【2016年】
前年末に17年に及ぶ歴史に幕を閉じた『GURPS Traveller』が、FFEへの版権移譲により早くも1月から電子版の販売をSJGのWarehouse23で再開しています。またFFEでは総集編CD-ROMも制作しています。CD-ROMでは他に『Traveller Hero』『Traveller Apocrypha-3』(Cargonaut製品、Marischal製品、Traveller Chronicle誌を収録)も出ています。
他には新作小説『Fate of the Kinunir』、マーク・ミラー書き下ろし小説『Agent of the Imperium』、および『トラベラー』に影響を与えたSF小説や『トラベラー』小説そのものをまとめた『The Science Fiction in Traveller』もFFEから刊行されました。小物としては『4518th Personal Identifier』も出されました。
Mongoose版『トラベラー』がついに第2版に移行しました(第1版製品群は電子版のみ継続販売されています)。ゲームシステムの改修整頓に加えて、全ページをフルカラー化するなど新『Traveller: Core Rulebook』は見事に「近代化」がされましたが、その分価格が上昇した上に、コアルール自体がこの他に『High Guard』『Central Supply Catalogue』、翌年発売の『Vehicle Handbook』に分散されたことで総費用が大きく増えてしまったことは少なからぬ批判に晒されました(『Core Rulebook』単体では遊べない、ということはありませんが)。
レフリーが持っていると便利な小ネタを集めた「Referee's Briefing」シリーズが新たに始まり、『Companies & Corporations』『Anomalies and Wonders』『Going Portside』『Mercenary Forces』がこの年に、『Incidents and Encounters』『Garden Worlds』が翌年に発売されました。今後は『Garden Worlds』のように貿易分類ごとに星系の特徴を解説していく計画もあったようですが、現時点では制作が中断されているようです。
冒険シナリオの「Adventure」シリーズは、舞台となる宙域ごとに「Reach Adventure」と「Marches Adventure」に分割されました。「Reach」シリーズでは『Marooned on Marduk』『Theories of Everything』『The Calixcuel Incident』、「March」シリーズは『High and Dry』(※過去作品『Type S』のリメイク)が発売されました。
また、『Pirates of Drinax』の(そしてトロージャン・リーチ宙域の)追加設定集として『Theev』『Torpol Cluster』が、『High Guard』の追加データ集として『Deployment Shuttle』『High Guard: Aslan』が、スピンワードマーチ宙域の設定を解説する「Spinward Marches」シリーズからは『The Bowman Arm』(Avengerの同名製品の復刻再編集版)が発売されました。
しかし、Mongooseが第2版に移行した影響は単にルールが変わるだけではありませんでした。第2版はOpen Game Licenseを不採用とし、Traveller Logo Licenseも廃止されました。代わって導入されたのが、DrivethruRPGのOneBookShelf社と共同で展開された「Community Content Programs」に基づく「Travellers' Aid Society」ライセンスです。これは〈第三帝国〉設定も含めてMongoose版『トラベラー』第2版互換製品を誰もが自由に出せるものとする画期的契約に見えましたが、版権をMongooseとOneBookShelfに移譲し、販路がDrivethruRPGに限られ、売り上げの半分が版権料となるこの新約款は、これまで〈第三帝国〉関連製品を出せなかったサードパーティ各社には何一つ利点のないものでした。
以前から試作版ルールを受け取って移行準備を着々と進めていた各社にとってこれは寝耳に水であり(Mongooseは途中から方針転換をした節があります)、かなり激しいやり取りも行われたようですが、最終的には決裂に終わりました。新約款を受け入れた既存企業は結局Jon Brazer Enterprisesだけでした(※フォーイーヴン宙域に関する規約もTASライセンスに統合されたためです)。
Open Game Licenseを採用していた旧Mongoose版『トラベラー』は、当然System Reference Document(Traveller SRD)を公開していました。とはいえさほど需要もなく、ロゴライセンス自体も開放的だったために注目を浴びることはありませんでした……この時までは。
しかしMongooseが閉鎖的となった以上、このSRDを利用した「OGL版トラベラー」がサードパーティには必要になったのです。対応が最も早かったのはGypsy Knights Gamesで、当初後方互換性を残すために第2版と第1版ことOGL版『トラベラー』の両対応で自社の「2nd Edition」製品群を出す予定だったのを、苦渋の決断でOGL版のみで展開することにしたのです。これは元々、OGL版『トラベラー』に不足していたキャラクター作成システム(※偵察局員しか作れませんでした)を『Clement Sector Core Setting Book』で補えていたからこそできた芸当でした。
そんな中、7月にSamardan Pressのジェイソン・ケンプ(Jason Kemp)が公開したのが『Cepheus Engine System Reference Document』でした。これはOGL版『トラベラー』を基にして、装備など不足部分を同じくOpen Game Licenseを採用した『Traveller20』から持ってくるなどして再構成した「Classic Era Science Fiction 2D6-Based Open Gaming System」だったのです。
実用的なルールがPay What You Want(※無料も含めて価格を自由に決定できる)で手に入り、ルール本体が初めからSRDなので自由に改造ができ(そのためPDFどころかMicrosoft Word形式も公開されました)、なおかつ版権料も要らないとあって、これをきっかけにサードパーティ各社が一挙に『Cepheus Engine』になだれ込みます。Zozer Games、DSL Ironworks、Moon Toad Publishingや、個人出版のFelbrigg Herriot、Michael Brownも自社製品を『Cepheus Engine』対応に切り替えました(このため、Zozer GamesやDSL Ironworksの一部製品は絶版となりました)。また、2010年から汎用デッキプラン集を出していたBlue Max Studiosも『Cepheus Engine』対応を標榜します。
かくしてMongoose第2版+CCP陣営と『Cepheus Engine』の「2D6 OGL Sci-Fi」陣営、そして『Traveller5』の3つに参入社が分断されることになりました。しかし幸運なことに、『トラベラー』ファンは人気や好みの大小はあれどどれも同じ『トラベラー』として扱い、コミュニティが分断されることはありませんでした。CotIは『Cepheus Engine』を『トラベラー』の1ルールとして認めて独自フォーラムを設置し、DrivethruRPGも『トラベラー』の子カテゴリとして『Cepheus Engine』を用意しています。マーク・ミラーもOGL版『トラベラー』の存在を「恩送りの表れ(pay it forward)」と肯定的に捉えているようです。
