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宇宙の歩き方

The Astrogators' Guide to the Charted Space.

MT日本語版30周年記念企画:『スナップショット ~回廊六景~』

2021-07-03 | MegaTraveller
「戦いは長く厳しいものになるでしょうけど、コリドーが生き残るための鍵は、武力ではなく個人個人の責任感と勇気なのかもしれませんね」
『コリドー・クロニクル』記者 レベカ・テソルジョ
1121年、モーラにて語る

 『メガトラベラー』に宇宙が移行した際に最も象徴的だった出来事は、皇帝暗殺事件を引き金にしてコリドー宙域がヴァルグルの支配下に置かれたことでしょう。これによりスピンワード・マーチ宙域を含むデネブ領域は中央の反乱から隔離された状態となり、幸か不幸かある意味で従来型の旅が保全されたと言えます。
 では、そのコリドー宙域はどうなってしまったのでしょうか。以下のライブラリ・データは、ヴァルグルに蹂躙されたコリドー宙域で重ねた取材内容をモーラまで伝えて来た記者、レベカ・テソルジョ(Rebeka Tesoljo)とサッド・シルミス(Thad Sirmis)の手記を再編集したものです。


帝国暦1120年のコリドー宙域(コアワード側)
(赤で着色されているのが旧帝国領)


【1】主を失った領地
カアス Kaasu 1209 AA7A9CD-F 海洋・工業・高技・高人 R G Vg 元宙域首都
 寒冷惑星のカアスの大気は、主力産業の副産物によって汚染されています。かつてヴィラニ人鉱夫たちは、この星の豊富な鉱物資源を求めてやって来ました。その後、鉱業から製造業・造船業へと主力産業は推移し、今では宙域内で最先端の技術世界となっています。兵站基地に近いカアスは帝国海軍の艦船や補修部品の主要な製造元であり、何社もある広大な軌道上の民間造船所では最新鋭の巡洋艦や駆逐艦から主力艦や弩級戦艦までが建造されています。また、小規模な造船所では対海賊艦(corsair-hunters)やヨット、探査艦や科学観測船などが造られています。カアスの人々は地元の造船業に誇りを持ち、主力艦の進宙式の日は市民の休日になるほどです。
 つい最近までカアスはコリドー宙域の首都でした。しかし、トオラスクーラジンのヴァルグル海賊がクキシュ星域に侵入したことで状況は一変しました。ルカン皇帝の命令で宙域の主力艦隊がコア宙域方面へ撤退させられた後も、宙域公爵クリストン・ランス・レーマン(Sector Duke Criston Lans Rehman)は自らの領地を守るために有象無象の艦艇をかき集めてカアスを進発し、必死に戦いましたが、1119年にアシマ(1515 E543942-8)にて核攻撃を受けて暗殺された、とされています。というのも、クリストン公の生存説は未だに宙域各地で囁かれ続けており、ある意味で人々の希望の(細すぎる)綱となっているのです。
 とはいえ希望的観測だけでは権力の空白は埋められず、海軍力も指導力も失ったコリドーは崩壊するしかありませんでした。宙域のほとんどの星系では新たな支配者にヴァルグルを迎えましたが、カアスでは異なりました。
 ここでは亡き公爵の弟であるヤン侯爵(Marquis Jan Rehman)が跡目を継ぎ、まず最先端の兵器でトオラスクーラジン傘下だった海賊団ヴァインググバイに脅しをかけて交渉に持ち込み、侯爵は惑星カアスとその衛星の支配権を確保しました。一方でカアス星系の残りの部分はヴァインググバイが手に入れましたが、これにより海賊はカアスに出入りする宇宙船の臨検が自由にでき、おまけに外惑星軌道のデライニー社の造船所を手に入れたのです。そこには当時、最新鋭のアルダスリン級惑星防衛艦の半数が係留されていました…。
 現地ではこの取り引きは現状ではやむを得ないとの声の一方で、ヤン侯がヴァルグルと通じて兄を売った見返りに権力を得たとの(根拠のない)見方もあります。
(※ちなみに、ヤンがカアス侯爵となったのはクキシュ公の娘であるエイミーラ・マクニール(Amyla McNeill)との縁談によって、と設定上されていますが、貴族の設定が未整備だった頃のものなので今となっては不自然です。ヤン侯は実はレーマン家の養子なのかもしれませんが…?)
(※ヤン侯爵がヴァインググバイを脅すのに使った兵器は、旧設定ではTL16でしたが、現在の設定では帝国内のTL16世界はTL15に引き下げられたため表現をぼかしました。研究中の新兵器やただの虚仮威しだったなど、レフリーが自由に考えてください)

【2】破壊された世界
レミシュ Lemish 1808 D79568C-A N 農業・非工 A G Va 元星域首都
 温暖で過ごしやすいこの星は星域首都であり、農業や工業の主要な生産地でした。
 しかし1118年に状況は一気に悪化しました。侵略軍トオラスクーラジンは安全保障税、つまりみかじめ料を要求してきたのです。星系政府がこれを拒否したため、彼らは見せしめの攻撃を行いました。宇宙港や工業地帯が集中して略奪に遭い、先端技術は失われ、一夜にして100万人以上が死亡したとされています(※宇宙港AがDになったため、軌道宇宙港は破壊されたかもしれません。また、TLは12から10に低下しました)。
 襲撃から2年が経過した現在でも復興は途上です。建物の修復すら半分程度で、再建は全くと言っていいほどにされていません。ヴァルグルが制宙権を握っているため定期的な貿易は途絶え、工場が稼働していても材料が届かないのです。現地の交通網は寸断されたままで、インフラが破壊されているので食料も水も不足しています。
 そして一番の影響は、家屋や産業が破壊されたことよりも、住民たちの精神と希望が破壊されたことです。再建も逃亡もできず、生活様式も全く変わってしまったレミシュの人々には心の拠り所がなくなってしまいました。
 そこに入り込むように、「服従新教(New Church of Submission)」なる何の役にも立たない疑似宗教が地方からじわじわと伸長し始めています。教会は「安全はつかの間のもの、人類の労働は無益」という諦観の教義を説き、運命に流されることで一片の平穏を得られるとしています。当然ながら大多数の人々の支持は得られていませんが、強引な改宗も辞さない積極的な布教活動も相まって、むしろヴァルグルよりも危険な存在になりつつあります。いつの日かこの教会が多数派になった時、それはレミシュの死を意味するでしょう。

