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宇宙の歩き方

The Astrogators' Guide to the Charted Space.

ダイベイ宙域1119 ライブラリ・データ

2021-04-27 | MegaTraveller

(※ここで使用した私家版UWPデータ(0101-1640)(1701-3240)は、HIWG版ダイベイ宙域(1120年設定)を基盤とし、現行のT5SSの1105年設定から星系名・規模・大気・水界・TL・スペクトル型を移植して整合性を取ったものです。このため、貿易分類は正しくない場合があり、知的種族の人口比率はT5SSの元データを参照する必要があります。宙域図内の点線は、寸断されたXボート網の合理的と思われる再編計画線です)


ダイベイ宙域 Daibei Sector
 大裂溝(Great Rift)に隣接するダイベイ宙域は、いくつかの古い文化や知的種族が点在する発展途上の地域です。ここはまずジル・シルカ(第一帝国)が「ランキシダム州(Lankhisidam)」として植民地化しましたが、領土として正式編入したのはトレイリング側の星々のみで、首都ヴランドから遠い上に主要交易路から外れたため開発も特になされず、後進地域のままでした。また、領外の星々の多くが流刑地や反体制派(キマシャルグル)の逃亡先として点々と入植されていったこともあり、未だに反ヴィラニの気風が残っている星もあります。
 その後、銀河に進出した地球人はダイベイの併合を後回しにして直進し、恒星間戦争が終結した頃になってようやく本格的な入植と開発を開始しました。このため現在のダイベイ宙域にはヴィラニの血が濃く残る市民が多く居住しています。
 暗黒時代の間、ダイベイは他と同じように交易の喪失と技術後退に苦しみ、そして略奪者(Reaver)の侵入に遭い、その後は入植を開始してきたアスランとの軋轢から戦争となりました。侵入と交戦と報復の繰り返しとなった国境戦争は主にこの宙域のスピンワード側で行われ、それは380年に和約が成立するまで続きました。アスランとの間には(隣のリーヴァーズ・ディープ宙域に)30パーセクの緩衝地帯が設けられ、帝国政府は宙域の安全を保証するために軍を派遣しました。
 704年に女帝マーガレット1世がソロマニ自治区を制定した際に、ダイベイのリムワード側の大部分はソロマニ圏に属することになりました。871年に自治区が「ソロマニ連合」に改組されたことで緊張が高まり、帝国の分遣艦隊とソロマニの「私掠船」との小競り合いが頻発しました。
 990年にソロマニ・リム戦争が勃発すると、ソロマニ軍の攻勢は帝国軍に大打撃を与えましたが、最終的には帝国軍の反攻で1002年の休戦時にはわずかな星系のみがソロマニ領として残されました。連合は今も旧ソロマニ圏内の「帝国占領地」の領有主張を取り下げてはいませんが、これらの世界のほとんどは(純血ではないという意味での)非ソロマニ人が多数派であるため、本音としてはわざわざ取り込まなくてもと考えているようです。


【反乱の推移】
 ストレフォン皇帝殺害さる、との一報が(情報封鎖を越えて)届くなり、ソロマニ軍は帝国に対して全面攻勢に出ました。混乱した帝国海軍は増援が届くまで遅滞戦術を採るしかありませんでした。
 ソロマニ軍は当初ダイベイ宙域のリムワード側半分まで進出しましたが、帝国軍の組織的抵抗や奇襲に遭って、再編して戦線の穴を塞ぐために一時後退しました。この時点でディアスポラ艦隊から派遣された3個艦隊は、ダイベイ艦隊の指揮下に入っています。
 ソロマニ連合による攻撃は、帝国への愛国心とともにルカン「新皇帝」への忠誠心も掻き立てました。皇帝暗殺を実行したイレリシュ大公デュリナーは、同じイレリシュ領域に属するダイベイへの宣伝工作を行ってはいましたが、デュリナーこそ現在の危機の元凶だという見方を覆すまでには至りませんでした。
 それから両陣営は消耗戦に入り、互いの艦隊に攻撃を加えながら自国領への深い侵入を防ぎ続けました。ソロマニ軍はテラ方面の戦線に力を入れたため、1117年の間はダイベイ戦線は停滞しました。
 その頃、ザルシャガル宙域でのデュリナーへの「復讐艦隊」の大攻勢が不発に終わったことに業を煮やしたルカンは、ダイベイから12個艦隊を合流させるよう命令を出しました。宙域首都ワリニア(0507 A889978-F)にその命令が届いた時、クレイグ公は皇帝に裏切られたと感じました。それだけの艦隊を供出すれば、当然ダイベイはソロマニに対して無防備になってしまいますし、加えてそれは、帝国が軍を派遣してダイベイの安全を保証したかつての「和約」にも背く態度なのです。
 公爵は宙域の上級貴族を集めて会議を開き、供出削減の嘆願が認められなければ拒否するという意見をまとめました。そして万一に備えて「独立後」を睨んだ宙域政府組織の改革を急ぎながらも、帝国中央に対してはあからさまな態度を取らずに時間稼ぎに徹しました。その間、1118年223日にソロマニ戦線に向かう帝国第239艦隊が、オルヴォン(2935 C5659D9-8)にてダイベイ艦隊所属の艦艇に発砲する事件が発生しました。
 1118年289日、クレイグ公は嘆願の却下を受けて「ダイベイ連邦(Federation of Daibei)」の設立を宣言し、各勢力に対しては中立であることを通達しました。しかし宙域内にはルカン支持派も根強く、ダイベイ艦隊からも2個艦隊が離反して(ルカンの)帝国軍に帰順しています。また、元々ルカン支持派の多かったリインガー星域やオルヴォン星域など「ルカン帝国」に接するトレイリング側の星々も独立には同調しませんでした。

