宇宙の歩き方

The Astrogators' Guide to the Charted Space.

宙域散歩(番外編) SuSAG

2012-05-16 | Traveller
 トラベラーの第三帝国の設定を読んでいると、至る所で目にするSuSAGの文字。その活動は良く言って怪しげ、普通ならどう見ても悪役、といった感じなのですが(笑)、幸いにしてこの会社に関してはその実態を示す資料が豊富でしたので、今回はちょっと脇道にそれて帝国屈指のメガコーポレーションの解説をしたいと思います。
 情報は『プレイヤー向け』の概要と、『レフリー向け』の解説に分けました。プレイヤー向けにはライブラリ・データ等で一般に知られていることを書きましたが、レフリー向けではネタバレを含む情報も含まれていますので、読む際は注意してください。
 まあ公然の秘密、ってやつかもしれませんが(笑)。


【プレイヤー向け情報】
 帝国のメガコーポレーションであるシュナーマン・ウント・ゾーンAG(Schunamann und Sohn AG)ことSuSAGは、化学、製薬、遺伝子工学など幅広い分野で活動しています。中でも抗老化薬(Anagathics)の主要なメーカーです。一方で、生物化学兵器事業の安全性の評判が悪いため、危険な製造工場や実験ステーションを僻地や無人小惑星に建設しているにもかかわらず、多くの地域であまり好かれていません。工場への抗議活動が広がる一方、その製品は非常に貴重であるため、会社は帝国正規軍と同等のTL12~14の装備や訓練を施した保安部隊を持っています。
 SuSAGは、帝国暦252年に創立者グスタフ・シュナーマン(Gustav Schunamann)が、自ら編み出した超能力ドラッグの精製工程の特許料を使い、破綻したシレア系企業を継承する形で設立されました(そのため、古風なAG(※ドイツ語で株式会社を意味するAktiengesellschaftの略)という名前を使い続けています)。800年代の超能力弾圧と、超能力ドラッグの違法宣言により、帝国内でそれらの製造に従事する全ての工場は閉鎖され、SuSAGはひどく損害を受けましたが、幸いにも、その他の分野の活動で会社を立て直すことができました。
 SuSAGには、後進世界で医療行為を装って危険な無認可薬の人体実験を行なっている疑惑がかけられていますが、確固たる証拠はありません。

