宇宙の歩き方

The Astrogators' Guide to the Charted Space.

MT日本語版30周年記念企画:クーピッド星域とメンダン宙域

2021-06-12 | MegaTraveller
 1100年代のジュリアン保護領を舞台とした旅や冒険に最適なのが、メンダン宙域と考えられます。ここは保護領国境であり、仮想敵であるガシカン第三帝政と〈帝国〉の両方に近いからです。ただしこの宙域は今でも〈帝国〉に対する根強い反感があるため、プレイヤー・キャラクターは始めからアシミキギル連合などのジュリアン市民としてしまう方が楽でしょう。
 宙域の中心はメンダン・メインと呼ばれる、宙域を横断する長大な星系群であり、第三帝国と保護領の中枢を結んでガシカンまで通じています。以下に紹介するクーピッド星域はそのメインからは外れていますが、多様性に満ち、メンダン全体が今置かれている政治的・軍事的な葛藤の中心にあります。

(※メンダン宙域の星系設定は、設定者がUWPを「これは1065年当時のもので今は違うし、しかも帝国偵察局には偽情報を一部掴ませた」という体で設定を起こした上に、後のT5SSでUWPが更に改変されたため、現行のUWPと設定が噛み合わなくなっています。今回は設定やUWPをなるべく帳尻を合わせましたので、公式ではなく、あくまで独自設定だと思ってください)

クーピッド星域 Kupid Subsector


ギルール         0911 C776431-7 M 非工               G Na ヴァルグル2割
ウドゥビ         0913 C5657BC-6 M 農業             A G Na ヴァルグル1割
アルキム         0914 C564696-6 M 農業・非工・富裕   G Na ヴァルグル2割
シュルカル       0917 C599255-9 M 低人               G Na ヴァルグル2割
アギランニラ     0919 B9D8775-8                      G Va
アウハ・アー     0920 C8575AB-8 C 農業・非工・緑地 A G Va 人類5割
ヴァッチャーショ 1011 B420634-8   砂漠非工非農貧困   G Dr ドロイン4割
ニピトガ         1012 E774433-5   低技・非工         G Va 人類1割
イングシイム     1113 C72547B-7 M 非工               G Na ヴァルグル6割
キガバラ         1116 C200365-8 M 真空・低人         G Na ヴァルグル4割
シャーウトー     1118 D550244-6   砂漠・低人・貧困   G Na
スペクタクル     1119 D548426-7   非工               G JP ヴァルグル5割
カキミル         1211 BADA554-A K 海洋・非工         G Va
ヴウォバウー     1218 CAB9686-9   非工・非水       A G JP ヴァルグル4割
キイリシャル     1220 A100499-C   高技・真空・非工 A G JP ヴァルグル1割
ミコニー         1313 C583541-9   非工               G Na
イリシ           1315 A530463-D   高技砂漠非工貧困   G Jm ヴァルグル4割 クーピッド統治
クーピッド       1316 A99A978-D K 海洋工業高技高人   G Jm ヴァルグル1割
ウマスル         1317 B888449-A M 非工               G Jm ヴァルグル3割
ニイムダル       1320 C000412-8 M 小惑・非工           JP ヴァルグル6割
アマアズ         1411 B7CA131-9 K 海洋・低人・非水   G Na
ギイヌルムウ     1417 B200411-C K 高技・真空・非工   G Jm ヴァルグル7割
ダクド           1513 E969000-0   未開               G Jm
カキグン         1517 A7AA753-D   海洋・高技・非水 A G Jm ヴァルグル4割
サミット         1518 C9D87CC-6 M                  A G JP ヴァルグル3割
オッハイル       1520 B300745-A   真空・非農         G JP ヴァルグル2割
クビリイン       1613 B568556-C K 高技・農業・非工   G Jm ヴァルグル2割
コッシュニヒ     1615 C430100-C   高技砂漠低人貧困   G Jm
ディダグド       1617 D647577-6   農業・非工         G Jm ヴァルグル3割
クヌークスング   1619 A69A534-C   海洋・高技・非工   G JP ヴァルグル5割

 メンダン宙域のFに位置するクーピッド星域には30の星系があり、総人口は約11億人です。最も人口が多いのはクーピッドの10億人で、最も高いテクノロジーレベルはイリシ、クーピッド、カキグンの13です。
 ジュリアン保護領の傘下に16星系が属し、その内9星系がメンダン共同体に加盟しています。中立星系のうち、9星系が人類世界、4星系がヴァルグル世界、1星系がドロイン居住世界です。
(※基地コード:K=海軍基地、M=軍事基地、C=海賊基地 なお、「軍事基地」とは海軍基地機能を持たない基地の総称のため、例えば保護領内の基地Mの星系にあるのは「遠護局基地」です)
(※国籍略号:JP=ジュリアン保護領、Jm=メンダン共同体、Na=人類系中立星系、Va=ヴァルグル系中立星系、Dr=ドロイン居住世界)