 ダイベイ連邦は、旧来の帝国の官僚機構をそのまま取り込むことができました。統治はクレイグ公爵を筆頭とする上級貴族らによる統治評議会が行っており、この体制への移行は独立後1年とかからずに終了しました。しかし、寸断された上に非効率となったXボート網の再編は急務となっています。
 ダイベイ防衛軍(DGF)は司令本部をアキュロン(1820 A645367-D)に置き、トーレヨン(0326 A9B956A-F)の兵站基地(Depot)と連動して目の前のソロマニ軍と背後から迫るルカン軍の二正面作戦を耐え抜くべく全力を尽くし、同時に反攻作戦を練っています。
 そして現在、イレリシュとダイベイとの間には何らかの条約(相互防衛ないしは不可侵)を締結するための、積極的な外交交渉が行われています。


【反乱による影響】
 T5SSの1105年設定と比較してUWPが大きく変化した星系を以下に挙げます。

イイネン Iinen 3010 A593989-E 工業・高技・高人 R 813 Fd 星域首都
 星域首都で高人口な工業星系で、ルカンとの国境沿いかつ「反乱後にレッドゾーン化」というだけでもう色々考えられます。ちなみに現行の「公式」では、リベール(ディアスポラ宙域 1109)のリベール人が人口の7割を占めるという何かの間違いとしか思えない設定があるので削除しました(現時点でリベール人の設定は作られてませんし…)。

ザンシー Xanthe 0527 B984711-B 農業 422 Na 星域首都
テーバイ Thebes 1114 A675898-C A 高技 A 914 Na 星域首都
 これらは星域首都でありながらダイベイの独立にすぐに呼応しなかった星系です。テーバイはXボートが通っていた上に海軍基地もある重要拠点なので、海軍も「中立化(実質ルカン支持?)」に加担しているかどうかで深刻度が変わってきます。連邦政府としても何が何でも押さえたい星でしょう。一方、ザンシーは反乱後に政治5(技官政)が1(企業統治)に変わったという謎があります。このタイミングで企業が政権を握るって、何か深い理由でもあるんでしょうか?(※おそらく人口7が政治1になるはずがないので、T5SSでは5に変えられたのが真相でしょう) また、反乱前にザンシーが統治していたハデス(0628 B100569-E)はダイベイに合流したので、統治元がジェミ(0627 C89AA8C-E)に移っています(※T5SSはよくわからない理由で統治元を変えているので、その影響です)。

ギイナカ Giinaca 2404 C581579-9 非工 A 303 Na
 両勢力の狭間で政治6が7になった上にアンバーゾーン化ということで、ルカン派とダイベイ派による分裂抗争が見えてきます。

ペリシャン Perishan 0407 A300200-E 高技・真空・低人 R 323 Fd
 元々帝国領外だったのがダイベイ領に組み込まれています。首都ワリニアのすぐ隣ということもあってか、何かしらの工作が行われたのかもしれません。そしてその余波でレッドゾーンに…?(所詮人口2なので別の理由も考えられます)

タウンエンド Townend 0131 C410452-B 非工 A 413 Na
サイノワ Cynowa 0133 C310564-B 非工 A 413 So セチ4(0333)が統治
オータム Autumn 1304 B795734-C 高技・農業 201 Fd
 反乱の影響で政権が崩壊したり移行したりしたと思われる星々です。特にサイノワは政治4(間接民主政)だったのがソロマニによる間接占領統治になったので、抵抗戦ものにはぴったりでしょう。