Gypsy Knights Gamesは前述の通り、既存製品を全て「2nd Edition」として増補改訂を行いつつ、Traveller Logo Licenseを外してOGL対応の製品に切り替えていきました。『Clement Sector 2nd Edition』を皮切りに、『Anderson & Felix Guide to Naval Architecture』、「Subsector Sourcebook」シリーズ、「Ships of Clement Sector」シリーズ、「21」シリーズが次々と「2nd Edition」化されています。また10月には『Cepheus Engine』を「クレメント宙域」設定に合わせて改良を施した『Clement Sector: The Rules』を刊行しています。
新規作品では海賊設定集『Skull and Crossbones』、艦船設定集「Wendy's Guide」シリーズなどが出されました。
Zozer Gamesは『Cepheus Engine』対応製品として、前年発売の『World Creator's Handbook』を改訂した『The Universal World Profile』、『Orbital』の改訂版となる『Orbital 2100』に加えて、恐竜時代への時間旅行をする子供向け設定集『Camp Cretaceous』を発行しました。
『Outer Veil』のオメル・ジョエル(Omer G. Joel)らが独立起業した新興のStellagama Publishingは、新規参入社としては初のCCPへの参加を表明してシナリオ『The Bronze Case』を投入しますが、『Cepheus Engine』の登場を受けてすぐさま離脱します。以後は『Cepheus Engine』向けに肉体蘇生ルール集『From the Ashes』、いままで有りそうで無かった汎用「宇宙警察」設定集『Space Patrol』、星域設定集『Near Space』を出しました。特に『Near Space』は『Outer Veil』でも採用した太陽系近傍4星域分の星域図とUWPデータを収めているのですが、座標・規模・大気・水界・ガスジャイアントの有無以外の全ての情報を顧客に委ね、なおかつOpen Game Licenseによって自由に改造ができ、営利非営利を問わずに「自分の設定」として公開を可能としました。これは『トラベラー』系に限らず、EN PublishingのRPG『N.E.W.』でも採用されるなど広がりを見せています。
Moon Toad Publishingは『Ship Book: Type S Scout/Courier』を出した後に『Cepheus Engine』に移行し、「Ship Files」シリーズに改題したオリジナルデッキプラン集を出していっています。この年は『RAX Type Protected Merchant』『Polixenes Class Courier』が発売されました。
一方のCCP陣営ですが、Mongooseが多数の書式テンプレートや挿絵素材を公開したものの出足は伸び悩みます。Jon Brazer Enterprisesが『D66 Compendium 2』、「Foreven Worlds」シリーズの星域設定集改訂版や、連作シナリオ「Prelude to War」の『The Rose of Death』『State of Chaos』と出し、他には『Book 10: Cosmopolite』の著者が星系設定集『Castrobancla, The City of Aliens』を公開し、オリジナルのデッキプランや小物を出す者もいましたが、他のCCP採用システム(当時は『D&D』『Cortex Plus』『Cypher System』)と比べると、この時点では盛り上がりに欠けていたのは否めませんでした。
Ad Astra Gamesは自社作品『Squadron Strike』の『トラベラー』版、『Squadron Strike: Traveller』の開発を公表し、翌年には資金調達を開始します。最終的に290人から23339ドルを集めて成功しました。これは『トラベラー』系ゲームでは初の「三次元ベクトル移動」を扱う宇宙戦闘ゲームで、小型艦を扱わずに1000トン以上の艦船同士の戦いを再現します。
製品の発送開始は2016年7月となる計画でしたが、現時点で完成はしていないようです。
【2017年】
2月14日、ローレン・ワイズマンが心臓発作で死去しました。享年65歳でした。GDW創設時の4人組で最初に天寿を全うした彼を悼んで、多くの人々が彼の偉大な功績を称えています。ちなみにSJGは訃報の中で、カードゲーム『Illuminati: New World Order』(1994年)の「Evil Geniuses for a Better Tomorrow」のカードに描かれた人物がワイズマン(と『GURPS Traveller: Starports』のジョン・フォード(John M. Ford))であることを明かしています。
マーク・ミラーはこれを受けて回想録『GROGNARD: Ruminations on 40 Years in Gaming』の発売を決め、8月から資金募集を始めました。最終的に633人から30300ドルを集めたものの、ミラーが予防的に心臓バイパス手術を受けたために10月末予定だった発送は遅れて、結局2017年内には間に合いませんでした。
またこの年、FFEはGen Conでのイベント用特典として制作した『GenCant 2017 Traveller Muster Out Cards』をDrivethruRPGで公開しています。『154th Battle Riders』腕章の発売も開始しました。
Mongooseの「Reach Adventure」シリーズの第4作目として『Last Flight of the Amuar』が発売されました。これは往年の人気シナリオ『Leviathan(リヴァイアサン)』をリメイクしたようなシナリオで、消息不明となったリヴァイアサン級アムアール号の謎を追います。また「Spinward Marches」シリーズの第2作として帝国国境付近の星系を紹介する『Lunion Shield Worlds』が出されています。
そして(発売が1年遅れましたが)入門者向けに『Traveller Starter Set』が満を持して発売されました。『Core Rulebook』を分割編集し、マーク・ミラー公認の新星域・異星人設定を盛り込んだシナリオ『The Fall of Tinath』を加えた3分冊構成となっていますが、既に『Core Rulebook』を持っている人には改めて購入する利点が少なかったため、要望を受けてすぐさま『The Fall of Tinath』を電子版のみ緊急で単独販売しています。
一大キャンペーンシナリオ『Pirates of Drinax』も、無料版の内容に加筆修正・フルカラー化を加えた280頁のシナリオ部に、『Alien Module 1: Aslan』の第2版相当となる200頁強の解説本『The Trojan Reach』、100頁の宇宙船設定集『Ships of the Reach』の2冊を加えた豪華装丁でついに発売されました。さらに追加設定集(DLC)シリーズも『Gods of Marduk』『Ship Encounters』『Harrier class Commerce Raider』『Revolution on Acrid』『Friends in Dry Places』『The Cordan Conflict』『Liberty Port』『Lions of Thebus』が次々と発売されました(が、最終巻となる『Shadows of Sindal』のみ編集の都合で翌年に積み残しとなりました)。
Mindjammer PressからはトランスヒューマンSF設定本『Mindjammer: Traveller Edition』が出されました。〈第三帝国〉の技術水準を遥かに越える技術レベル19~21の超未来設定を扱うこれは、2015年11月から資金募集が始まったFate Coreシステム版『Mindjammer: The Roleplaying Game』の追加特典として元々企画され、Mongoose第2版ルールへの対応(と版権取得)を済ませた上での発売となりました。無料体験シナリオである『Dominion』も公開されています。
