決闘の儀式がある宗派もありますが、それでも他者と同じ場にいる際には作法があります)。また商談や謀議など、精神的・宗教的なこと以外の雑談も無作法とされます。
 礼拝施設は罪人の逃亡先ではなく、もし逃げ込んでも警備員が実力で排除します(が、自首をしに来たのであれば別です)。また、港内で銃撃戦に巻き込まれた際に逃げ込み、自分が「無関係の第三者」であることを表明することもできます。このように非常時には人々が助けを求めてくる傾向があるため、所によっては耐火構造にしたり壁や扉を厚くするなど、安全面の配慮が行われることもあります。
(※『トラベラー』と宗教については後述します)

■求人施設
 全ての宇宙港には、失業中の乗組員と人手を求める船舶を引き合わせるために「斡旋所(Hiring Hall)」があります。Dクラス以下の宇宙港では、求職者が自分の資格や連絡先を載せるための単なる電子掲示板に過ぎませんが、大規模港になるとれっきとした就職案内所になり、その場で求職者が面接を受けることもできますし、帝国商務省から派遣された担当者が労働条件などの相談や苦情を聞いてくれます。
 ただし、多くの世界(特に辺境)では雇用主が零細の独立商人に偏りがちであることに注意が必要です。商船企業は一定の経済規模のある星にしか立ち寄らないからです。
(※ちなみに、技術者の人手不足と離職率の高さはいつの世も変わらないらしく、〈エンジニアリング〉技能持ちは宇宙船と宇宙港の双方で人材の奪い合いが起きているそうです)

■工場
 港務局が自ら工場を設置することはまず考えられませんが、土地を借りた民間業者が港内に、例えば輸出製品の製造工場を置くことはありえます。

■造船所
 恒星間宇宙船や小艇の建造・整備・改装・年次全般検査(オーバーホール)を行う機能を備えた施設です。役割の重複を避けるために造船所はほぼ民営化されており、平時は帝国海軍の軍艦すら民間企業に発注が行われていますが、基地司令官には有事の際に造船所を接収する権限があります。
 ほとんどの造船所は主要世界の周回軌道上(もしくは軌道港内)にありますが、真空の惑星・衛星の地表、または小惑星に置かれていることもあります。建造能力が小艇のみなら、地上港に併設されているかもしれません。

■重要区画
 「重要区画」とは、発電所(核融合・恒星光・風力…等々)、中央通信所、監視施設、管制塔など、そこが失われれば宇宙港の機能が著しく低下しかねない施設のことです。そういった区画は港の他の場所よりも警備が厳重になっています。
 宇宙港の設計段階から、重要区画はまとめて停止しないように分散して置かれる傾向がありますが、初めからテロや軍事攻撃が想定される場合は警備の負担を和らげるために集中されることもあります。

■通信回線
 帝国の宇宙港内には通常、地元の通信網に接続するための公共端末が(少額料金で)提供されています。これらの端末は普通はコンピュータを兼ねていますが、低技術世界では昔ながらの公衆電話に置き換えられています。
 ちなみに宇宙港内部の通信回線はこの公共回線とは別系統になっていて、公共端末で今いる宇宙港に関する様々な基本情報は得られても、内部の機密情報を直接見ることはできません。なお港務局職員は、基本的にTL10以上の無線機器で常に連絡を取り合っています。

■XT線
第7条 帝国領における治外法権
 帝国に譲渡された宇宙港および領土の統治と運営は、帝国に留保される。このような領土と加盟星系との間の物体および知的生命の移動は、その移動を管轄する帝国法に従い、加盟星系によって制御されるものではない。そしてこのような領土は加盟星系の管轄からも除外されるものとし、いかなる物体および知的生命も、その領土を管轄する帝国当局の明確な同意なしに立ち入ってはならない。
――帝国暦0年001日、「建国の勅令」より

 治外法権(extraterritoriality、略してXT)とは、主権国家内のとある場所が法律上他国の領土である、という概念です。大使館とその敷地が最たる例ですが、宇宙港の境界線内でも同様にその惑星の法律ではなく帝国法が取って代わります。
 その境界線(XT線)を表すものは、友好的な世界では簡易的なフェンスで事足りますが、そうでない世界では厳重に警戒された巨壁となるかもしれません。いずれにせよ、XT線は港長にとって最も複雑で頭を悩ませる問題の種です。
 もしも帝国と地元政府との間に政治的な摩擦が加熱したなら、港長には経済封鎖という奥の手があります。自らの権限で宇宙港を閉鎖して旅客や物流を止めることで、帝国市民が紛争に巻き込まれるのを抑止したり、武器類の流入を阻止したりするのです。ただしこれは同時に食料など生活必需品も滞ることになり、住民はおろか宇宙港職員も危険に晒すため、滅多に行使されません。そしてそれでも関係の悪化が止まらない場合は、港長は最後の手段として海兵隊の出動を要請することとなります。

 帝国への亡命を希望するなら、単にフェンスを掴んで「保護を!」と叫ぶだけでは不十分で、実際にXT線を越えなくてはなりません。港の警備員は、地元当局に追われている亡命者がこちらに向かって発砲でもしてこない限り、亡命の邪魔をすることはまずありません。ただし、亡命が受け入れられるかは帝国の判断次第であり、地元当局に引き渡される可能性も十分あります。治外法権の概念は、各宇宙港が帝国文明の前哨基地となるためのもので、少なくとも(帝国法上の)犯罪者を匿うためのものではないのです。

「クレオン・ズナスツによる帝国建国から1000年以上経った今、我々は彼が帝国を成功させるために行った小さな事を見逃しがちである。例えば星系への不干渉原則、そして宇宙港の治外法権のような些細な事を。この2つを併せ、私は『クレオン・ドクトリン』と呼びたい」
「彼の天才性は、世界の統治をその世界の住民に任せると同時に、各世界に帝国の存在を確保する方法を編み出したことだ。クレオンは、自由放任主義と父権主義を両立させる方法を見出したのだ」
――ノリス・イーラ・アレドン公爵
聖リジャイナ大学での講演より

 治外法権の原則は第一帝国の時代にまで遡りますが、その教訓はクレオン1世にも受け継がれていました。恒星間国家では貨物が目的地まで複数の星系を経由して運ばれるものですが、もし経由地ごとに関税が課されることを許していては、最終価格が莫大なものになってしまいます。そのため宇宙港は「自由貿易特区」である必要があり、更にこの関税停止権が、地方自治権を例外的に無視するための法的根拠となったのです。
 この治外法権は貿易以外の問題でも有用であることが示されています。いざという時に地元住民が帝国の庇護を求める亡命先になりますし、人道支援団体が安全な活動拠点を確保することができます。帝国企業が星系政府の干渉を受けずに商売を行うことで、その星系への影響力を高めるだけでなく、宇宙規模の視点で活動を調整することができます。そして、帝国当局の秘密諜報活動もよりやりやすくなるのです。

 他国の大使館もXT線内に設置される傾向があります。特にスピンワード・マーチ宙域でのゾダーン大使館に顕著で、これは帝国市民の過去の辺境戦争の記憶や超能力に対する偏見から、大使館職員の安全を気遣っての措置です。

■港内での武器所持について
 帝国では熱核兵器と生物兵器以外の武器は誰でも所有することができるので、理屈の上ではXT線の帝国側の治安レベルは実質1です。しかしながら、国営施設内での武器所持は禁止されています。宇宙港やその関連施設内では(軌道港では特に)厳格な管理が行われていますが(治安レベル7~9相当)、例外は存在します。宇宙船に搭載された各種兵器は当然問題ありませんし、荷物として適切に梱包された武器も同じですが、それは特定の重要施設や公共空間には持ち込めない決まりです。もちろん爆発物は厳禁です。違反があれば武器を没収された上で退去処分となりますし、その情報が共有されて今後は各地の税関でより厳しい検査が行われるようになります。
(※護身用の拳銃や短剣の所持が仮に許可されていても、常に鞘に入れ、周囲からそれが見えるようにして携帯しなくてはなりません)
 一方で、港長は独自に治安レベルを引き下げる裁量を持っています。例えば、地上港の屋外空間でのみ治安レベルを地元星系と揃えて、武器類の港外との搬出搬入時に無駄な確認作業を省くことができます。誰もが銃器を常時携帯しているような星系、もしくは警備員の手が足りない小規模港では、公共空間の治安レベルを下げることもあります(仮に発砲があれば警備員が即座に制圧できるようにはしていますが、誰が騒動の発端で誰が善意の加勢者かを識別するのは厄介です)。