スパルタ Sparta 1113 C987568-9 農業・非工 302 Fd 軍政
リング Ring 2031 B437267-D N 高技・低人 A 904 Fd 軍政
アドゥウリクガア Aduulikgaa 3208 B310466-D N 高技・非工 614 Li 軍政
ビクトリノックス Victorignox 3210 C985566-9 農業・非工 205 Li 軍政
 政治6のままながら、統治元が別勢力になってしまったため便宜上軍政扱いとした星です。


【ダイベイ宙域の知的種族】
・人類(ソロマニ人・ヴィラニ人・その混血)
 居住星系:宙域ほぼ全域

・アスラン
 居住星系:クリイガ(0429)、ダイオニー(0824)、ルシイル(0932)、パラソル(1104)、ホーマー(1107)、モルドール(1108)、トヴィラ(1126)、イッリクリイ(1204)、カーグウラム(1206)、アイテハテォ(1216)、オイヒューエラー(1637)、ムラゾー(2231)

・ドロイン
 居住星系:ピアソン(1536)、ゼノーン(2323)

・エヴァンサ
 居住星系:アシュースト・ウッド(2322)、ゼノーン(2323)、トゥケラ(2423)、アダナック(2524)、ダハーマ(2621)、カーニヴォラ(2622)、レギイマア(2623)、サン・セバスティアン(2624)、インサヴィサィ(2722)、デーラン(2723)、ウリエ(2822)、ダイム(2922)、テメレール(3020)、ニュー・メルボルン(3021)、ボボノン(3121)

・ブルーレ
 居住星系:コーヴ(1729)

・ドルフィン
 居住星系:ジェミ(0627)

(※この他に、デュールムーゼ(0922)、ダマー(0937)、カルキ(2137)、ウースナム(2337)に未設定の知的種族が存在することになっています)

エヴァンサ Evantha
母星:テメレール(ダイベイ宙域 3020)
 帝国人には「ヴァンシアン」とも呼ばれるエヴァンサは非人類の群小種族で、山岳の空で群れを作っていた肉食鳥類から進化しました。低重力を好み、翼を持つ狩人である彼らは、何千年もの間独自の文化を守ってきました。最近ではカリスマ的独裁者の下で帝国との緊密的な統合を目指していますが、全てのエヴァンサが指導者の描いた道に従うことを望んでいるわけではありません。
 成体のエヴァンサは身長1.5メートル、体重30kg~35kgで、男性の方がやや体格が大きいです。直立二足歩行ですが首は長く、翼と扇型の尾を持ちます。この尾は飛行時には舵となり、直立時には体を支えます。人類の脚に当たる部分が腕となり、手には鋭い爪を持つ3本の指とその反対側に2本の「親指」があります。エヴァンサの知覚は、密度の高い大気中では聴覚が優れ、遠距離視力も高いです(大気密度が低ければその逆です)。
 エヴァンサは暖かい環境では基本全裸で過ごし、羽毛を整えたり着色したり、宝石で飾ったりします。彼らは閉所恐怖症ですが、飛行機と宇宙船は例外です――空を飛ぶことは何よりも重要だからです。そしてエヴァンサは「同性の友情」を軽蔑すらしています。交際対象でもない相手と協力はできても、親密な関係にはなろうとしないのです。一方で他種族であっても異性には非常に友好的です。
 彼らは権力には従いますが、本質的に自由を愛し、あれこれ指図されることを好みません。上司は部下に何をすべきかは言っても、どうすべきかは言わないのです。
 -4238年にエヴァンサは宇宙飛行に成功しましたが、それとほぼ同時期に拡張主義派(キマシャルグル)のヴィラニ人が彼らの電波を検知して初接触しました。その後はまず第一帝国の属領として組み込まれ、-3341年には正式に併合されていました。そしてエヴァンサはヴィラニ人の下で周辺17星系に植民するほどに拡大し、第二帝国時代は軍政の下で限定的な自治権を獲得しました。それは暗黒時代に「エヴァンサ保護領(Evantha Protectorate)」という形で生き長らえ、そのまま第三帝国に平和的に吸収されて今に至ります。
 高い技術力を得たエヴァンサは、機械の方が得意な単純仕事から解放されました。このことから彼らは科学技術の進歩を良いことと考え、科学者や機械技師は名誉な職となりました。エヴァンサの製品はどれも美しくて個性的ですが、人類のものより5割増で高額であり、個性を重視するあまり規格の互換性というものもありません。
(※現在、UWP上でエヴァンサが居住しているのは15星系で、総人口は約70億に達します。母星テメレールのあるトゥケラ星団(Tukera Cluster)にはその15星系しかないため、ジャンプ-2を要する星団外の入植地は滅んでしまったか人口比率が少なすぎるのかもしれませんし、17星系という設定自体が単純に誤りなのかもしれません)