前年末に開始されたHorizon Gamesによる『Traveller Customizable Card Game』への資金募集は、775人から56676ドルを集めて終了しました。文字通り『トラベラー』を題材としたデッキ編成型カードゲームであるこの作品は、運送業者や印刷業者との数々のトラブルに悩まされながらも、順次出資者への製品出荷が行われているようです。
これまで幻となっていた『Signal-GK』第6号が、そしてそれを含めて全号が4月にTraveller Wiki内で公開され、ついにダグダシャアグ宙域の資料が出揃います。さらにその後、ライブラリ・データ部分を全て集めて原著作者ジェイ・キャンベル(Jae Campbell)らDagudashaag Development Team自らが編集を行った、総計380頁強にも及ぶ『Encyclopaedia Dagudashaag』『For your eyes only』が無料公開されています(ただし星系データに関してはT5仕様に改定されています)。
Samardan Pressからは『Cepheus Engine』に欠けていた輸送機器設計ルールである『Cepheus Engine Vehicle Design System』が公開されました。旧来の設計ルールと異なり、宇宙船設計ルールと同じ形式を採用して簡単に車両を制作することができます。
Gypsy Knights Gamesは新刊投入をほぼ月刊化して「Clement Sector」の拡張を進めます。『Hub Federation Navy』『Hub Federation Ground Forces』『The Cascadia Adventures』『21 Starport Places』を「2nd Edition」化し、追加経歴部門集『Diverse Roles』、追加設定集『Wondrous Menagerie』『Tree of Life』、シナリオ『The Slide』、「Wendy's Guide」シリーズ第2~4巻、『21 Pirate Groups』を出しています。
DSL Ironworksが新展開として『Cepheus Engine』向けATU設定「Enigmatic」シリーズを開始し、第1弾として『Quick Setting 1: Event and History Generator』を発売しました。「Enigmatic」はStellagamaの『Near Space』を利用して、近未来の太陽系近傍を舞台に『2300AD』型のハードSF宇宙を構築する計画でした。しかし4月に主筆が急死したため、全ては幻のまま終わりました。
Zozer Gamesは『Orbital 2100』設定の新シナリオ『Far Horizon』と、絶版にした『Star Trader』に全面増補改訂を行って貿易商人としてだけでなく、一旅行者として、海軍士官として、偵察局の探査者として「1人のプレイヤーで」楽しめるようルール構築をした『Solo』を発売しています。また、次回作『Hostile』で採用する(※としていましたが、実際には2018年2月発売の『Zaibatsu』でした)「『Cepheus Engine』をさらにクラシック化する」ための『1970s 2D6 Retro Rules』も無償公開しました。
そしてその『Hostile』は年末に発売されました。楽天的な未来を描いた〈第三帝国〉とは正反対に、快適な惑星は地球以外にはなく(その地球すら環境汚染で荒廃しています)、太陽系外に居るのは過酷な環境と冷酷な企業の下で資源採掘や輸送に従事する労働者ばかりという悲観的(かつ現実的)な「80年代SFの」未来像を提示します。
Stellagama Publishingは、長年構想を温め続けていた新設定集『These Stars Are Ours!』、その追加資料『50 Wonders of the Reticulan Empire』、シナリオ『Borderlands Adventure 1: Wreck in the Ring』を発売しました。人類は一度は異星人に征服されたものの異星技術を吸収して反乱を起こし、太陽系周辺星域に星間国家を打ち立てたところから始まるATU設定で、星系の配置は同社の『Near Space』を使用しています。また、TSAO設定を前提としつつも汎用の超能力ルール集『Variant Psionics for the Cepheus Engine』も年末に出されました。
おそらくSpica Publishingから衣替えしたと思われるUniversal Machine Publicationsが、この年4月から表立って活動を開始しました(実際はSpicaが変調をきたした2014年から活動していたようですが)。「2d6 SF SRD(ことTraveller SRD)」のキャラクター作成ルールを補間する『Basic Character Generation』『Physical Appearance』『Family Background』『Graduate School』『University』を出していたこの会社は、3月以降『Advantage and Disadvantage (2e)』『Skills List (2e)(1e)(2d6)』と、名前こそ伏せてはいるものの『トラベラー』系ルールの「まとめ」を次々と公開し、さらに『Scouts』という偵察局関連ルール集も出しています。
彼らはこれを皮切りに経歴別の本を出し続け、最終的に「The Universal Machine Science Fiction Role-playing Game System」にまとめ上げる構想を持っていたようですが、8月以降活動は途絶えています。
2013年から『2300AD』の無料誌『Colonial Times』(最新号は2017年発行の第7号)を出していたStygian Fox Publishingは、シナリオ『A Life Worth Living』で『Cepheus Engine』に参入しました。このシナリオは独自の近未来地球近傍設定「The Near Heavens」が使用されています。
その他、Moon Toad Publishingは「Ship Files」シリーズの『Atticus Class Freelancer』『DeVass Class Private Starship』を出し、Michael Brownは週刊よりも早い間隔(早ければ日刊)で多くのショートシナリオを(中には西部劇設定の異色作も)、Pyromancer Publishingは数々のデッキプランを、Surreal Estate Gamesはスチームパンク風星系設定『World Guide: Zaonia』を、Thunderegg Productionsは『Easy Settlements』を出しています。長らく『トラベラー』での活動を休止していた13Mann Verlagも10月1日付で担当者の交代と、ドイツ語版Traveller SRDを基調としての再始動を予告しました(同時に今後英訳展開を行わないことも明言されています)(※しかし翌年初頭に新担当者の辞任が発表されたようです)。また、FSpace Publicationsも再び参入しています。
CCP陣営の方もようやく目玉である〈第三帝国〉設定の製品が揃い始めます。特に精力的なのがMarch Harrier Publishingで、シナリオ『Two Days on Carsten』『See How They Run』『Eve of Rebellion』を出しています。中でも『Eve of Rebellion』は、反乱前夜の帝国首都を舞台にストレフォン皇帝、デュリナー大公、ヴァリアン皇子、ルカン皇子、イフェジニア皇女をそれぞれ演じるプレイヤー同士で権力闘争を繰り広げるという、他に類を見ない構成となっています。