■宙港街
 「宙港街(Startown)」とは宇宙港近辺にある特殊な街区の総称で、安宿や薄汚れた酒場、違法賭博場、怪しい店舗などがあり、地元社会にも港にも属さないが双方に関わる人々、つまり失業中の乗組員や港湾労働者、小悪党や詐欺師、売春婦、逃亡者、各方面に顔が利くと称する者、はたまた彼らを食い物にする元締めなどが巣食っています。ここでは多額の現金を持ち歩きがちな旅行者を狙った商売や犯罪が広く営まれていますが、旅行者にしか需要のなさそうな商い(例えば旅人特有の病気を診る医師)や、仮に合法であっても地元では後ろめたい職種(身体改造など)もここに店を構えます。その独特の雰囲気は、旅行者のみならず地元住民にとっても「刺激的な」街と見られています。それゆえに宙港街は、噂や情報を得たり、仕事を見つけたり、人材を確保したりするのに適した場です。
 宙港街、という(蔑称めいた)一般名詞は星間旅行や貿易に関わる人なら誰でも知っているものですが、当然そこには地元住民から呼ばれる地名もあります。多くの場合、それは宙港街の成立、時には港の建設前からあるもので、皮肉なことに遥か昔に過ぎ去った華麗なる理想――キャッスルヒル、パークサイド、シルバーグローブ等々――を表していることも多いです。そして住民が「本当の名前」で呼ぶことにこだわるのは、醜い現状を認めたくないか、酒場での喧嘩の口実を求めているかです。

 ほとんどの星系政府は宙港街を俗悪と考えていますが、治安当局がよほどの弾圧でもしない限り自然発生するのが宙港街というものです。賢明な政治家や港長なら、人々が文化を越えて移動する(つまり帝国から地元へ、またはその逆)際に必要な「玄関口」の機能を果たしているのを理解しています。
 意外にも宙港街は宇宙港に隣接しているとは限りません。外世界での風聞や体裁を気にした星系政府が宇宙港から見える範囲の「いかがわしい店」を徹底して排除した結果、数キロメートル先に宙港街が成立することもあります。他に、宇宙港の隣にその星唯一の集落があるような場合、街全体は宙港街にはなりませんが、それでも一本の通りだけが独特の空気感を漂わせたりするのです。
 港務局が望まずしてXT線内もしくは線を跨ぐように宙港街が発展していることもあります。理由としては、港務局が既存宇宙港を引き継いだ時点で街が存在していたか、地元政府が宙港街の成立を帝国の責任にして押し付けたことが考えられます(※他に、宇宙港の拡張で宙港街が取り込まれたとか、何らかの理由で巨大港の一部がスラム化したとか色々あるでしょう)。こういった宙港街には地元政府の法律がもちろん一切及ばない上に、帝国法は元々必要最小限のものしかないため、ここを訪れるには細心の注意と度胸と交渉力が必要となります。また、こういった港での税関や警備部の職員は、交通や物流の規制などで大きな課題に直面しています。

 ほとんどの星系政府は、宙港街については「見て見ぬ振り」をする傾向があります。そこで行われる数々の悲喜劇は自己責任や自業自得で済ませ、悪影響が「自分たち」に広がらないよう願っています(所によっては隔離措置も行われます)。しかし、宙港街の悪印象は誇張されて伝わっていることも多いです。確かに宙港街の犯罪発生率が特に高いのは事実ですが、そもそも多くの住民は強盗される価値もないほど貧しいのです。そしてあまりに犯罪が横行すると、いつかは地元政府が法律を盾に介入してくることを弁えています。
 宙港街の中に警察署がある所もあります(が、民間警備会社や傭兵部隊に丸投げされていることも少なくありません)。愚かな旅行者を救ったり、目に余る犯罪行為を止める立場ではありますが、多くの警官が低賃金と過重労働に喘いでおり、賄賂が通用しやすい環境にあります。その結果、警察署の前で堂々と違法行為が行われることも珍しくありません(と言っても、盗品売買など非暴力なものに限られますが)。
 宙港街の外の地元警察は多勢に無勢なのがわかっているので、よほど重要な任務がない限りは突入を避けます。逃げ込んだ指名手配犯の追跡は基本的にプロの賞金稼ぎ(バウンティハンター)に委ねられ、彼らは危険に見合った報酬を得ているのですが、標的がよほど住民に見放されていない限り、賞金稼ぎが宙港街で歓迎されることはないでしょう。
 近くに軍事基地がある宙港街では憲兵による巡回もよく見かける光景ですが、これは治安維持のためではなく、羽目を外した非番の兵士が門限を破らないように見張っているのです。
 一方で「小綺麗な」宙港街も存在します。高治安星系では思想や活動の多様性に不寛容であることも多く、宇宙港を出入りする余所者もその同類とみなされます。そういった星の宙港街には、宇宙港で働いたり地元社会で異端視されたりしている人々が流れ着きます。住民の多くは底辺層ではなく労働者層で、可能な限り町を整えています。裏社会が生じやすいのは同じですが、他に行き場がないことと「町衆の誇り」があるので、怪しい輩の存在を少なく抑えています。こういった街区は「星見町(Starview)」や「港村(Down Village)」と呼ばれていて、一般的な宙港街とは区別されます。

 ほとんどの世界の市民は、地元の宙港街で営まれている不適切な商業活動の大きさを認めたがらないでしょうが(そもそも地下経済を正確に測れてもいません)、どうしても社会には必ず闇が生ずるものです。現実として多くの帝国世界は、農業、工業、鉱業、製造業など何らかの経済活動に特化しているので、とある商品は余り、別の商品は不足することがよくあります。星間市場は無数の文化の集合体なので想像しうる限りの商品が存在しますが、その大部分を「自分たちの文化では不要・不適切な物」としていることもよくあります。
 つまり、ほとんどの世界では欲しい物が作られていないか、欲しくても手に入れられないのです。これを埋めるのが宙港街です。一般商店には公に並んでいない品物が、宙港街に行けば価格はともかく無数に存在するのです。ただし、宙港街での商品取引は一般的なものよりかなり難しいです。まず欲しい物の売り主を(〈交渉〉や〈接触〉で)探さねばなりませんし、物によっては下手をすれば警察の注意を引きます。そして売り主と接触できたとしても、定価の3倍程度から(〈交渉〉や〈貿易〉での)価格交渉が始まります。
 一般的に地下経済は犯罪組織によって統御されています。もし旅人が彼らの顧客を害したり、彼らを騙そうとすれば、強大な敵となるのは間違いないでしょう。逆に、十分な度胸を持って道徳心を脇に置けば、「コスモス・ノストラ(cosmos nostra)」の歓心を得る仕事を見つけることもできるでしょう(その代わり、警察や港務局や税関が敵となります)。


【付録:『トラベラー』と宗教についての考察】
 元々がSFゲームであり、これまで主に星系の雰囲気作りのために設定が起こされたこともあってか、〈第三帝国〉における宗教というものはほとんどが星系規模の域を出ていません。宇宙を旅するような帝国人はあまり信心深くなさそうだ、というのが推察できますが、宙域規模以上の宗教となると、GDW時代は「星神教会(Church of the Stellar Divinity)」が唯一と言ってもいい存在でした(※星域規模でも『黄昏の峰へ』の「八角教団(Octagon society)」ぐらいでしょうか、絶えてしまいましたが)。
 その後、マングース社の『Supplement 15: Powers and Principalities』(2014年)で宗教設定が大量に紹介されたのですが、これはBITS(British Isles Traveller Support)の『101 Religions』(1998年)の合本再販であり、扱いとしてはほぼ同人誌です(実際、後の設定に影響を与えていません)。加えて、これは、元々『Marc Miller's Traveller(T4)』の「帝国暦0年(Milieu 0)」用の設定集であり、帝国暦1105年で使うには鵜呑みはできません(その調整すらやらない当時のマングース社の姿勢も問題ですが…)。この資料からは「シレア教会(Church of Sylea)」(とその分派)の設定が使えそうではあるのですが、千年後に全帝国規模でシレア教会が信仰されているかどうかは考えものです(少なくとも公式設定に昇格はしていません)。ちなみにこのシレア教会は、シレア人が信仰する「道の書(マール・キ・ゾン)」とは別で、テラ起源の宗教(おそらくキリスト教)の末裔らしいです
 結局のところ、宗教がシナリオに絡むなら自作する(公式設定との整合性が気になるなら星域規模までに留める)、絡まないなら適当に済ます、というのが当面の結論となりそうです。
 ちなみに、ソロマニ連合ではソロマニ主義の影響で信心深い人が多いらしいです。様々な宗教団体が(それも小国規模すら)ありますが、中でもソロマニ・カトリック教会(Solomani Catholic Church)は、ソロマニ圏の帝国側にも伝道されていそうな教団です。