ブルーレ Bruhre
母星:コーヴ(ダイベイ宙域 1729)
 非人類知的種族であるブルーレは、がっしりとした六本足生物で、硫黄分を多く含む大気を苦にしません。そんな環境で育った人類には有毒な動植物も、彼らには美味となります。
 ブルーレの生活に深く結びついた儀式や作法は、複雑で不可解に見えます。彼らは生涯のあらゆる面において、一つ一つの発言や行動にすら厳しい戒律と仕来りの下で生きています。
 彼らはとても偏狭な種族でもあり、部外者にも自分たちを同じやり方を求めます。よって、ブルーレは一般的に他の主流帝国文化からは外れた存在です。ある意味でブルーレは、法律や習慣で定められていないことは何一つすることも考えることもできないと言えます。
(※ブルーレはローレン(リーヴァーズ・ディープ宙域 2311)に移住していますが、理由は不明です)


【ライブラリ・データ】
(※以下の情報は帝国暦1108年当時のものです。反乱後は状況が全く変わっている可能性は十分にあります)

805-111 805-111 3225 D736988-7 高人 R
 805-111の住民は、あらゆる物事を解決する手段は暴力だと考えています。この星は名目上は統一されていますが、徒党・犯罪組織・私兵集団・独裁権力らが目まぐるしく統治者を変えています。まるでクーデターが日常かのように。
 地元の人々は警告の有無に関わらず、いつでも誰とでも戦います。外世界の人々は殺害を含めて犯罪行為を避けられる可能性がほぼないため、トラベラー協会はこの星に進入禁止(レッドゾーン)指定を行い、帝国海軍がそれを執行しています。

アリアン・リシアーニ Arian Lisiani
 リシアーニ艦長は帝国で知らぬ者は居ない英雄で、その栄誉を称えて後世に「リシアーニ」と名付けられた軍艦がいくつも存在します。最新のものは、1037年にモーラ(スピンワード・マーチ宙域 3124)で建造された5000トンのP・F・スローン級護衛艦(P.F.Sloan class Fleet Escort)です。
 アリアン・リシアーニは220年に帝国海軍に入隊し、名門のシレア士官学校を卒業後に飛行科に配属されました。彼女の海軍生活は波乱万丈で、イレリシュ宙域にていくつかの小国家との接触や併合で功績を挙げたかと思えば、アスランとの交戦で非服従の態度を取ったために謹慎処分を受けるなどしました(その際は士官学校の同級生であるヴォセエフスキー提督の力添えで復職しました)。
 その後の彼女はアスラン国境戦争で艦長として追撃隊を率い、アスラン遠征軍に占領されたワリニアの解放戦で実力を発揮しました。救援活動は成功し、アスランは星系から追い出されました。リシアーニ艦長はアスラン主力艦隊をワリニアから遠ざけるべく巡洋艦を自ら指揮し、船体に深刻な損傷を受けつつもアスランの旗艦に突撃して相討ちに持ち込み、壮絶な戦死を遂げました。この功績で彼女には名誉ある「星芒大英雄勲章(Starburst for Extreme Heroism)」が授与されました。
(※SEH勲章は最高位かつ特殊なもので、「圧倒的不利な戦況で命を顧みず戦った至極の英雄的行為」に対して贈られるため、だいたい死後に叙勲されます)

ヴァアル Vaal 0624 D597779-6 農業 G
 ここは農業星系に分類されていますが、実際には星域内で最も豊富なランサナム鉱脈があります。この小さな惑星には重金属が豊富に含まれていて、火山からは頻繁に酸化鉛が排出されて高密度の大気を汚染しています。植物はこの汚染を取り除き、代謝に利用できるように適応していますが、もちろんこの植物は人類には食べられません。
 ランサナムが埋蔵されていることから、この星系はソロマニの進出目標と見られています。ソット(0424 B432856-D)の海軍基地はこの星系と近隣を警戒しています。

ウーメラ湾 Woomera Gulf
 ムラアー、アウトバック、ウーメラ、ジェミの4星域に広がる星系密度の低い地域を指す言葉です。歴史的にこの地域は、エッジ星域などコアワード方面の星系への入植と開発の障害となってきました。

