宇宙の歩き方

The Astrogators' Guide to the Charted Space.

総目次

5625-04-18 | Traveller

 SFロールプレイングゲームの元祖的存在『トラベラー』の、膨大な宇宙設定や考察などを紹介しております。特段の断りがない限り《第三帝国》設定については、全て帝国暦1105年時点のものとして記述しています。
 これらの情報があなたの旅の指針となりますように―― Bon voyage!

【宙域散歩(OTU設定解説連載)】
第1回 268地域星域 概要編詳細編(スピンワード・マーチ宙域)
第2回 トリンズ・ヴェール星域(スピンワード・マーチ宙域)
第3回 モーラ~ルーニオン間(スピンワード・マーチ宙域)
第4回 グリッスン星域(スピンワード・マーチ宙域)
第5回 『Pirates of Drinax』特集1 ドリナックス王国(トロージャン・リーチ宙域)
第6回 『Pirates of Drinax』特集2 アウトリム・ヴォイド(トロージャン・リーチ宙域)
第7回 トビア星域(トロージャン・リーチ宙域)
第8回 ヴィラニ・メイン1 ヴォーダン星域(ヴランド宙域)
第9回 ヴィラニ・メイン2 アナルシ星域(ヴランド宙域)
第10回 ヴィラニ・メイン3 ヴランド(ヴランド宙域)
第11回 ヴィラニ・メイン4 シイグス・プリデン星域付近(ヴランド・リシュン宙域境界)
第12回 ヴィラニ・メイン5 グシェメグ宙域
第13回 パクト星域(ダグダシャアグ宙域)
第14回 シュドゥシャム(コア宙域)
第15回 キャピタル(コア宙域)
第16回 カムシイとレファレンス(コア宙域)
第17回 ソロマニ・リム宙域・概要編
第18回 リム・メイン1 ハーレクイン星域(ソロマニ・リム宙域)
第19回 リム・メイン2 ヴェガ自治区(ソロマニ・リム宙域)
第20回 テラ(ソロマニ・リム宙域)
第21回 ソル星域(ソロマニ・リム宙域)
第22回 リム・メイン3 アルバダウィ星域周辺(ソロマニ・リム宙域)
第23回 リーヴァーズ・ディープ宙域 前編後編ライブラリ
第24回 カレドン星域(リーヴァーズ・ディープ宙域)
(※この連載で記された星系データ(UWP)はT5SSによって改定される前のものです)

【コラム】
水界の量を決めるのは大気か規模か?
『通信機』で見るトラベラーの40年
SuSAG(メガコーポレーション解説)
フローリア人とフローリア連盟(群小種族解説)
ソロマニ・リム戦争概史
仮死技術と二等寝台
「人類」総まとめ
トラベラー協会
スピンワード・マーチ宙域開拓史

トラベラー(ホビージャパン版) 正誤表

【宙域図・星系データ集】
1105年版ヴランド宙域図
蘇る「ガシェメグ宙域」
2170AD, Man's Battle for the Stars(『インペリウム』時代の星域データ)
新訳最新版スピンワード・マーチ宙域UWPデータ
1/4スケール「スピンワード・セクター」を作る

【星の隣人たち(知的種族設定紹介)】
第1回 スピンワード・マーチ宙域の知的種族
第2回 ダリアン人の歴史
第3回 接触!ダリアン人
第4回 ソード・ワールズの歴史
第5回 接触!ソード・ワールズ人
第6回 接触!ヴァルグル
第7回 グヴァードン宙域の(帝国に関係する)諸勢力
第8回 接触!アスラン

【トラベラー40年史】
第1回 黄金の時代(~1987年)
第2回 反乱と苦難の時代(1987年~1993年)
第3回 新時代、そして暗黒時代へ…(1993~1997年)
第4回 夜明けの時代(1998年~2007年)
第5回 古典復興の時代(2008年~2015年)
第6回 三者並立の時代(2016年~)
追補A GURPS Traveller 17年の歴史を振り返る
追補B 2018年のトラベラー界隈まとめ

【Cepheus Engine 解説記事】
トラベラー互換システム『Cepheus Engine』とは何か!?
『Cepheus Engine』で始めるロールプレイング・ゲーム入門
 
『Cepheus Engine Vehicle Design System』レビュー
『Cepheus Light』緊急レビュー

【ぶらりTL11の旅(ATU製品紹介)】
第1回 『Outer Veil』
第2回 『Clement Sector』
第3回 『2300AD』
第4回 『星々を我が手に(These Stars Are Ours!)』
第5回 『Hostile』

『異星人の街カストロバンクラ(Castrobancla, The City of Aliens)』
『Mindjammer: Dominion』
『ドラコニム星域(The Draconem Sub-Sector)』

【『2300AD』関連記事】
太陽系周辺宙域図(を『トラベラー』形式で)
Japan 2300 - 西暦2300年の日本
偶然の遭遇:モニク・ルーセル(と惑星ジョイの設定)

【自作ミニゲーム】
第五次辺境戦争風ミニゲーム「Grenzkrieg: Spinward」
ソロマニ・リム戦争風ミニゲーム「ソロマニ・リム戦役」
恒星間戦争風ミニゲーム「いんぺりうむしょうぎ」
『Traveller: Accelerated Edition』 (Alpha Version)

(※文章には私の意訳・誤訳・誤解・曲解が過分に含まれ、推測による記述や、非公式設定をあえて取り込んだ部分もあります。また、記載した情報は予告なく修正される場合があります)
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宇宙港 ~未知への玄関口~ 第2集:帝国宇宙港務局(SPA)の組織と職務

2022-05-18 | Traveller

「宇宙港は音、宇宙港は詩、宇宙港は歌、そして楽器。適切に扱われていれば決して間違いはない――私が狂皇クレオンでなければ」
――マーガレット二世時代の港務局長ドロテア・パカール

 帝国は、その広大な領土を間接統治するために数多くの機関を使っています。その中でも帝国海軍以上に重要な役割を担い、迷宮のような官僚機構でも特異な存在なのが「帝国宇宙港務局(Imperial Starport Authority)」です。港務局は国内全ての官製宇宙港を統括し、帝国領内における通商と旅客の実に97%(加えて帝国近隣星系での4割)を扱っています。
 港務局は市民から信頼されている組織です。様々な役割を果たしながら星間交易と旅行を促進し、帝国市民にとってごく当たり前の生活を守っています。そこに存在するだけで実効統治の象徴となる帝国宇宙港の日々の運営は、一見簡単そうに見えますが実際には管理・交渉・危機対応などあらゆる面での才覚が求められます。仮に港務局が止まれば貿易は完全に停止し、想像を絶する経済的混乱が生じるでしょう。しかしありがたいことに、港務局には非常に優秀な人材が集っており、巨大企業に匹敵するほど多くの分野に手を広げながらも、目に見えないあらゆる危機に対処してきた実績があります。

 第三帝国は建国当初、各地に探査拠点と海軍基地を優先して建設していきましたが、商業港の重要性はかねてから認識されていました。同時に、その質の保証を帝国政府自らが背負わなくてはならないこともわかっていました。すぐに偵察局は基地課に「民間宇宙港管理室(Civilian Starports Office)」を設立し、既存宇宙港を国有化する際の規則作りや、新宇宙港の建設手続きの法制化、新規建設や拡張工事の優先順位付けなどを行いました。第一次大探査(First Survey)完了後の帝国暦422年、皇帝マーティン三世の勅令によってこの管理室は偵察局から独立し、帝国宇宙港務局として再編されました。現在の港務局は組織系統では商務省の下にありますが、最高責任者である港務局長は皇帝直属とされています。

「海軍は発砲の権限を握り、偵察局は初接触の興奮を占め、外交官は理想を追い求める。しかし、袖を捲り上げて帝国の日常を支えているのは宇宙港職員である」
――とある格言

 全ての官製宇宙港は(現地が帝国をどう思っていようとも)帝国の所有物であり、治外法権(XT)として扱われています。このXT線の帝国側では現地の法律や政治的圧力は通用しません。仮に現地では違法の品(煙草程度でも)が貨物として宇宙港に持ち込まれたとしても、XT線を越えなければ現地政府には何もできません(密輸の温床であるとして苦情を入れることはありますが、密輸の大半が港務局管轄外の港で行われているのが実情です)。また、現地政府による宇宙港への攻撃は即座に「帝国への反逆」とみなされ、海兵隊による軍事介入が行われます。

 港務局は星間貿易にかかる費用を間接的に抑え、公正と安全に関する帝国法を遂行することで経済交流を促進し、必然的に税収を増やす手助けをしています。港務局宇宙港を介した自由貿易は非常に効率的かつ関税もかからないため、もはや港務局に対抗できる地方政府や民間企業は存在しません。
(※建前では関税徴収権は何らかの危機に備えて留保されているだけです。例えば、反乱を起こした/起こしそうな星系に懲罰的関税をかけることはありえます)
 帝国の宇宙港がある全ての世界は「公正な貿易」を実践せねばなりません。港務局管轄の宇宙港を介して取引される商品に対して、星系特有の関税や貿易慣行で排除・優遇することは法律で禁じられています。ただし星系自治権との兼ね合いで「あらゆる宇宙港で」禁じる法的根拠はなく、それが今も地方港や私設港が残っている理由の一つでもあります。
 この「公正」を重んじる長年の努力は、何千もの世界を港務局の仕組みに染め、そしてそれを通じて帝国そのものを売り込むことに繋がりました。摩擦や抗議もありましたが、うるさくとも帝国の宇宙港を持つことが多大な経済的利益になるという実績の積み重ねが、帝国への信頼と献身を呼び起こしていったのです。そこから得られる多くの利益に比べれば、宇宙港や職員に掛かる多額の経費はむしろ安いものです。


■港務局理事会
 宇宙港運営における最高組織は、キャピタルに置かれた「港務局理事会」です。理事会は宇宙港にある10部署と施設部(後述)それぞれの代表に、監察室長を加えた12名で構成されます。皇帝に任命された港務局長は、会の場で票が賛否同数となった際の13票目を入れる権限を持ち、理事会の決定を皇帝に推挙する立場です。この港務局長は伯爵級の人事とされ、なるべく世襲にならないよう配慮されます。ただし官庁としての港務局にはあまり貴族が勤めることはなく、職員はほぼ平民です。
(※ちなみに理事は男爵級、港長は士爵級の人事です。低いように見えますが、宙域艦隊提督ですら男爵級人事ですし、平民が一代で取れる爵位の上限が男爵であることも影響しているかもしれません)
 そして理事会には商務省や偵察局から代表者が必ずと言っていいほど出席して議論には参加はしますが、投票権はありません。港務局はこの両機関と密接に連携して活動するため、常設の連絡室を置いています。


星域/宙域統括本部
 港務局は各宇宙港の運営を監督・指導するために、星域や宙域ごとに統括本部を置いています。各地の港長からの報告は星域統括本部に送られ、それを集約・分類・要約して宙域統括本部に流します。宙域統括本部も同様の作業を行い、最終的にはこれらはキャピタルの理事会で報告されます。もちろん報告書の原本は全て保管され、疑義がある場合は後々再確認が取れるようになっています。
 各統括本部では星域(宙域)統括本部長が業務を指揮し、その下に宇宙港と同じ10部署が置かれています。その各部署を率いているのは星域(宙域)調整官で、その肩書きが示す通り指揮監督よりも調整が主業務です。
 加えて宙域統括本部には「施設部(Facilities departments)」という第11の部署があり、その下には2つの課が置かれています。「立地査定課(Survey and Siting)」は新宇宙港の建設候補地や(宇宙港等級が上下するような)大規模改築の妥当性を検討する部署です(※小規模なら星域統括本部や現地で決裁されますが、その繰り返しで結果的に査定を経ずに大規模改築が成し遂げられてしまうこともあります。こういったやり口を立地査定課は嫌いますが)。「土木課(Civil Engineering)」は測量や建設の計画を港務局系列や外部の建設会社と契約して手配する部署です。なお、特殊な技術課題や政治的問題が無い限り、通常は外部に発注します。


■港務局監察室
 港務局内部に睨みを利かせる部署で、ここには局内の上下関係は通用しません。また、「正々堂々と」仕事をすることもあまりないため、他部署の管理職は監察室からの単なる日常的な質問であっても胃を痛めています。
 監察室の規模は公表されていませんが、少なくとも数千名と言われています。1人の監査官の下には班員たちが属し、班単位で独立行動がなされます。この活動内容は、例え同期の友であっても他の班のことはぼんやりとしかわからないと言われています。
 監察室はまるで諜報機関のように見えますが、実際、「機密予算」の存在も含めてそう言われても仕方のない側面があります。なぜなら宇宙港では、よくある密輸から世界を揺るがす政治的陰謀までありとあらゆる「闇」があるからです。とはいえ囮捜査や盗聴など、訴追に支障が出るような行為はなるべく避けられます。


■宇宙港の収入面
 宇宙港の建設と運営にはとにかくお金がかかります。基本的に開港から20年で収支均衡を達成するのが理想とされていますが、実際には平均して25~30年かかり、中にはいつまでも赤字のところもあります。特にEクラス港が黒字になることはまずありません。また、先に「大きな箱」を建ててから顧客を呼び込む、というやり方は確実に失敗するようです。
 とはいえ以下に挙げた収入源により、港務局全体としての財政は非常に健全です。

1.補助金
 帝国の宇宙港は港務局を通じて国庫から運営資金を受け取っています。経済成長は結果的に国家財政を潤すため、帝国が赤字港であっても熱心に運営をするのはこのためです。また、海軍など他の官庁や星系政府も個別に補助金を出すことがあります。

2.船舶へのサービス料金
 帝国は宇宙港を公共事業として運営していますが、その利用は無料ではありません。宇宙港は利用者から入港料や点検費などの安定した収入を得ています。
(※造船所からも莫大な利益が出ているそうですが、民営化されているという設定と矛盾するため、賃貸料を取っていると解釈すべきでしょう)

3.賃貸事業
 宇宙港の屋内空間の多くは民間業者に貸し出されていて、人の集まる大規模港では都会の一等地並みの賃料相場となっています。これに関しては「管理部事業課」の項目で解説します。


■港長と幹部
 宇宙港で「幹部(Executive)」と呼ばれるのは組織の頂点にいる港長(と副港長)とその直属の部下(つまり各部署の長)です。港務局の内規では、宇宙港業務の全ては「港長の裁量で行われる」と明記されています。これが意図的に曖昧にされているのは、星系間の通信にかかる時間を考慮に入れて、わざわざ一つ一つ条文化することなく各地の環境や状況に応じて広範囲に柔軟な対応を行えるようにするためで、港長に独裁的権力を与えるものではありません。港長にできるのは各業務の許可や停止ぐらいです。理由もなく民間人を警備員に逮捕させることはできませんが(※ただし警備員は不審者を港長に諮ることなく捕縛することはできます)、問題を起こした店舗に営業停止を命じることはできます(私有財産の没収はできません)し、船を法的根拠と証拠なく差し押さえることはできませんが、離陸許可を無制限に却下することはできます。
 また、港内にあっても命令系統が異なる海軍・偵察局基地に指図することはできませんし、領事館があったとしても同じです。しかし、重要な事柄について現地の宇宙港長に相談しない指揮官や外交官は滅多にいません。表向きは港長は単なる宇宙港の管理人に過ぎませんが、その影響力はXT線を越えて遥かに広がり、発言一つで様々な事象を動かします。言わば「帝国の代理人」である港長には特権を濫用することなく粘り強く各種状況に対応する能力が求められるため、独善的な性格だと出世の過程で排除される傾向にあります。しかし、人里離れた星に長くいると少々風変わりになり、権限を強めに行使することが知られています。そして港長の働き方も様々で、現場に全てを任せる港長もいれば、末端まで細かく指示を出す港長もいます。いずれにせよ、港長は優秀な人物でなければ長くは務まりません。