シュルカル Shurkar 0917 C599255-9 M 低人 G Na ヴァルグル2割
 ここには恒星間国家の一員となることを長い間拒んできた小さな入植地があります。約400人の住民は全員が同じ「ヘレテック教団(heretech)」に属しており、傷んだ体の一部を同等の機械に置き換えて延命するサイバネティクス技術を信奉しています。住民は機能的な宇宙船を何隻か所有していて、補修部品や材料をレリジェム(メンダン宙域 0718 A562310-B)で定期的に入手しています。
 この星は優れた防衛設備と人口の少なさ、そしてこの奇妙な風習が故にこれまでヴァルグル海賊の標的とならずに済んでいます。それどころか、戦闘で体の一部を失った海賊の中にはサイバー化して欲しさに信者となる者すらいます。
(※レリジェム星系もTL11のため、サイバー化技術には少し届いていません。「レリジェムはサイバー化技術だけ進んでいる」とするか、同じバンメシュカ星域には高技術星系が3つあるので、そのどれかから輸入されたものをレリジェムのAクラス宇宙港で買い付けている、とすれば筋が通ります)

アギランニラ Ugirunnir 0919 B9D8775-8 G Va
 アギランニラは広大で寒冷な世界なため、人類よりは寒さに強いヴァルグルのみが居住しています。ガシカン第二帝政の時代には、人類に支配されない安住の地を求めた多くの逃亡ヴァルグルの避難先となりました。
 この星系では様々な自治体がばらばらに形成されており、それぞれが最適と思われる手法で統治を行っています。自治体相互の協力関係は希薄ですが、紛争も少ないです。そして、同じヴァルグルでも海賊はここでは歓迎されません。
 ジュリアン保護領がメンダン共同体を吸収して以降、この星の貿易量は増加し、人類に対する否定的な見方も和らいできています。
(※超濃厚大気に関する設定はありませんのでレフリーが用意する必要がありますが、大気D世界は「高地に居住している」が定番です)

アウハ・アー Oukh Ull 0920 C8575AB-8 C 農業・非工・緑地 A G Va 人類5割
 この農業星系のヴァルグル住民は人類の農場主の奴隷でしたが、ガシカン第二帝政の崩壊とともにヴァルグル海賊がここを襲撃し、結果的に奴隷たちの反乱を手助けしました。
 それ以来、海賊の長であるヴァイグヴォラ(Vaegvar)はこの星の慈悲深い独裁者となり、若い農民たちに海賊になるよう勧めています。実際、ヴァルグル海賊団アイキ・アイゴ(Aek Aeg)の構成員の多くは、この星の出身者が占めています。

キガバラ Kigabala 1116 C200365-8 M 真空・低人 G Na ヴァルグル4割
 キガバラはユーカジューク(Uekdhuegh)率いるヴァルグル海賊に制圧された小さなドーム型入植地で、7000人の住民は命の危険に晒されています。
 ちなみにユーカジュークは、ガシカン第二帝政の残滓に破壊と破滅をもたらすことを目的とした大海賊団アイキ・アイゴの幹部でもあります。
(※政治6の解釈でこのような設定ができたと思われます。現行設定ではクーピッド(1316)の統治下にありますが、こちらだけメンダン共同体入りしてないのもおかしいため削除しました)

イリシ Irisi 1315 A530463-D 高技・砂漠・非工・貧困 G Jm ヴァルグル4割 クーピッド統治
 イリシはクーピッドの植民地として約150年の歴史があり、悪環境ながらも繁栄を続けています。

クーピッド Kupid 1316 A99A978-D K 海洋・工業・高技・高人 G Jm ヴァルグル1割
 この星域におけるメンダン共同体の中心星系である海洋世界のクーピッドは、天然資源と固有の水生生物に満ちています。気流を利用して繁殖する海棲生物によって大気は汚染されており、特定の季節には(ほとんど害はないとはいえ)肺感染症を防ぐためにフィルタマスクを装着することが推奨されています。
 このクーピッドからジャンプ-1で行き来可能な小星系群を総称して「クーピッド星団(Kupid Cluster)」と呼びます。
(※設定上ここを星図上の貿易・通信路が通らないのは不自然であり、旧設定では確かに通っていたのですが、現在の設定ではおそらく誤植でイリシを経由しているので独自に修正しました)

ウマスル Umasur 1317 B888449-A M 非工 G Jm ヴァルグル3割
 この星は、破滅的な混乱状態から近代的な星系へと変わりつつあります。地表には天然資源が豊富にあって大きな可能性を秘めていますが、産業インフラが整っていないためにこれまで発展を阻まれていました。TL10の新しい技術は地元の人々の再訓練に焦点を当てながら慎重に導入され、限定的な移民と出産への補助金支給によって人口は数十年前と比べて遥かに増加(※人口4が6に)しています。
(※旧設定ではTL7でした。また前述した通り、ここに限らず保護領内の基地コードMは「遠護局(ファーガード)基地」を表します)

ギイヌルムウ Giinurmuu 1417 B200411-C K 高技・真空・非工 G Jm ヴァルグル7割
 ここは、3つのガス惑星の衛星に鉱物資源が見つからなければ入植すらされなかったであろう星系です。ここの実質上の「主要世界」は惑星でも衛星でもなく、ジャンプ点近くに建設された採掘基地「ギイヌルムウ・ステーション」です。
 この星の採掘者のほとんどはメンデレス社の資源開発事業部に属していて、採掘基地は加工と出荷の拠点として稼働しています。ギイヌルムウ・ステーションには星系内の採掘船を修理するための小さな造船所があり、また、地元の鉱夫たちのための娯楽施設や居住区が用意されています。