他には新規参入のEl Cheapo Productsが「Traveller Paper Miniatures」シリーズを開始し、『Humaniti Security』『Imperial Marines(全3作)』『Adventurers(全3作)』『Vargr Pirates』『Belters(全2作)』と立て続けにペーパーフィギュアを出し、その他Jon Brazer Enterprisesの「Foreven Worlds」シリーズも続刊され、いくつかの個人出版社がデッキプラン集を展開しています。
そしてこの40周年の年を締めくくるように、BITSから『The Traveller Bibliography』が発売されました。これは著者ティモシー・コリンソン(Timothy Collinson)の所有する約二千点に及ぶ『トラベラー』関連書籍を全てまとめたもので、1999年発売の初版、2010年にUK TravConで配布された第2版に続く、最新の第3版となっています。
【2018年~】
前述の通り、現時点で制作されている『トラベラー』は3つに分かれています。
まず、マーク・ミラー率いるFFEの『Traveller5』ですが、新作情報はおろかサードパーティの参入情報もありません。唯一参加していたグレゴリー・リーも2017年に未完成の原稿(「Cirque: The Usual Suspects」)を遺したまま死去してしまい、T5路線が今後発展する望みはかなり薄くなったと思われます。
マーク・ミラー本人は「T6」の開発を否定していますが、『Traveller8』が製作中であることは認めています(随分前から商標も押さえていました)。この「8」とは「8歳児向け」を意味し、子供でも楽しめる入門者向けのシステムとなるようです。また『T5 Players Manual』を出してルール面のサポート(簡略化?)を行う計画もあるようです。
まだ公式には発表されていませんが、T5は将来的には「Galaxiad」という超未来文明設定に進むと思われています。これは帝国暦1900年代を舞台にした「リジャイナのホロテレビ局制作の連続ドラマ」というメタ構造になっている新設定で、ジャンプ機関に代わるゲート技術によって旅の範囲は銀河系全体に広がっています。『Traveller5』で既にルールや伏線は用意されており、いつ実現するのかは全くの未定ですが、徐々に設定構築が進んでいる気配はあります。
(※ちなみに平行世界の関係にある『GURPS Traveller』の「Lorenverse」にも既知宙域文明を崩壊させる要素がそのまま存在するため、結局帝国暦1400年頃には双方の時間軸は収束して「Galaxiad」に向かうとされています)
Mongooseの『トラベラー』第2版は、「The Great Rift」シリーズで大裂溝付近の設定やシナリオを展開し、これと『Pirates of Drinax』に加えて『Behind the Claw』を投入してデネブ領域全体の設定を再度固めてから、いよいよ「第五次辺境戦争」が開幕となります。今後3年をかけて新シナリオや改訂版エイリアン・モジュールなど、様々な製品が展開される計画となっています。その他新ボックスセットなど、次の10年を見据えた新展開が数々予告されています。
また第2版ルールに対応した『2300AD』も発売こそ遅れていますが、再起動に向けて開発が続いています。
そして『Cepheus Engine』。こちらは様々なサードパーティが様々な宇宙設定を展開しており、一風変わったSF宇宙を楽しむことができます。『Clement Sector』『These Stars are Ours!』『Hostile』も新作投入が続けられる見込みですし、噂段階ですが『Twilight Sector』『Outer Veil』の復活や、新規参入社の話も聞こえており、〈第三帝国〉に飽き足らない旅人の拠り所として一大勢力であり続けるのは間違いなさそうです。
ちなみにウォーゲーム関連では、Steve Jackson Gamesが28年越しの念願叶ってようやく『Triplanetary』の復刻に着手し、日本のBonsai Gamesからは『インペリウム セカンドエディション日本語版』の再販がなされるようです。
形を、出版社を、そして名前すら変えてもその精神は引き継がれてきた『トラベラー』。RPG界を席巻することはもはやないにしても、来たる50周年、そしてその先も古き良き名作として愛され、受け継がれていくことでしょう。
そして、旅人はゆく――
【参考文献】
The Future of Traveller (Gary L. Thomas, Travellers' Digest #7, 1986)
A Decade of Traveller (Challenge #29, 1987)
Keith Brothers Interview (Rob Caswell, MegaTraveller Journal #3, 1993)
Whither (NOT to be confused with "Wither") Traveller? (David Nilsen, Challenge #77, 1995)
The Big List of Classic Traveller Products (Joe Walsh, 1999)
Traveller 4: What Might Have Been... (Stuart L. Dollar, 1999)
A Backdrop of Stars (Craig Lytton, 2000)
Questions for Dave (David Nilsen, CotI, 2004)
Players' Guide to MegaTraveller (Far Future Enterprises, 2005)
The Road Not Travell(er)ed (Hunter Gordon, CotI, 2008)
Interview with Marc Miller (Theodore Beale, Black Gate, 2010)
Guide to Classic Traveller (Far Future Enterprises, 2010)
A Perpetual Traveller - Marc Miller (Allen Varney, the Escapist, 2010)
A Look at the Notaries of 2300AD & GDW (Charles E. Gannon, Colonial Times #1, 2013)
Designers & Dragons (Shannon Appelcline, Evil Hat Productions, 2013)
Hi everyone. I'm Charles E. Gannon, (r/books, 2016)
Mr.Miller's Remarks (E.T. Smith, Trollbones, 2017)
Interview with Marc Miller (Michael Wolf, Stargazer's World, 2017)
13Mann Verlag
BITS UK Limited
BoardGameGeek
Club TUBG
CollectingCitadelMiniatures Wiki
Internet Archives
Kickstarter
Lost Minis Wiki
Mongoose Publishing
RPGnet
Traveller Wiki
Wayne's Books
Wikipedia
前年末に17年に及ぶ歴史に幕を閉じた『GURPS Traveller』が、FFEへの版権移譲により早くも1月から電子版の販売をSJGのWarehouse23で再開しています。またFFEでは総集編CD-ROMも制作しています。CD-ROMでは他に『Traveller Hero』『Traveller Apocrypha-3』(Cargonaut製品、Marischal製品、Traveller Chronicle誌を収録)も出ています。
他には新作小説『Fate of the Kinunir』、マーク・ミラー書き下ろし小説『Agent of the Imperium』、および『トラベラー』に影響を与えたSF小説や『トラベラー』小説そのものをまとめた『The Science Fiction in Traveller』もFFEから刊行されました。小物としては『4518th Personal Identifier』も出されました。