■宇宙港の部署
 宇宙港では、様々な法律や政治にも対処しながら数多くの技術やサービスを厳格な基準で提供しなくてはならず、例え小さな港であっても港長一人で全てに目を配ることは不可能です。よって日々の運営には非常に複雑化した各部署の組織的な協調が必要となり、それぞれの港の職員は星系独特の文化・環境の中でそれを実現するために日々奮闘しています。
 ほとんどの港務局管轄宇宙港には以下の10部署がありますが、小規模港ではいくつかが廃止されたり他部署と兼務していたりします。

●管理部 Administration Department
 各種許可証を発行し、船籍登録や航行記録や貨物目録から自動販売機の販売統計まで、宇宙港のあらゆる事務処理を担当する部署です。港長が定めた運営方針をどのように反映させていくかは、この管理部の働き一つにかかっています。ちなみに、その職務経験から港長の多くは管理部出身者が占めます。
 この部署の仕事はほとんど全てが退屈なもので、「宇宙への玄関口」を担っているという華やかさは微塵もありません。多くの事務職員は杓子定規で無感情に見えますが、自由貿易商人なら誰しもがこことうまく付き合うのが商売の一番の秘訣だと語ります。見た目は地味ですが、この管理部こそが宇宙港全体の業務を潤滑に回すための重要な部署なのです。

 大規模な宇宙港であれば、管理部の事務所はメインターミナルと繋がった別棟に置かれていることが多いです。そうでなくても港の隅や孤立した場所にある傾向があります。つまり宇宙港職員以外がここに立ち入ることはほぼなく、職員とも交流は少ないのです。よって、管理部に用事ができてしまった一般旅行者は、どこに行けばいいのか苦労することでしょう。〈管理〉技能を駆使したり、警備員や清掃員の善意や好意を得られればその助けになります。
 そして管理部の事務所を訪れると、そこには――ぎっしりと並べられた事務机、安っぽい椅子、薄暗い照明、古びたコンピュータ端末といった、いかにも役所めいた光景が目に付きます。港長には(例えEクラス港であっても)専用の部屋が充てがわれますが、一般職員は陰鬱としたこの部屋で日々事務作業に追われているのです。

「前からずっと思ってたんですけど、お宅の新しい格納庫の見苦しさときたら……、毎朝寝室の窓からあれを見る方の身にもなってくださいよ。港長にちゃんと言っといてくださいね!」
――宇宙港に実際に寄せられた苦情

 惑星関連連絡室(planetary liaison office)とも呼ばれる「連絡室(Line Office)」は、宇宙港と地元政府との間の主要な窓口となっています(この部署を置けないような小規模港では、管理部の職員が兼務していることもあります)。ここの職務は主に2つあり、(広報課と共同で)宇宙港の重要性とその利点を講演会や教育啓発などによって地元に広めることと、地元住民からの苦情処理です。
 宇宙港への苦情も様々で、騒音や廃棄物処理、交通接続の利便性、時には美観問題も寄せられます。連絡室がこれらの苦情や地元政府とどう付き合うかは、人員配置に左右されます。余裕があれば地元の政治家や役人を接待して問題が起こる前に回避することができますし、余裕がなければ「検討中です」の一言で先送りしてしまうかもしれません。
 辺境や帝国に併合されたばかりの星系の連絡室は非常に忙しく、地元との間で板挟みになることしばしばです。また、入植初期の星系の連絡室は事実上の「植民なんでも相談係」で、入植者たちに情報を提供し、援助を求める人を繋ぐ役割をします。
 宇宙港は基本的に地元への干渉は避けますが、星系自治権と帝国市民としての普遍的権利が衝突した際には、連絡室は躊躇なく後者を守ります。著しい人権侵害が行われた場合は避難民の脱出を黙認したり、影から支援したりするのです。帝国政府は建前上こういった行為を褒めはしませんが、露見しない程度に報いてはくれます。
 港務局の任務である「地元との良好な関係を促進する」ことと「帝国の治外法権を守る」ことは時に対立し、港長と連絡室はその両者の平衡を慎重に守らなくてはなりません。連絡室の仕事は決して華やかなものではありませんが、危機を未然に防ぐのは連絡室職員の交渉術にかかっているのです。

 「事業課(Concessions)」は、小さな土産物屋から巨大な遊技場まで港内で様々な民間業者が営む事業を統括し、賃料などを徴収する部署です。ほとんどの大規模港では事業者向け賃貸に割かれた空間が港全体の6割以上となっていて、年間総収入の過半を時に占めることもあります。賃料は床面積と場所に応じて固定額もしくは売上高の歩合で決まり、基本的には単年契約ですが、特定の企業が特定の倉庫や着陸床を「ほぼ永久に借りている(≒99年契約)」ことも珍しくありません。
 事業課は契約更新の際に条件を変更したり、常習的に賃料の支払いが遅れたり苦情の多い業者を退店させる権限を持ちます。その際には業者が重大な契約違反をしているという証拠を集め、法的措置を講じる必要があります。
 どのような業者が入居するかは、その宇宙港が持つ経済力次第です。宿泊・飲食・雑貨といった定番から、地上車や銃器や通信機の販売店、産直朝市、旅行代理店、劇場など娯楽産業、そして宇宙船自体も手に入るかもしれません。
 余談になりますが、特別な技能を持つ在野の人材を欲する団体、例えば傭兵部隊や私立探偵、「何でも屋」を探している企業などは、宇宙港を採用の場として事務所を構え、見込みのありそうな旅人の選考や接触を行っています。

「――ジュエル宇宙港の敏腕港長がテュケラ運輸と300年間の独占契約を取り付けたんだが、莫大な前金が振り込まれた直後にゾダーン艦隊がやって来て、爆撃で宇宙港が更地になっても契約通り渋々賃料は払い続けられたらしい。結局、戦後にその金で宇宙港は無事再建されたとさ」
――第五次辺境戦争後に広まった噂話

 「法務課(Legal)」は、保険金の請求、警備員による過剰制圧の告発、契約違反など、宇宙港が関わる法律問題や訴訟を扱います。法務課が港内で逮捕された犯罪者を直接起訴することはありませんが、審理や裁判の前には帝国もしくは現地の当局と協議を行います。また、治外法権に関する問題は連絡室と調整を行います。

 「財務課(Financial)」では、宇宙港の経理や帳簿、(大規模港では)港や地元への投資案件(債券発行など)の管理を行っています。こうした投資によって地元経済が活性化し、宇宙港と地元との結び付きを様々な面で更に強くしているのです。
 ちなみにこの財務課が取り扱う情報、例えば巨大企業の収入報告書などは、多くの競合他社や税務当局、そして犯罪組織などの垂涎の的であり、その保全については気を使って――いるはずなのですが、それらは財務課にとってあまりに日常的な物のため、油断や慢心から隙を生んでいるのは否めません。

 「人事課(Personel)」は港内労働者の募集や面接を行い、彼らの上司から働きぶりの良い面も悪い面も聞き取って記録を残します。なお、人事課は昇進や解雇を決定することはなく、それはその部署の責任者が行います。

 「労務課(Labor Relations)」では、労働環境に関する労働者からの苦情や、労働者の働きぶりに関する管理職からの苦情に対処します。これらが訴訟沙汰になる前に仲裁に入ることもあります。
 ちなみに労務課では、港内入居店舗の従業員(つまり厳密には港内労働者ではない)からの苦情も受け付けていて、同じく仲裁が行われます。とはいえ港務局と結んだ契約書や帝国法に著しく反することでもない限り、労務課にできることはあまりありませんが。

 「記録処理課(Records and Data-Processing)」には、膨大な文書を(複製も含めて)完全に保全し、必要な情報をすぐに取り出す専門家が配属されています。言わば「宇宙港の司書」であり、その専門性ゆえに職員人生をたいていこの記録課のみで終えます。
 世間にあまり知られていない事として、重要港の記録処理課には暗号係が置かれており、機密性の高い業務を遂行する際に幹部と共同で職務にあたっています。

 「広報課(Public Relations)」は現地市民に対して情報を提供し、声を聞く部署です。港内で事件事故があった場合は広報課から声明が発表されます。また、港長によっては記者会見の原稿を広報課に代筆させる者もいますし、そもそも会見場に広報課を立たせる者もいます。
 広報課は宇宙港の設備やサービスを星系内外に宣伝する役割もあります。競争の激しい市場で印象は非常に大切であり、(大規模港では特に)費用を投じて旅客や企業を誘致する宣伝を打っています。時には著名人の推薦を求めることがありますが、このような契約は両者にとって有益であることが多いです。

 「通商連絡課(Commercial Liaison)」は、船主や荷主、仲買人、店子、出入り業者といった宇宙港を商売で利用する人々からの要望や苦情を受け付けています(旅客からの苦情は旅客部の担当です)。

 軍基地が併設されていれば、「基地連絡課(Military Liaison)」が常日頃から情報共有を行っています。宇宙港駐留の海兵隊は現場の将校の直接指揮下にあるため、ここが関わることはありませんが、部隊の現状について星系外の上層部に報告することがあります。
 ちなみにここは退役した軍人や偵察局員の再就職先によく選ばれます。多くの港長は、兵士が民間人よりも元軍人の方が接しやすいだろうと思っているのです。
(※偵察局と港務局の長年の関係から、偵察局員の再就職先として宇宙港は定番となっていて、この課に限らず職務経歴に応じた適切な待遇で迎えられています)

 「官舎課(Employee Residence)」は職員に住居を割り当て、管理する部署です。
 帝国領内(および属領)では地上港職員の大半は宇宙港の外に居住して通勤していますが、緊急時に即応するためにXT線内に住む職員は必ずいます。また、現地の特異な環境に馴染めなかったり、安上がりという理由で港内居住を希望する職員もいます。
 軌道港の職員は地上から通勤するか、軌道港内に住むかの二択です。

 「契約課(Contracting)」の最大かつ最も一般的な業務は、宇宙港の新施設の建設や改良工事に関わる企業や個人の選定と監督です。また小規模港では施設管理や職員用食堂といった業務は経費節減で外注されることがあり、その際にも契約課の出番となります。
 なお、帝国領内では安全面の理由から船の整備や警備業務を外部の民間業者に委託することはありません。

●管制部 Traffic Department
 宇宙港の管制区域内における全ての宇宙船・航空機・車両に対して、指示する権限を持つのが管制部です。また、人工衛星の状態を把握する役割も担っています。
 管制区域は宇宙港の規模(というより管制塔の設備)によって範囲が定まります。Aクラス港では星系全体、Bクラス港では100天文単位圏の「勧告区域(Advisary Zone)」内、Cクラス港では惑星直径100倍圏の「遷移区域(Transition Zone)」内、Dクラス港では直径10倍圏の「軌道区域(Orbital Zone)」内で、全ての宇宙船は管制からの通信に従わなくてはなりません。Eクラス港では管制が行われませんが、(相手がいれば)通信は直径0.1倍圏の「気圏区域(Airspace Zone)」内で可能です。また、宇宙港から20km以内は「制限区域(Control Zone)」となっていて、航空車両の乗り入れが制限ないしは禁止されます。
(※ただし現実には直径100倍圏の外、つまり勧告区域から先では厳格な管制は行われておらず、いつでも連絡が取れるという意味で捉えるべきでしょう)

 管制区域内の宇宙船の動きを全て把握するのが「管制課(Traffic Control)」で、宇宙港の心臓部と言えます。古代も現代も管制官は事故を防ぐために細心の注意を払い、事象の地平面で綱渡りするような自信と鋼鉄の神経が求められ、4時間交代の勤務であっても職業病として胃腸障害や神経症に悩まされています。古代と違うのは、反重力推進による垂直離着陸が当たり前となって滑走路がなくなったことぐらいです(※高度数メートルを維持しながら格納庫などに移動するための「誘導路」はあります)。特に大規模港では一度に数百もの船が入り乱れる中、それら全てを正確な飛行経路に乗せて発着時間を調整し、着陸場所を割り当て、無事にジャンプするまで見守らなくてはなりません。しかし管制官らの苦労と最新機器の支えもあって、港務局宇宙港での発着事故は10万回に1回程度に抑えられており、しかもそのほとんどは宇宙船側の過失によるものです。

 「船籍課(Ship Registrar)」では星系内に入る全ての船舶の記録を残し、乗っ取りや盗難の報告があった船舶を税関職員に通知しています。船籍情報は毎週更新され、Xボートを通じて宙域統括本部で各港と共有されます。

 「車両課(Vehicular Control)」は、軌道まで上がれないような小型の反重力機器や、低TLの車輪型機器など「地上の」乗り物の交通整理を行います。車道と誘導路は可能な限り分けられていますが、交差する場所では(緊急車両を除いて)原則として宇宙船が優先されます。

●整備部 Ship Services
 停泊中の船舶の修理、燃料補給など、安全運航に欠かせない機械整備を担当する部署です。管制と連携して宇宙船を格納庫に誘導し、貨物部の仕事を滞らせないのも整備部の仕事です。これらの業務は宇宙港の大きな収入源であるため、どこの港長も(小さな宇宙港では特に)ここの業務が円滑に行われるよう配慮しています。ここが機能していないと、宇宙港どころか周辺地域に多大な損害を与えてしまうのです。

 「係留課(Berthing)」は、宇宙港に欠かせない着陸床や格納庫での作業を担当します。地上港のこれらは単に整地されているだけのもの、壁で囲われているもの、屋根だけがあるもの、開閉式の屋根や扉があるものと様々で、ここに宇宙船を降下させ(ないしは「滑り込ませ」)ます。軌道港では小型船は港内格納庫に入港させ、大型船は外部に接続係留されることがあります。入港後の機器点検は整備部職員か船の乗組員によってこの場で行われますが(※小規模港では整備小屋に移動させることもあります)、多くの機関士は整備部職員に全てを預けずに少しでも(可能なら全部自分たちで)携わることを好みます(ただし点検料金は入港料に含まれています)。
 小規模港でなければ格納庫には空気フィルタなどを洗い流す装置と外部電源があり、動力炉を落とした状態でも円滑に点検が進められるようになっています。格納庫の鍵は発行された暗証番号で管理されますが、大規模港では生体認証が採用されています。