ガーシュナス Gershunas 0728 C552675-8 非工・貧困 A G
 ガーシュナスの多くの国では、思想や文化の違いを越えて「時間は重要ではない」という姿勢は一致しています。予定はよく変わり、仕事を慌てることはなく、「締め切り」という概念はどこの国でも理解されません。
 この小さな惑星はほぼ潮汐固定状態にあり、大きくて暗い恒星の近くを非常にゆっくりと公転しています。昼と夜は生体周期とは無関係に来るので、無視されています。地元の人々にとっては、自分がしたい時にしたいことだけが行われるのです。そのため多くの宇宙船の船長は、ガーシュナスで貨物を積み込む際に何度も遅延を経験していますし、外世界からの訪問者は立てた計画が乱れることを覚悟して来なければなりません。
 一方で、中には望んでガーシュナスを訪れる人もいます。地元の人々ののんびりとした空気感が、ストレスによる病気の治療の役に立つからです。ジェミ星域でよく聞かれる言葉がそれを表しています。「お堅い経営者にとってガーシュナスでの長期休暇は、心が安らぐか、気が狂いそうになるかのどちらかだ」。

カルロ・アモレッティ Carlo Amoretti
 「人類の支配(第二帝国)」初期の探検家です。テラのイタリア地方の血筋であり歴史に興味があったことにから、彼は探査を行ったソット(0424)から順にそれにちなんだ星系名を付けていきました。それらは今では「アモレッティ群星(Amoretti Group)」と呼ばれています。
 群星の最後に訪れた星には、既にキマシャルグル派ヴィラニ人の小さな集落がありました。彼らはジャンプ船を入手できず亜光速船で新天地を目指したものの、不本意にも船の故障でその星に漂着した人々でした。アモレッティは彼らの苦難に敬意を表し、これまでの決まりから外れたヴィラニ語のカドゥッグル(リーヴァーズ・ディープ宙域 3223)と星図に記しました。

ギルデン Gilden 2415 A431400-F 高技・非工・貧困 G
 ギルデンの住民は17の一門に分かれており、それぞれが入植初期に合意された領地に住んでいます。これにより、各一門は特定の資源や産業、そして砂漠に近い世界で可能な農業を管理することができています。子供たちは3歳から一門でまとめて育てられ、一門の専門分野のどれかで働けるように訓練されます。一門間での結婚は可能ですが、一般的ではありません。その場合は女性が夫の一門に移り、新たな仕事のために再訓練されます。
 ギルデンはワグニルド(2214 C435687-A)の遺伝子操作実験の際の避難民によって入植されました。ワグニルドの実験は結果的に多くの悪影響があることが判明し、地元民の言う「人造人(artificials)」への対応や受け入れの難しさから、多くの「自然人(naturals)」がギルデンに移り住んできました(※参照⇒ワグニルド)。
 遺伝子工学はワグニルドでは既に禁止され、ギルデンでも禁忌とされています。しかしギルデンの住民はその高度な技術を持ってしても、近親交配の危険性をほとんど無視してきました。ここ数十年で先天性異常の割合が増加しており、労働人口が大幅に減少しています。
 少数の一門が行っている一門間結婚を奨励する試みは多くの一門の抵抗を受けています。ある保守的な一門は新生児の多くが死亡し、わずか200人にまで減少してしまいました。

近代派再調整教会 Modern Church of Readjustment
 ナルヤ星域で広く信仰されている宗教団体です。
(※HIWG版ダイベイ宙域図のみで星域規模国家として存在しますが、そもそも詳細は不明です。今回の私家版宙域図では『反乱軍ソースブック』等の記述に合わせてソロマニ連合に吸収した上で、このような形で設定構築を委ねることにしました)

クリム Krimm
 ヘルメス星域にある美しくも過酷な世界、ブレウィン(1635 A784200-E)に生息する生物です。ここには名だたる猛獣がいくつもいるため、狩猟者や探検家にとって危険な星となっていますが、多くの人がこのクリムを最も凶暴なものと考えています。
 クリムは肉食獣であり、ヴィラニ人の言うアシュルガルシュ(Ashurgarsh)やテラ原産のクマに似ていますが、一般的にそれらよりは小さくて素早いです。しかしその爪と牙は自分より遥かに大きな動物を引き倒すことができ、空腹でなくても己の脅威でなくても襲いかかることが知られています。クリムの毛皮は星域内で珍重されていますが、当然ながら希少性も高いです。