【ライブラリ・データ】
ブリューベック Brubek's
 ソロマニ圏を中心に、主にA・Bクラス宇宙港(稀にCクラスも)に数百店舗を展開するチェーン酒場です。帝国外ではソード・ワールズ領内に20店があります。どの店も間取りや内装は「古き良き」テラ様式で統一されていて(人通りの多い店舗は拡張されることがありますが)、従業員もソロマニ人を優先的に雇用していますが、これは内規があるわけではなく単に店の雰囲気に合うのがソロマニ人だからです。
 ブリューベックは自社でビールを醸造しており、熱心な常連客が付いています(むしろ常連客しかいないと言っても過言ではありません)。人気メニューはハンバーガー、皮付きフライドポテト、オニオンリングといったところで、サラダもありますがあまり売れていないようです。客層はソロマニ人が主体ですが、他の人類や(赤身肉目当ての)ヴァルグルも出入りしています。
 宇宙港酒場にありがちな「乱闘」はここでは御法度です。従業員につまみ出されるなら運がいい方で、常連客から袋叩きにされても文句は言えません。この落ち着いた雰囲気ゆえに、常連客との出会いや人脈作りに最適な場となっていますし、バーテンダーから噂話を聞き出すのもやりやすいのです。
(※原文では、出店先の半分は「Solomani space」とあります。普通に解釈すれば「ソロマニ領」となりますが、帝国企業(もしくは帝国に展開している企業)がソロマニ領内に支店を持っていることは、ソロマニ/ソラー運輸やSuSAG社の例を見ても明らかなようにかなりの禁忌とされています。よって、意図的に「ソロマニ圏」と曲解することで整合性を取りました)

アストロバーガー Astroburgers
 帝国はおろか、既知宇宙最大のファストフード店と言われているのがこのアストロバーガーです。歴代の経営者たちは派手で節操のない広告宣伝と、それに相応しい低価格戦略で(なぜか)大成功を収め、数万店舗に及ぶ今の地位を築き上げました。今では「コルセアバーガー」の商標でヴァルグル諸国にも展開しています。
 また巨大飲食企業の例に漏れず、アストロバーガーも食品産業に進出しています。意外にもその投資計画は倫理的で、弱小な農産業に多額の資金を投入して作物の安定供給を実現しているのです。農場に同社の巨大で恥ずかしい看板を掲げることは、零細農家にとっては土地を守ってきちんとした生活を送ることと相殺されているようです。

道の書 Maar Ki Zon
 現在では省略されてマール・ゾンと呼ばれる『道の書(マール・キ・ゾン)』は、偽書との指摘がありながらもシレア文化の復興に重要な役割を果たした哲学書であり、聖典です。-1866年にシレア(現在のキャピタル)で発見されたこの『道の書』は、ヴィラニ人との接触前の古代王国の宗教に関する書物と思われました。これが当時のシレア語に訳されて出版されると民族主義者の間で大いに広まり、シレア人の間に『道の書』の戒律に従った宗教運動が勃興しました。
 『道の書』はある哲学者の教えと考えられていますが、それが誰なのかは歴史記録が存在せず、謎となっています。『道の書』は全ての人類を霊的に平等な存在と捉え、来世よりも現世を重んじて倫理的な生活を送ることを説いています。『道の書』の信者は「ラン・キ・ゾン(求道者)」と呼ばれ、創造神が宇宙を創造した理由を求めるために高い意識を目指しています。
 敬虔な信者は質素倹約に努め、毎日祈りを捧げ、酒類を断ち、貞操を守り、収入の一部を慈善団体に寄付しなくてはなりません。また、利子を取ることを禁じない一方で「知的財産」から利潤を得ることを禁じています(※ヴィラニ人による搾取的な知財法の反動と考えられています)。暗黒時代には何の問題もなかったこれらの戒律ですが、現在の帝国では古臭く窮屈に思われているのは否めません。そもそも彼らは、非シレア人の改宗にかなり消極的です。

ソロマニ・カトリック教会 Solomani Catholic Church
 トリノ(アルファ・クルーシス宙域 0630)発祥で、現在はアミアン(同 0731)を総本山としている教団です。有名なのはトリノの観光名所にもなっている12基の空中聖堂ですが、一方で彼らはアミアンでは意図的にTL4の質素清貧な生活を送っています。
 元々トリノ星系は、恒星間戦争時代に異星種族の救済を巡る考えの違いからバチカンと袂を分かったカトリック信者が入植してきた星系で、暗黒時代の間にその教義はより強固となって「トリノ教会(Turin Church)」という独自の宗派となりました。
 その後この地域へのソロマニ主義の浸透によって、トリノ教会の人類優越主義宗派であるこのソロマニ・カトリック教会が帝国暦700年代から台頭し、「新ソロマニ聖書(New Solomani Bible)」を掲げてソロマニ圏各地で布教活動や政治的関与を強めています。
(※ちなみにトリノ教会とバチカンは数百年前に和解しており、教義の違いはそれほどないそうです(ローマ・カトリックの方がソロマニ主義に染まったのかもしれませんが…))
(※トリノ教会の分派で最も過激なのが暗黒時代末期に成立した「ファーストクロス教会(Church of the First Cross)」とされていて、ソロマニ人を至上とする教義と強引な改宗で悪名高いです(傭兵ならぬ僧兵部隊すら抱えていて、帝国政府がこれをテロ組織に指定するほど)。このことからソロマニ・カトリックの教義はあくまで「人類のみが神の子である」止まりと思われます)


【参考文献】
・Solomani & Aslan (Digest Group Publications)
・GURPS Traveller: Starports (Steve Jackson Games)
・GURPS Traveller: Humaniti (Steve Jackson Games)
・Starports (Mongoose Publishing)
・Supplement 15: Powers and Principalities (Mongoose Publishing)
・Referees Briefing 3: Going Portside (Mongoose Publishing)
・Solomani Front (Mongoose Publishing)
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宇宙港 ~未知への玄関口~ 第2集:帝国宇宙港務局(SPA)の組織と職務

2022-05-18 | Traveller

「宇宙港は音、宇宙港は詩、宇宙港は歌、そして楽器。適切に扱われていれば決して間違いはない――私が狂皇クレオンでなければ」
――マーガレット二世時代の港務局長ドロテア・パカール

 帝国は、その広大な領土を間接統治するために数多くの機関を使っています。その中でも帝国海軍以上に重要な役割を担い、迷宮のような官僚機構でも特異な存在なのが「帝国宇宙港務局(Imperial Starport Authority)」です。港務局は国内全ての官製宇宙港を統括し、帝国領内における通商と旅客の実に97%(加えて帝国近隣星系での4割)を扱っています。
 港務局は市民から信頼されている組織です。様々な役割を果たしながら星間交易と旅行を促進し、帝国市民にとってごく当たり前の生活を守っています。そこに存在するだけで実効統治の象徴となる帝国宇宙港の日々の運営は、一見簡単そうに見えますが実際には管理・交渉・危機対応などあらゆる面での才覚が求められます。仮に港務局が止まれば貿易は完全に停止し、想像を絶する経済的混乱が生じるでしょう。しかしありがたいことに、港務局には非常に優秀な人材が集っており、巨大企業に匹敵するほど多くの分野に手を広げながらも、目に見えないあらゆる危機に対処してきた実績があります。