 「補給課(Fueling)」の仕事は、入港した宇宙船に文字通り燃料を補給することです。燃料を自力で賄える宇宙船もありますが、ガス惑星まで遠回りするぐらいなら港で買った方が手っ取り早いと考える船長も多いのです。
 ほぼ全ての宇宙港では、燃料を星系内の水素源(水、氷、メタン)から調達しています。これは主要惑星内で自給できることもありますし(※ただし水資源が貴重な世界では地元政府が汲み上げを許さない場合があります)、星系内の小惑星帯やガス惑星から輸送される場合もあります。なお、石油のような化学燃料は物資供給課で販売されています。

 「物資供給課(Stores and Provisioning)」は言わば、運航や船内生活の必需品が何でも揃う雑貨店です。大規模港ほど品揃えが豊富ですが、空気フィルタや潤滑油、宇宙服といった特に必要不可欠なものは、港が封鎖されでもしない限りは必ず手に入ります。帝国の宇宙港では常識的な商品が常識的な価格で販売されていますが、各港の仕入れ担当には大きな裁量が与えられているため、時には目玉商品が入荷していることもあります。

 「修理修繕課(Maintenance and Repair)」は船長からの依頼を受けて破損した宇宙船を修復する部署です。(帝国内での)修理は公定価格で先着順に行われ、真に優先すべき緊急の案件が発生するか船長自ら後回しを望む以外では決して変更されません。逆に言えば、帝国外の宇宙港では価格に差異があったり、公開入札や担当者への賄賂によって割り込みが許されたりしています。
 なお、船体構造自体を修復するような深刻な場合は、造船所に持ち込む必要があります。

 「清掃課(Housekeeping)」は宇宙船内の居住空間などを掃除する部署で、船体洗浄や窓拭きからシーツの交換・洗濯までを受注します。とはいえ、常日頃から清潔を保っているので必要ないから、他人に私室を掃除されるのが嫌だから、単に汚れてても気にしないからと様々な理由で、全ての船がここを利用するわけではありません。客室が数室程度の小型商船からの引き合いが意外と多いのは、乗客が残した汚物処理など乗組員の雑用が一つ減るからです。一方大型客船からは、船員に専門の清掃員を抱えていることもあってあまり利用されません。
 ちなみに小規模港では宇宙港専属の人員ではなく、近隣の街から清掃業者や家政婦が派遣されることが多いです。

 帝国では船舶の安全航行のために認証点検制度が存在し、その検査を担当するのが「認証課(Certification)」です。有効な運航認証を持たずにCクラス以上の宇宙港に到着した船は、他の船から離れた指定区画に停泊し、直ちに検査を求められます。それが不合格の場合は、基準を満たすまで出港が許されません。認証の有効期限は5年間ですが、普通は年次点検(オーバーホール)の際にまとめて認証を受けます。認証試験には1日かかり、費用は船体容積1排水素トンあたり1クレジットです(年次点検のついでならその費用や期間は既に含まれています)。
 検査官はいつでも、いかなる理由でも帝国船籍の船舶に抜き打ち検査をすることができます。検査に問題がなければ費用は取られませんが、検査にかかった時間に対する補償はありません。問題があれば罰金が課され、もちろん問題が改善するまで認証は一時的に取り消されます。とはいえ船舶の数は多すぎますし、検査官の数は少ないため、よほど怪しくなければ抜き打ち検査は行いません――が、普通にしていれば抜き打ち検査が行われない、という保証はどこにもありません。

●貨物部 Cargo
 宇宙港の主な仕事は、人ではなく物を運ぶことであるのを我々は忘れがちです。貨物部はそんな意味で重要な部署で、非常に忙しい所です。

 今でも「港湾労働者」と呼ばれがちな「荷役課(Freight Handling)」は、港内で貨物を移動させる部署です。実のところ船の乗組員(や企業)は着陸床や格納庫内で自分の貨物の上げ下ろしができる権利を有しますが、港内での運搬(例えば企業保有の港内倉庫から格納庫まで)は全て荷役課が担当します(倉庫から格納庫までを一体で借り上げていれば別です)。
 星間貨物のほとんどはコンテナで輸送されるため、宇宙港ではそれを運ぶための様々な機器(フォークリフトや貨物積載車、地上と軌道港を行き来するシャトルなど)が用意されています。一般的な輸送用コンテナは耐久性が高く、居住可能な惑星では屋外に積み重ねていても問題はありません。異種大気の中でも運搬する程度なら特に保護は必要ありませんが、長期保管するには密閉された倉庫が必要となります。

 「倉庫課(Warehouseing)」が管理する倉庫は、ほとんどの場合は輸送されるまで貨物を一時的に置いておく単なる大きな密閉空間に過ぎず、需要や環境によって地上や地下に設置されます。軌道港では利便性を考慮し、発着口の付近に様々な大きさの倉庫が用意されています。宇宙港の交通量の多い区画から離れたXT線境界付近(時には宙港街)に置かれた倉庫は、XT線を通過する免税品を長期保管するために利用されています。
 倉庫は様々な手段で盗難から守られていて、TL12以上の高度な自動防犯装置が反応すれば警備員が駆けつける手はずになっています。しかし、それらへの対抗策を備えた泥棒と腐敗した内通者は、大体どこの星にもいるのです。

 爆発物や化学薬品などが置かれる危険物保管倉庫(HAZMAT Storage)は、宇宙港規模が大きくなるほど必要性が増します(※100排水素トン未満であれば防火対策や入構制限がしっかり取られた一般倉庫が利用されなくもありません)。全ての荷役作業員は危険物運搬の訓練を受けており、中でも細心の注意が必要な放射性物質や有毒廃棄物などに対処する特殊な要員もいます(普段は通常の荷役作業に従事しています)。このような危険性の高い貨物の移動には港内業務の混乱を最小限にするために事前計画が立てられ、運搬中は人や車両を近づけることなく警護車付きで運ばれます。適切な梱包がなされていれば事故はほぼ起きませんが、一時的とはいえ警備の目がそちらに集中する分、他が疎かになってしまうのは否めません……。

 宇宙港には貨物の売り手と買い手を仲介し、売買手数料を徴収する仲買人(ブローカー)と呼ばれる人々がいます。「仲買人室(Broker Office)」では、港に出入りする仲買人らの名簿を管理しています。名簿への記載は「港が御墨付きを与えた」わけでないので、仲買人のやり口や実力にまで港は責任を負えませんが、苦情の多い仲買人は名簿から抹消されます。
 ほとんどの仲買人は港内に事務所を(事業課から借りて)構えていますが、港外に事務所を置いて必要に応じて宇宙港を訪れる者もいます。また、宙港街にも必ず「仲買人」はいますが、その多くは貨物の出処や行き先を尋ねない代わりに法外な手数料を取る輩です。

●旅客部 Passenger Services
 多くの貨物が行き交う宇宙港には、当然多くの旅客も押し寄せます。旅客部職員は、そんな利用者のために様々なサービスを提供しています。

 「接客課(Hospitality)」は宿泊・飲食・娯楽など、旅行者が快適に過ごすための施設を担当する部署です。通常、運営は管理部事業課と契約した民間企業が担いますが、港が直接経営する場合は接客課が担当します(契約違反で入居業者が退店させられた場合に事業を引き継ぐのも接客課です)。大手運輸会社が自社客専用の特別待合室(ラウンジ)を港に設置する場合に、接客課が手数料を取って下請けに入ることもあります。
 加えて港内の装飾や案内表示、苦情対応も接客課が担います。大規模港ではよく著名な建築家や芸術家を起用して宇宙港の「顔」を創っていますが、その雰囲気を維持し続けるのは接客課の働きにかかっているのです。

 「案内課(Passenger Assistance)」は迷子や旅客の質問に対処する部署です。案内課の職員には港内の見取り図を暗記し、複数言語を解し、どんな人にも笑顔で応対する無限の忍耐力が求められます。この仕事はトラベラー協会と混同されがちですが、実際に職員は協会の仕事も把握していて、場合によっては旅客を最寄りのトラベラー協会窓口に繋ぐこともあります。

 「手荷物課(Baggage)」の「手荷物」とは、各客席等級で定められた範囲内で個人が船に持ち込める小型貨物、と定義されています。手荷物課の職員は貨物部と同様の技能で手荷物を運びますが、貨物部よりは旅客と直に接する機会が多いので常に身だしなみを整え、礼儀正しくあることが求められます。中には、港の繁忙具合によって手荷物課と貨物部を「行き来」する者もいます。

●警備部 Security
 その仕事のほとんどは駐在所で待機したり、廊下を巡回することです。保安上の問題が発生したとしても、万引き、スリ、荷物の盗難、酔客の破壊行為といった軽犯罪ばかりです。とはいえ海兵隊が駐留しない大半の宇宙港では、警備部は自称テロリストや有象無象の悪人に対する唯一の抑止力です。

 旅人が保護を受ける(あるいは裏をかく)保安対策は、宇宙港の規模によってかなり異なってきます。Eクラス宇宙港は小さすぎて訪問者も少ないため、最低限のもの――港長(または日中8時間だけ雇われた元軍人の保安官)が銃を持ち、もしあれば監視カメラで警戒するぐらいです。Dクラス港でも常時複数の警備員が配置されることは珍しいですし、この規模では緊急事態に備えて防弾服や狙撃銃などの特殊装備をいくつか用意しておくのが精一杯です(場合によってはその都度港長が突入志願者を募ったり、部外者に依頼もします)。
 Cクラス港ともなると、中央監視室から複数の監視装置と無人機(ドローン)を駆使した警戒が行われ、警備員も5~10人単位になります。警備員の半数は私服で、もう半数はクロース相当の防弾服と電磁警棒(スタナー)を持って巡回を行います。また、緊急時に備えて詰所には軍用銃が保管され、複数の犯罪者を収容する独房も設置されています。
 Bクラス港の警備規模はちょっとした警察署ぐらいになります。警備主任を含めて昼夜3交代の人員配置が行われ、関係者が港内宿舎に寝泊まりどころか定住することも珍しくありません。また、小規模ながら海兵隊が駐屯していることもあり、普段は目立たないようにしながら人質事件やテロ攻撃などの大規模暴力犯罪に備えています(海兵隊がいない場合は警備部内に特務班(SWAT)が組織されます)。収容施設には十数名分の独房があります。
 Aクラス港の規模はもはや都市と同じなので、その保安業務も膨大な人手と機械を必要とします。港内の地区ごとに所轄が分けられ、それぞれが人員と警備車両と収容施設を持っています。情報は中央の警備本部に集められて各所轄に指示が送り返されます。Aクラス港にはたいてい海兵隊が駐屯しており、宇宙港の警備能力を超える事態があれば、最後の手段として軍用車両や兵装を駆使して沈静化させます。

●医療部 Medical Department
 全ての宇宙港には何らかの医療施設を置くことが義務付けられています。Eクラス港では救急箱に過ぎませんが、Dクラス港では正規の救命訓練を受けた者が最低1名は勤務しています。こういった小規模港で深刻な病人が出た場合は、最寄りの医療機関に搬送されるか、たまたまいるのであれば船医に救命措置を依頼します。
 Cクラス港以上では常勤の医師や看護師がいる医務室があり、訓練を受けた救急隊員が24時間体制で待機しています。ただしCクラスでは外科医が常勤していることはまずないため、重傷者は港外のより設備の整った医療機関に運ばれます。これがAクラス港ともなるとその規模は病院と言っていい程になり、人類以外の医学知識も持った医師、手術室や自動診療装置(AutoDoc)、さらに常勤外科医も待機していますが、意外にも冷凍寝台や入院設備はありません。これは、医務室の目的が救命救急であって長期的な入院は考慮されないからです。

 辺境星系では、宇宙港が唯一の医療機関である場合もあります。その結果、宇宙港規模に似つかわしくない充実した医務室が出来上がっていることがあるのですが、その費用は医療費を取っても回収できなくなることもしばしばです。帝国はこの損失を辺境開発の必要経費としてあえて受け入れています。
 このような現実は興味深い状況も生み出します。例えば、惑星の指導者(やその親族)をXT線を越えて入院させる際に、惑星の反政府派はその「慈悲深い行い」を黙って見過ごさないでしょうし、仮に患者が帝国側で亡くなれば市民の帝国への感情が悪化するのは避けられないでしょう。

●救急部 Emergency Services
 火災、化学物質の流出、墜落事故――人員や設備の質こそ様々ですが、どの宇宙港も(特に軌道港では)最優先で災害対策を行っています。人命尊重からして当然ですが、宇宙港の評判が落ちれば経済面でも打撃になるからです。
 大規模港には専用の「緊急指令本部(Emergency Operations Center)」が置かれていて、いざとなればここに港長以下関係する部署全ての幹部職員が集合し、備え付けられた通信回線や情報表示装置を駆使して、広大な港の中の災害対応や救助活動の指揮を執っていきます。小規模港ではここまではできませんが、規模は小さくともやっていることは大きく変わりません。

 そんな中でも「救急隊(Rapid Response Emergency Team)」は港内の消防士、救命士、危険物取扱資格者を集めた緊急対応班です。救急隊は、火災が発生すれば延焼を防ぎ、負傷した人を救助して医療部に運び、港内に劇物が漏出すればそれを速やかに除去し、無重力中の危険な飛散物衝突事故(FOD)からの防護を試みます。ただしDクラス以下の宇宙港では救急隊はほぼ組織されておらず、その代わりに職員全員が消火・救命訓練を受けています(が、大規模災害がひとたび起これば為す術がありません)。
 Cクラス以上の宇宙港では救急隊は常設されていて、宇宙港が大規模化すればそれだけ救急隊にも多くの人員や装備、例えば専用の消防車や救急車(TLが許せば反重力化)、瓦礫除去ロボット、劇物や真空に対応した装備などが置かれます。隊員は全員、消火・危険物処理・救難救助の訓練を受けた精鋭で、必要に応じて特殊作業班(無重力空間対応や爆発物処理)も組織されます。もちろん宇宙港職員も全て日頃から緊急対応の訓練と講習を受け、災害時には事前計画通りに各々の現場で旅客の避難誘導や安全確保に向かいます。
 ちなみに救急部と医療部は、基本的に現地の医療・救急機関と相互協力協定を結んでいて、小惑星帯で座礁した船の救助に向かったり、地元政府の要請で災害出動を行ったりすることはよくあります。これらの勇敢な活動により、宇宙港と地元が友好関係を深めているのです。

●航空部 Flight Operations
 宇宙港の航空宇宙部門である航空部には、連絡シャトル、燃料運搬船、牽引船といった小艇の操縦士や乗組員が所属しています。この部署の重要性は軌道港の有無によって大きく左右されますが、仮に軌道港がなくても管制用人工衛星の保守修繕など、わずかであっても日常的に航空部の役割が求められることはあります。

●設備部 Physical Plant
 宇宙港のインフラを維持管理する部署です。港内各所から求められる仕事であり、大規模港では職員がひっきりなしに呼び出されるのはありがちです。旅客から宇宙港が「はずれ」と思われるのは、たいてい予算不足でここが機能不全を起こしているからなのです。