コロガリグモ Tumblespider
 コロガリグモはアマルシ(2121 E994733-6)に生息する、成体だと体長約50cm・体重0.1kgの生き物です。比較的乾燥したこの世界の平原に自生する、小さな灌木の小枝に良く似ています。コロガリグモは芳しい匂いを発して昆虫を引き寄せ、棒のような枝で空中から掴み取ります。
 アマルシの赤道直下特有の暴風雨でコロガリグモは激しく飛ばされますが、その際に卵を落としていきます。そして降る雪が卵を覆い、春に孵化するまで断熱をしてくれます。一方コロガリグモの成体の死骸は冬の風景の中に散らばり、時には数メートルにもなるぐらいに寄せ集まります。
 コロガリグモは天然の防虫役として他世界にも輸入されており、毒もないためペットとしても需要があります。アマルシの人々はコロガリグモを「善霊(good spirit)」と見なしており、地元の言葉には「コロガリグモより役立つ」という比喩表現があります。

作曲家達の列星 Composers Row
 ドゥディン星域にある星団のことで、構成する7星のうち6星の名が古のテラの作曲家に由来することからそう名付けられました。例外のウウカミヌク(1724 DA8A746-8)は、恒星間戦争初期にヴィラニ人によって入植された星です。

ダイベイ・リムワード回廊 Daibei Rimward Corridor
 6星域(デュディン、ガアローン、ヘルメス、ムラアー、ナルヤ、ジェミ)・60星系に及ぶ星々の繋がり(メイン)で、ダイベイ宙域のリムワード方面の重要な貿易路です。
 「人類の支配」期に本格的に探査が開始されたこの回廊は、歴史的にリムワードとスピンワードを結んで交易と植民地化のための主要交通路として機能しました。

タテゴトソウ(竪琴草) Harp plant
 医薬品企業として有名なインデック社(Indec Corporation)が所有するチェミ(2530 C888413-9)に生息する草花のことです。香りや色ではなく、音で受粉昆虫を誘き寄せる特徴があります。直立した茎の間に張られた細い糸が風で振動し、その音色で在来種の昆虫が集まります。そして虫たちは花粉を食べたり、撒き散らしたりするのです。
 なおタテゴトソウの汁は、インデック社の多くの抗ウイルス剤や抗真菌薬の素材として用いられています。

テメレール Temeraire 3020 B585779-A N 農業・富裕 G エヴァンサ母星6割
 知的種族エヴァンサの母星であり、K0型主系列星の第2惑星であるテメレールは、地殻の密度は低いながらも厚い大気を持ち、地軸が傾いていないので四季が存在します。テメレールは巨大な山脈、広大な砂漠や草原、点在する小さな海、そして多くの火山によって作られた島々が存在する風光明媚な世界です。そして2つの小さな衛星(カビサとサスロス)と、もう一つの衛星だった明るい環が取り巻いています。自転周期は約20時間で、密度の高い大気が熱を保持するので夜も暖かいです。
 テメレールには数多くの住民がいますが、大草原には家畜が放牧され、小さな街が多く見られます。それは、いまだに大量の食用動物を飼う必要があるからです。重い荷物は水路や空路で運ばれ、古い町は運河で結ばれています。
 エヴァンサは皆、航空機を愛しており(「キサリは我らに翼を与えたり!」)、反重力機器であるスピーダーやエアラフトが空を賑わせています。鉄道などは珍しく、エヴァンサは閉所恐怖症のため地下交通は存在しません。
 若者が空で騒いでいても、エヴァンサの街は一般的な大都市より静かです。うるさい地上車はなく、混雑した通りもありません。エヴァンサの街は細い摩天楼や高層建築物の集合体であり、工業地帯や空港・宇宙港や狩猟公園などに囲まれています。それぞれの建物はバルコニーや天窓を備えており、広い空にすぐ出られるようになっています。
 エヴァンサは屋内にいることを好まないので、商店や市場は露天式で、商売や政治の会議は飛びながらか狩りの最中に行われます。
(※原文ではテメレールのエヴァンサ人口は「10億以上」とされていますが、どうやら設定が起こされた際にUWPの人口7を9と誤認してしまったと思われます)