株式保有比率:シュナーマン家 52%、帝国皇室 2.5%、オルタレ・エ・シェ 9%、他企業 23.5%、自社保有 7%、その他 6%


【レフリー向け情報】
◆歴史
 有限責任帝国勅許会社(Limited liability Imperial Charter)シュナーマン・ウント・ゾーンAGは、帝国暦252年に生物化学工学教授グスタフ・シュナーマンと、彼の息子(ゾーン)である医学博士ラインハルトによって設立されました。
 その数年前、父シュナーマンは個人の研究を進めるために帝国大学の職を辞し、やがてその研究の成果は超能力ドラッグの製法に関する画期的新技術の発見につながりました。シュナーマンはその製法の特許を取得し、いくつかの製造会社に認可を与えました。
 貯まった特許料を使い、シュナーマン父子はシレアの破綻した医薬会社をシュナーマン・ウント・ゾーンAGと名前を変えて買い取りました。その後まもなく、シュナーマンはより新しい効率的な薬品製法を発表し、そして新会社SuSAGは競争相手よりも早く薬品を市場に投入することができました。
 しかし初期の会社は嵐の只中にありました。帝国大学は、シュナーマンの製法は大学在任中に開発されたものだとして、SuSAGを告訴しました。他の会社も同様に多数の訴訟を起こしました。
 SuSAGはこれらの攻撃に対してうまく身を守りました。ところが最初の2世紀の間のこれらの出来事が、会社やシュナーマン家に被害妄想的な思想を染み込ませました。今では薄くなったとはいえ、現在でもSuSAGのいくつかの活動にはそういった要素が見受けられることがあります。
 創立者グスタフは生粋の研究者であり、彼は社に対して莫大な資金を調査研究に注ぎ込む方針を確立させました。これは今でも持続しているSuSAGの特徴で、SuSAGの良く整備された研究所は、帝国内の最高の知性を多く惹きつけています。
 研究に重きを置いたグスタフの方針は、会社に多数の新製品と製造プロセスをもたらしました。そしてそれは会社の成長の強い基盤となりました。発見は医薬品の分野に留まらなかったため、後に会社は医薬品の関連分野(化学や遺伝子工学)に投資を分散し始めました。一方で黎明期に植え付けられた被害妄想は、SuSAGがそれらの発見を他の企業に売ったりライセンスを与えることを妨げました。当時SuSAGにはその発見を製品にするための資金が乏しかったものの、他の企業に利益を与えることを嫌ったので、多くの新発見は長い間ファイルの中にしまわれたままでした。
 超能力ドラッグ分野におけるSuSAGの優位は、帝国暦800~826年における超能力弾圧においてひどく会社を痛めつけました。全ての超能力ドラッグの製造販売は違法であると宣言され、帝国内の全ての製造工場が廃業に追い込まれ、そして全ての在庫が押収されました。この時までにSuSAGは経営をかなり多角化してはいましたが、弾圧は会社をひどく傾けさせました。
 莫大な損失は、他のメガコーポレーションから緊急融資を受けるほどで、大きな負債を抱えることになりました。その代償として、SuSAG株は他の会社に譲り渡され始めました。その時まで、シュナーマン家はSuSAG株の75%を所持していました。この強制売却は家にもかなりの損失を引き起こし、結局この株の一部は後に返還されましたが、今でもかなりの株が、オルタレ・エ・シェ(9%)やGSbAG(5%)やスターンメタル・ホライズン(3%)などによって持たれています。
 この売却劇によって会社に対するシュナーマン家の偏執的な影響は薄まり、結果として取締役会の構成に変化が生じたことが、SuSAGにとっては有益となりました。超能力弾圧による損失から回復するために数十年かかりましたが、SuSAGはゆっくりと安定した成長を再び始めました。そして徐々に新しい市場に拡大していきました。合成化学や工業薬品、そして最も論議を呼ぶ、帝国軍の生物化学兵器分野に。
 SuSAGは抗老化薬(アナガシックス)研究においていくつかの大きな功績を残しており、帝国での最大のアナガシックス製造会社です。さらに、帝国外に置かれた(子会社網によって経営される)いくつかの工場で、今も超能力ドラッグの製造を続けています(そしていくらかは帝国内に不法に還流していますが、SuSAG自体は関与していません)。会社はその品質と純度に割増価格を付けています。
 これらの発展を通して、SuSAGは多数の子会社への影響力を「購入」することを方針としました。それは時には、SuSAGが新しい地域や分野に進出する際に、既存の企業を買収することでより安く済ませることができました。また、SuSAGがその名前と関連付けられたくない活動を行うために、会社を買収することもあります。例えば、超能力ドラッグを製造する帝国外企業は、持株会社やダミー企業による長くて複雑な繋がりを経て所有されています。
 主要な子会社は取締役会の管理下に置かれ、より小さい会社は部門の執行役員(vice-president)や地域事業部長(regional general manager, RGM)の管理下にあります。