カキグン Kakigun 1517 A7AA753-D 海洋・高技・非水 A G Jm ヴァルグル4割
 惑星カキグンはメタンの異種大気で、住民のほとんどは希少な陸地の小さな都市に住んでいます。
 この星は現在、スターレギオンの封鎖下にあります。ガシカンの工作員が仕組んだと思われる種族間の争いにより、憎しみの地雷原と化しているのです。メンダン共同体の代理人は対立派閥の武装解除や停戦に持ち込むことができず、スターレギオンの介入を要請しました。しかしそれ以降も状況は悪化しており、技術レベルや文化的行為が著しく低下しています。かつて栄華を誇ったAクラス宇宙港も、今ではCクラス相当のサービスしか提供できなくなっています。
(※ここは旧設定ではTL7のレッド・トラベルゾーンでした。レギオンの介入でアンバー程度にまで抑え込まれているが、生産水準は実質TL7まで低下していると解釈すべきでしょう)

サミット Summit 1518 C9D87CC-6 M A G JP ヴァルグル3割
 サミットは大型な世界で、いくつかの巨大山脈の頂上部に居住可能な地帯が存在します(そしてこれが星系名の由来です)。地元の人々にはヴァルグルに対する古風な偏見が今もあり、保護領から追い出されないためにもそれを抑え込むよう星系政府は強権的で、治安レベルも高く保たれています(※将来の民主化と規制緩和は公約されています)。その努力もあって反ヴァルグル感情は低下しつつありますが、特にヴァルグルの旅行者は今も注意が必要な星であることに変わりはありません。

ディダグド Didagud 1617 D647577-6 農業・非工 G Jm ヴァルグル3割
 この星の大気汚染の原因は、発電や暖房で石炭に大きく依存しているためです。メンダン共同体はディダグドを星域中に農産物を広く供給できる可能性のある星と見て、大気を浄化するために水力発電などを導入するよう働きかけています。
 ディダグドには未だに様々な国家が混在していますが、農産物輸出が定期的に行われるようになってから、星系政治にも安定した影響が出始めています。

(※星域設定補足:中立星系にある各種基地ですが、それらの多くの星の人口規模では単独で維持できるとは思えません。特にアマアズ(1411)は旧設定では基地コードMでしたが、誤植によってか「宇宙港Cなのに海軍基地があったニイムダル(1320)」と入れ替えられたのか、人口1なのにも関わらず海軍基地を持たされています。解釈としては「ガシカン第二帝政時代の遺構」としてしまう手もあります)


【ライブラリ・データ】
ケンギコン Kengighon 0122 C30078B-9 C 真空・非農 A G Va 人類2割
 メンダン宙域で未だに奴隷制がある世界の一つです。かつてはヴァルグルには厳しい、時に無慈悲な扱いがなされていましたが、1110年に起きた反乱でヴァルグルは人類を奴隷にし、これまで受けた仕打ち以上に残忍な扱いをしています。この事件に対し、ガシカンやジュリアンが介入すべきなのか、またどのように行うべきかを巡って、今でも多くの論争を引き起こしています。

クフェッラン Kferrun 1126 E568000-0 未開 A G JP
 スターレギオンは「安全保障上の理由」で、この何もないはずの星系になぜか介入を行いました。
 実は古い星図ではこの星系に数百万人のヴァルグルが居住していたことになっており、ここで生物兵器の人体実験が行われたのではないかとの疑惑が浮上しています。その中には、ガシカン第二帝政が狼滅計画で使用したものも含まれているはずだと。
 スターレギオンはこれらの疑惑を古い情報自体が元々誤りだと説明していますが、陰謀論者は駐留部隊が(保護領では極めて異例の)人類のみで構成されているのがその証拠であると指摘しています。

デキイ Dekhii 1321 A57A89C-A 海洋 A G JP ヴァルグル7割
 ヴァルグルと人類がほぼ半々に土地を分け合っているデキイでは、両種族がこの海洋世界の唯一の島の支配権を巡って、約100年間も争っています。

ルムダ Lumda 1329 A4009A6-D 工業・高技・高人・真空・非農 G Jl ヴァルグル4割 ルムダ首都
 ルムダ星系はルムダ寡婦産国の首都であり、ルムダ星域の中心です。この星に最初に入植した時は豊富な鉱物資源目当てでしたが、ジュリアン戦争の際に周辺星系から資本が引き揚げられた結果、行政の中心地にまでなったのです。
(※各種設定との兼ね合いで、現行の政治7を旧設定のAに差し戻しました)

ラスラ Lasla 1634 A532ABA-E 高技・高人・非農・貧困 G Jp ヴァルグル4割 ピルバリシュ首都
 ラスラはピルバリシュ星連の首都ですが、かつてのジュリアン戦争の際には〈帝国〉占領地域での抵抗運動やゲリラ活動を支える秘密拠点として活躍しました。メンダン・メイン上にあることから現在では貿易や商業の中心地となっており、メンデレス社の輸送通信事業部本部や、帝国事業部の主要支社が置かれています。近隣のヴァルグル国家からのほとんどの物流は、このラスラを経由してウホンジ平等国など保護領各国へと向かっていきます。