レフリーが持っていると便利な小ネタを集めた「Referee's Briefing」シリーズが新たに始まり、『Companies & Corporations』『Anomalies and Wonders』『Going Portside』『Mercenary Forces』がこの年に、『Incidents and Encounters』『Garden Worlds』が翌年に発売されました。今後は『Garden Worlds』のように貿易分類ごとに星系の特徴を解説していく計画もあったようですが、現時点では制作が中断されているようです。
冒険シナリオの「Adventure」シリーズは、舞台となる宙域ごとに「Reach Adventure」と「Marches Adventure」に分割されました。「Reach」シリーズでは『Marooned on Marduk』『Theories of Everything』『The Calixcuel Incident』、「March」シリーズは『High and Dry』(※過去作品『Type S』のリメイク)が発売されました。
また、『Pirates of Drinax』の(そしてトロージャン・リーチ宙域の)追加設定集として『Theev』『Torpol Cluster』が、『High Guard』の追加データ集として『Deployment Shuttle』『High Guard: Aslan』が、スピンワードマーチ宙域の設定を解説する「Spinward Marches」シリーズからは『The Bowman Arm』(Avengerの同名製品の復刻再編集版)が発売されました。
しかし、Mongooseが第2版に移行した影響は単にルールが変わるだけではありませんでした。第2版はOpen Game Licenseを不採用とし、Traveller Logo Licenseも廃止されました。代わって導入されたのが、DrivethruRPGのOneBookShelf社と共同で展開された「Community Content Programs」に基づく「Travellers' Aid Society」ライセンスです。これは〈第三帝国〉設定も含めてMongoose版『トラベラー』第2版互換製品を誰もが自由に出せるものとする画期的契約に見えましたが、版権をMongooseとOneBookShelfに移譲し、販路がDrivethruRPGに限られ、売り上げの半分が版権料となるこの新約款は、これまで〈第三帝国〉関連製品を出せなかったサードパーティ各社には何一つ利点のないものでした。
以前から試作版ルールを受け取って移行準備を着々と進めていた各社にとってこれは寝耳に水であり(Mongooseは途中から方針転換をした節があります)、かなり激しいやり取りも行われたようですが、最終的には決裂に終わりました。新約款を受け入れた既存企業は結局Jon Brazer Enterprisesだけでした(※フォーイーヴン宙域に関する規約もTASライセンスに統合されたためです)。
Open Game Licenseを採用していた旧Mongoose版『トラベラー』は、当然System Reference Document(Traveller SRD)を公開していました。とはいえさほど需要もなく、ロゴライセンス自体も開放的だったために注目を浴びることはありませんでした……この時までは。
しかしMongooseが閉鎖的となった以上、このSRDを利用した「OGL版トラベラー」がサードパーティには必要になったのです。対応が最も早かったのはGypsy Knights Gamesで、当初後方互換性を残すために第2版と第1版ことOGL版『トラベラー』の両対応で自社の「2nd Edition」製品群を出す予定だったのを、苦渋の決断でOGL版のみで展開することにしたのです。これは元々、OGL版『トラベラー』に不足していたキャラクター作成システム(※偵察局員しか作れませんでした)を『Clement Sector Core Setting Book』で補えていたからこそできた芸当でした。

実用的なルールがPay What You Want(※無料も含めて価格を自由に決定できる)で手に入り、ルール本体が初めからSRDなので自由に改造ができ(そのためPDFどころかMicrosoft Word形式も公開されました)、なおかつ版権料も要らないとあって、これをきっかけにサードパーティ各社が一挙に『Cepheus Engine』になだれ込みます。Zozer Games、DSL Ironworks、Moon Toad Publishingや、個人出版のFelbrigg Herriot、Michael Brownも自社製品を『Cepheus Engine』対応に切り替えました(このため、Zozer GamesやDSL Ironworksの一部製品は絶版となりました)。また、2010年から汎用デッキプラン集を出していたBlue Max Studiosも『Cepheus Engine』対応を標榜します。
かくしてMongoose第2版+CCP陣営と『Cepheus Engine』の「2D6 OGL Sci-Fi」陣営、そして『Traveller5』の3つに参入社が分断されることになりました。しかし幸運なことに、『トラベラー』ファンは人気や好みの大小はあれどどれも同じ『トラベラー』として扱い、コミュニティが分断されることはありませんでした。CotIは『Cepheus Engine』を『トラベラー』の1ルールとして認めて独自フォーラムを設置し、DrivethruRPGも『トラベラー』の子カテゴリとして『Cepheus Engine』を用意しています。マーク・ミラーもOGL版『トラベラー』の存在を「恩送りの表れ(pay it forward)」と肯定的に捉えているようです。
Gypsy Knights Gamesは前述の通り、既存製品を全て「2nd Edition」として増補改訂を行いつつ、Traveller Logo Licenseを外してOGL対応の製品に切り替えていきました。『Clement Sector 2nd Edition』を皮切りに、『Anderson & Felix Guide to Naval Architecture』、「Subsector Sourcebook」シリーズ、「Ships of Clement Sector」シリーズ、「21」シリーズが次々と「2nd Edition」化されています。また10月には『Cepheus Engine』を「クレメント宙域」設定に合わせて改良を施した『Clement Sector: The Rules』を刊行しています。
新規作品では海賊設定集『Skull and Crossbones』、艦船設定集「Wendy's Guide」シリーズなどが出されました。
Zozer Gamesは『Cepheus Engine』対応製品として、前年発売の『World Creator's Handbook』を改訂した『The Universal World Profile』、『Orbital』の改訂版となる『Orbital 2100』に加えて、恐竜時代への時間旅行をする子供向け設定集『Camp Cretaceous』を発行しました。
『Outer Veil』のオメル・ジョエル(Omer G. Joel)らが独立起業した新興のStellagama Publishingは、新規参入社としては初のCCPへの参加を表明してシナリオ『The Bronze Case』を投入しますが、『Cepheus Engine』の登場を受けてすぐさま離脱します。以後は『Cepheus Engine』向けに肉体蘇生ルール集『From the Ashes』、いままで有りそうで無かった汎用「宇宙警察」設定集『Space Patrol』、星域設定集『Near Space』を出しました。特に『Near Space』は『Outer Veil』でも採用した太陽系近傍4星域分の星域図とUWPデータを収めているのですが、座標・規模・大気・水界・ガスジャイアントの有無以外の全ての情報を顧客に委ね、なおかつOpen Game Licenseによって自由に改造ができ、営利非営利を問わずに「自分の設定」として公開を可能としました。これは『トラベラー』系に限らず、EN PublishingのRPG『N.E.W.』でも採用されるなど広がりを見せています。