◆組織
 SuSAGは他の有限責任帝国企業(LIC)と同じように組織されています。つまり取締役会(board of directors)、代表取締役(president)、そして執行役員がいます。
 それぞれの執行役員は、会社の7つの部門の1つに対して責任を持ちます。執行役員には直接の指揮系統下にない主任秘書(executive assistant)がつき、執行役員の下には地域ごとの事業部長が多数います。
 「地域」の大きさは、コア宙域のように人口過密であれば数星系ごと、人口がまばらであれば星域単位、と変動します。注意すべきなのは、部門ごとに地域の境界が完全に同一ではないことです。辺境地域ではいくつかの部門の地域事業部長が同一人物であるかもしれません。人口密集地域には同一部門に何人かの地域事業部長がいて、お互いに相談しあっているかもしれませんし、ただ単に自身の活動に与えられた権限を持っているだけかもしれません。
 SuSAGのそれぞれの部門はほとんど互いに直接競合しないので、このシステムは部門間の争いには繋がりませんでした。しかし、子会社間はしばしば食い違いを起こしています。時として他のSuSAG子会社との通商戦争に発展することもありますが、本社に見つけられるとすぐに終わります。

 企業内の保安業務は、多くのメガコーポレーションは独立の警備会社に(最も重要な部分以外は)下請けに出しますが、SuSAGは自らのセキュリティの全てを扱う、異常に大きくて十分すぎる装備を持つ、社独自の保安部隊を所持しています。
 これには多くの理由があります。SuSAGの製品の多くは小さくて、とても貴重で、闇市場で簡単に売りさばくことができます。また、しばしばSuSAGの製造工場や研究施設はライバル企業による産業スパイの標的となります。さらにSuSAGの(元々安全性の評価があまり高くない)生物化学兵器施設は、反生物化学兵器活動家や、兵器を盗もうとしているテロリストの攻撃の対象となります。
 会社に対する不信に何にでも組み合わさってしまうこれらの要因により、SuSAGの厳重すぎるセキュリティ体制の説明がつきます。
 大部分の保安部隊は、色々な地域事業部長の直接指揮下で、彼らが割り当てられた地域だけで任務に就いています。しかし取締役会は、特定の「敏感な」地域にある非常に重要な施設に割り当てるために、トラブルシューターとしていくつかの傭兵部隊を用意しています。また、SuSAG(もしくは関連子会社)の名前が出ないことを望む活動のために、傭兵部隊を利用することがあります。
 企業ポリシーとして、傭兵は地域事業部長に雇われることになっていますが、通常、複数の仲介人(大抵はSuSAGの保安要員)を通して契約が結ばれます。

◆7つの事業部門
・医薬品事業部 Pharmaceuticals Division
 この部門は様々な病気の処置と予防のための治療薬や、外科用の薬(麻酔薬や筋弛緩剤)、他にも抗老化薬、獣医学用薬品、園芸用薬品などを製造し、販売しています。

・医療製品事業部 Medical and Surgical Products Division
 この部門は非製薬分野の医療製品(診察装置や外科手術器具・消耗品、義手義足といった補装具など)を製造し、販売しています。

・工業薬品事業部 Industrial Chemicals Division
 この部門は、製造工程において他の会社で使われる化学物質を製造します。いくつかの子会社は高純度の化学製品を提供しています。

・遺伝子改良事業部 Geneering Division
 この部門は、特定産業や農業分野のために遺伝子改良生物を製造しています。

・生物化学兵器事業部 CBW Division
 この部門は帝国軍と同盟国のためだけに、生物化学兵器と防護装備を製造しています。全ての工場が孤立した、居住に適さない世界にあるという事実にもかかわらず、この部門は安全性に非常に悪い評判がつきまとっています。

・研究部 Research Division
 この部門は製造に従事しておらず、常に新製品の研究や、古い製品の新しい製法について模索し続けています。

・帝国外事業部 Extra-imperial Division
 この部門は帝国外における全てのSuSAGの(子会社も含む)活動を担当しています。
 例えば超能力ドラッグの製造のように、彼らの活動は大抵帝国内では違法となるものです。そして帝国外での任務に割り当てられるSuSAGの保安チームは、一般的な地方政府軍と同程度の重装備が施されます。また彼らは(超能力ドラッグ工場のように)とても価値のある施設の保護のために、社有の宇宙船をしばしば貸与されます。