ヘイデン Haden 0830 X66A630-4 海洋・低技・非工 R G
 ヘイデンの島々に住む300万人の住民を統治しているのは、海を渡る船の数百名の船長たちです。彼らはこの星の主要な燃料である貴重な油を得るために、土着の海洋生物であるガトゥフ(gatuf)を狩っています。また、深海生物のタルモ(tarmo)を撃退できるのも船長たちだけです。タルモは海岸近くに潜み、海岸を歩く人や海水浴客やボートを襲うことがあるのです。
 この世界がレッドゾーン指定される前は、無知な外世界人がヘイデンを訪れては島の海岸から姿を消していました。海岸に残されたタルモの痕跡と、衣服や所持品の欠片だけが彼らの運命を物語っています。船長たちはこれ以上の上陸を禁止するために簡素な宇宙港を閉鎖し、トラベラー協会に進入禁止指定を要請しました。
 船長たちが不在の間は島に指導者がいません。この環境の脅威に対抗するためには秩序ある行動が必要であり、船長が海に出ていても問題ないように社会は組織化され、構造化されています。
(※HIWG版設定ではこの星はTL6でしたので、船長のみがTL6の船や武器を扱えるとしましょうか。また、T5SSによる1105年設定ではレッドゾーンではないため、1105~1107年の間に指定されたと解釈可能です)

ペロポネソス橋梁 Peloponnesian Bridge
 アウトバック星域のこの星団は、ウーメラ湾を横断する重要なジャンプ-2航路上にあります。テラのペロポネソス半島にあった古代都市国家にちなんだ3星系(アテナイ(0913 A86A344-F)、スパルタ(1113 C987568-9)、テーバイ(1114 A675898-C))の存在と、今日のその役割からこのように名付けられました。

ヘルメス星域 Hermes subsector
 ダイベイ宙域にあるヘルメス星域は、第二帝国の時代に広範囲に渡って入植されました。その後、アスラン国境戦争の時代に侵入したアスランがそのまま帝国市民として定着した星系の1つが、現在の星域首都オイヒューエラー(1637 B310AD9-E)です。
 数百年前、そのオイヒューエラーの地殻奥深くに広大なランサナム鉱脈が発見されました。今ではオイヒューエラーは重工業化されており、採掘が絶え間なく続けられています。近隣のゼノン(1537 AAD5357-F)、ブレウィン(1635 A784200-E)はいずれも宇宙船製造業が盛んで、造船所では建造の大部分を高TLのロボットが担っています。
 また、この星域はソロマニ・リム戦争の際に激戦地となったことから、オイヒューエラーには戦没者を慰霊するための「英雄の尖塔」が1015年に、当時のイレリシュ大公によって建てられました。
 ちなみにカファル(1539 E548351-8)は、アスラン国境戦争を終結させるために行われた「決闘戦争」の、アスラン側の攻略目標として設定されたことで有名です。この決闘は、先にガヴザ(リーヴァーズ・ディープ宙域 1117)を陥落させたことで帝国の勝利となりました。

フラーム Flamme 2729 E546451-8 非工 G
 この星の文化は強烈な労働至上主義です。子供の頃から住民は「有益な活動」にのみ時間を費やすように育てられるため、この世界には娯楽産業はほとんどありません。何らかの理由で働くことのできない者は自分が穀潰しであると考え、自殺したり、恥から逃れるためにこの星を去ったりします。

星無き海 L Astéria Thálassa
 ガアローン星域とヘルメス星域に広がる小規模裂溝(Minor Rift)のことです。歴史的にこの空間は、マジャール宙域からダイベイ宙域への物流と開発の流れを妨げてきました。
 この存在がジャンプ-2以下の宇宙船に大きな迂回を強いるため、ヘルメス(1431 D100ABA-D)とシリスキア(0634 C100895-B)間にはジャンプ-2宇宙船向けのブリッジが用意されています。
(※通常「ブリッジ」とは低ジャンプ船向けに深宇宙に置かれた燃料補給施設のことを指しますが、座標1232にそれがあるのか、それとも大型のジャンプ渡船(テンダー)が行き来しているのかはっきりしません)

マター Mater 1819 E766300-8 低人・緑地 G
 この星は、科学技術が故郷の星を破壊したと考えた環境保護志向の集団によって入植されました。彼らは「人間本来の姿」、つまり科学技術を用いない狩猟採集社会に戻るために自然豊かな惑星を求めました。この回帰は、理想的な人口密度や人口計画を含めて慎重に企図されたものでした。現在の最も高度な産物は地元で産出された金属で作られたTL8の道具ですが、「環境を汚染せずに環境を保護する」物だけが製造を許可されます(恒星光発電装置など)。
 宇宙船がマターに着陸できるのは、乗組員が滞在中に生態系に害を与えない場合のみに限られます。星外との交流はほとんどなく、住民は半遊牧的な生活をしているので宇宙港の近くにいるかはわかりません。
 マターで生活したことのある外世界人は、地元の人々は豊かに暮らしており、毎日最小限の努力で自給自足ができていると口々に証言します。この星では植物や動物が豊富で、狩りには困りません。他所の人は地元民の「欠乏」ぶりに衝撃を受けるかもしれませんが、マターの人々は自分たちが選んだ環境にとても満足しているようです。
(※元設定ではコーヴ(1729)から来たことになっていましたが、知的種族ブルーレの設定と衝突するためぼかしました)