Moon Toad Publishingは『Ship Book: Type S Scout/Courier』を出した後に『Cepheus Engine』に移行し、「Ship Files」シリーズに改題したオリジナルデッキプラン集を出していっています。この年は『RAX Type Protected Merchant』『Polixenes Class Courier』が発売されました。
一方のCCP陣営ですが、Mongooseが多数の書式テンプレートや挿絵素材を公開したものの出足は伸び悩みます。Jon Brazer Enterprisesが『D66 Compendium 2』、「Foreven Worlds」シリーズの星域設定集改訂版や、連作シナリオ「Prelude to War」の『The Rose of Death』『State of Chaos』と出し、他には『Book 10: Cosmopolite』の著者が星系設定集『Castrobancla, The City of Aliens』を公開し、オリジナルのデッキプランや小物を出す者もいましたが、他のCCP採用システム(当時は『D&D』『Cortex Plus』『Cypher System』)と比べると、この時点では盛り上がりに欠けていたのは否めませんでした。
Ad Astra Gamesは自社作品『Squadron Strike』の『トラベラー』版、『Squadron Strike: Traveller』の開発を公表し、翌年には資金調達を開始します。最終的に290人から23339ドルを集めて成功しました。これは『トラベラー』系ゲームでは初の「三次元ベクトル移動」を扱う宇宙戦闘ゲームで、小型艦を扱わずに1000トン以上の艦船同士の戦いを再現します。
製品の発送開始は2016年7月となる計画でしたが、現時点で完成はしていないようです。
【2017年】
2月14日、ローレン・ワイズマンが心臓発作で死去しました。享年65歳でした。GDW創設時の4人組で最初に天寿を全うした彼を悼んで、多くの人々が彼の偉大な功績を称えています。ちなみにSJGは訃報の中で、カードゲーム『Illuminati: New World Order』(1994年)の「Evil Geniuses for a Better Tomorrow」のカードに描かれた人物がワイズマン(と『GURPS Traveller: Starports』のジョン・フォード(John M. Ford))であることを明かしています。
マーク・ミラーはこれを受けて回想録『GROGNARD: Ruminations on 40 Years in Gaming』の発売を決め、8月から資金募集を始めました。最終的に633人から30300ドルを集めたものの、ミラーが予防的に心臓バイパス手術を受けたために10月末予定だった発送は遅れて、結局2017年内には間に合いませんでした。
またこの年、FFEはGen Conでのイベント用特典として制作した『GenCant 2017 Traveller Muster Out Cards』をDrivethruRPGで公開しています。『154th Battle Riders』腕章の発売も開始しました。
Mongooseの「Reach Adventure」シリーズの第4作目として『Last Flight of the Amuar』が発売されました。これは往年の人気シナリオ『Leviathan(リヴァイアサン)』をリメイクしたようなシナリオで、消息不明となったリヴァイアサン級アムアール号の謎を追います。また「Spinward Marches」シリーズの第2作として帝国国境付近の星系を紹介する『Lunion Shield Worlds』が出されています。
そして(発売が1年遅れましたが)入門者向けに『Traveller Starter Set』が満を持して発売されました。『Core Rulebook』を分割編集し、マーク・ミラー公認の新星域・異星人設定を盛り込んだシナリオ『The Fall of Tinath』を加えた3分冊構成となっていますが、既に『Core Rulebook』を持っている人には改めて購入する利点が少なかったため、要望を受けてすぐさま『The Fall of Tinath』を電子版のみ緊急で単独販売しています。
一大キャンペーンシナリオ『Pirates of Drinax』も、無料版の内容に加筆修正・フルカラー化を加えた280頁のシナリオ部に、『Alien Module 1: Aslan』の第2版相当となる200頁強の解説本『The Trojan Reach』、100頁の宇宙船設定集『Ships of the Reach』の2冊を加えた豪華装丁でついに発売されました。さらに追加設定集(DLC)シリーズも『Gods of Marduk』『Ship Encounters』『Harrier class Commerce Raider』『Revolution on Acrid』『Friends in Dry Places』『The Cordan Conflict』『Liberty Port』『Lions of Thebus』が次々と発売されました(が、最終巻となる『Shadows of Sindal』のみ編集の都合で翌年に積み残しとなりました)。
Mindjammer PressからはトランスヒューマンSF設定本『Mindjammer: Traveller Edition』が出されました。〈第三帝国〉の技術水準を遥かに越える技術レベル19~21の超未来設定を扱うこれは、2015年11月から資金募集が始まったFate Coreシステム版『Mindjammer: The Roleplaying Game』の追加特典として元々企画され、Mongoose第2版ルールへの対応(と版権取得)を済ませた上での発売となりました。無料体験シナリオである『Dominion』も公開されています。
前年末に開始されたHorizon Gamesによる『Traveller Customizable Card Game』への資金募集は、775人から56676ドルを集めて終了しました。文字通り『トラベラー』を題材としたデッキ編成型カードゲームであるこの作品は、運送業者や印刷業者との数々のトラブルに悩まされながらも、順次出資者への製品出荷が行われているようです。
これまで幻となっていた『Signal-GK』第6号が、そしてそれを含めて全号が4月にTraveller Wiki内で公開され、ついにダグダシャアグ宙域の資料が出揃います。さらにその後、ライブラリ・データ部分を全て集めて原著作者ジェイ・キャンベル(Jae Campbell)らDagudashaag Development Team自らが編集を行った、総計380頁強にも及ぶ『Encyclopaedia Dagudashaag』『For your eyes only』が無料公開されています(ただし星系データに関してはT5仕様に改定されています)。
Samardan Pressからは『Cepheus Engine』に欠けていた輸送機器設計ルールである『Cepheus Engine Vehicle Design System』が公開されました。旧来の設計ルールと異なり、宇宙船設計ルールと同じ形式を採用して簡単に車両を制作することができます。
Gypsy Knights Gamesは新刊投入をほぼ月刊化して「Clement Sector」の拡張を進めます。『Hub Federation Navy』『Hub Federation Ground Forces』『The Cascadia Adventures』『21 Starport Places』を「2nd Edition」化し、追加経歴部門集『Diverse Roles』、追加設定集『Wondrous Menagerie』『Tree of Life』、シナリオ『The Slide』、「Wendy's Guide」シリーズ第2~4巻、『21 Pirate Groups』を出しています。