◆社の目標と方針
 SuSAGの主な目的は、金を儲け、他のメガコーポレーションよりも高い地位を得て、現在の市場のコントロールを維持し、古い製品の新しい市場を開拓し、(驚くべきことは何もない)新製品を市場に出すことです。
 SuSAGにはその悪いイメージを改善したいという強い願望があり、そのために毎年広告宣伝費を十億クレジット単位で投入しています。
 非常に貴重な(もしくは危険な)製品を製造するSuSAGの施設は、可能な限り遠隔地か過疎地に置くようにしています。これは事故の際の犠牲者を最小にし、工場や製品の保護を容易にするための措置です。超能力ドラッグ工場はとりわけ攻撃を受けやすく、製品が闇市場で高値で取引されることもあり、会社の保安部隊が最高レベルの防衛体制で守っています。生物化学兵器工場は通常帝国軍によって守られていますが、社の保安部隊も重装備で警備しています。

◆中央政府との関係
 帝国政府には、企業に課税して彼らの力を若干ながら抑える能力がありますが、SuSAGの力は、特定の地域ではおそらく帝国と等しいでしょう。しかし政府への敵対はビジネスにとっては良くありません。安定した恒星間政府、つまり帝国政府が実権を握っていることがSuSAG自身の最大の利益である、と彼らは主張しています。
 これらの理由から、SuSAGは決して帝国政府に敵対せず、その没落のために働くことはありません。ただしこれは、必ずしもSuSAGの各事業部門が法律を犯さないことを意味しませんが、帝国外での帝国の利益に反する活動は自制しています。

◆地方政府との関係
 帝国法によって、企業は進出先の地方政府の法に従うことを要求されます。全般的な傾向として、SuSAGは合法的な惑星政府にあからさまには反抗しないことを好みます。
 通常メガコーポレーションには、自社を大部分の規制から除外するように地方政府を「説得」するに十分な(隠れた)影響力があります。しかし大部分の他のメガコーポレーションと異なり、ほとんどの世界はSuSAGの直接の影響下にはありません。なぜなら、SuSAGに対する良いイメージを一般大衆に広めようとする企業方針があるからです(巨大企業による世界の支配は、たいてい市民の怒りを買います。そしてSuSAGに対してはかつて反乱にまで至ったことがあるのです)。
 その一方でSuSAGは、帝国政府や子会社を経由して、いくつかの世界の密かな政治的及び経済的支配を維持しています。

◆スピンワード・マーチ宙域における活動
 スピンワード・マーチ宙域へのSuSAGの進出は、帝国暦427年のモーラの化学施設の買収から始まりました。拡大は素早く進行し、600年頃には、全ての事業部門がマーチに展開しています。
 生物化学兵器(と防御装備)の膨大な在庫は、第三次辺境戦争の開戦とともに帝国政府に売却されました(実際には使用されませんでした)。そして休戦後には、生物化学兵器工場がドロロー星系(ルーニオン星域)に建設されました。
 他にSuSAGはライラナー(ライラナー星域)、フォーニス(モーラ星域)、トリン(トリンズ・ヴェール星域)に重要な施設を持っています。またSuSAGの子会社は大部分の星系に施設を構え、SuSAGの各事業部門は、マーチのタイプAかBの宇宙港に事業所を構えています。
 ゾダーン領の星系では、SuSAGは事業所も子会社も持っていません。しかし若干の取引は第四次辺境戦争の前になされました。
 帝国外事業部は、大規模な超能力ドラッグ製造施設をターサス(268地域星域)に、超能力ドラッグ以外の製造施設をザマイン(ダリアン星域)、コレース(268地域星域)に持っています。
 特に268地域星域は、自分たちにとって重要な地域であると考えています。


【参考文献】
・Traveller LBB9: Library Data (Mongoose Publishing)
・GURPS Traveller: Behind the Claw (Steve Jackson Games)
・Signs & Portents #85 (Mongoose Publishing)
ジャンル:
その他
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