 第三帝国は建国当初、各地に探査拠点と海軍基地を優先して建設していきましたが、商業港の重要性はかねてから認識されていました。同時に、その質の保証を帝国政府自らが背負わなくてはならないこともわかっていました。すぐに偵察局は基地課に「民間宇宙港管理室(Civilian Starports Office)」を設立し、既存宇宙港を国有化する際の規則作りや、新宇宙港の建設手続きの法制化、新規建設や拡張工事の優先順位付けなどを行いました。第一次大探査(First Survey)完了後の帝国暦422年、皇帝マーティン三世の勅令によってこの管理室は偵察局から独立し、帝国宇宙港務局として再編されました。現在の港務局は組織系統では商務省の下にありますが、最高責任者である港務局長は皇帝直属とされています。

「海軍は発砲の権限を握り、偵察局は初接触の興奮を占め、外交官は理想を追い求める。しかし、袖を捲り上げて帝国の日常を支えているのは宇宙港職員である」
――とある格言

 全ての官製宇宙港は(現地が帝国をどう思っていようとも)帝国の所有物であり、治外法権(XT)として扱われています。このXT線の帝国側では現地の法律や政治的圧力は通用しません。仮に現地では違法の品(煙草程度でも)が貨物として宇宙港に持ち込まれたとしても、XT線を越えなければ現地政府には何もできません(密輸の温床であるとして苦情を入れることはありますが、密輸の大半が港務局管轄外の港で行われているのが実情です)。また、現地政府による宇宙港への攻撃は即座に「帝国への反逆」とみなされ、海兵隊による軍事介入が行われます。

 港務局は星間貿易にかかる費用を間接的に抑え、公正と安全に関する帝国法を遂行することで経済交流を促進し、必然的に税収を増やす手助けをしています。港務局宇宙港を介した自由貿易は非常に効率的かつ関税もかからないため、もはや港務局に対抗できる地方政府や民間企業は存在しません。
(※建前では関税徴収権は何らかの危機に備えて留保されているだけです。例えば、反乱を起こした/起こしそうな星系に懲罰的関税をかけることはありえます)
 帝国の宇宙港がある全ての世界は「公正な貿易」を実践せねばなりません。港務局管轄の宇宙港を介して取引される商品に対して、星系特有の関税や貿易慣行で排除・優遇することは法律で禁じられています。ただし星系自治権との兼ね合いで「あらゆる宇宙港で」禁じる法的根拠はなく、それが今も地方港や私設港が残っている理由の一つでもあります。
 この「公正」を重んじる長年の努力は、何千もの世界を港務局の仕組みに染め、そしてそれを通じて帝国そのものを売り込むことに繋がりました。摩擦や抗議もありましたが、うるさくとも帝国の宇宙港を持つことが多大な経済的利益になるという実績の積み重ねが、帝国への信頼と献身を呼び起こしていったのです。そこから得られる多くの利益に比べれば、宇宙港や職員に掛かる多額の経費はむしろ安いものです。


■港務局理事会
 宇宙港運営における最高組織は、キャピタルに置かれた「港務局理事会」です。理事会は宇宙港にある10部署と施設部(後述)それぞれの代表に、監察室長を加えた12名で構成されます。皇帝に任命された港務局長は、会の場で票が賛否同数となった際の13票目を入れる権限を持ち、理事会の決定を皇帝に推挙する立場です。この港務局長は伯爵級の人事とされ、なるべく世襲にならないよう配慮されます。ただし官庁としての港務局にはあまり貴族が勤めることはなく、職員はほぼ平民です。
(※ちなみに理事は男爵級、港長は士爵級の人事です。低いように見えますが、宙域艦隊提督ですら男爵級人事ですし、平民が一代で取れる爵位の上限が男爵であることも影響しているかもしれません)
 そして理事会には商務省や偵察局から代表者が必ずと言っていいほど出席して議論には参加はしますが、投票権はありません。港務局はこの両機関と密接に連携して活動するため、常設の連絡室を置いています。


星域/宙域統括本部
 港務局は各宇宙港の運営を監督・指導するために、星域や宙域ごとに統括本部を置いています。各地の港長からの報告は星域統括本部に送られ、それを集約・分類・要約して宙域統括本部に流します。宙域統括本部も同様の作業を行い、最終的にはこれらはキャピタルの理事会で報告されます。もちろん報告書の原本は全て保管され、疑義がある場合は後々再確認が取れるようになっています。
 各統括本部では星域(宙域)統括本部長が業務を指揮し、その下に宇宙港と同じ10部署が置かれています。その各部署を率いているのは星域(宙域)調整官で、その肩書きが示す通り指揮監督よりも調整が主業務です。
 加えて宙域統括本部には「施設部(Facilities departments)」という第11の部署があり、その下には2つの課が置かれています。「立地査定課(Survey and Siting)」は新宇宙港の建設候補地や(宇宙港等級が上下するような)大規模改築の妥当性を検討する部署です(※小規模なら星域統括本部や現地で決裁されますが、その繰り返しで結果的に査定を経ずに大規模改築が成し遂げられてしまうこともあります。こういったやり口を立地査定課は嫌いますが)。「土木課(Civil Engineering)」は測量や建設の計画を港務局系列や外部の建設会社と契約して手配する部署です。なお、特殊な技術課題や政治的問題が無い限り、通常は外部に発注します。


■港務局監察室
 港務局内部に睨みを利かせる部署で、ここには局内の上下関係は通用しません。また、「正々堂々と」仕事をすることもあまりないため、他部署の管理職は監察室からの単なる日常的な質問であっても胃を痛めています。
 監察室の規模は公表されていませんが、少なくとも数千名と言われています。1人の監査官の下には班員たちが属し、班単位で独立行動がなされます。この活動内容は、例え同期の友であっても他の班のことはぼんやりとしかわからないと言われています。
 監察室はまるで諜報機関のように見えますが、実際、「機密予算」の存在も含めてそう言われても仕方のない側面があります。なぜなら宇宙港では、よくある密輸から世界を揺るがす政治的陰謀までありとあらゆる「闇」があるからです。とはいえ囮捜査や盗聴など、訴追に支障が出るような行為はなるべく避けられます。


■宇宙港の収入面
 宇宙港の建設と運営にはとにかくお金がかかります。基本的に開港から20年で収支均衡を達成するのが理想とされていますが、実際には平均して25~30年かかり、中にはいつまでも赤字のところもあります。特にEクラス港が黒字になることはまずありません。また、先に「大きな箱」を建ててから顧客を呼び込む、というやり方は確実に失敗するようです。
 とはいえ以下に挙げた収入源により、港務局全体としての財政は非常に健全です。

1.補助金
 帝国の宇宙港は港務局を通じて国庫から運営資金を受け取っています。経済成長は結果的に国家財政を潤すため、帝国が赤字港であっても熱心に運営をするのはこのためです。また、海軍など他の官庁や星系政府も個別に補助金を出すことがあります。

2.船舶へのサービス料金
 帝国は宇宙港を公共事業として運営していますが、その利用は無料ではありません。宇宙港は利用者から入港料や点検費などの安定した収入を得ています。
(※造船所からも莫大な利益が出ているそうですが、民営化されているという設定と矛盾するため、賃貸料を取っていると解釈すべきでしょう)

3.賃貸事業
 宇宙港の屋内空間の多くは民間業者に貸し出されていて、人の集まる大規模港では都会の一等地並みの賃料相場となっています。これに関しては「管理部事業課」の項目で解説します。


■港長と幹部
 宇宙港で「幹部(Executive)」と呼ばれるのは組織の頂点にいる港長(と副港長)とその直属の部下(つまり各部署の長)です。港務局の内規では、宇宙港業務の全ては「港長の裁量で行われる」と明記されています。これが意図的に曖昧にされているのは、星系間の通信にかかる時間を考慮に入れて、わざわざ一つ一つ条文化することなく各地の環境や状況に応じて広範囲に柔軟な対応を行えるようにするためで、港長に独裁的権力を与えるものではありません。港長にできるのは各業務の許可や停止ぐらいです。理由もなく民間人を警備員に逮捕させることはできませんが(※ただし警備員は不審者を港長に諮ることなく捕縛することはできます)、問題を起こした店舗に営業停止を命じることはできます(私有財産の没収はできません)し、船を法的根拠と証拠なく差し押さえることはできませんが、離陸許可を無制限に却下することはできます。
 また、港内にあっても命令系統が異なる海軍・偵察局基地に指図することはできませんし、領事館があったとしても同じです。しかし、重要な事柄について現地の宇宙港長に相談しない指揮官や外交官は滅多にいません。表向きは港長は単なる宇宙港の管理人に過ぎませんが、その影響力はXT線を越えて遥かに広がり、発言一つで様々な事象を動かします。言わば「帝国の代理人」である港長には特権を濫用することなく粘り強く各種状況に対応する能力が求められるため、独善的な性格だと出世の過程で排除される傾向にあります。しかし、人里離れた星に長くいると少々風変わりになり、権限を強めに行使することが知られています。そして港長の働き方も様々で、現場に全てを任せる港長もいれば、末端まで細かく指示を出す港長もいます。いずれにせよ、港長は優秀な人物でなければ長くは務まりません。