 「機械課(Engineering)」は機械類の修理、電球の交換、傷ついた着陸床の再舗装など、宇宙港備え付けの全てを保守します。同様に「電力課(Power)」は港内の電力供給網や、1つはある(大規模港なら複数ある)核融合発電所を整備しています。これらの部署は小規模港では統合されていることもあります。

 「通信課(Data/Communications)」は、交通管制には欠かせない通信設備を守ります。それだけに限らず、ほぼ全ての部署が港内の様々な最新情報を迅速に欲しており、その要求に応えています。帝国の宇宙港ではほぼ中間子通信が採用されていますが、低技術星系では現地の通信方式(有線電話や光通信など)で代用されていることもあります。また通信課は、航法衛星・気象衛星・通信衛星・中継衛星の通信を監視する役割もあります。
(※中間子通信はTL15の最先端技術のため、少なくとも小規模港では代用されていそうです)

 「輸送課(Transport)」は、広い港内で人と物を運び、その機器を管理保守しています。定番の反重力バス・トラックに加えて、大規模港ではリニアレールなどの鉄路も導入されています。運転手は基本的にこの輸送課に属していますが、貨物運搬車の運転手のみ例外として貨物部の所属になっています。
 ちなみに、ターミナルビルから船(またはその逆)への旅客の移動は、小規模港では旅客は歩いて船まで移動しなければなりませんが、大規模港では宇宙船がまず待機所まで移動して搭乗口に接舷し、乗客はターミナルビルから搭乗口まで歩走路(Slidewalks)などで移動して乗る方式が採られています。保安上の理由から、港外の公共交通機関がXT線を越えて直接宇宙船まで乗り付けることはありません。

 「物資課(Stores)」では、港内で使われる消耗品を全て管理しています。小規模港では単なる物置小屋ですが、大規模港では機械倉庫や化学薬品庫や食品冷凍倉庫など、利便性を考えて目的別に分散化されています。当然、食料倉庫はターミナルビルの近くに、部品倉庫は格納庫の近くに置かれます。それら倉庫と物資をやり取りするのは輸送課の役目で、場所によっては自動搬送機や地下路線も利用されます。
 加えて宇宙港には、あらゆる事態を想定して港の維持に必要な物資(宇宙船の予備部品、医薬品、衣類、保存食など)だけを集めた備蓄庫があります。これは宇宙港自体が危機に陥った際に現地の人々の善意に頼ったり負担を強いたりすることなく自活するためのものですが、同時に、現地が災害に見舞われた際に物資を放出することも考慮されています。

 「食堂課(Commissary)」では港内従業員向けの食事を提供しており、関係者は割引価格で専用の食堂を利用することができます。

 「清掃課(Housekeeping)」は港内の窓拭き、絨毯の掃除、ゴミ箱の回収から、外壁の塗装や樹木の剪定まで、宇宙港の美観に関わる作業を全て担当します。
 なお、食堂課と清掃課の業務は民間業者に委託されることが多いです。

「付録」につづく)
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宇宙港 ~未知への玄関口~ 第2集:付録

2022-05-18 | Traveller
■税関
 帝国の税関は、実は港務局ではなく帝国歳入庁(Imperial Revenue Department)の一部門ですが、その仕事は関税の徴収ではありません。なぜなら帝国はほとんどの世界で関税をかけていないからです(例外は宇宙港建設費を賄うための「臨時徴収」ですが、完済された時点で終了します)。
 税関の主な仕事は、到着した船舶を検査し、盗難船や密輸行為や指名手配犯を探し、旅客(や生体貨物)の検疫を実施し、時にはXT線や星系自治権との衝突問題に関わります。亡命権や星間移動の自由を制限し、好ましからぬ人物を星系政府に引き渡すことも含まれます。これらの任務は港務局の警備部と一部重なっていて、港務局自体の独立性が災いして時に混乱が引き起こされることもあります。
 宇宙船が宇宙港に到着すると、税関の担当者が船長と面談して航行計画書(フライトプラン)や積荷・乗組員の子細を確認します。港が特に混雑している場合は、待たされることもあれば船の通信機を通じて行われることもあります。この際に不審点(申告の矛盾や船体の明らかな損傷)があれば臨検や検疫が行われます。
 民間客船で宇宙港に到着した旅客は別の扱いを受けます。Cクラス港以上では旅客は港を出入りする際に、必ず税関の保安区画を通過しなくてはなりません。そこでは監視カメラや武装警備員による厳しい視線、そして(Bクラス以上では)武器や爆発物を発見する透過装置(スキャナー)が待っています。とはいえ厳重な警戒態勢ではありますが、通常は短時間で確認は終了して自由に港内を歩き回ることができます。なお、Dクラス以下の小規模港にはこのような設備はないため、下船時にざっとした検査を行い、明らかに不審な人物を別室で聴取するぐらいしかできません。
 帝国の官庁はその名を貶めぬように、冷酷なほどに勤勉であろうとします。人は皆、過ちを犯しやすいものではありますが、帝国の税関職員を堕落させるのは特に一筋縄ではいきません――もちろん物語を盛り上げるための例外はいくらでもありますが、その動機は単なる金目当てよりもずっと深いものであるべきです(※基本的に税関職員への〈贈賄〉判定はDM-6されます)。
(※帝国歳入庁は、実は後の設定では見当たらない組織です。しかし商務省の仕事として「徴税」が設定されているため、その下に歳入庁があってもいいだろうと判断してそのまま残してあります)


■労働組合
 帝国法では軍人以外に団結権が認められており、宇宙港が軍や企業との競争に打ち勝って優秀な職員を確保するためにも、公正な賃金と労働慣行の遵守は避けて通れません。
 宇宙港最大の労働組合が「宇宙港機械技師総連(ASMET)」で、ほぼ全ての宇宙港に支部を構え、技術系職員の加入率は約75%と言われています。また、職場単位の小規模組合も多数あり(例えば、設備部の運転手と貨物部の運転手は別々の組合に加入しています)、港長の中には何十もの組合支部との団交を強いられている者もいます。
 帝国法は団結権と同時に、組合に加入しない権利も認めています。幹部は組合員に偏見を持ってはなりませんし、組合員も非組合員を蔑視してはならない――のですが、これはあくまで理想にすぎないのが現実です。公然と組合潰しが行われる宇宙港もあれば、雇用安定の美名の下に労働者を強制加入させた組合が経営側に迎合している宇宙港もあるのです(※組合が全体主義の地元政府に取り込まれていることもあるようですが、XT線の設定を考慮して注釈付きとしました。現地雇用労働者の組合ならありえるかもしれません)。
 この労働問題はシナリオの種を与えてくれ、その多くは「正しい」側も「間違った」側もないことでしょう。労働組合のストライキによって修理点検が滞ったので、納期を守らせるために「ならず者」を雇うことは正当化されることでしょうか? 貿易商人が組合の圧力で高い組合員を使うことを強いられ、拒否すれば宇宙港での取引から締め出されるとしたら?


【ライブラリ・データ】
飛散物衝突事故 Foreign Object Damage
 無重力空間においては、細かい破片であってもその速度と角度次第では凶器となりえます。特に、事故によって発生した飛散物の塊が宇宙船の軌道と交差した場合、まるで拡散弾頭のような損傷を与えかねません。よって軌道港における事故処理は、まず先に飛散物の除去を行ってから救命活動に移るのです。

Kブランケット Kinetic Containment Blankets
 Kブランケットとは、約3メートル四方の多層防弾繊維布の俗称です。その主な用途は、爆発しそうな宇宙船から破片が飛散するのを防ぐことです。1枚または複数枚のKブランケットを救急隊員が危険区域に広げ、杭で(通常は船体に)固定します。その際に、飛散物は補足してもガス圧は逃がすために端は緩めたままにします。
 これは他に、大気中の火災を鎮火させたり、兵器や爆発物の木箱を包むために使用されますし、転落した者を下で受け止めるような即興的な使い方もされます。

マーシー級100トン救命艇 Mercy-Class 100-Ton Rescue Vessel
 事故現場に駆けつけ、被災した船から生存者(最大76名)を救出・捜索するための医療・救助用の非恒星間宇宙船です。この大きさの船で艦橋があるのは珍しく思われますが、徹底した捜索のためには探知機や通信機を増設する必要があるからです。船室のほとんどは病室や手術室や診察室に置き換えられていて、20名を同時に自動診療装置にかけつつ最大40名を治療することができます。さらに冷凍寝台には20名を横たえることができます。格納庫には2基の生命維持台(Life Support Carrier)など、救助や医療・生命維持のための装備を搭載することができます。
 救難艇は6G加速ができ、運用には船長兼操縦士、副操縦士兼航法士、通信士兼探知士2名、機関士2名、医師および宇宙医学士(flight surgeon)が必要です。

ブレイクウェイ級100トン急行艇 Blakeway-Class 100-Ton First Response Vessel
 この船は偵察艦を改装して緊急対応船として造られました。主な任務は遭難した船から乗客乗員を救助し、可能な限り機器の悪化を防ぐことです。ジャンプ能力は外され、代わりに推進力を強化しています。これにより、自分より大きな船を牽引することができます。内部には外科手術対応の手術室が2室あり、緊急手術するほどでもない負傷者は6基の自動診察装置(か生命維持台)に収容されます。無傷または軽傷者は36基の椅子に座らせます。4つの二人部屋は乗組員が長時間の作業中に仮眠をとるためか、いざという時は患者用の寝台に転用されます。また、スレイマン級偵察艦を改装した急行艇にはレーザー砲塔が1門残されていますが、これは切断トーチとして使用されます。
 急行艇は4G加速と大気圏突入ができ、運用には操縦士、航法士、救急隊員15名(執刀医1、医師2、看護師4を含む)が必要です。

救助ロボット Crisis Recovery Robot
 救急隊に配備されているこのTL13ロボットは、厚い装甲、優れた知能、無重力対応のスラスターを備え、人間には危険な環境下でも活動することができます。また、切断や牽引など様々な機器を装備し、貨物運搬ロボットの屈強さと医療ロボットの精密さを兼ね備えています。ただし、当然ながら非常に高価(15万クレジット)なため、よほどの緊急事態でないと使用されません。

生命維持台 Life Support Carrier
 これは生命維持装置を搭載した傷病者の運搬台(ストレッチャー)で、患者が適切な医療施設に到着するまで生命を維持するため「だけ」に特化した作りになっています。車輪付きの折り畳み式の脚を持ち、野外での簡易寝台や担架として利用できるほか、車載時には畳んで収納することもできます。生命維持装置は単独で数日間連続使用が可能で、電源から電力供給を受けることもできます。重量は約70キログラム、価格は1基Cr.7500です。
 なお追加装備によって、反重力化や耐弾加工、伝染病対応の完全密閉化なども可能です。
(※テクノロジーレベルに関する記載がないのですが、TL12と推測されます。これは、以前「仮死技術と二等寝台」で解説したTL12可動式寝台(portable berth)と同じものと思われます)


【参考文献】
・Starship Operator's Manual Vol.1 (Digest Group Publications)
・GURPS Traveller: Starports (Steve Jackson Games)
・GURPS Traveller: Far Trader (Steve Jackson Games)
・GURPS Traveller: Nobles (Steve Jackson Games)
・Starports (Mongoose Publishing)
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宇宙港 ~未知への玄関口~ 第1集:宇宙港の形式

2022-03-09 | Traveller

「人生で初めて宇宙港を訪れた時の事を忘れる者はいないだろう。慌ただしく行き交う見知らぬ人々、漂う新鮮な香り、リフトに乗せられた貨物コンテナ、鳴り響くアナウンス、そして沢山の宇宙船――、宇宙の広大さと多様性を感じるには、港で宇宙船を見るのが一番だと思う」
「帝国に仕えようと志す者に私が勧めるのは、とても簡単なことだ。宇宙港でしばらく過ごしてみれば、数時間の観察で何年もの座学よりも多くの事を学べるだろう。なぜ我々の帝国に守るべき価値があり、何びともそれを脅かすことは許されないことを」
――アンタレス大公ブルズク


 宇宙港はSFゲームにおいて、宇宙船に次ぐ重要な存在です。単に船が接舷し、プレイヤーキャラクターが降り立つだけの場としてではなく、その星と文明の最初の接点になるのです。多くのシナリオでは、プレイヤーキャラクターは宇宙港から出ることなく、燃料を補給して新しい貨物を積み込んで出港するだけかもしれません。レフリーとしても、キャラクターを安全な宇宙港からどうにか出して、危険な荒野や街角に向かわせようとあれこれ画策します。
 しかし、宇宙港はそれぞれ個性を持っています。氷の惑星には氷を利用した宇宙港がきっとあり、技術水準(TL)の低い辺境宇宙港では荷役獣がコンテナを引っ張っているかもしれません。切り立った渓谷の奥、大河の中洲、高山の台地、大都市の中心、海上の人工島、異種大気の地下、ガス惑星の軌道――それぞれ宇宙港の形は変わってきます。宇宙に同じ星が無いように、同じ宇宙港も無いのです。そして時には冒険や事件の舞台となりえますし、宇宙港で働くこと自体がロールプレイの題材としての可能性を秘めてすらいます。
 この連載では、これまであまり重視されてこなかった宇宙港の設定を掘り下げ、あなたの旅と冒険がより「楽しく」「豊かに」感じられるよう、その助力ができたらと思います。


「貿易航路が帝国に血液を供給する毛細血管だとしたら、宇宙港はその血管の弁にあたります。順調な時には気づかないものです、それが無くなると血があちこちに流れてしまったり、詰まってとんでもないことになってしまうことに」
――宇宙港港長タイラー・ヘクセ


 宇宙港の繋がりほど、帝国の強大な力を示す象徴はありません。光り輝く巨大都市であれ、辺境の小さな拠点であれ、宇宙港は帝国の境界とその領有を示しています。そして宇宙港は銀河経済の結節点であり、既知宇宙を横断する商人や旅人の立寄り先であり、無数の旅の起点と終点であり、超富裕層への階段と社会的弱者への奈落でもあります。
 それら全てが宇宙港、銀河宇宙への入り口なのです。

 第三帝国の宇宙港のほとんどは帝国商務省傘下の宇宙港務局(Starport Authority, SPA)によって管理されています。港務局の指導の下で宇宙港の規律と技術が一定に保たれ(例えば、帝国の宇宙港は全てTL12以上で建設されています)、港が効率・安全・公平に運営されることで、星系間の移動はより安心して行えるものとなっているのです。
 宇宙港とその種類は千差万別なため、港務局では都市国家に匹敵する規模のAクラスから辺境のただの着陸床に過ぎないEクラスまで、宇宙港を5段階に区分けする制度を設けています(※一級宇宙港、二級宇宙港……とする分け方もあります)。一般的に宇宙港には「軌道港(Highport)」と「地上港(Downport)」の2種類があり、軌道港は惑星軌道上で非流線型宇宙船に燃料補給や整備などを提供し、船員の息抜きや新しい商談の場を設ける施設です。地上港は惑星地表(場合によっては地下)にある宇宙港で、小規模港はこの地上港しかないことが多いです。そして地上港の周辺には「宙港街(Startown)」と呼ばれる、港から生ずる経済的利益を求めて様々な企業や商店や住宅が寄り集まる街区がしばしば出現します。宙港街には宇宙港本体と連携した綿密な計画のもとに建設された都市から、法も秩序もない荒れ果てた町まで様々です。
 港務局は帝国内の宇宙港を所轄し、同一の原則と規則で運営することを保証しています。とはいえ、それぞれの宇宙港には独自の個性と特徴があり、それによって様々な冒険の機会が生まれているのです。