痩せ地の劣星 Hard Scrabble Row
 「劣星(The Row)」とは、カカン(リーヴァーズ・ディープ宙域 3220)とウォシ(0720 A685556-E)の住民や媒体によって作られた、主に鉱業を営むイリャナ(0120 B100413-E)、シナー(0220 B100403-F)、ヴォニド(0320 E300454-A)、ジャッジメント(0420 B000135-E)の4星系を指す蔑称です。この言葉はカカンとウォシでは広く使われている一方で、そう名付けられた星々では侮辱表現であることに注意すべきです。誤って口にすれば、殴られて歯を折られても文句は言えません。
(※Hard Scrabbleには「懸命に働いても収入の少ない」という意味もあります)

ワグニルド Wagnild 2214 C435687-A 非工 G
 暗黒時代の末期、ワグニルドの遺伝子学者たちは能力を過信し、人間を対象とした大規模な遺伝子操作を試みました。精子や卵子の細胞をいじることで、感覚が鋭かったり、免疫力が高かったり、知能が高かったり、新陳代謝が活発だったり、骨が丈夫だったりする新生児が誕生したのです。この「超人的な」子供たちのほとんどは、慎重に選ばれた遺伝子提供者の両親から生まれ、残念なことに、これらの子供たちの多くは自らの能力の高さを自覚しながら育てられました。
 多くの「人造」の子供たちが大人になる頃には、「自然」な人々の妬みや警戒心が高まっていました。そして「人造人」たちが若くして高官となったことは、最大の侮辱に映りました。「自然人」の多くは、新天地を求めて宇宙船に乗り込みました(※参照⇒ギルデン)。
 皮肉なことに、現在ではその改良点を見ることはほとんどできません。遺伝子操作の中には学者が予想しなかった副作用があったのです。超感覚を持って生まれた人の多くは大人になってから精神失調を起こし、高い知能は何世代か後には正常分布に戻り、女性は8割方流産してしまい、新しい形質の多くは全く受け継がれなかったのです。
 分離主義の愚かさを反省した「人造人」は普通の社会に戻ろうとしたので、今では多くのワグニルドの「自然人」の中にも改良遺伝子の痕跡があります。最も一般的なものは代謝効率で、ワグニルドの住民は一般的な人類よりも平均約25%も少ない食料で生活しているそうです。


【付録】
豆知識1:ドゥルガアルルキム(2720 B957979-C)のヒューゴ・スー=マンケ男爵(Baron Hugo Soo-Mancke of Durgaarurkim)は、イオランス皇后の御学友。
(※男爵は星系の統治者ではないと思います。UWP上でもここは伯爵領扱いです)

豆知識2:アムダニ(2014 A865AEA-F)の軌道宇宙港の名称は「マラウィ(Malawi Highport)」。

豆知識3:ガアローン星域の由来は、アストン(0140 A0005AC-E)のかつての星系名から。
(※確かにHIWG版設定ではGaalornでした。ソロマニ自治区時代にヴィラニ風の名前を嫌って改称された…という解釈が自然でしょう。ここに限らず、HIWG版とT5SS版では星系名はかなり異なりますが、星域名は踏襲されています)

豆知識4:クレイグ公の末娘の名前はジュディス(Lady Judith Lannes Horvath)。

豆知識5:リジャイナ公ノリスの母方にあたるイーラ家(Aella Family)の紋章は「青地に白いイルカ」だが、これは始祖の地であるパーシファルの夜空に輝く星座を表している。
(※「パーシファル」と名の付く星系は既知宇宙で3つありますが、青地が表しているであろう海に一番縁がありそうなのがダイベイ宙域のパーシファル(1039 A66A696-E)です)


【参考文献】
・Challenge #25 (Game Designers' Workshop)
・Travellers' Digest #15 (Digest Group Publications)
・Solomani & Aslan (Digest Group Publications)
・GURPS Traveller: Alien Races 4 (Steve Jackson Games)
・GURPS Traveller: Nobles (Steve Jackson Games)
・Traveller Wiki

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