オジロケ Ozrake 1822 B533776-9 M 非農・貧困 A G Jv ヴァルグル3割 ヴグロラ首都
 この星系にある7国のうち、5国はヴグロラ統治国に加盟していますが、残る2国は統治国にも保護領にも正式加盟していないため、保護領も手を出せません。
 ちなみにオジロケには「ハフェスト・ロッキ種族間関係研究所(Khfesto Rrak Institute of InterSpecies Relations)」という、人類やヴァルグルを社会学的に研究する有名な学術機関があります。

ググド Gugud 2330 D6638AE-6 A G Ja ヴァルグル6割
 この星では、種族ごとに職業に制限があります。例えば、人類は医学や科学や工学に関連する高度技術の専門職に、ヴァルグルは弁護士や経営者や管理職、販売やサービス業などに就いています。他種族の仕事をすることは違法であり、厳しく取り締まられます。

エサソラ Esusar 2435 A79A658-D K 海洋・高技・非工 G Ju ヴァルグル3割 ウホンジ首都
 ウホンジ平等国の首都であるエサソラは、海上に浮かぶ唯一の都市に200万人の人々が住んでいます。人口の7割は人類ですが権力はヴァルグルの方が強く、社会の役職の6割はヴァルグルが占めています。これらのヴァルグルの多くは、かつて〈帝国〉から逃れてきた難民の子孫のため、反帝国感情が保護領の他国よりも残っているのが実情です。
 この星系の経済面での影響力の強さは、ウィンドホーン宙域方面との貿易によるものです。

シャイジ Thaedh 2634 B578888-A K G Ju ヴァルグル3割
 数百年前からヴァルグルと人類が入植し、それぞれが別々の地域に居住していますが、一つの星系政府が統治を行っています。ヴァルグル地域は順調に発展してTL10の恩恵を十分に得られていますが、人類地域は発展途上であり、しかもヴァルグル側からの援助を拒み続けています。

メンダン Mendan 2909 A768988-E K 高技・高人 G Jm メンダン首都
 第一帝国時代のメンダンは、商業・軍事・文化のあらゆる面でメンダン・メインを通じてヴィラニ人統治の中心的な役割を果たしていました。
 ガシカン第二帝政の崩壊後、メンダンおよびメンダンが統治する世界の多くは第三帝政ではなくジュリアン保護領との提携を選びました。これらの世界は現在「メンダン共同体」を形成しており、メンダンはその首都となっています。
 保護領に加盟して以来、種族間の憎しみの過去を克服するための強い努力が一定の成果を上げています。保護領の他の国家との貿易量の増加と、メンダン自身の影響力が相まって、宙域のコアワード方面全体に寛容さが広がっています。近年、メンダンは社会問題に積極的なメンデレス社と手を組み、人々の寛容の模範となるように影響力の高い役職にヴァルグルを積極的に登用しています。

ニイマグ Niimag 3016 C565731-8 M 農業 JP ヴァルグル6割
 ヴァルグルが多数派の世界ですが、人類は貴族、ヴァルグルは召使いとして共存しています。人類はヴァルグルの福祉を真剣に考え、ヴァルグルは誇りを持って人類に忠誠を捧げています。よって、ヴァルグルを「解放」しようなどとする外世界人に対しては激しく抵抗します。
(※元々はユーリジ(1124 C42276B-9)の設定でしたが、内容とUWPが全く噛み合わなくなってしまったので、この星に独自に移植しました)


【参考文献】
・Challenge #49 (Game Designers' Workshop)
・Julian Protectorate (Angus McDonald)
・Zhodani Base
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MT日本語版30周年企画:ガシカン帝政とイレアン人

2021-06-06 | MegaTraveller
 人類のヴァルグルに対する対応で、アシミキギル連合(ジュリアン保護領)の対極に位置するのがガシカン第三帝政(Third Empire of Gashikan)のイレアン人(Yileans)です。彼らは人類の闇の部分であり、ある意味で勝利の姿でもあります。
 イレアン人は〈帝国〉の銀河核方向(コアワード)国境外のにあるガシカン星系を母星とする、群小人類の中では最も広い勢力を持つ種族です。彼らは「ガシカン帝政」を築き、ガシカンやトレンチャンなどの宙域を制しています。そして彼らは、ヴァルグルに対する強い憎悪で知られています。


(※現在の設定では「Trenchans」宙域になったようですが、今回は旧設定の「Trenchan」を採用します)