■宇宙港の部署
 宇宙港では、様々な法律や政治にも対処しながら数多くの技術やサービスを厳格な基準で提供しなくてはならず、例え小さな港であっても港長一人で全てに目を配ることは不可能です。よって日々の運営には非常に複雑化した各部署の組織的な協調が必要となり、それぞれの港の職員は星系独特の文化・環境の中でそれを実現するために日々奮闘しています。
 ほとんどの港務局管轄宇宙港には以下の10部署がありますが、小規模港ではいくつかが廃止されたり他部署と兼務していたりします。

●管理部 Administration Department
 各種許可証を発行し、船籍登録や航行記録や貨物目録から自動販売機の販売統計まで、宇宙港のあらゆる事務処理を担当する部署です。港長が定めた運営方針をどのように反映させていくかは、この管理部の働き一つにかかっています。ちなみに、その職務経験から港長の多くは管理部出身者が占めます。
 この部署の仕事はほとんど全てが退屈なもので、「宇宙への玄関口」を担っているという華やかさは微塵もありません。多くの事務職員は杓子定規で無感情に見えますが、自由貿易商人なら誰しもがこことうまく付き合うのが商売の一番の秘訣だと語ります。見た目は地味ですが、この管理部こそが宇宙港全体の業務を潤滑に回すための重要な部署なのです。

 大規模な宇宙港であれば、管理部の事務所はメインターミナルと繋がった別棟に置かれていることが多いです。そうでなくても港の隅や孤立した場所にある傾向があります。つまり宇宙港職員以外がここに立ち入ることはほぼなく、職員とも交流は少ないのです。よって、管理部に用事ができてしまった一般旅行者は、どこに行けばいいのか苦労することでしょう。〈管理〉技能を駆使したり、警備員や清掃員の善意や好意を得られればその助けになります。
 そして管理部の事務所を訪れると、そこには――ぎっしりと並べられた事務机、安っぽい椅子、薄暗い照明、古びたコンピュータ端末といった、いかにも役所めいた光景が目に付きます。港長には(例えEクラス港であっても)専用の部屋が充てがわれますが、一般職員は陰鬱としたこの部屋で日々事務作業に追われているのです。

「前からずっと思ってたんですけど、お宅の新しい格納庫の見苦しさときたら……、毎朝寝室の窓からあれを見る方の身にもなってくださいよ。港長にちゃんと言っといてくださいね!」
――宇宙港に実際に寄せられた苦情

 惑星関連連絡室(planetary liaison office)とも呼ばれる「連絡室(Line Office)」は、宇宙港と地元政府との間の主要な窓口となっています(この部署を置けないような小規模港では、管理部の職員が兼務していることもあります)。ここの職務は主に2つあり、(広報課と共同で)宇宙港の重要性とその利点を講演会や教育啓発などによって地元に広めることと、地元住民からの苦情処理です。
 宇宙港への苦情も様々で、騒音や廃棄物処理、交通接続の利便性、時には美観問題も寄せられます。連絡室がこれらの苦情や地元政府とどう付き合うかは、人員配置に左右されます。余裕があれば地元の政治家や役人を接待して問題が起こる前に回避することができますし、余裕がなければ「検討中です」の一言で先送りしてしまうかもしれません。
 辺境や帝国に併合されたばかりの星系の連絡室は非常に忙しく、地元との間で板挟みになることしばしばです。また、入植初期の星系の連絡室は事実上の「植民なんでも相談係」で、入植者たちに情報を提供し、援助を求める人を繋ぐ役割をします。
 宇宙港は基本的に地元への干渉は避けますが、星系自治権と帝国市民としての普遍的権利が衝突した際には、連絡室は躊躇なく後者を守ります。著しい人権侵害が行われた場合は避難民の脱出を黙認したり、影から支援したりするのです。帝国政府は建前上こういった行為を褒めはしませんが、露見しない程度に報いてはくれます。
 港務局の任務である「地元との良好な関係を促進する」ことと「帝国の治外法権を守る」ことは時に対立し、港長と連絡室はその両者の平衡を慎重に守らなくてはなりません。連絡室の仕事は決して華やかなものではありませんが、危機を未然に防ぐのは連絡室職員の交渉術にかかっているのです。

 「事業課(Concessions)」は、小さな土産物屋から巨大な遊技場まで港内で様々な民間業者が営む事業を統括し、賃料などを徴収する部署です。ほとんどの大規模港では事業者向け賃貸に割かれた空間が港全体の6割以上となっていて、年間総収入の過半を時に占めることもあります。賃料は床面積と場所に応じて固定額もしくは売上高の歩合で決まり、基本的には単年契約ですが、特定の企業が特定の倉庫や着陸床を「ほぼ永久に借りている(≒99年契約)」ことも珍しくありません。
 事業課は契約更新の際に条件を変更したり、常習的に賃料の支払いが遅れたり苦情の多い業者を退店させる権限を持ちます。その際には業者が重大な契約違反をしているという証拠を集め、法的措置を講じる必要があります。
 どのような業者が入居するかは、その宇宙港が持つ経済力次第です。宿泊・飲食・雑貨といった定番から、地上車や銃器や通信機の販売店、産直朝市、旅行代理店、劇場など娯楽産業、そして宇宙船自体も手に入るかもしれません。
 余談になりますが、特別な技能を持つ在野の人材を欲する団体、例えば傭兵部隊や私立探偵、「何でも屋」を探している企業などは、宇宙港を採用の場として事務所を構え、見込みのありそうな旅人の選考や接触を行っています。

「――ジュエル宇宙港の敏腕港長がテュケラ運輸と300年間の独占契約を取り付けたんだが、莫大な前金が振り込まれた直後にゾダーン艦隊がやって来て、爆撃で宇宙港が更地になっても契約通り渋々賃料は払い続けられたらしい。結局、戦後にその金で宇宙港は無事再建されたとさ」
――第五次辺境戦争後に広まった噂話

 「法務課(Legal)」は、保険金の請求、警備員による過剰制圧の告発、契約違反など、宇宙港が関わる法律問題や訴訟を扱います。法務課が港内で逮捕された犯罪者を直接起訴することはありませんが、審理や裁判の前には帝国もしくは現地の当局と協議を行います。また、治外法権に関する問題は連絡室と調整を行います。

 「財務課(Financial)」では、宇宙港の経理や帳簿、(大規模港では)港や地元への投資案件(債券発行など)の管理を行っています。こうした投資によって地元経済が活性化し、宇宙港と地元との結び付きを様々な面で更に強くしているのです。
 ちなみにこの財務課が取り扱う情報、例えば巨大企業の収入報告書などは、多くの競合他社や税務当局、そして犯罪組織などの垂涎の的であり、その保全については気を使って――いるはずなのですが、それらは財務課にとってあまりに日常的な物のため、油断や慢心から隙を生んでいるのは否めません。

 「人事課(Personel)」は港内労働者の募集や面接を行い、彼らの上司から働きぶりの良い面も悪い面も聞き取って記録を残します。なお、人事課は昇進や解雇を決定することはなく、それはその部署の責任者が行います。

 「労務課(Labor Relations)」では、労働環境に関する労働者からの苦情や、労働者の働きぶりに関する管理職からの苦情に対処します。これらが訴訟沙汰になる前に仲裁に入ることもあります。
 ちなみに労務課では、港内入居店舗の従業員(つまり厳密には港内労働者ではない)からの苦情も受け付けていて、同じく仲裁が行われます。とはいえ港務局と結んだ契約書や帝国法に著しく反することでもない限り、労務課にできることはあまりありませんが。