■宇宙港等級
 前述した通り、港務局は宇宙港の規模・設備などに応じて5段階の宇宙港等級(Starport Classifications)に分類しています。あくまで目安であるため、ある一分野の施設だけ上(や下)の等級と同等のものが備わっている場合もありますし、天災や戦争などの理由により機能が低下している場合もありますし、星系内の事情によって宇宙港自体が一時的に(もしくは無期限で)封鎖されていることもありえます。Aクラスだからといって賑わっているとは限らず、無謀な設備投資による閑散とした港であるかもしれないのです(※そのため、宇宙港等級が実態を表していないとの批判もあります)。
 宇宙港等級はあくまで帝国港湾局の指標ではありますが、帝国偵察局(IISS)やトラベラー協会(TAS)発行の星図では便宜上、無所属中立星系や他国領にある宇宙港の分類にも用いられています。


「そりゃ公式には宇宙港のトップなら誰だって港長を名乗れるようになってるけどよ、ここには俺とエリーとザックしか居ねえんだから、他所のあばら家――ああ、Eクラス宇宙港のことな、そこらと同じように俺は『チーフ』と呼ばれてる。それに、エリーに俺のことを『港長』と呼ばせようとしたら、きっとここから蹴り出されちまうよ!」
――「チーフ」ことEクラス宇宙港港長デニス・マックイーン


Eクラス宇宙港 Class E Starport
 真の意味での辺境港であり、貿易路の末端からも外れていることが多いEクラス宇宙港は、「宇宙港」の体裁すら整っていないのが常です。言い換えれば「指定された着陸地点」でしかないのです。このクラスの宇宙港には数隻の小型宇宙船の「置き場」(整地しただけの地面)があり、最大に整地がなされていても1000排水素トンの船までしか受け入れられません。そして、開港当時から建て替えられていなさそうなプレハブ(pre-fabricated)建築や、現地の資材を集めて作られたような単純構造の建物が宇宙港の「管制塔」として設置されています(場所によっては誘導ビーコン等で無人化されていることもあります)。
 XT線(治外法権境界線)も建設当初こそ金網や港務局規格の金属板が敷地を囲うように埋め込まれていますが、やがては石や材木などで雑に補修されていくのが常です。とはいえどんなに粗末なものであっても、このXT線は帝国(および港務局)の権限の境界を示すものとして重要なことに変わりありません。
 (在籍しているのであれば)宇宙港に関する全ての職務は港長と片手で数えられる部下たちだけで請け負っています。職員は一般的に様々な役割を同時に受け持ち、港長自らが税関と通信と警備を担っていることも珍しくありません。
 Eクラス宇宙港では着陸管制はほとんど行われません。同時に着陸が行われるようなことが仮にあれば「早い者勝ち」となります。職員が通信で着陸時の注意点を教えたり誘導灯を着けたりはしますが、それ以上は望めないので荒天での着陸は危険が伴います。
 ちゃんとした格納庫のあるEクラス宇宙港は稀で、貨物というより郵便物を保管するための簡素な倉庫がある程度です。その容積も数百排水素トンの単位になることはほとんどありません。腐食性などの異種大気の世界だとさすがに安っぽくても格納庫が用意され、管制室との出入りのためにエアロックが設置されています。そして管制室には職員全員分に加えて予備の宇宙服が数着用意されています。
 Eクラス宇宙港では補給や整備のための施設はまず置かれていません。その代わりとして職員が地元の人を紹介したり、宇宙港が水場に隣接して拓かれていたり、港の片隅に廃棄された宇宙船の屑鉄の山が積まれていたりするのです。宇宙港ではなるべく緊急用の部品や消耗品があるように努めてはいますが、切らしている時は外世界から取り寄せる必要があります……それをどうやって伝えるのかは別として。
 たまにEクラス宇宙港には売店や立ち呑み屋がありますが、これは地元住民の矜持や饗しの気持ちから用意されているものです。それが無い場合でも、職員が雑談や忠告(現地の習慣や法律など)のついでに飲み物の一つでも出してくれるかもしれません。宿泊に関しては、最寄りの街まで出向く必要があります。
 Eクラス宇宙港はえてして辺鄙な場所に置かれているため、武器の所持規則は緩い傾向にあります。辺境では自分の身は自分で守るのが当たり前であり、宇宙港職員も訪問客がよほど不審な行動を取らない限りは黙認します。

Dクラス宇宙港 Class D Starport
 誰の目にも明らかに「宇宙港」だとして認識される最小規模のものが、このDクラス宇宙港です。EクラスとDクラスの差は、適切に舗装された着陸床と低純度のみとはいえ燃料補給設備の存在です。着陸床は世間で思われているよりもずっと大きく、十数個ある着陸床の少なくとも1つは2000排水素トンまでの宇宙船を着陸させ、格納庫に収容することができます。残りは200トン以下の小型宇宙船用と500排水素トン以下の中型宇宙船用のものが混在していて、いくつかには格納庫も付いています。また、反重力化されていない(垂直離着陸できない)機体のために滑走路が用意されていることもあります。
 Dクラスからは宇宙港の外観も管理もしっかりしたものとなり、金属製フェンスやコンクリートの壁などで明確にXT線を示すようになります。着陸を希望する宇宙船は接近時に宇宙港に連絡を入れた上で管制に従わなくてはならず、停泊料も必ず課せられるようになります。一般的に荷役を担当する宇宙港職員はいても1人か2人のため、大型・大量の貨物を下ろす(上げる)には臨時で経験者を雇わなければ遅延が発生するかもしれません。
 宇宙港内では簡単な修理を行うことができますが、大抵整備員は1名しかいないので発注してすぐ作業に取り掛かってもらえるとは限らず(むしろ自分でやった方が早いかもしれません)、修理費は1割ほど高くつきます(Eクラスのように屑鉄を積んでいる所もありますが、避けた方が懸命です)。なぜならDクラス宇宙港は建設目的からして特定の目的(観光や工業)のために特定の定期便(客船や貨物船)を扱うことに特化している場合が多く、不意の需要に対応できるとは限らないからです。同様に、港内施設が特定の観光客や企業関係者専用に作られていて、一般客は立ち入れない場合もあります。
 このクラスの宇宙港には軽食や立ち呑みの施設が付属していることが多いですが、宿泊に関しては(近隣にあれば)宙港街の安宿か最寄りの街まで出向く必要があります。

Cクラス宇宙港 Class C Starport
 このクラスになると随分「宇宙港らしく」なってきます。Cクラス宇宙港は小さいながらも定期的な流通・交通があり、輸送商船から自家用ヨットまであらゆる船に対応する設備を備えています。前述の小規模港よりも遥かに堅固で賑やかな印象があり、商人や地元住民たちの基本的需要を満たす以上のことができ、雇用を求め、会議を開き、取引を行う場でもあります。宇宙港の質の当たり外れがなくなり、安心して頼ることができるようになるのがこのCクラスからです。
 典型的なCクラス宇宙港には50~100の着陸床があり、そのうちのいくつかは5000排水素トン級の船を扱える大きさです。ほとんどの着陸床には格納庫があり、異種大気の世界ではそれらは密閉されて船と乗組員の双方が安全に出入りできるようにエアロックが装備されています。そして大気のある世界では滑走路が併設されていることもあります。
 このクラスの宇宙港には正式な管理施設が用意され、飛行・交通管制や税関業務など重要な職務が担われています。そして港のより進歩した通信網とレーダー網によって複数の宇宙船の同時管制が可能となっています。XT線の管理はより厳格になり、警備部門によって常に監視されています。
 Cクラス宇宙港では低純度燃料が無制限で供給されます。高純度燃料を入手できることもありますが、在庫には限りがあります。貨物の取り扱いは効率的になりますが、危険物を扱う際には遅滞することがあります(※経験のある作業員不足や安全対策で港外での作業を強いられるためです)。修理施設は5000トンまでの宇宙船の予備部品を在庫を切らすことなく保持していますし、仮に切らしていても数日後には入荷されます。
 約半数のCクラス宇宙港には軌道港が備えられていますが(※TL8未満の星には無いようです)、これらは単なる非流線型宇宙船用の補給・修理施設に過ぎません。恒久的な軌道上施設ではなく、タンカー船が周回している場合もあります。いずれにせよ地上港とは連絡シャトルで結ばれていて、行き来が可能です。
 旅行者の増加に伴い、Cクラス宇宙港は民間業者にとって魅力的な場となっています。通常は何かしら必要十分な宿泊施設や飲食店、乗組員向けの娯楽施設が併設されています。また、大手との競合を避けたい星域規模程度の運輸・流通企業は、Cクラス宇宙港に支社や営業所を置いていく傾向があります。
(※宇宙船の修理に関する設定が基本ルールから変更されていることに注意してください。おそらくCクラス以下で修理する術がないというのは厳しすぎるからではないかと思われます。また、最近ではCクラス宇宙港でも小艇の建造を可とする設定も見受けられます)

Bクラス宇宙港 Class B Starport
 この規模の宇宙港は、星系・惑星経済の中核となっていることが常です。Bクラス宇宙港の多くはその星の主要都市(たいてい首都)に近接し、そこには様々な形や大きさの着陸床が置かれて、それぞれに専用の荷降ろし施設を備えた格納庫があります。Bクラス宇宙港はそれ自体が一つの街と言うに十分な大きさで、地元住民に加えて多数の訪問客が行き交う場となります。
 Bクラスに分類されるためには、少なくとも高純度燃料を実質無制限に供給できる必要があり、非恒星間宇宙船や小艇を建造できる造船所も備えていないとなりません。これは同時に優れた(補修部品の在庫を気にしなくていい)修理・整備施設があることを意味し、大規模な改造を除けばあらゆる修繕に対応します。敷地面積に規定はありませんが、一般的なBクラス地上港は少なくとも10平方キロメートルはあり、様々な地下施設も存在します。さらに地上港と大体同面積の宙港街も周辺に形成されています。一般的な恒星間運輸企業は、このBクラス以上の宇宙港に営業所や支店を構えています。
 Bクラス宇宙港には9割方軌道港も付随していて、地上との間で定期連絡シャトルが運行されています。軌道港は大型船が補給や修理を行い、乗組員がわざわざ地上に降りなくて済むような娯楽施設をも含む規模があります。高度な衛星通信網を駆使して絶えず出入港する船と連絡を取り合い、管制官と交通管制システムの組み合わせによって安全性と信頼性が高められています。
 C・Dクラスの小規模港と異なってBクラスともなると、宇宙港自体が様々な商業活動の拠点となりえます。これは地元経済(と港務局)の大きな収入源となるだけでなく、訪問客が単なる通過点としてではなくより多くの物事を行うようになります。高級な宿泊や食事の施設、カジノや劇場といった娯楽設備を備えたこの規模の宇宙港は、それ自体が観光や休暇の目的地となりえるのです(ただし旅客数の少ない工業世界ではそういった要素を省いて運搬の効率化を優先しているかもしれません)。
 一方で経済規模の大きさゆえに組織犯罪に悩まされる宇宙港も存在します。収益性が高い上に安定した「カモ」の供給があるため、あらゆる違法行為にとって魅力的な環境でもあるのです。よって宇宙港の警備部門は、違法行為の抑止と摘発のために日夜様々な努力を重ねています。

Aクラス宇宙港 Class A Starport
 艦隊をも収めることができるAクラス宇宙港は、まさに星間交通の結節点です。実際、多くのAクラス宇宙港はその主要世界よりも有名であり、毎日何千何万もの旅行者や商人が訪れる主な理由にもなっています。そしてここは、乗り換え便待ちの旅行者だけでなく、船上での仕事を求める者や、未知に挑もうとする冒険者たちが出会う場でもあります。
 宇宙港がAクラスに認定されるためには、軌道港と地上港の双方を備え、高純度燃料を無制限に供給し、恒星間宇宙船を建造できる造船所を備えなければなりません。必然的にそのような重厚な施設を収容・維持するためには、膨大な量の貿易と旅客を扱えるだけの組織と財源が必要となります。Aクラスともなると、その星系の経済規模すら越えることもあります。
 巨大なAクラス地上港の輝きは、まるで星々に掲げられた燭台のようだと詩的な旅人たちに称され、冷たく果てのない宇宙空間から異邦の人々を招き入れているのだと言います。地上港には必ずと言っていいほど宙港街が付随し、旅客や商品の流通によって支えられている企業や住民が多数入居しています。そして宇宙港を中心とした巨大な都市づくりが成されていることも珍しくありません。
 何百もの大小様々な宇宙船がひっきりなしに出入りしているAクラスの巨大軌道港は、一見の価値ある光景です。そして最先端の管制制御システムがこれら無数の船に正確な情報を提供し、事故や長時間の滞留とは全くの無縁です。考えうるあらゆる形や大きさに合わせた着陸床が完備され、格納庫とエアロックも当然あり、危険な貨物の積み下ろしでも素早く安全にできるよう対応されています。
 Aクラス宇宙港の修理施設では補修部品の供給はほぼ無制限かつ安価なのですが、これは熾烈な事業者間競争と際限のない需要の相互作用によるものです。宇宙港内の民間造船所では小艇から巨大軍艦までありとあらゆる宇宙船が建造され、新造船だけでなく再整備船や中古船の売買も盛んです。また、船主の好みに応じた改造にも応じられます(そして船主への活発な売り込みも――)。
 宇宙港内の施設は大都市に匹敵するどころか時に凌駕します。派手できらびやかな演劇から歓楽街の怪しげな酒場まであらゆる種類の娯楽が提供されていて、探し方さえ知っていれば驚くほど色々なものが見つかります。宿泊施設も充実していて、質の割に意外と安価だと言われるのですが、これは多くのホテルが巨大カジノを併設していてその利益から部屋代を割り引くことができるからです。もちろん一泊で1万クレジット以上もするような最高級の部屋もあり、旅行客はそこでは銀河交易の中心ならではの料理に舌鼓を打ち、格別なサービスを受けることができます。商店も高級店から量販店まで様々です。
(※何事にも例外はあります。『トラベラー・アドベンチャー』のアラミスや『黄昏の峰へ』のフューラキンのように軌道港を持たないAクラス宇宙港もありますし(宇宙港の設定が整備されてない時代の作りなのでやむを得ませんが……)、地上港と軌道港に等級の格差がある設定も、全く問題はないのです)

Xクラス Class X
 主に無人惑星などで規定された着陸地点がない場合は、分類上「Xクラス」とされます。また、既存の宇宙港が何らかの理由で長期的に閉鎖されたり、完全に機能停止に陥っている場合もXクラスと表記されることがあります。いずれにせよ、Xクラスは「立入禁止星系」であることとほぼ同義です。