DSL Ironworksが新展開として『Cepheus Engine』向けATU設定「Enigmatic」シリーズを開始し、第1弾として『Quick Setting 1: Event and History Generator』を発売しました。「Enigmatic」はStellagamaの『Near Space』を利用して、近未来の太陽系近傍を舞台に『2300AD』型のハードSF宇宙を構築する計画でした。しかし4月に主筆が急死したため、全ては幻のまま終わりました。
Zozer Gamesは『Orbital 2100』設定の新シナリオ『Far Horizon』と、絶版にした『Star Trader』に全面増補改訂を行って貿易商人としてだけでなく、一旅行者として、海軍士官として、偵察局の探査者として「1人のプレイヤーで」楽しめるようルール構築をした『Solo』を発売しています。また、次回作『Hostile』で採用する(※としていましたが、実際には2018年2月発売の『Zaibatsu』でした)「『Cepheus Engine』をさらにクラシック化する」ための『1970s 2D6 Retro Rules』も無償公開しました。
そしてその『Hostile』は年末に発売されました。楽天的な未来を描いた〈第三帝国〉とは正反対に、快適な惑星は地球以外にはなく(その地球すら環境汚染で荒廃しています)、太陽系外に居るのは過酷な環境と冷酷な企業の下で資源採掘や輸送に従事する労働者ばかりという悲観的(かつ現実的)な「80年代SFの」未来像を提示します。
Stellagama Publishingは、長年構想を温め続けていた新設定集『These Stars Are Ours!』、その追加資料『50 Wonders of the Reticulan Empire』、シナリオ『Borderlands Adventure 1: Wreck in the Ring』を発売しました。人類は一度は異星人に征服されたものの異星技術を吸収して反乱を起こし、太陽系周辺星域に星間国家を打ち立てたところから始まるATU設定で、星系の配置は同社の『Near Space』を使用しています。また、TSAO設定を前提としつつも汎用の超能力ルール集『Variant Psionics for the Cepheus Engine』も年末に出されました。
おそらくSpica Publishingから衣替えしたと思われるUniversal Machine Publicationsが、この年4月から表立って活動を開始しました(実際はSpicaが変調をきたした2014年から活動していたようですが)。「2d6 SF SRD(ことTraveller SRD)」のキャラクター作成ルールを補間する『Basic Character Generation』『Physical Appearance』『Family Background』『Graduate School』『University』を出していたこの会社は、3月以降『Advantage and Disadvantage (2e)』『Skills List (2e)(1e)(2d6)』と、名前こそ伏せてはいるものの『トラベラー』系ルールの「まとめ」を次々と公開し、さらに『Scouts』という偵察局関連ルール集も出しています。
彼らはこれを皮切りに経歴別の本を出し続け、最終的に「The Universal Machine Science Fiction Role-playing Game System」にまとめ上げる構想を持っていたようですが、8月以降活動は途絶えています。
2013年から『2300AD』の無料誌『Colonial Times』(最新号は2017年発行の第7号)を出していたStygian Fox Publishingは、シナリオ『A Life Worth Living』で『Cepheus Engine』に参入しました。このシナリオは独自の近未来地球近傍設定「The Near Heavens」が使用されています。
その他、Moon Toad Publishingは「Ship Files」シリーズの『Atticus Class Freelancer』『DeVass Class Private Starship』を出し、Michael Brownは週刊よりも早い間隔(早ければ日刊)で多くのショートシナリオを(中には西部劇設定の異色作も)、Pyromancer Publishingは数々のデッキプランを、Surreal Estate Gamesはスチームパンク風星系設定『World Guide: Zaonia』を、Thunderegg Productionsは『Easy Settlements』を出しています。長らく『トラベラー』での活動を休止していた13Mann Verlagも10月1日付で担当者の交代と、ドイツ語版Traveller SRDを基調としての再始動を予告しました(同時に今後英訳展開を行わないことも明言されています)(※しかし翌年初頭に新担当者の辞任が発表されたようです)。また、FSpace Publicationsも再び参入しています。
CCP陣営の方もようやく目玉である〈第三帝国〉設定の製品が揃い始めます。特に精力的なのがMarch Harrier Publishingで、シナリオ『Two Days on Carsten』『See How They Run』『Eve of Rebellion』を出しています。中でも『Eve of Rebellion』は、反乱前夜の帝国首都を舞台にストレフォン皇帝、デュリナー大公、ヴァリアン皇子、ルカン皇子、イフェジニア皇女をそれぞれ演じるプレイヤー同士で権力闘争を繰り広げるという、他に類を見ない構成となっています。
他には新規参入のEl Cheapo Productsが「Traveller Paper Miniatures」シリーズを開始し、『Humaniti Security』『Imperial Marines(全3作)』『Adventurers(全3作)』『Vargr Pirates』『Belters(全2作)』と立て続けにペーパーフィギュアを出し、その他Jon Brazer Enterprisesの「Foreven Worlds」シリーズも続刊され、いくつかの個人出版社がデッキプラン集を展開しています。
そしてこの40周年の年を締めくくるように、BITSから『The Traveller Bibliography』が発売されました。これは著者ティモシー・コリンソン(Timothy Collinson)の所有する約二千点に及ぶ『トラベラー』関連書籍を全てまとめたもので、1999年発売の初版、2010年にUK TravConで配布された第2版に続く、最新の第3版となっています。
【2018年~】
前述の通り、現時点で制作されている『トラベラー』は3つに分かれています。
まず、マーク・ミラー率いるFFEの『Traveller5』ですが、新作情報はおろかサードパーティの参入情報もありません。唯一参加していたグレゴリー・リーも2017年に未完成の原稿(「Cirque: The Usual Suspects」)を遺したまま死去してしまい、T5路線が今後発展する望みはかなり薄くなったと思われます。
マーク・ミラー本人は「T6」の開発を否定していますが、『Traveller8』が製作中であることは認めています(随分前から商標も押さえていました)。この「8」とは「8歳児向け」を意味し、子供でも楽しめる入門者向けのシステムとなるようです。また『T5 Players Manual』を出してルール面のサポート(簡略化?)を行う計画もあるようです。
まだ公式には発表されていませんが、T5は将来的には「Galaxiad」という超未来文明設定に進むと思われています。これは帝国暦1900年代を舞台にした「リジャイナのホロテレビ局制作の連続ドラマ」というメタ構造になっている新設定で、ジャンプ機関に代わるゲート技術によって旅の範囲は銀河系全体に広がっています。『Traveller5』で既にルールや伏線は用意されており、いつ実現するのかは全くの未定ですが、徐々に設定構築が進んでいる気配はあります。