 「記録処理課(Records and Data-Processing)」には、膨大な文書を(複製も含めて)完全に保全し、必要な情報をすぐに取り出す専門家が配属されています。言わば「宇宙港の司書」であり、その専門性ゆえに職員人生をたいていこの記録課のみで終えます。
 世間にあまり知られていない事として、重要港の記録処理課には暗号係が置かれており、機密性の高い業務を遂行する際に幹部と共同で職務にあたっています。

 「広報課(Public Relations)」は現地市民に対して情報を提供し、声を聞く部署です。港内で事件事故があった場合は広報課から声明が発表されます。また、港長によっては記者会見の原稿を広報課に代筆させる者もいますし、そもそも会見場に広報課を立たせる者もいます。
 広報課は宇宙港の設備やサービスを星系内外に宣伝する役割もあります。競争の激しい市場で印象は非常に大切であり、(大規模港では特に)費用を投じて旅客や企業を誘致する宣伝を打っています。時には著名人の推薦を求めることがありますが、このような契約は両者にとって有益であることが多いです。

 「通商連絡課(Commercial Liaison)」は、船主や荷主、仲買人、店子、出入り業者といった宇宙港を商売で利用する人々からの要望や苦情を受け付けています(旅客からの苦情は旅客部の担当です)。

 軍基地が併設されていれば、「基地連絡課(Military Liaison)」が常日頃から情報共有を行っています。宇宙港駐留の海兵隊は現場の将校の直接指揮下にあるため、ここが関わることはありませんが、部隊の現状について星系外の上層部に報告することがあります。
 ちなみにここは退役した軍人や偵察局員の再就職先によく選ばれます。多くの港長は、兵士が民間人よりも元軍人の方が接しやすいだろうと思っているのです。
(※偵察局と港務局の長年の関係から、偵察局員の再就職先として宇宙港は定番となっていて、この課に限らず職務経歴に応じた適切な待遇で迎えられています)

 「官舎課(Employee Residence)」は職員に住居を割り当て、管理する部署です。
 帝国領内(および属領)では地上港職員の大半は宇宙港の外に居住して通勤していますが、緊急時に即応するためにXT線内に住む職員は必ずいます。また、現地の特異な環境に馴染めなかったり、安上がりという理由で港内居住を希望する職員もいます。
 軌道港の職員は地上から通勤するか、軌道港内に住むかの二択です。

 「契約課(Contracting)」の最大かつ最も一般的な業務は、宇宙港の新施設の建設や改良工事に関わる企業や個人の選定と監督です。また小規模港では施設管理や職員用食堂といった業務は経費節減で外注されることがあり、その際にも契約課の出番となります。
 なお、帝国領内では安全面の理由から船の整備や警備業務を外部の民間業者に委託することはありません。

●管制部 Traffic Department
 宇宙港の管制区域内における全ての宇宙船・航空機・車両に対して、指示する権限を持つのが管制部です。また、人工衛星の状態を把握する役割も担っています。
 管制区域は宇宙港の規模(というより管制塔の設備)によって範囲が定まります。Aクラス港では星系全体、Bクラス港では100天文単位圏の「勧告区域(Advisary Zone)」内、Cクラス港では惑星直径100倍圏の「遷移区域(Transition Zone)」内、Dクラス港では直径10倍圏の「軌道区域(Orbital Zone)」内で、全ての宇宙船は管制からの通信に従わなくてはなりません。Eクラス港では管制が行われませんが、(相手がいれば)通信は直径0.1倍圏の「気圏区域(Airspace Zone)」内で可能です。また、宇宙港から20km以内は「制限区域(Control Zone)」となっていて、航空車両の乗り入れが制限ないしは禁止されます。
(※ただし現実には直径100倍圏の外、つまり勧告区域から先では厳格な管制は行われておらず、いつでも連絡が取れるという意味で捉えるべきでしょう)

 管制区域内の宇宙船の動きを全て把握するのが「管制課(Traffic Control)」で、宇宙港の心臓部と言えます。古代も現代も管制官は事故を防ぐために細心の注意を払い、事象の地平面で綱渡りするような自信と鋼鉄の神経が求められ、4時間交代の勤務であっても職業病として胃腸障害や神経症に悩まされています。古代と違うのは、反重力推進による垂直離着陸が当たり前となって滑走路がなくなったことぐらいです(※高度数メートルを維持しながら格納庫などに移動するための「誘導路」はあります)。特に大規模港では一度に数百もの船が入り乱れる中、それら全てを正確な飛行経路に乗せて発着時間を調整し、着陸場所を割り当て、無事にジャンプするまで見守らなくてはなりません。しかし管制官らの苦労と最新機器の支えもあって、港務局宇宙港での発着事故は10万回に1回程度に抑えられており、しかもそのほとんどは宇宙船側の過失によるものです。

 「船籍課(Ship Registrar)」では星系内に入る全ての船舶の記録を残し、乗っ取りや盗難の報告があった船舶を税関職員に通知しています。船籍情報は毎週更新され、Xボートを通じて宙域統括本部で各港と共有されます。

 「車両課(Vehicular Control)」は、軌道まで上がれないような小型の反重力機器や、低TLの車輪型機器など「地上の」乗り物の交通整理を行います。車道と誘導路は可能な限り分けられていますが、交差する場所では(緊急車両を除いて)原則として宇宙船が優先されます。

●整備部 Ship Services
 停泊中の船舶の修理、燃料補給など、安全運航に欠かせない機械整備を担当する部署です。管制と連携して宇宙船を格納庫に誘導し、貨物部の仕事を滞らせないのも整備部の仕事です。これらの業務は宇宙港の大きな収入源であるため、どこの港長も(小さな宇宙港では特に)ここの業務が円滑に行われるよう配慮しています。ここが機能していないと、宇宙港どころか周辺地域に多大な損害を与えてしまうのです。

 「係留課(Berthing)」は、宇宙港に欠かせない着陸床や格納庫での作業を担当します。地上港のこれらは単に整地されているだけのもの、壁で囲われているもの、屋根だけがあるもの、開閉式の屋根や扉があるものと様々で、ここに宇宙船を降下させ(ないしは「滑り込ませ」)ます。軌道港では小型船は港内格納庫に入港させ、大型船は外部に接続係留されることがあります。入港後の機器点検は整備部職員か船の乗組員によってこの場で行われますが(※小規模港では整備小屋に移動させることもあります)、多くの機関士は整備部職員に全てを預けずに少しでも(可能なら全部自分たちで)携わることを好みます(ただし点検料金は入港料に含まれています)。
 小規模港でなければ格納庫には空気フィルタなどを洗い流す装置と外部電源があり、動力炉を落とした状態でも円滑に点検が進められるようになっています。格納庫の鍵は発行された暗証番号で管理されますが、大規模港では生体認証が採用されています。

 「補給課(Fueling)」の仕事は、入港した宇宙船に文字通り燃料を補給することです。燃料を自力で賄える宇宙船もありますが、ガス惑星まで遠回りするぐらいなら港で買った方が手っ取り早いと考える船長も多いのです。
 ほぼ全ての宇宙港では、燃料を星系内の水素源(水、氷、メタン)から調達しています。これは主要惑星内で自給できることもありますし(※ただし水資源が貴重な世界では地元政府が汲み上げを許さない場合があります)、星系内の小惑星帯やガス惑星から輸送される場合もあります。なお、石油のような化学燃料は物資供給課で販売されています。

 「物資供給課(Stores and Provisioning)」は言わば、運航や船内生活の必需品が何でも揃う雑貨店です。大規模港ほど品揃えが豊富ですが、空気フィルタや潤滑油、宇宙服といった特に必要不可欠なものは、港が封鎖されでもしない限りは必ず手に入ります。帝国の宇宙港では常識的な商品が常識的な価格で販売されていますが、各港の仕入れ担当には大きな裁量が与えられているため、時には目玉商品が入荷していることもあります。

 「修理修繕課(Maintenance and Repair)」は船長からの依頼を受けて破損した宇宙船を修復する部署です。(帝国内での)修理は公定価格で先着順に行われ、真に優先すべき緊急の案件が発生するか船長自ら後回しを望む以外では決して変更されません。逆に言えば、帝国外の宇宙港では価格に差異があったり、公開入札や担当者への賄賂によって割り込みが許されたりしています。
 なお、船体構造自体を修復するような深刻な場合は、造船所に持ち込む必要があります。