■様々な宇宙港
地方港 Spaceport
 星系内の主要世界以外の惑星に建設された、系内交通を扱う宇宙港を「地方港」と呼び、その規模や質を「F・G・H」の3段階で表します。設備内容はFクラス地方港がCクラス宇宙港相当、GがD相当、HがE相当と考えると目安になります。
(※F・G・Hクラスを用いずに初めからC・D・Eで表記している星図もあります)
 地方港は港務局の管轄外であり、運営は星系政府(や企業)が担っています。そのため本来は規約や質は千差万別のはずですが、帝国内では港務局管轄宇宙港と大差ないと考えて構いません。
 恒星間宇宙船は通関の都合上、緊急時でもなければ星系外から直に地方港には乗り入れないため、地方港に向かう旅客や貨物は一旦主要港で乗り換えることになります。なお、主要世界内に複数の宇宙港があっても、それが地方港であるとは限りません。テラ星系(ソロマニ・リム宙域 1827)のように港務局が複数の宇宙港を管轄していることもあるのです。一方で人口が各地に分散して居住している星系の場合、軌道主要港を中核拠点として、各地方港が地上港の役割をしていることもあります。

私設宇宙港 Private Starport
 一個人や一企業が宇宙港を所有するには多額の資金が必要なため、一般的に困難ではありますが不可能ではありません。現実に、有力貴族が邸宅から出仕するためだけに専用の宇宙港を建設したり、(庶民との交流を望まない)超富裕層のみの住宅区域に併設されたり、機密保持のために企業研究所関係者のみが出入りを許される宇宙港もあります。いずれにせよ、広く一般に開放されている宇宙港は私設宇宙港とは呼ばれないのです。
 私設宇宙港の規模はEクラス相当がほとんどで、Dクラスすら珍しいです(稀に惑星環境の保護などの理由で軌道上に置かれる例外はあります)。ただし、私設宇宙港の周辺警備はその規模に似つかわしくなくBクラス相当にまで引き上げられていることが多いので、不用意に近づけば警告の後で発砲を受けるかもしれません。
 当然ながら私設宇宙港は港務局の管轄外であり、一般的な星図やUWPコードに記されることはまずありません。

経由港 Transit Port
 主に経由港は貿易の旨味に乏しい低人口星系に置かれ、主要航路を行く貨物や乗客の移動を円滑にするために存在します。経由港は大量の船の往来をさばいていますが、通過点に過ぎないその星とやり取りされる貨物や乗降客はほとんどありません。
 余談ですが、労働力は人口密集地からの出稼ぎに頼らざるを得ないため、運用経費は高く付く傾向があります。

外縁港 Farport
 経由港の別形態で、有人惑星から遠く離れた空間に設置された軌道複合体です。燃料源となる巨大ガス惑星の周回軌道や、主要惑星のない伴星系に置かれたものを指します。
 超光速航法の仕組み上、巨大恒星(や複数の恒星)がある星系では宇宙船は遠く離れた空間にジャンプアウトを強いられます。そこから主要世界まで長い時間をかけて移動するのが(物理的に・経済的に)無駄に感じられる際に、この外縁港が建設されます。

深宇宙施設 Deep Space Station
 恒星のない深宇宙空間(※つまり星図に何も書かれていないヘクス)に置かれた宇宙港施設のことです。ジャンプブリッジとも呼ばれ、通常の手段では結ぶことのできない2星系間を行き来するための補給拠点(Calibration Point)となっています。歴史的には、恒星間戦争初期に地球連合がジャンプ-3を要した「シリウスの空隙(Sirius Gap)」を突破するために設置し、ヴィラニ帝国に衝撃を与えたものが有名です(※そもそも地球人はバーナード星への初飛行の際にも同様の手段を使用しています)。
 この種の補給拠点は戦略的に重要なため、存在自体が秘匿されたり、暗号コード等で許可された宇宙船のみ寄港させることがあります。一方で公に利用されているものとしては、プレトリア星域(デネブ宙域)の33星系をジャンプ-1で結ぶために設置された2か所の「ブリッジ」があります。

■基地
 軍事基地も一種の宇宙港と言えます。海賊行為を抑止して「安全地帯」を作り出す軍事基地の存在は、宇宙港と同様に貿易にとって必須のものです。さらに、帝国が海軍や偵察局の基地を設置することは「帝国がこの星系を重視している」という意味で、地元住民からの誇りと好感を引き出すものでもあります。地元の人々は兵士たちを我が子のように思い、様々な飲食店や小売店が基地関係者向けに提供されています。
 基地司令官と宇宙港港長はたいてい密接な協力関係にあり、それを維持するための連絡係を設けています。なお、自給自足が大前提である軍基地の中でも造船能力だけは宇宙港に依存しており、他国との緊張が高まったり紛争状態に陥った際には、海軍基地司令官は民間造船所を管轄下に置いて軍艦艇を建造させる権限を持っています。
 海軍と偵察局は独立した基地だけでなく、宇宙港内に常設施設を持っていることもあります。そこでは専用の燃料補給施設や、軍人がくつろぐための娯楽施設が置かれています。また、平時では最寄りの宇宙港に物資を供給する役割も基地は担っています。

偵察局基地 Scout Base
 偵察局基地は、偵察艦の燃料補給や修理・定期整備を行う場であり、命令で危険な任務に挑む局員たちの安全で快適な帰還場所でもあります。偵察局基地はCないしDクラス宇宙港の開発途上星系に置かれる傾向がありますが、AやBクラス宇宙港の星系にもあります。基地は初めのうちは設置と撤去が容易になるように工場製の仮設施設が置かれますが、長い年月を経て恒久化されると現地で入手できる資材で増改築が繰り返され、各基地独特の個性が生まれていきます。
 現場の「最前線」に赴いた偵察艦はしばしば損傷して帰還するため、全ての偵察局基地は小さくとも修理施設を軌道上に持ち、そこには地上からのシャトル(や物資)が到着するまで乗組員を待機させる設備があります。

 一方でXボート施設(Xboat Station)は同じく偵察局管轄の基地ですが、星系外から来たXボートを受け入れ、それが運んで来た通信を受領しては惑星に送信し、補給と簡単な整備の後にまたXボートを送り出すために存在しています。通常、Xボート施設は恒星や巨大惑星の重力井戸を避けて星系端に置かれ、そこから無線や光線で多数の通信を主要惑星上の支局とやり取りしています。この支局は多くの場合宇宙港にありますが、宇宙港が星系の外れにある場合はその星系の中心都市に置かれます。
 また、大規模なXボート施設として「整備施設(Way Station)」があります。ここではXボート自体に決して不具合が起きないよう徹底した整備が行われています。
(※Way Stationは従来「中継基地」と訳されていましたが、用途が整備のみであることと、これ自体がXボート航路から外れた星系に置かれることもあり、「中継」では誤解を招くと判断して訳語を変更しました)

海軍基地 Naval Base
 海軍が軍艦の維持・給油・修理のための施設を欲したのなら、AないしBクラス宇宙港のある世界に海軍基地は建設されます。このクラスに限られるのは、大規模宇宙港は戦略的に重要であることと、造船所などの軌道港施設を併用するからです。そして基地があることで、地元住民の安心感(と帝国への忠誠心)がさらに高まることも期待できます。
 海軍基地は自前で食料貯蔵・燃料弾薬補給・艦艇の修繕・訓練・兵員宿舎などの機能を持っていますが、造船能力だけは機能の重複を避けて宇宙港の民間造船所に委ねています。これにより造船所は平時でも安定した受注が見込めますし、戦時には基地司令官が造船所を直接管理下に置くことで対応もできるのです。ちなみに海軍基地にはバーや社交場があって関係者がくつろげるようになってはいますが、できることならより多くの娯楽がある地元宇宙港に足を運びたいと兵士は考えています。
 全ての海軍基地は防御兵装を備えていて、番号艦隊以外にも予備艦隊が控え、常に哨戒を怠りません。さらに重要なことは、攻撃を受けた基地は(※ジャンプ-6連絡艦で)すぐさま救援を呼び、宙域各地から増援が駆けつけることです。帝国海軍は帝国で最高峰の存在であり、多くの市民にとって海軍の存在こそが帝国そのものです。そのため、海軍の艦艇や基地を攻撃した者は、誰であれ迅速かつ無慈悲な報復を受けることになります。名誉と誇りは守られなければならないのです。

 この海軍基地が星系規模にまで巨大化したのが海軍兵站基地(Naval Depot)です。兵站基地はたった一つで宙域全ての軍艦を支え、仮に宙域が孤立しても数年間持ち堪えられるだけの物資を製造・貯蔵する能力を持っています。その重要度から、兵站基地の存在自体を隠蔽できないまでも、星系への立ち入りは厳しく制限されます(※「迷い込んだ」宇宙船を曳航して送り返すための補給港が用意されてもいます)。
 また、士官教育を行う海軍兵学校はこの兵站基地に置かれますし、士官に限らず兵士の訓練や保養のための施設も用意されています。
(※スピンワード・マーチ宙域には設定上兵站基地がないのですが、1130年以降にメイシーン(2612)が兵站基地となるので、1105年時点でも実質的に兵站機能を持っていた(実際ここには戦術大学校(Tactics College)があります)、もしくはモーラ海軍基地と分散して担っていたと考えるべきでしょう)

■帝国外の宇宙港
 帝国領外の独立星系の宇宙港は当然港務局の管轄下にはなく、主に現地政府が管理を行っています。運営手法は(※人類であるなら)港務局と大体似たような感じで行われてはいますが、所によっては公平・公正さを欠いていたり、地場産業の保護目的とはいえ理不尽な関税を掛けてきたりすることもありえます。よって旅人や商人は予期しないトラブルに巻き込まれる可能性があります。
 ちなみに将来的に帝国が中立星系を併合するなら、まずは港務局管轄宇宙港を「現地政府の了解の下で」建設するところから始めます。やがてその宇宙港は帝国の流通網に取り込まれ、地元の産業は徐々に帝国のやり方に染まっていくのです。
 また、一部の友好星系(帝国属領)には帝国政府が基地を設置することがあります。

 アスラン領内の宇宙港は治外法権の飛び地であり、地元氏族から土地を借りた企業によって運営されています。その企業は土地を所有する氏族と関係が深い場合が多く、直系親族だけでなく重臣や同盟氏族の女性が運営しています。貿易航路も同じく、まず企業が所有し、その上に氏族があります。
 宇宙港の外(に限らずアスラン領の全て)は即何かしらの氏族の土地である以上、出入りするにはその氏族の許可が必須となります。認証を与える代理人は宇宙港など交通の要所に必ず居ます。
 アスラン社会には港務局に該当する組織はなく、全て運営企業(を支配する氏族)の裁量次第です。多くの宇宙港は支配氏族に便宜を図るように設計されているため、アスラン領内での旅は部外者にとっては非常にもどかしいものとなりがちです。

 ヴァルグルの宇宙港もほとんどが、星系政府と契約を結んだ民間企業によって運営されています。統一政府のある星系では単一企業が独占契約を結びますが、小国が乱立している星系では複数の企業が競合施設を建てている場合があります。星系政府は企業に対して一定の質の保証を求めますが、それが履行されるとは限らず、そもそも保証を求めることすらできない力関係もありえます。その結果ヴァルグルの宇宙港は、企業利益の最大化を求めて極力安価に建設され、安価に維持される傾向があります。
 ヴァルグルの宇宙港には当たり前のように海賊も入港しますが、彼らは宇宙港内では極力礼儀正しく努めます。なぜなら海賊が宇宙港の株主であることも多く、そうでなくても宇宙港の価値を落とすことが損であるとわかっているのです。それどころか、宇宙港に雇われている海賊すらいるのです。

 ソロマニ連合の宇宙港は、帝国に比べれば別の意味で「自由」な所です。連合政府には港務局のような組織はなく、宇宙港の管理は各加盟星系に委ねられています。連合政府は宇宙港運営に関して統一した規約を公表していますが、それが守られるかどうかは現地政府のやる気次第です。多くの世界では帝国にも劣らない宇宙港がありますが、一方で管理への関心が欠如した宇宙港もあります。ソロマニ連合への渡航は、安全が確認された交通量の多い航路で行うことが推奨されます。
 ソロマニ連合内での星系間旅行には常にソルセック発行のパスポートが必要で、貿易にも帝国では不要な各種許可証が求められます。連合政府は安全保障のためとしていますが、反体制派は人々と思想の自由な移動を抑圧するためだと非難しています。

 ゾダーン社会は帝国よりも中央政府の役割が重いため、宇宙港の運営には複数の政府機関が携わります。各機関は自己の権限を守りながら、他の部署ともなるべく連携を図っています。帝国と同様にゾダーンの宇宙港も利潤を追い求めませんが、可能な限りの自活も求められます。
 一般的なゾダーン人は他種族を疑いの目で見がちであり、特に対超能力装備を施してきた者は必ず警備員に尾行されます。「後ろめたい気持ちがないのなら、なぜ隠そうとするのだ?」というのがゾダーン人の当然の心情だからです。その一方で犯罪を「内心で企てた」だけで拘束・処罰されるため、ゾダーンの宇宙港では犯罪が全くないのも事実です。また、訪問客は適正価格で誠実な扱いを受けることでも定評があります。


【ライブラリ・データ】
XT線 Extrality line
 「治外法権」の略語であるXTとは、星系政府の自治権と帝国法が及ぶ区域の境界を示した法的概念のことです。帝国の宇宙港にはこのXT線が必ず存在し、主権の範囲を明確に規定しています。XT線の帝国側では商品は免税で購入でき、現地では違法とされた「犯罪者」も捕らえられることはありません(ただし帝国法でも違法となる殺人犯など重犯罪犯は拘束の上、現地政府に引き渡されます)。
 XT線は基本的に地上港の土地境界線上にあり(※港内の税関や検疫所が境界となることもありえます)、それを示す形は現地政府の性格によって単純な金網から聳え立つ障壁まで様々です。


【オプションルール】
 基本ルールでの宇宙港の停泊料は、便宜上一律で「100クレジット(6日間)+延長1日につき100クレジット」とされていました。しかし、停泊料にも現実味を求めるレフリーは以下の案を検討してみてください。
 停泊料はいずれも6日分で、1日延長するごとに同額が請求されます。また、無人化されているEクラス宇宙港は無料とします。

 Aクラス:船のトン数×50クレジット
 Bクラス:船のトン数×20クレジット
 Cクラス:船のトン数×10クレジット
 Dクラス:船のトン数×1クレジット
 Eクラス:船のトン数×0.1クレジット

(※面倒ならGURPS版ルールに基づいて、全て「トン数×0.2クレジット」でもいいと思います(安いようですが倉庫の利用料が別途かかります)。上記のルールはマングース版ルールとの中庸を狙ったものです)