(※ちなみに平行世界の関係にある『GURPS Traveller』の「Lorenverse」にも既知宙域文明を崩壊させる要素がそのまま存在するため、結局帝国暦1400年頃には双方の時間軸は収束して「Galaxiad」に向かうとされています)
Mongooseの『トラベラー』第2版は、「The Great Rift」シリーズで大裂溝付近の設定やシナリオを展開し、これと『Pirates of Drinax』に加えて『Behind the Claw』を投入してデネブ領域全体の設定を再度固めてから、いよいよ「第五次辺境戦争」が開幕となります。今後3年をかけて新シナリオや改訂版エイリアン・モジュールなど、様々な製品が展開される計画となっています。その他新ボックスセットなど、次の10年を見据えた新展開が数々予告されています。
また第2版ルールに対応した『2300AD』も発売こそ遅れていますが、再起動に向けて開発が続いています。
そして『Cepheus Engine』。こちらは様々なサードパーティが様々な宇宙設定を展開しており、一風変わったSF宇宙を楽しむことができます。『Clement Sector』『These Stars are Ours!』『Hostile』も新作投入が続けられる見込みですし、噂段階ですが『Twilight Sector』『Outer Veil』の復活や、新規参入社の話も聞こえており、〈第三帝国〉に飽き足らない旅人の拠り所として一大勢力であり続けるのは間違いなさそうです。
ちなみにウォーゲーム関連では、Steve Jackson Gamesが28年越しの念願叶ってようやく『Triplanetary』の復刻に着手し、日本のBonsai Gamesからは『インペリウム セカンドエディション日本語版』の再販がなされるようです。
形を、出版社を、そして名前すら変えてもその精神は引き継がれてきた『トラベラー』。RPG界を席巻することはもはやないにしても、来たる50周年、そしてその先も古き良き名作として愛され、受け継がれていくことでしょう。
「古い版の『トラベラー』は、それらを遊び、それらの資料の思い出を持つ人々のためにあり続ける。一方、新しい人にとっては『Traveller5』かMongoose版がある。私はいずれかのプレイヤーがもう片方も遊び、最終的には双方が彼らの楽しみに加わるだろうと思う」
(マーク・ミラー)
そして、旅人はゆく――
【参考文献】
The Future of Traveller (Gary L. Thomas, Travellers' Digest #7, 1986)
A Decade of Traveller (Challenge #29, 1987)
Keith Brothers Interview (Rob Caswell, MegaTraveller Journal #3, 1993)
Whither (NOT to be confused with "Wither") Traveller? (David Nilsen, Challenge #77, 1995)
The Big List of Classic Traveller Products (Joe Walsh, 1999)
Traveller 4: What Might Have Been... (Stuart L. Dollar, 1999)
A Backdrop of Stars (Craig Lytton, 2000)
Questions for Dave (David Nilsen, CotI, 2004)
Players' Guide to MegaTraveller (Far Future Enterprises, 2005)
The Road Not Travell(er)ed (Hunter Gordon, CotI, 2008)
Interview with Marc Miller (Theodore Beale, Black Gate, 2010)
Guide to Classic Traveller (Far Future Enterprises, 2010)
A Perpetual Traveller - Marc Miller (Allen Varney, the Escapist, 2010)
A Look at the Notaries of 2300AD & GDW (Charles E. Gannon, Colonial Times #1, 2013)
Designers & Dragons (Shannon Appelcline, Evil Hat Productions, 2013)
Hi everyone. I'm Charles E. Gannon, (r/books, 2016)
Mr.Miller's Remarks (E.T. Smith, Trollbones, 2017)
Interview with Marc Miller (Michael Wolf, Stargazer's World, 2017)
13Mann Verlag
BITS UK Limited
BoardGameGeek
Club TUBG
CollectingCitadelMiniatures Wiki
Internet Archives
Kickstarter
Lost Minis Wiki
Mongoose Publishing
RPGnet
Traveller Wiki
Wayne's Books
Wikipedia
今もトラベラーが続いていると言う事に
興奮を覚えます。
記事を作っていただき有難う御座いました。
40年の間に消えていったRPGも多い中、細々ながらも新作が作られ続けている、というのは恵まれているんでしょうねぇ。私もまだまだがんばりますよ。
Ad Astra GamesのSquadron Strike :Travellerが,
PDFでDrivethru RPGとWARGAME VAULTで発売になっています。
意図しないで、完全版を購入してしまいましたが、20ドルでした。
ルールだけなら、12ドル??
複数種の販売物の区分けがよくわかりませんし、完全版の中身を見ると、おそらく別売りと思われるプレイ補助の物が重要そうなので、完全版を購入したほうが無難だと思われます。
この記事の当時は検索したときまだ販売になっていなかったと思われますし、最近ミニチュアルールを購入したときも見かけませんでしたので、ごく最近のような気もするのですが、
ファイルを見ますと、Squadron Strike:travelle second edition。
ファイル作成日時が2018年5月26日(これがボード版完成日?)と、10月2日(PDF化?)なっています。
AVIDシステムという三次元機動が、混乱してしまい。
多分、それが普通にするよりもプレイしやすく工夫されているんでしょうが。
現代空戦のBirds of preyとかリアル系宇宙船戦闘のAttack Vectorにも採用されているのですが、これで挫折して2つはよく読んでいないのです。
日本語だったら理解できるのかもと思うのですが。
一応頑張ってこれは読んでみようと思います。
そういうゲームがあるかどうかわかりませんが、これをプレイの補助に使うのはお勧めできません。
当然ゲームとして優れていないからではなく、真剣にトラベラーの宇宙戦闘だけしたい人向きと思われます
実際にPDF版が発売されたのは、各種記述からおそらく10月27日頃と思われますが、あのゲームのキモは三次元座標を表現するあのプラスチックの駒じゃないかと思うので、果たしてPDFだけ買って大丈夫なのかと心配に…(汗)。
ボードゲーム界隈では先日マングースから『Vanguard: Boarding Actions in the Fifth Frontier War』の発表がありましたが、あれもなぜかマス目が正方形じゃないという不思議ゲームに仕上がっているようで不安6割といったところです。