■歴史
 惑星ガシカンは、いくつかの孤島を除けば陸地全体が一つの超大陸にまとまっています。太古種族によってこの星に持ち込まれたイレアン人がTL2手前に到達した頃には、早くもガシカンという名の統一国家を築いていました。この国は反乱や自然災害で崩壊しかけた時もありましたし、時代の流れで世襲君主やカリスマ独裁者や財閥評議会など政権が移り変わりもしましたが、常に統一国家として再建され続けました。その結果、イレアン人は複数の政府が林立することをまるで無政府状態のように恐ろしく思うようになりました。
 -4400年頃、TL2だったガシカン星系にヴィラニ人商人がやって来てイレアン人と初接触し、ヴィラニの政治体制への統合は急速に進みました(※第一帝国はガシカン宙域を正式領土化していなかったはずなので、属領と思われます)。自治権が失われることを危惧した者もいましたが、多くのイレアン人はより大きな恒星間「統一国家」の一部となることを歓迎したのです。その後200年でガシカンは、ヴィラニ人の統治下でTL9の産業世界へと変貌しました。

 第一帝国(ジル・シルカ)の崩壊はイレアン人に大きな落胆と恐怖を与えましたが、代わってやって来たソロマニ人とも彼らはうまくやっていきました。そのソロマニ人の統一国家も混乱の中で呆気なく消え去り、暗黒時代の荒廃の中でガシカンの人々は失われた帝国を一部でも再建し、自分たちの世界を破局から守ろうとしました。
 人類国家の圧力が失われたことで、無防備となったアムドゥカンやガシカンの各宙域にはヴァルグル海賊が侵出してきました。この驚異に対抗するためにイレアン人は-1784年に「ガシカン帝政」を建国しました。彼らは軍艦の建造数を増やし、海賊対策の哨戒を欠かさず、数々の掃討作戦も行いました。初めのうちは成功していましたが、最終的には海賊らは徒党を組んでガシカンの中央へと反撃を加えてきました。-1658年には首星ガシカンが核攻撃を受けて約4億人のイレアン人が犠牲となり、地表は略奪し尽され、ガシカン帝政は滅亡しました。
 ヴァルグルによるこの「ガシカン略奪(Sack of Gashikan)」以来、イレアン人の大半は全てのヴァルグルに対して深い憎悪を抱いています。イレアン人にとってヴァルグルとは、(彼らの信念に反する)混沌と混乱と無秩序の象徴なのです。

 -1646年、イレアン人は「ガシカン第二帝政(Second Empire of Gashikan)」を再建しましたが、この国の指導者たちはヴァルグルを疫病同然の、どんな手段を使ってでも滅ぼすべき存在と考えていました。第二帝政は生物兵器を多用し、ヴァルグルに特化した伝染病をも創り出して、-1000年頃にはガシカンの勢力圏内の全てのヴァルグルを根絶してしまいました。この時の記憶は今でもヴァルグルの中に残っており、いくつかのヴァルグル世界ではこの「種族間戦争(Race Wars)」で亡くなった数多の同胞を慰霊するための祝日が設けられています。
 種族間戦争が終わると、イレアン人のヴァルグルに対する憎悪は薄れていきました。目に見える範囲にはヴァルグルはもう居らず、国境外の大多数のヴァルグルがガシカンとの関わりを一切断ったために、イレアン人は憎むべき「敵」を失ってしまったのです。
 そんなガシカン第二帝政は、隣国のジュリアン保護領(Julian Protectorate)があろうことかヴァルグルと融和したことで急速に勢力を拡大していったため、その影に落ち込んで停滞期に入りました。傘下星系は徐々にまとまりを失い、ついには第二帝政は財政破綻と大規模内戦で1070年に崩壊しました。
 8年後、トレンチャン宙域に本拠を置く国家が内戦に勝利して「ガシカン第三帝政」の成立を宣言しました。この経緯から「トレンチャン帝国」とも揶揄されますが、首都は旧都ガシカンに戻されました。
 しかし内戦はガシカンに大きな傷を残しました。国境付近の、特にメンダン宙域の星系は第三帝政への合流を拒み、中にはより先進的で繁栄しているジュリアン保護領に加盟した星もありました。第三帝政は当然この状況を容認しておらず、国境紛争は頻繁に起こっています。

■イレアン人の特徴
 「純血の」イレアン人は比較的背が高く、体が細いです。成人男性の身長は約180センチメートル、体重は約50キログラムで、女性はそれよりやや小さくなります。興味深い点としては、肥満体にはなかなかならないことが挙げられます。これは、惑星ガシカンの蛋白質に適応したことで脂肪蓄積の仕組みが変化し、他の人類と比べて体脂肪率が著しく低くなったことが医学的研究で明らかになっています。
 変光星の主星(ソロマニ名:カイ・オフィウキ)からの周期的な紫外線から身を守るために、イレアン人は青黒い肌を持ち、頭髪は黒くて直毛(もしくは軽い波状毛)になりました。男女共に体毛や髭はほとんど生えていません。

 あえて「純血の」と但し書きをした通り、現在「純血の」イレアン人は母星であるはずのガシカン星系にはほぼ居らず、ガシカン国内でも5%程度のみとされています。ヴィラニ人の統治下にあった数千年の間に多くのイレアン人がヴィラニ人入植者と結ばれましたし、その後にやって来たソロマニ人とも同様だったからです。それでも国内のほとんどの人類はイレアンの血を引いています。青黒い肌と黒い直毛はこの宙域ではよく見られ、非常に好ましいものとされていますが、そういった容姿の人はたいてい上流階級に属しています。
 今やイレアン人というのは種族ではなく文化であり、ガシカン第三帝政の市民を指す言葉となっています。ガシカン国外にはイレアン人を先祖に持つ人が1億人以上いると言われていますが、自分をイレアン人だと考える人はほとんどいません。近隣諸国の人々には、それほどガシカン帝政の排外主義政策とイレアンの血筋は切っても切れない関係に見えるのです。