【付録】
 宇宙港で働いている従業員の人数は、GURPS版『Starports』にて計算式が公開されていますが、これはまず宇宙港の経済規模と物流量を求めてから必要とされる人員数を割り出すという複雑なもののため、大雑把な目安として以下を提示します。この人数は「総従業員数」なので3交代かつ予備の雇用者を含み、(大きな宇宙港では)実際に同時に働いている人数はその5分の1と考えてください。

 Aクラス:数万~十数万人
 Bクラス:数千~数万人
 Cクラス:百数十~千数百人
 Dクラス:十数~数十人
 Eクラス:0~数人


【参考文献】
・GURPS Traveller: Starports (Steve Jackson Games)
・Starports (Mongoose Publishing)
・Universal World Profile (Zozer Games)
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MT日本語版30周年記念企画:『スナップショット ~回廊六景~』

2021-07-03 | MegaTraveller
「戦いは長く厳しいものになるでしょうけど、コリドーが生き残るための鍵は、武力ではなく個人個人の責任感と勇気なのかもしれませんね」
『コリドー・クロニクル』記者 レベカ・テソルジョ
1121年、モーラにて語る

 『メガトラベラー』に宇宙が移行した際に最も象徴的だった出来事は、皇帝暗殺事件を引き金にしてコリドー宙域がヴァルグルの支配下に置かれたことでしょう。これによりスピンワード・マーチ宙域を含むデネブ領域は中央の反乱から隔離された状態となり、幸か不幸かある意味で従来型の旅が保全されたと言えます。
 では、そのコリドー宙域はどうなってしまったのでしょうか。以下のライブラリ・データは、ヴァルグルに蹂躙されたコリドー宙域で重ねた取材内容をモーラまで伝えて来た記者、レベカ・テソルジョ(Rebeka Tesoljo)とサッド・シルミス(Thad Sirmis)の手記を再編集したものです。


帝国暦1120年のコリドー宙域(コアワード側)
(赤で着色されているのが旧帝国領)


【1】主を失った領地
カアス Kaasu 1209 AA7A9CD-F 海洋・工業・高技・高人 R G Vg 元宙域首都
 寒冷惑星のカアスの大気は、主力産業の副産物によって汚染されています。かつてヴィラニ人鉱夫たちは、この星の豊富な鉱物資源を求めてやって来ました。その後、鉱業から製造業・造船業へと主力産業は推移し、今では宙域内で最先端の技術世界となっています。兵站基地に近いカアスは帝国海軍の艦船や補修部品の主要な製造元であり、何社もある広大な軌道上の民間造船所では最新鋭の巡洋艦や駆逐艦から主力艦や弩級戦艦までが建造されています。また、小規模な造船所では対海賊艦(corsair-hunters)やヨット、探査艦や科学観測船などが造られています。カアスの人々は地元の造船業に誇りを持ち、主力艦の進宙式の日は市民の休日になるほどです。
 つい最近までカアスはコリドー宙域の首都でした。しかし、トオラスクーラジンのヴァルグル海賊がクキシュ星域に侵入したことで状況は一変しました。ルカン皇帝の命令で宙域の主力艦隊がコア宙域方面へ撤退させられた後も、宙域公爵クリストン・ランス・レーマン(Sector Duke Criston Lans Rehman)は自らの領地を守るために有象無象の艦艇をかき集めてカアスを進発し、必死に戦いましたが、1119年にアシマ(1515 E543942-8)にて核攻撃を受けて暗殺された、とされています。というのも、クリストン公の生存説は未だに宙域各地で囁かれ続けており、ある意味で人々の希望の(細すぎる)綱となっているのです。
 とはいえ希望的観測だけでは権力の空白は埋められず、海軍力も指導力も失ったコリドーは崩壊するしかありませんでした。宙域のほとんどの星系では新たな支配者にヴァルグルを迎えましたが、カアスでは異なりました。
 ここでは亡き公爵の弟であるヤン侯爵(Marquis Jan Rehman)が跡目を継ぎ、まず最先端の兵器でトオラスクーラジン傘下だった海賊団ヴァインググバイに脅しをかけて交渉に持ち込み、侯爵は惑星カアスとその衛星の支配権を確保しました。一方でカアス星系の残りの部分はヴァインググバイが手に入れましたが、これにより海賊はカアスに出入りする宇宙船の臨検が自由にでき、おまけに外惑星軌道のデライニー社の造船所を手に入れたのです。そこには当時、最新鋭のアルダスリン級惑星防衛艦の半数が係留されていました…。
 現地ではこの取り引きは現状ではやむを得ないとの声の一方で、ヤン侯がヴァルグルと通じて兄を売った見返りに権力を得たとの(根拠のない)見方もあります。
(※ちなみに、ヤンがカアス侯爵となったのはクキシュ公の娘であるエイミーラ・マクニール(Amyla McNeill)との縁談によって、と設定上されていますが、貴族の設定が未整備だった頃のものなので今となっては不自然です。ヤン侯は実はレーマン家の養子なのかもしれませんが…?)
(※ヤン侯爵がヴァインググバイを脅すのに使った兵器は、旧設定ではTL16でしたが、現在の設定では帝国内のTL16世界はTL15に引き下げられたため表現をぼかしました。研究中の新兵器やただの虚仮威しだったなど、レフリーが自由に考えてください)

【2】破壊された世界
レミシュ Lemish 1808 D79568C-A N 農業・非工 A G Va 元星域首都
 温暖で過ごしやすいこの星は星域首都であり、農業や工業の主要な生産地でした。
 しかし1118年に状況は一気に悪化しました。侵略軍トオラスクーラジンは安全保障税、つまりみかじめ料を要求してきたのです。星系政府がこれを拒否したため、彼らは見せしめの攻撃を行いました。宇宙港や工業地帯が集中して略奪に遭い、先端技術は失われ、一夜にして100万人以上が死亡したとされています(※宇宙港AがDになったため、軌道宇宙港は破壊されたかもしれません。また、TLは12から10に低下しました)。
 襲撃から2年が経過した現在でも復興は途上です。建物の修復すら半分程度で、再建は全くと言っていいほどにされていません。ヴァルグルが制宙権を握っているため定期的な貿易は途絶え、工場が稼働していても材料が届かないのです。現地の交通網は寸断されたままで、インフラが破壊されているので食料も水も不足しています。
 そして一番の影響は、家屋や産業が破壊されたことよりも、住民たちの精神と希望が破壊されたことです。再建も逃亡もできず、生活様式も全く変わってしまったレミシュの人々には心の拠り所がなくなってしまいました。
 そこに入り込むように、「服従新教(New Church of Submission)」なる何の役にも立たない疑似宗教が地方からじわじわと伸長し始めています。教会は「安全はつかの間のもの、人類の労働は無益」という諦観の教義を説き、運命に流されることで一片の平穏を得られるとしています。当然ながら大多数の人々の支持は得られていませんが、強引な改宗も辞さない積極的な布教活動も相まって、むしろヴァルグルよりも危険な存在になりつつあります。いつの日かこの教会が多数派になった時、それはレミシュの死を意味するでしょう。

【3】商人たちの天国
ギニング Ginning 2108 A6315AF-B K 非工・貧困 R G Ca
 薄い大気から差し込む恒星光で暑く乾燥したギニングは今、死んだはずのクリストン公が密かにここを拠点にしているという噂で注目の的となっています。
 それを抜きにしても、ギニングは政治的に興味深い場所です。遠くの星の知識人たちはここを「海賊同盟(Corsair Alliance)」の中心星系であると見做していますが、この「海賊同盟」は実際には「反海賊同盟」と言うべき存在です。そしてギニングは少ない人口に亡命者や反逆者たちが加わり、コリドー最後の自由な交流の場となっています。
 この同盟は散開していた海軍予備艦隊が7つの星系を守るために再集結して結成されたもので、トオラスクーラジンやイッロクといったヴァルグル、そして再興ヴィラニ帝国の3勢力に囲まれた不安定な地理上に存在します。しかし海軍戦力が海賊を食い止めたことで、再び安全な航行を可能とする空間が誕生したのです。
 やがて同盟は近隣勢力から注目を浴びることになります。同盟はヴィラニ人にとっては取るに足らない存在でしたが、ヴァルグルには格好の襲撃目標でした。そこで同盟の指導者たちは新戦略として、海賊には海賊で対抗することにしたのです。こんな世の中でも海賊が生き抜くのは容易ではなく、中には追撃されて困窮する海賊もいました。そんな海賊を同盟は迎え入れ、海賊はその恩義に報いました。
 同盟傘下の星系では英雄的な防衛戦を繰り広げる海賊は珍しくなく、軍艦と海賊船が肩を並べる光景も普通です。そう、部外者が「海賊同盟」と呼んだのは、この見た目だけを指したものなのです。
(※表題の「商人たちの天国」とは、おそらく領内で航路の安全が確保されているという意味でしょう。もしくは通商の規制や関税が緩いのかもしれません。なお、同盟の首都は現在の設定ではアルファイブ(2209 B578872-A)に置かれているため、記述を修正しました(ギニングは経済の首都、という解釈もあるでしょうが))
(※この設定ができた当時は知る由もないのですが、後に『GURPS Traveller: Planetary Survey 6』で、同盟傘下のダークムーン(2111 D78A66B-7)にSuSAG社運営の海中監獄があったことになりました)

【4】泥棒市
プランジ Plunge 2505 B5409CC-C CK 工業・高技・高人・砂漠・貧困 R G Vh
 砂漠世界であるプランジの地表には森も農場もありません。しかしここには80億もの人々が「砂岩の下」に住んでいて、曲がりくねったトンネルの先にある広大な水耕栽培の庭や湧き出る泉の恩恵を受けています。
 プランジの地下都市建設は、約500年前に莫大な富をかけた計画でした。なぜこの「岩の塊」にこれほどの資金が投じられたのでしょうか。それはこの星系がウシャムラ・メイン(Ushamla Main)の入り口という戦略的重要な立地にあったからです。最盛期にはこの星を幾多の船が通過し、帝国中央の星々と「鉤爪の向こう」との貿易路を担っていました。やがて主要航路はウシャムラ・メインからリムワード側に移りましたが、それでも貿易はこの星の富の源泉であり続けました。
 強権的な企業家が支配するプランジは、一見海賊とは無縁に見えます。しかし今では宇宙港にはヴァルグルの海賊船が平然と出入りし、造船所で整備を受け、乗組員が歩き回っているのです。
 実はイッロク宣言書国がこの星系を制圧した際に、貿易に経済を依存していたプランジの統治者は彼らに譲歩し、宇宙港を海賊に開放したのです。それは、どんな形でも安定した資金の流入がなければ民衆を養うこともできず、ましてや自分たちの豪奢な生活を維持することもできないからです。
 こうしてこの星系はコリドー宙域最大級の交易拠点から、最大級の盗品市場へと変貌しました。各地から略奪した戦利品を携えて、数パーセク離れた星から海賊がプランジに集まってきます。そしてここでは合法非合法問わず、ほとんど何でも手に入ります。
 プランジはある意味で開放的な港であり、強大なイッロクに守られてもいるため、もう一つの大切な商品である「情報」の取り引きも盛んです。商人や海賊が持ち込んだ、宙域各地の時に真実の、時に荒唐無稽な噂はヴァルグルや人類の耳に伝わり、必然的に金銭や商品が動かされます。
(※この内容で治安Cは流石に変ですが、宇宙港周辺だけ治安レベルが物凄く低いのでしょう)

【5】要塞星系
クキシュ Khukish 1606 A77A989-F 海洋・工業・高技・高人 G Na 元星域首都
 ここは最初期に入植された星系で、この海洋世界には第三帝国よりも遥か昔のヴィラニ人による遺構が存在します。彼らに限らずクキシュの人々は、海洋生物が持つ豊富なミネラルを利用して繁栄してきました。例えば、シュシムルという水陸両生の大型甲殻類は、クキシュの豊富な金属成分を殻に取り込んでいます。この生き物は定期的に古く窮屈になった殻を浜辺に脱ぎ捨てていくため、これを適切に処理すれば重金属の貴重な供給源となるのです。
 現在のクキシュ、そして隣接する農業世界シシュカラ(1607 B686654-C)はヴァルグルの支配を逃れた星系です。それは、別の意味で大きな犠牲を払ってでのことでした。ヴァルグルの侵攻を受けて、クキシュ政府は星系内の海軍戦力を前線に送らず、星域首都であったこの星の防衛に専念させたのです。つまりは他星系の帝国市民を見捨てる格好になったわけですが、ともあれ自前の防衛戦力に他星系からの合流もあって、クキシュの防衛網は鉄壁なものとなりました。ヴァルグル海賊の星系内への侵入は時々ありますが、ヴィラニ流の冷徹な戦術指揮と、何よりもヴァルグルの団結力の無さに助けられてクキシュは守られ続けています。
 クキシュ市民は、刻々と報道で伝えられる星系海軍の活躍によって得られた安全を享受していますが、戦いの推移をどこか他人事のようにも感じています。心配しているのは、軍艦に友人や恋人が乗っている人ぐらいです。いずれにせよ、シシュカラから先の様々な悲惨な出来事にはまるで無関心です。
(※シュシムルは900年代半ばに半知性があることが判明しています。その研究に生物学者に加えて古生物学者が加わったことから、太古種族による関与が疑われているのかもしれません)

【6】抵抗の灯火
コーラグフォーサ Koergfoes 0205 B54359A-B CK 非工・貧困 G Vf ヴァルグル世界 研究基地ε
 この星は農作物と帝国研究基地イプシロンで知られる、のどかな世界でした。ヴァルグルが多数派の40万人に満たない人口は、1119年にゾッロク連邦の標的になるには十分でした。星系政府は襲撃を回避するために早々と宇宙港を明け渡し、ゾッロクは「外部勢力からこの星を守る」ために進駐しました。
 しかしその保身は別の作用を生みました。星系政府が傀儡に成り下がったことで、これまで住民をまとめていた「威信」も失われました。ヴァルグルは威信ある者には従いますが、そうでなくなれば己に従います。かくしてコーラグフォーサは犯罪や暴力、テロ行為が横行する無法地帯となったのです。政権派の自警団も作られましたが、傀儡となった政権が威信を取り戻すには力不足でした。
 そんな中で、民衆の中で抵抗運動が盛り上がりを見せてきました。自警団とは逆に、海賊の傀儡となった官僚機構と戦い、海賊の企てを阻止することで、抵抗組織の闘士たちは人々の英雄となっていきました。
 法的根拠も資金源も、そして圧倒的武力もないコーラグフォーサの抵抗組織は、着実に人気と威信を高めました。最も有名な指導者は「オゾゾク(苦しめる者)」という偽名しか知られていませんが、外部勢力による支配という共通の脅威に対してヴァルグルと人類の団結を促す役割を果たしていました。
 でも、人気と正義だけでは戦いには勝てませんでした。1121年に入り、オゾゾクはついに政権に捕らわれてしまいました。彼は連行され、その裁判の様子は見せしめに星系内全体で生中継されました。
 しかし、オゾゾクの人気は高まる一方です。彼の逮捕と起訴が知れ渡っても、海賊を宙域外に追い返そうとする人々の気持ちは強まるばかりでした。彼が投獄された後も抵抗組織は政権打倒の新たな計画を練り続け、そして実行に移しているのです。
(※現在の設定ではここは「ヴァルグル世界」になっていますが、人類人口が5%未満とすればそこまで矛盾はしないでしょう)