 「清掃課(Housekeeping)」は宇宙船内の居住空間などを掃除する部署で、船体洗浄や窓拭きからシーツの交換・洗濯までを受注します。とはいえ、常日頃から清潔を保っているので必要ないから、他人に私室を掃除されるのが嫌だから、単に汚れてても気にしないからと様々な理由で、全ての船がここを利用するわけではありません。客室が数室程度の小型商船からの引き合いが意外と多いのは、乗客が残した汚物処理など乗組員の雑用が一つ減るからです。一方大型客船からは、船員に専門の清掃員を抱えていることもあってあまり利用されません。
 ちなみに小規模港では宇宙港専属の人員ではなく、近隣の街から清掃業者や家政婦が派遣されることが多いです。

 帝国では船舶の安全航行のために認証点検制度が存在し、その検査を担当するのが「認証課(Certification)」です。有効な運航認証を持たずにCクラス以上の宇宙港に到着した船は、他の船から離れた指定区画に停泊し、直ちに検査を求められます。それが不合格の場合は、基準を満たすまで出港が許されません。認証の有効期限は5年間ですが、普通は年次点検(オーバーホール)の際にまとめて認証を受けます。認証試験には1日かかり、費用は船体容積1排水素トンあたり1クレジットです(年次点検のついでならその費用や期間は既に含まれています)。
 検査官はいつでも、いかなる理由でも帝国船籍の船舶に抜き打ち検査をすることができます。検査に問題がなければ費用は取られませんが、検査にかかった時間に対する補償はありません。問題があれば罰金が課され、もちろん問題が改善するまで認証は一時的に取り消されます。とはいえ船舶の数は多すぎますし、検査官の数は少ないため、よほど怪しくなければ抜き打ち検査は行いません――が、普通にしていれば抜き打ち検査が行われない、という保証はどこにもありません。

●貨物部 Cargo
 宇宙港の主な仕事は、人ではなく物を運ぶことであるのを我々は忘れがちです。貨物部はそんな意味で重要な部署で、非常に忙しい所です。

 今でも「港湾労働者」と呼ばれがちな「荷役課(Freight Handling)」は、港内で貨物を移動させる部署です。実のところ船の乗組員(や企業)は着陸床や格納庫内で自分の貨物の上げ下ろしができる権利を有しますが、港内での運搬(例えば企業保有の港内倉庫から格納庫まで)は全て荷役課が担当します(倉庫から格納庫までを一体で借り上げていれば別です)。
 星間貨物のほとんどはコンテナで輸送されるため、宇宙港ではそれを運ぶための様々な機器(フォークリフトや貨物積載車、地上と軌道港を行き来するシャトルなど)が用意されています。一般的な輸送用コンテナは耐久性が高く、居住可能な惑星では屋外に積み重ねていても問題はありません。異種大気の中でも運搬する程度なら特に保護は必要ありませんが、長期保管するには密閉された倉庫が必要となります。

 「倉庫課(Warehouseing)」が管理する倉庫は、ほとんどの場合は輸送されるまで貨物を一時的に置いておく単なる大きな密閉空間に過ぎず、需要や環境によって地上や地下に設置されます。軌道港では利便性を考慮し、発着口の付近に様々な大きさの倉庫が用意されています。宇宙港の交通量の多い区画から離れたXT線境界付近(時には宙港街)に置かれた倉庫は、XT線を通過する免税品を長期保管するために利用されています。
 倉庫は様々な手段で盗難から守られていて、TL12以上の高度な自動防犯装置が反応すれば警備員が駆けつける手はずになっています。しかし、それらへの対抗策を備えた泥棒と腐敗した内通者は、大体どこの星にもいるのです。

 爆発物や化学薬品などが置かれる危険物保管倉庫(HAZMAT Storage)は、宇宙港規模が大きくなるほど必要性が増します(※100排水素トン未満であれば防火対策や入構制限がしっかり取られた一般倉庫が利用されなくもありません)。全ての荷役作業員は危険物運搬の訓練を受けており、中でも細心の注意が必要な放射性物質や有毒廃棄物などに対処する特殊な要員もいます(普段は通常の荷役作業に従事しています)。このような危険性の高い貨物の移動には港内業務の混乱を最小限にするために事前計画が立てられ、運搬中は人や車両を近づけることなく警護車付きで運ばれます。適切な梱包がなされていれば事故はほぼ起きませんが、一時的とはいえ警備の目がそちらに集中する分、他が疎かになってしまうのは否めません……。

 宇宙港には貨物の売り手と買い手を仲介し、売買手数料を徴収する仲買人(ブローカー)と呼ばれる人々がいます。「仲買人室(Broker Office)」では、港に出入りする仲買人らの名簿を管理しています。名簿への記載は「港が御墨付きを与えた」わけでないので、仲買人のやり口や実力にまで港は責任を負えませんが、苦情の多い仲買人は名簿から抹消されます。
 ほとんどの仲買人は港内に事務所を(事業課から借りて)構えていますが、港外に事務所を置いて必要に応じて宇宙港を訪れる者もいます。また、宙港街にも必ず「仲買人」はいますが、その多くは貨物の出処や行き先を尋ねない代わりに法外な手数料を取る輩です。

●旅客部 Passenger Services
 多くの貨物が行き交う宇宙港には、当然多くの旅客も押し寄せます。旅客部職員は、そんな利用者のために様々なサービスを提供しています。

 「接客課(Hospitality)」は宿泊・飲食・娯楽など、旅行者が快適に過ごすための施設を担当する部署です。通常、運営は管理部事業課と契約した民間企業が担いますが、港が直接経営する場合は接客課が担当します(契約違反で入居業者が退店させられた場合に事業を引き継ぐのも接客課です)。大手運輸会社が自社客専用の特別待合室(ラウンジ)を港に設置する場合に、接客課が手数料を取って下請けに入ることもあります。
 加えて港内の装飾や案内表示、苦情対応も接客課が担います。大規模港ではよく著名な建築家や芸術家を起用して宇宙港の「顔」を創っていますが、その雰囲気を維持し続けるのは接客課の働きにかかっているのです。

 「案内課(Passenger Assistance)」は迷子や旅客の質問に対処する部署です。案内課の職員には港内の見取り図を暗記し、複数言語を解し、どんな人にも笑顔で応対する無限の忍耐力が求められます。この仕事はトラベラー協会と混同されがちですが、実際に職員は協会の仕事も把握していて、場合によっては旅客を最寄りのトラベラー協会窓口に繋ぐこともあります。

 「手荷物課(Baggage)」の「手荷物」とは、各客席等級で定められた範囲内で個人が船に持ち込める小型貨物、と定義されています。手荷物課の職員は貨物部と同様の技能で手荷物を運びますが、貨物部よりは旅客と直に接する機会が多いので常に身だしなみを整え、礼儀正しくあることが求められます。中には、港の繁忙具合によって手荷物課と貨物部を「行き来」する者もいます。

●警備部 Security
 その仕事のほとんどは駐在所で待機したり、廊下を巡回することです。保安上の問題が発生したとしても、万引き、スリ、荷物の盗難、酔客の破壊行為といった軽犯罪ばかりです。とはいえ海兵隊が駐留しない大半の宇宙港では、警備部は自称テロリストや有象無象の悪人に対する唯一の抑止力です。

 旅人が保護を受ける(あるいは裏をかく)保安対策は、宇宙港の規模によってかなり異なってきます。Eクラス宇宙港は小さすぎて訪問者も少ないため、最低限のもの――港長(または日中8時間だけ雇われた元軍人の保安官)が銃を持ち、もしあれば監視カメラで警戒するぐらいです。Dクラス港でも常時複数の警備員が配置されることは珍しいですし、この規模では緊急事態に備えて防弾服や狙撃銃などの特殊装備をいくつか用意しておくのが精一杯です(場合によってはその都度港長が突入志願者を募ったり、部外者に依頼もします)。
 Cクラス港ともなると、中央監視室から複数の監視装置と無人機(ドローン)を駆使した警戒が行われ、警備員も5~10人単位になります。警備員の半数は私服で、もう半数はクロース相当の防弾服と電磁警棒(スタナー)を持って巡回を行います。また、緊急時に備えて詰所には軍用銃が保管され、複数の犯罪者を収容する独房も設置されています。
 Bクラス港の警備規模はちょっとした警察署ぐらいになります。警備主任を含めて昼夜3交代の人員配置が行われ、関係者が港内宿舎に寝泊まりどころか定住することも珍しくありません。また、小規模ながら海兵隊が駐屯していることもあり、普段は目立たないようにしながら人質事件やテロ攻撃などの大規模暴力犯罪に備えています(海兵隊がいない場合は警備部内に特務班(SWAT)が組織されます)。収容施設には十数名分の独房があります。
 Aクラス港の規模はもはや都市と同じなので、その保安業務も膨大な人手と機械を必要とします。港内の地区ごとに所轄が分けられ、それぞれが人員と警備車両と収容施設を持っています。情報は中央の警備本部に集められて各所轄に指示が送り返されます。Aクラス港にはたいてい海兵隊が駐屯しており、宇宙港の警備能力を超える事態があれば、最後の手段として軍用車両や兵装を駆使して沈静化させます。