 イレアン人は平等主義で社会性を重視する傾向があります。彼らは集団で働くことを好み、社会的流行に流されやすいのですが、これは平均的な人類と大差はありません。
 ただ、イレアン人の心理の特異なことの一つに、ヴァルグルへの不寛容があります。これは文化的なものではありますが、何世紀にも渡って強化されてきたためにしっかりと根付いています。
 ガシカン帝政には400以上の星系があり、それぞれが独自の歴史と文化を持っています。反ヴァルグル感情はほとんど全ての星で共通していますが、その性質は3つの区分けのどれかに分類されます。

●中央
 首都ガシカン付近を含む中央地域では、ヴァルグルはほとんど知られていません。広範囲に及ぶ検閲によって、ヴァルグルに関する情報は一般市民には届かないのです。国外の情勢を知ることが必要な極一部の人々だけが、ヴァルグルに関する情報に接することができます。
 また、ヴァルグルに関する事は口の端に上るのも不適切だという風潮があります。ヴァルグルの映像や情報を見ることは異常者が行う不法行為と考えられていて、中央地域の住民のほとんどは歴史の教科書でヴァルグルに関する一文を見たことがある程度です。そんな人々が本物のヴァルグルに遭遇した場合、彼らは憎しみよりも不安や当惑を感じます。

●国境近辺
 ガシカンの国境付近では、中央とは全く状況が変わってきます。国内全ての星系でヴァルグルに永住権を与えることは有り得ませんが、国境付近の星系には最貧層のヴァルグルが低賃金の契約労働者として多くやって来ています。これらの労働者は二級市民扱いで、5年間の契約期間中は全員自分の位置を継続的に知らせる特殊な無線追跡装置を埋め込まなくてはなりません。
 この慣行は内戦による労働力不足に対処するために1079年頃から始まりました。やがてそれは解消したものの、多くの世界で「出稼ぎヴァルグル(Visit Vargr)」が安価で調整しやすい労働者であることに気が付きました。今ではこの地域のほとんどのガシカン市民は、重い荷物を運んだり、下働きをしているヴァルグルを日常の光景の一部として見ています。
 出稼ぎヴァルグルが人類の仕事を奪うとして嫌がらせを受けることはありますが、意外にも暴力を振るわれることは稀です(ただし時には過剰反応で暴行や殺害にまで至ることもありえます)。しかし政治的活動を行うヴァルグルは例外で、自分たちの社会的地位を向上させようと立ち上がれば、しばしば暴力と法律が襲いかかってきます。国境星系のほとんどには数多くの古い反ヴァルグル法が今もあり、社会的・政治的に問題を起こそうとするヴァルグルに粛々と執行されます。それが嫌なら、社会的差別と不愉快な暴言に耐えながら淡々と契約期間を終えて、蓄えた僅かな貯金を持ってさっさと故郷に帰ればいいだけなのです。

●危険地域
 中央と国境の間は、ヴァルグルに出会うことはほとんどないにも関わらず、彼らに対して最も偏見の深い地域です。ここの星系では公共の場でヴァルグルについて話すことを禁じる法律がありながら、多くの市民がヴァルグルの脅威について日常的に話し合っていますし、ヴァルグルを醜い悪役(出稼ぎヴァルグルがスパイやテロリストになるのは定番です)として描いたホロビデオも人気があります。仮にヴァルグルが地表に降り立てば、集団暴行や誘拐・拷問の対象となるかもしれません。
 この危険地域における一部の人々の言動は、ガシカン帝政やイレアン人全体への「排外主義者」との悪評をより助長しています。


■社会と政府
 多くのイレアン人にとって、地方自治や分権という概念は全く不可解なものとして考えられています。ほとんどの人々は中央集権の統一国家こそが唯一の道で、それ以外は完全な無秩序と捉えています。その結果、イレアン人の政府は何千年もの間、一枚岩で権威主義的でした。ヴァルグル政界の柔軟で混沌とした様相は、イレアン人が彼らを危険な蛮族と見続けている理由の一つです。
 秩序・統制・安定を尊ぶイレアン人の考え方は、政治の枠を越えて浸透しています。全てのイレアン人には社会の役に立つ人材となることが期待されていて、若者は定期的に行われる適性検査によって教育や職業の進路が定まります。進路選択の自由はありますが、身体的・経済的事情の変化によって人生設計が狂った時でもなければ、わざわざそこからはみ出すようなことは普通はしません。