【コリドー宙域の現状】
 1119年半ば現在、海軍による抑止力を失ったコリドーはヴァルグルによって分断されています。宙域では一般的な星間流通が途絶えており、商業宇宙船は自由に往来することはできません。
 今のところ、ゾッロク、トオラスクーラジン、イッロクといったヴァルグル勢力によって星々は制圧され、そうでない星系も襲撃を受けています。しかしそれらの上に立つのが、ディーポ(コリドー宙域 1515)の制圧と人員の強制徴用で最高の地位に上り詰めた海賊団ヴァインググバイです。兵站基地の司令官アンドレアス・シャビエル提督(Depot's commander, Admiral Andreas Xavier)を従えたこの海賊団は、他の海賊や侵略勢力をも支配し、新たな「ウィンドホーン同盟(Windhorn Alliance)」の旗の下に全てを強引に結合しました。
 現在、ここの宇宙空間を支配しているのは、数では劣っているもののヴァルグル海賊です。帝国最強と謳われたコリドー艦隊が対デュリナー戦線へと引き抜かれた後、ヴァルグル海賊に対抗できるのは点在する予備艦隊のみです。
 この特異な状況により、侵略者は限られた人的資源を割いて占領政府を立てることなく宙域を支配することが可能となっています。「ヴァルグルに従えば略奪を免れられる」という甘言は、貿易や通信の途絶への恐怖感も相まって、今の各星系政府には独立の精神よりも魅力的に聞こえるのです。コリドー宙域の人類は恭順派と抵抗派に分裂し、両者の溝は深まる一方です。
 残念ながら、コリドーの安定はすぐには望めそうにはありません。デネブ領域は侵入してくるアスランやヴァルグルへの対処で手一杯で、ヴィラニ人は何の助力もしてくれず、そもそも通信が宙域外に出られないために援軍は期待できません。コリドー艦隊の帰還は近いだの、(壊滅したはずの)レーマン艦隊が研究基地で新開発された超兵器でヴァルグルを蹴散らしているだの、様々な噂は飛び交っていますが、いずれも根拠はありません。
 皮肉なことに、今のコリドーを唯一まとめられそうなのはヴァインググバイなのかもしれません。実はヴァインググバイは内部抗争を抑止したり、星間交易や通信の再建も始めています。あくまでヴァルグルの支配下で、宙域が落ち着きつつあるのは否めません。しかし本当に、抵抗ではなく服従こそが平和な生活を取り戻す近道なのでしょうか…?
(※シャビエル提督が降伏の条件として兵站の人員ごと海賊に従ったのか、海軍を裏切ったのかは不明です)


【ライブラリ・データ】
コリドー宙域 Corridor Sector
 大裂溝によって大きく分断された267星系から成る宙域で、69星系がリムワード側、149星系がコアワード側にあります。コリドー宙域は、ヴランド宙域と辺境のデネブ宙域やスピンワード・マーチ宙域を結ぶ「回廊」であることから、140年にそう名付けられました(それ以前は古ヴィラニ語で「アムシャギ」と呼ばれていました)。
 第一帝国時代はヴィラニ人の関心が他所に向けられていたため、鉱物資源が豊富だったミケシュ(0206)や、貴重な生物の居たクキシュ(1606)などごく限られた入植地しか建設されませんでした。その後、-2400年から-1700年にかけてのヴァルグルの拡大によって大量のヴァルグルがこの宙域に流入し、ここが以前から思われていたよりも遥かに戦略的に重要であることが示されました。
 第三帝国が建国されてスピンワード方面への拡大が始まると、帝国はヴァルグル戦役(220~348年)を起こして暗黒時代から定住していたヴァルグルたちを追い払い、この宙域に確固たる帝国領を確立させました。それ以降コリドー宙域は、中央から辺境方面への交通の要衝としてあり続けてきました。
(※旧設定でのコリドー宙域の古名は「エネリ」でしたが、そのエネリ自体がヴィラニ人の最も典型的な名前(アングリックなら「ジョン」と同等)と被ることもあってか、後に修正されました)

コリドー艦隊 Corridor Fleet
 帝国海軍がコリドー宙域に配備している艦隊の総称です。大裂溝の存在によって平均星系密度が他所より低いにも関わらず、その地理的重要性ゆえに、コリドーには他の宙域と遜色ない戦力が配置されています。基本的に番号艦隊は1星域に1つですが、コリドーのコアワード側では1星域に2個艦隊が配置されているのです。
 コリドー艦隊の主な任務は、商業交通と情報の流れを維持し、海賊や敵国から領土を守ることです。コリドー艦隊はデネブ領域の艦隊の援軍の役割もあり、その地域の安全保障も担っています。そして国境付近に配属された艦隊は常に海賊の襲撃を受けるため、帝国の中でも最も戦闘経験が豊富となっています。

コリドー・クロニクル The Corridor Chronicles
 『コリドー・クロニクル』は、コリドー宙域の歴史・地理・文化・経済・人物・大衆思想等々についての総合百科誌です。183年にカアス(コリドー宙域 1209)にて創刊されたこのクロニクルは、ヴランド(ヴランド宙域 1717)の『AAB百科全書』とトラベラー・ニュースサービス(TNS)の中間的存在です。クロニクル本誌は4年毎に全面改訂されますが、頻繁に情報更新がされています。
 コリドー宙域で最も有名な民間情報企業であるクロニクルは、反乱による混乱にも関わらず、その社是である「真実に忠実であれ」を守るために日々努力しています。偏りのない報道を行うために、2名以上の記者が別々の視点から一つの記事を担当することもよくあります。

ウシャムラ・メイン Ushamla Main
 コリドー宙域のコアワード側に位置する、34星系が連なる星団のことです。古くは重要な貿易航路として多くの船が行き来していましたが、ジャンプ技術の発達によってその流れはリムワード寄りになりました。それでもヴァルグル交易の玄関口としての役割は健在です。
(※この「ウシャムラ」が何を指す言葉なのかは不明です)

ディーポ Depot 1511 A686354-E D 高技・低人・緑地 A G Im 軍政
 帝国暦1世紀に、破天荒な星間探検家H・A・エンダースによってこの星系の探査が行われました(主星エンダースの由来は彼女の名からです)。結局限られた資源しか見つからなかったため、主要航路に近くより豊かな星系への入植が優先され、この星は放置されました。そのため、第一次大探査の時点では686-901と星図に記載されています(ちなみにその後、「カムー・ラーン」と改称されました)。
 帝国はスピンワード方面への探査と入植を切っ掛けにして、この星系に海軍基地を建設して、増加する商船の往来を保護することにしました。数百年間この基地は使命のために拡張を繰り返し、やがて海軍最高司令部はここをコリドー宙域の兵站基地としました。対ヴァルグル戦の補給確保が主任務ではありますが、艦隊の集結拠点としてゾダーン国境の維持にも戦略的役割を果たしています。
 この惑星は海軍施設周辺を除き、ほとんどが未開発です。比較的穏やかな気候で、地軸傾斜が少ないため季節による気温変化があまりないのが特徴です。そのため自動化された農場や牧場が広がり、基地や艦隊に食料を供給しています。
追記:1118年以降、ディーポはヴァルグルに占領されています。
(※帝国暦0年当時の星図には「第二帝国時代の放棄されたルウグ兵站基地」の存在が記されているそうですが、時代背景を考慮すると実在は疑わしいです。また、T5設定ではここは設定不詳の群小種族ミイミンリ(Miiminri)の母星とされました。しかしながら星系総人口9000名の数%と、保護しなくて大丈夫なのか心配な数です)

ウルサ Ursa
 地球連合の企業ジェナシスト社が、ドルフィンなどと同様にテラ原産の動物に遺伝子操作を施して生み出した知性化種族です。
 (彼らの伝承では)第二帝国時代の同社はクマに知性を与えて高重力の植民地開発の手助けをさせる計画を進めていましたが、それは中途で破棄されることとなり、「駆除」を恐れたウルサは脱走しました。そしてヒグマ型のウルサはレイ宙域に、ツキノワグマ型はコリドー宙域のシシュカラ(1607)とタミラア(2006)まで逃げ延びて今の帝国市民としてのウルサの祖先となり、結果的に研究が成功していたことを証明しました。
 ウルサは仲間意識が強く、仲間の命のために自分の命を投げ出すことも厭いません。ただ、他種族との行動は好まず、心を開くまでは話しかけられても最低限の返答しかしない傾向があります。彼らは四つん這いで歩くことが多いですが、二足歩行も可能です。また、普段はズボンや靴の類は着用しません。
 故郷の星を出たウルサのほとんどは、その体格を生かして傭兵や護衛になります。

栄えあるトオラスクーラジン Glory of Taarskoerzn
 869年に結成された「栄えあるトオラスクーラジン」は、元々ウィンドホーン裂溝の端に位置する7つの星系から成る緩やかな集団でした。しかし900年代後半の路線対立の結果、非常に過激な派閥が権力を握りました。それは「選民教会(Church of the Chosen Ones)」の影響を強く受けていて、教義でもある銀河征服に傾倒していました。ただ、当時のトオラスクーラジン軍は比較的小規模だったため、現実味がないことも理解はしていました。
 同時にトオラスクーラジンの歴代指導者たちは、隣接する強国のイッロクの下に甘んじていることを苦々しく思っており、時が来ればイッロクに一泡吹かせようと秘密裏に計画が練られていました。
 ストレフォンの暗殺とそれに続く帝国の分裂により、「その時」は不意にやって来ました。トオラスクーラジン政府は今こそ銀河征服の好機到来と見て、傭兵海賊によって増強された軍隊はイッロクの領土を突っ切ってコリドー宙域に強引になだれ込みました。
 トオラスクーラジンの奇襲は当初はうまくいっていました。略奪は帝国領とイッロク領の双方に対して行われ、機先を制されたイッロクはコリドーの侵略に出遅れて状況はますますトオラスクーラジンに有利に働きました。
 ところが順風満帆に見えたトオラスクーラジンの思惑は大いに狂います。海軍の助勢として加えていた海賊団ヴァインググバイが、帝国海軍の兵站基地(ディーポ)を陥落させるという、誰もなし得なかった偉業を達成したのです。兵站の莫大な軍事資源を手に入れたヴァインググバイは、瞬く間に威信を高めて他の海賊を平らげ、今や海賊の方がかつての主人らに政策の指図をするほどです。

イッロク宣言書国 Irrgh Manifest
 プロヴァンス宙域にある恒星間国家です。400年代初頭に星々を束ねる宣言書が調印されて以後、首都イガンフォクソ(プロヴァンス宙域 1731)を中心にして数星域を支配してきました。
 イッロクはトオラスクーラジンの仇敵で、両国は頻繁に小競り合いを続けてきました。帝国の反乱以前のトオラスクーラジンは小国に過ぎませんでしたが、1117年にトオラスクーラジンは海賊を雇い、イッロク領内を抜けて帝国へと向かう進軍路を切り開きました。これによりイッロクは事実上分断され、スピンワード側とトレイリング側が別々にコリドー宙域に乗り込む羽目になりました。
 結局トオラスクーラジンとの侵略競争では遅れを取った上に、ついにはトレイリング側が他の海賊と同様に、兵站基地を得たヴァインググバイの支配下に置かれてしまいました。ヴァインググバイは元はと言えばトオラスクーラジンの配下でしたから、この下剋上はイッロクの指導層には二重に屈辱的でした。ヴァインググバイが許せばイッロクはトオラスクーラジンの星系に報復したでしょうが、そんな訳にもいかず、現状ではコリドーの人類世界で八つ当たりするほかないのです。
(※現在のT5SSによる「1105年設定の」プロヴァンス宙域図では、「1120年設定の」国境線が反映されてしまったために、早くもイッロク領は分断されてしまっています)
(※本来のManifestには名簿や目録、伝票程度の意味しかないはずです。それでは国家名として威厳がなさすぎるので、Manifestoの方の意味である宣言書を採用しました。ただし本当に「加盟星系の名簿」程度の意味しかないのかもしれません、ヴァルグルなので)

ゾッロク連邦 Dzarrgh Federate
 ゾッロヴァイラ(プロヴァンス宙域 0224)で1090年に結成されたゾッロク連邦は、その後6年間、プロヴァンスとトゥグリッキの両宙域にまたがるように拡大を続けました。この近辺で恒星間組織が誕生するのは実に-2530年以来で、長年独立していた各星系は当初抵抗はしましたが、最終的に連邦の理念と軍事力、そして下に入れば得られる利権の方が勝りました。
 実質名ばかり、と言うにふさわしいほどの非常に緩やかな連邦政府の下で、各加盟星系は極めて高度な自治権を持ち、統一された司法制度や通貨もなく、課税すらあまり行われていません。個人の自由は制限されず、海賊行為すら公認で(国軍が行う場合すらあります)、加盟前からの文化風習もそのまま残されています。これらを指して、国家ではなく単なる地域に過ぎない、とまで言う政治学者もいます。
 反乱前の連邦は帝国の主要貿易国であり、友好関係を築いていました。しかし帝国の崩壊とコリドー艦隊の撤退は、彼らには貿易以上の利益を得る好機に映ったのです。加えて帝国領を略奪することで、反帝国の機運が高まっていた加盟星系の不満を宥めることもできます。かくして通商と外交が突然停止され、連邦軍と傘下海賊はデネブとコリドーに押し寄せました。コリドーの物流が寸断されてデネブ領域は孤立し、デネブ領域海軍や国境警備隊も少なからぬ損害を受けました。
 隣国のイッロクとの領土問題で何度か小競り合いが生じた後、1119年初頭にヴァインググバイの仲介でキラグ(同 0731)にて両政府の代表者が会談を持ちました。わずか3時間の協議の末、両国の不可侵と対帝国軍への連携が合意されました。ただ、この会談に人類が立ち会っていたことから、ヴァインググバイの背後にはデネブ関係者がいるのではないかとの疑念も生じています。

ヴァインググバイ Vaenggvae
 元々はトオラスクーラジン配下の海賊に過ぎませんでしたが、コリドー宙域の帝国兵站基地を占拠して威信を極端に高めてからは、コリドーでのあらゆる物事が頭目のラウグズーロの指先一つで動かされています。


【参考文献】
・Short Adventure 8: Memory Alpha (Game Designers' Workshop)
・Vilani & Vargr (Digest Group Publications)
・Travellers' Digest #18,#19 (Digest Group Publications)
・MegaTraveller Digest #1,#2,#3 (Digest Group Publications)
・Traveller20: The Traveller's Handbook (QuickLink Interactive)
・Planetary Survey 5: Tobibak (Steve Jackson Games)
・Planetary Survey 6: Darkmoon (Steve Jackson Games)
・Alien Module 2: Vargr (Mongoose Publishing)
・Great Rift: Book 1 (Mongoose Publishing)
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