●医療部 Medical Department
 全ての宇宙港には何らかの医療施設を置くことが義務付けられています。Eクラス港では救急箱に過ぎませんが、Dクラス港では正規の救命訓練を受けた者が最低1名は勤務しています。こういった小規模港で深刻な病人が出た場合は、最寄りの医療機関に搬送されるか、たまたまいるのであれば船医に救命措置を依頼します。
 Cクラス港以上では常勤の医師や看護師がいる医務室があり、訓練を受けた救急隊員が24時間体制で待機しています。ただしCクラスでは外科医が常勤していることはまずないため、重傷者は港外のより設備の整った医療機関に運ばれます。これがAクラス港ともなるとその規模は病院と言っていい程になり、人類以外の医学知識も持った医師、手術室や自動診療装置(AutoDoc)、さらに常勤外科医も待機していますが、意外にも冷凍寝台や入院設備はありません。これは、医務室の目的が救命救急であって長期的な入院は考慮されないからです。

 辺境星系では、宇宙港が唯一の医療機関である場合もあります。その結果、宇宙港規模に似つかわしくない充実した医務室が出来上がっていることがあるのですが、その費用は医療費を取っても回収できなくなることもしばしばです。帝国はこの損失を辺境開発の必要経費としてあえて受け入れています。
 このような現実は興味深い状況も生み出します。例えば、惑星の指導者(やその親族)をXT線を越えて入院させる際に、惑星の反政府派はその「慈悲深い行い」を黙って見過ごさないでしょうし、仮に患者が帝国側で亡くなれば市民の帝国への感情が悪化するのは避けられないでしょう。

●救急部 Emergency Services
 火災、化学物質の流出、墜落事故――人員や設備の質こそ様々ですが、どの宇宙港も(特に軌道港では)最優先で災害対策を行っています。人命尊重からして当然ですが、宇宙港の評判が落ちれば経済面でも打撃になるからです。
 大規模港には専用の「緊急指令本部(Emergency Operations Center)」が置かれていて、いざとなればここに港長以下関係する部署全ての幹部職員が集合し、備え付けられた通信回線や情報表示装置を駆使して、広大な港の中の災害対応や救助活動の指揮を執っていきます。小規模港ではここまではできませんが、規模は小さくともやっていることは大きく変わりません。

 そんな中でも「救急隊(Rapid Response Emergency Team)」は港内の消防士、救命士、危険物取扱資格者を集めた緊急対応班です。救急隊は、火災が発生すれば延焼を防ぎ、負傷した人を救助して医療部に運び、港内に劇物が漏出すればそれを速やかに除去し、無重力中の危険な飛散物衝突事故(FOD)からの防護を試みます。ただしDクラス以下の宇宙港では救急隊はほぼ組織されておらず、その代わりに職員全員が消火・救命訓練を受けています(が、大規模災害がひとたび起これば為す術がありません)。
 Cクラス以上の宇宙港では救急隊は常設されていて、宇宙港が大規模化すればそれだけ救急隊にも多くの人員や装備、例えば専用の消防車や救急車(TLが許せば反重力化)、瓦礫除去ロボット、劇物や真空に対応した装備などが置かれます。隊員は全員、消火・危険物処理・救難救助の訓練を受けた精鋭で、必要に応じて特殊作業班(無重力空間対応や爆発物処理)も組織されます。もちろん宇宙港職員も全て日頃から緊急対応の訓練と講習を受け、災害時には事前計画通りに各々の現場で旅客の避難誘導や安全確保に向かいます。
 ちなみに救急部と医療部は、基本的に現地の医療・救急機関と相互協力協定を結んでいて、小惑星帯で座礁した船の救助に向かったり、地元政府の要請で災害出動を行ったりすることはよくあります。これらの勇敢な活動により、宇宙港と地元が友好関係を深めているのです。

●航空部 Flight Operations
 宇宙港の航空宇宙部門である航空部には、連絡シャトル、燃料運搬船、牽引船といった小艇の操縦士や乗組員が所属しています。この部署の重要性は軌道港の有無によって大きく左右されますが、仮に軌道港がなくても管制用人工衛星の保守修繕など、わずかであっても日常的に航空部の役割が求められることはあります。

●設備部 Physical Plant
 宇宙港のインフラを維持管理する部署です。港内各所から求められる仕事であり、大規模港では職員がひっきりなしに呼び出されるのはありがちです。旅客から宇宙港が「はずれ」と思われるのは、たいてい予算不足でここが機能不全を起こしているからなのです。

 「機械課(Engineering)」は機械類の修理、電球の交換、傷ついた着陸床の再舗装など、宇宙港備え付けの全てを保守します。同様に「電力課(Power)」は港内の電力供給網や、1つはある(大規模港なら複数ある)核融合発電所を整備しています。これらの部署は小規模港では統合されていることもあります。

 「通信課(Data/Communications)」は、交通管制には欠かせない通信設備を守ります。それだけに限らず、ほぼ全ての部署が港内の様々な最新情報を迅速に欲しており、その要求に応えています。帝国の宇宙港ではほぼ中間子通信が採用されていますが、低技術星系では現地の通信方式(有線電話や光通信など)で代用されていることもあります。また通信課は、航法衛星・気象衛星・通信衛星・中継衛星の通信を監視する役割もあります。
(※中間子通信はTL15の最先端技術のため、少なくとも小規模港では代用されていそうです)

 「輸送課(Transport)」は、広い港内で人と物を運び、その機器を管理保守しています。定番の反重力バス・トラックに加えて、大規模港ではリニアレールなどの鉄路も導入されています。運転手は基本的にこの輸送課に属していますが、貨物運搬車の運転手のみ例外として貨物部の所属になっています。
 ちなみに、ターミナルビルから船(またはその逆)への旅客の移動は、小規模港では旅客は歩いて船まで移動しなければなりませんが、大規模港では宇宙船がまず待機所まで移動して搭乗口に接舷し、乗客はターミナルビルから搭乗口まで歩走路(Slidewalks)などで移動して乗る方式が採られています。保安上の理由から、港外の公共交通機関がXT線を越えて直接宇宙船まで乗り付けることはありません。

 「物資課(Stores)」では、港内で使われる消耗品を全て管理しています。小規模港では単なる物置小屋ですが、大規模港では機械倉庫や化学薬品庫や食品冷凍倉庫など、利便性を考えて目的別に分散化されています。当然、食料倉庫はターミナルビルの近くに、部品倉庫は格納庫の近くに置かれます。それら倉庫と物資をやり取りするのは輸送課の役目で、場所によっては自動搬送機や地下路線も利用されます。
 加えて宇宙港には、あらゆる事態を想定して港の維持に必要な物資(宇宙船の予備部品、医薬品、衣類、保存食など)だけを集めた備蓄庫があります。これは宇宙港自体が危機に陥った際に現地の人々の善意に頼ったり負担を強いたりすることなく自活するためのものですが、同時に、現地が災害に見舞われた際に物資を放出することも考慮されています。

 「食堂課(Commissary)」では港内従業員向けの食事を提供しており、関係者は割引価格で専用の食堂を利用することができます。

 「清掃課(Housekeeping)」は港内の窓拭き、絨毯の掃除、ゴミ箱の回収から、外壁の塗装や樹木の剪定まで、宇宙港の美観に関わる作業を全て担当します。
 なお、食堂課と清掃課の業務は民間業者に委託されることが多いです。

「付録」につづく)
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