 ガシカン帝政は3宙域の400以上の星々を統治していますが、その政府は極めて中央集権的です。一応国内の各世界はそれぞれ独自の政治形態を持ってはいますが、星系政府は純粋に地元の課題にしか責任を負いません。
 加盟星系にはそれぞれヴェリャ(Velja)と呼ばれる中央からの勅使が配属されています。ヴェリャは星間交易や防衛など、他星系との交流に関わる星系政府のあらゆる政治判断に対して拒否権を持っています。杓子定規過ぎるヴェリャは外交政策を全て自分で制御しようとしますが、ほとんどの場合は穏便に済ませます。ヴェリャの権力を抑えるために、各星系政府は2年に1度、ヴェリャの交代を中央に陳情することができます。また、ヴェリャの勧告を無視した星系政府は経済制裁を受け、最終的には国軍による軍事介入の対象となります。
 実際のところガシカン政府は〈帝国〉よりもかなり厳格なのですが、市民はヴァルグルの侵略から国を守るためにはこうするしかないと考え、統制を受け入れています。
 内戦が終結した今、ガシカン第三帝政はその関心の大半を国境に向けています。中央の星系が厳しく言われることはほとんどありませんが、国境世界には軍事訓練を受けたヴェリャが置かれ、国を危険に晒すような政策は一切許されません。そしてそれへの反発を抑えるために、第三帝政は国境世界の住民が受け取る報道などを厳しく管理しています。近隣のヴァルグル国家を恐れるように住民を扇動することで、政府への反発を減らしているのです。高い税金や厳しい法律に抗議する者は売国奴の烙印を押されるか、もっと悪ければ「愛犬家」という最低の汚名を着せられるのです。
 伝統的にガシカン帝政は養子王制で統治されていて、現在の統治者が予め貴族の中から後継者を定めておくのです。そしてこれは、今の統治者が死ぬか退位するまで秘密にされるのが習わしです。現在のガシカン第三帝政は先の内戦を制した女帝アイシリン(Empress Aithilin)が治めていますが、彼女も伝統に倣い、30歳の誕生日に後継者を定めています。


■情報安全省
 第二帝政の初期から存在する情報安全省は、法律上は政府の一機関ですが、多くの分野で独立して行動しています。省の表向きの使命は有害なヴァルグルの宣伝情報の拡散を防ぎ、国家全体の平和と統一を守ることにあります。
 この目標を達成するために、省職員は全ての報道や情報を慎重に管理しています。ヴァルグルに関する全ての情報は検閲されていて、ヴァルグルを英雄的・肯定的に表現しているものは抹消されるか、逆に悪役的・否定的になるよう編集されます。情安省は国内全星系の電子通信網を注意深く監視し、他国政府やヴァルグルに関する全ての情報を収集しています。
 外国人(※に限らないでしょう)が未検閲情報を国内で流布することは重罪で、監獄惑星での数年間の重労働刑となります。情報を通信網に流そうとすると、それはまず地元の情安省に転送され、職員はその内容次第で検閲を行うか、発信者を捜索します。
 2500年以上の歴史を持つ情安省は、ガシカン社会のあらゆる側面を形成してきました。今ではガシカン市民に提供される歴史・報道・娯楽作品の全てが、全くぶれのない一貫性を持って構成されています。しかしこれらの情報は、〈帝国〉やジュリアン保護領の市民が知っているものと微妙に異なります。例えば、国外に赴いたイレアン人は、ジル・シルカ崩壊の原因がヴァルグルではなかったことや、第五次辺境戦争でゾダーン軍をヴァルグルが大々的に支援していなかったことを知って衝撃を受けるのです。
 情安省は国内のあらゆる情報を統御することで、大きな権力を持っています。情安省職員以外では帝政の支配階級のみが無修正の情報に接触することができます。また、法律上禁止はされていますが、政治家や財界人が情報操作を行うこともあります。
 情安省本庁はガシカン星系の首都カスラ市(Khasla)にあります。現在の情安省長官は、内戦の際に多大な功績を残したヤーロブ・ミリーガル(Jarob Milligar)で、歴代長官と同じく彼もヴァルグルを嫌っていますが、ガシカンの脅威ではないと現状を分析しています。しかし国家の統一を維持するために、彼はヴァルグルへの恐怖心を利用して市民に帝政へ強い支持が向くように操っています(例えば、反出稼ぎデモを裏で支援していたり…)。ミリーガルはある意味で国内最強の権力者で、その強さの実態を市民はおろか女帝本人すら知りません。


■対外関係
 ガシカン帝政は、周辺の全てのヴァルグル国家とヴァルグルに友好的な国を程々に敵視していますが、人類のみのいくつかの小国とは緩やかな関係を維持しています。一方で、ガシカンが冷戦状態にある隣国のジュリアン保護領より経済力・技術力・軍事力の全てでも劣っているのは事実で、あまり刺激したくないと考えている節はあります(※保護領も内戦後のガシカンを脅威とは見ていません)。しかしガシカン第三帝政の存在自体が、過去の亡霊のように周辺宙域全てに微妙に影響を及ぼしているのです。
 〈帝国〉に対しては公式には中立です。両国の間には開かれた交易こそありますが、正式な国交や同盟関係はありません。しかし〈帝国〉内の人類至上主義過激派の中には、ガシカンとの関係を持つものが少なくありません。
 また、距離が離れ過ぎているために意義ある関係を結べてはいませんが、ガシカン帝政はソロマニ連合内の急進的な反異星人派閥と連絡を取り合っています。


■技術と貿易
 ガシカン国内では、首都ガシカンをはじめとするTL12が最高水準の技術で、ヴァルグル諸国との貿易が推奨されていないためにTL13以上の製品が利用できる世界はほとんどありません。
 実は情安省は特権でTL13の宇宙船や装備品を導入しています。特にTL13の200トン武装急使船(armed courier ships)はジャンプ-4が可能で、国内のどんな船よりも早く情報を得られて、反体制派の陰謀が広がる前に行動を起こせるのです。
 ガシカン国内の星系同士では定期便による貿易が行われていますが、国外の星との貿易は厳しく規制されているので珍しいです。国境を出入りする全ての船は、厳重な検査を受けます。
 ヴァルグルは国境星系への渡航が認められていますが、ガシカン国内の多くの世界ではヴァルグルの上陸を許可しません。そのためヴァルグル商人の多くは、人類や他種族を代理人に立てています。また、ヴァルグルがガシカン市民を雇うのは違法ですが、商人の中にはそうした「変り身」を用意して商売する者もいます。


【ライブラリ・データ】
ガシカン Gashikan 2732 A8679AD-C M 高技・高人・緑地 G 3G
 衛星を持たない惑星ガシカンには、古の戦争の傷跡が今もあります。最後のヴァルグルの襲撃から3500年以上が経ちましたが、かつての偉大な都市ニソリス(Nitholis)の放射能汚染は消えておらず、ヴァルグルの強欲さの象徴として廃墟が保存されています。ここで亡くなった人々を悼むため、今でも国内全土から観光客が訪れています。
 このような史跡を除いて、惑星はずっと前に核爆撃から回復して緑豊かな星に戻されました。その美しさを守るために、政府は移住と建築に厳しい制限を課しています。重要な仕事に雇われない限り、来訪者は60日以上滞在することはできません。ただし短期滞在者向けの査証は無料であり、観光業はガシカンの主な収入源となっています。
 ガシカンの土地の35%以上が、公的に保護された自然区域です。保護区域に仮設でない建造物を建てると重い罰金を科されます。誰もがこの広大な公園で自由に野営を楽しむことができますが、軌道上から監視されているので規則違反者は速やかに退去させられます。
 歴史的重要性と自然の美しさに加えて、ガシカンは帝政の伝統的な首都でもあります。1078年から1098年までは内戦の結末でその座を失っていましたが、1099年にガシカンに戻されています。
 女帝や高位貴族を守るために、ガシカンの法律はとても厳しくなっています。武装警察を除いて、誰も小さな刃物以上の武器を所有することはできません。狩猟自体が禁止されているので、来訪客も言い訳は不可能です。一方で、全ての公共の道路や建物内部に監視カメラ網が張り巡らされており、民家の内側を除いて惑星の全ては常時監視下にあります。監視網は武器の使用や暴力行為を自動的に検知し、警察は犯人を素早く特定することができます(ただし監視網は非暴力犯罪の自動検知はできません)。地元警察以外に、全ての監視網の記録は情報安全省からも閲覧できます。ちなみに情安省は、国内の人口5億人以上の全星系で同様の監視網を持っています。

ガントレット級武装急使船 TL13 Gauntlet-class armed courier
 200トンのガントレット級武装急使船は、ガシカン第三帝政情報安全省の特殊精鋭艦です。実はこの船は〈帝国〉製で、ベオウルフ級自由貿易商船を改装したものです。貨物空間の大部分と船室の一部が追加の機関部と燃料タンクに置き換えられたため、一見ただの低速商船のようですが、実際はジャンプ-4が可能です。
 情安省はこの船で、ガシカン国内のどの民間船や軍艦よりも早く星系間の情報や人員のやり取りを可能としています。この船の存在によって、情安省は国内の全ての報道や情報を効率的に管理することができるのです。現在、情安省には約300隻の急使船が配備されています。
 武装急使船の運用には、船長兼操舵士1名、航法士兼索敵士兼通信士1名、砲手2名、機関士2名、医師1名が必要です。また通常は、少なくとも1名の情安省職員(工作員)と2名のコンピュータ技術者が同乗しています。

ブレスカイン騎士軍団 Legion of Breskain
 ヴァルグルと戦うために、-612年に設立されたガシカンの騎士団です。同様の騎士団は先に存在していましたが、後々これに吸収されました。現在では公的機関ではなくなったものの、目的はそのままにいくつかの傭兵部隊を所有・運営しており、ヴァルグルと対立する人類の政府や企業に売り込みをしています。

狼滅計画 Project Wolvesbane
 ガシカン第二帝政は遺伝子操作によってイヌ科動物にのみ致命的なウイルスを創り出し、-1427年にヴァルグルの絶滅を狙って放ちました。それは検出が困難な上に感染力が強く、潜伏期間も長いため、ヴァルグルの交易網を通じて広がっていきました。
 ヴァルグルは無私の、時に英雄的な努力によってこのウイルスの拡散を阻止しましたが、結果的にガシカン国内からヴァルグルはほぼ一掃されてしまいました。


【参考文献】
・Challenge #49 (Game Designers' Workshop)
・Vilani & Vargr (Digest Group Publications)
・GURPS Traveller: Humaniti (Steve Jackson Games)
・Julian Protectorate (Angus McDonald)
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