【3】商人たちの天国
ギニング Ginning 2108 A6315AF-B K 非工・貧困 R G Ca
 薄い大気から差し込む恒星光で暑く乾燥したギニングは今、死んだはずのクリストン公が密かにここを拠点にしているという噂で注目の的となっています。
 それを抜きにしても、ギニングは政治的に興味深い場所です。遠くの星の知識人たちはここを「海賊同盟(Corsair Alliance)」の中心星系であると見做していますが、この「海賊同盟」は実際には「反海賊同盟」と言うべき存在です。そしてギニングは少ない人口に亡命者や反逆者たちが加わり、コリドー最後の自由な交流の場となっています。
 この同盟は散開していた海軍予備艦隊が7つの星系を守るために再集結して結成されたもので、トオラスクーラジンやイッロクといったヴァルグル、そして再興ヴィラニ帝国の3勢力に囲まれた不安定な地理上に存在します。しかし海軍戦力が海賊を食い止めたことで、再び安全な航行を可能とする空間が誕生したのです。
 やがて同盟は近隣勢力から注目を浴びることになります。同盟はヴィラニ人にとっては取るに足らない存在でしたが、ヴァルグルには格好の襲撃目標でした。そこで同盟の指導者たちは新戦略として、海賊には海賊で対抗することにしたのです。こんな世の中でも海賊が生き抜くのは容易ではなく、中には追撃されて困窮する海賊もいました。そんな海賊を同盟は迎え入れ、海賊はその恩義に報いました。
 同盟傘下の星系では英雄的な防衛戦を繰り広げる海賊は珍しくなく、軍艦と海賊船が肩を並べる光景も普通です。そう、部外者が「海賊同盟」と呼んだのは、この見た目だけを指したものなのです。
(※表題の「商人たちの天国」とは、おそらく領内で航路の安全が確保されているという意味でしょう。もしくは通商の規制や関税が緩いのかもしれません。なお、同盟の首都は現在の設定ではアルファイブ(2209 B578872-A)に置かれているため、記述を修正しました(ギニングは経済の首都、という解釈もあるでしょうが))
(※この設定ができた当時は知る由もないのですが、後に『GURPS Traveller: Planetary Survey 6』で、同盟傘下のダークムーン(2111 D78A66B-7)にSuSAG社運営の海中監獄があったことになりました)

【4】泥棒市
プランジ Plunge 2505 B5409CC-C CK 工業・高技・高人・砂漠・貧困 R G Vh
 砂漠世界であるプランジの地表には森も農場もありません。しかしここには80億もの人々が「砂岩の下」に住んでいて、曲がりくねったトンネルの先にある広大な水耕栽培の庭や湧き出る泉の恩恵を受けています。
 プランジの地下都市建設は、約500年前に莫大な富をかけた計画でした。なぜこの「岩の塊」にこれほどの資金が投じられたのでしょうか。それはこの星系がウシャムラ・メイン(Ushamla Main)の入り口という戦略的重要な立地にあったからです。最盛期にはこの星を幾多の船が通過し、帝国中央の星々と「鉤爪の向こう」との貿易路を担っていました。やがて主要航路はウシャムラ・メインからリムワード側に移りましたが、それでも貿易はこの星の富の源泉であり続けました。
 強権的な企業家が支配するプランジは、一見海賊とは無縁に見えます。しかし今では宇宙港にはヴァルグルの海賊船が平然と出入りし、造船所で整備を受け、乗組員が歩き回っているのです。
 実はイッロク宣言書国がこの星系を制圧した際に、貿易に経済を依存していたプランジの統治者は彼らに譲歩し、宇宙港を海賊に開放したのです。それは、どんな形でも安定した資金の流入がなければ民衆を養うこともできず、ましてや自分たちの豪奢な生活を維持することもできないからです。
 こうしてこの星系はコリドー宙域最大級の交易拠点から、最大級の盗品市場へと変貌しました。各地から略奪した戦利品を携えて、数パーセク離れた星から海賊がプランジに集まってきます。そしてここでは合法非合法問わず、ほとんど何でも手に入ります。
 プランジはある意味で開放的な港であり、強大なイッロクに守られてもいるため、もう一つの大切な商品である「情報」の取り引きも盛んです。商人や海賊が持ち込んだ、宙域各地の時に真実の、時に荒唐無稽な噂はヴァルグルや人類の耳に伝わり、必然的に金銭や商品が動かされます。
(※この内容で治安Cは流石に変ですが、宇宙港周辺だけ治安レベルが物凄く低いのでしょう)

【5】要塞星系
クキシュ Khukish 1606 A77A989-F 海洋・工業・高技・高人 G Na 元星域首都
 ここは最初期に入植された星系で、この海洋世界には第三帝国よりも遥か昔のヴィラニ人による遺構が存在します。彼らに限らずクキシュの人々は、海洋生物が持つ豊富なミネラルを利用して繁栄してきました。例えば、シュシムルという水陸両生の大型甲殻類は、クキシュの豊富な金属成分を殻に取り込んでいます。この生き物は定期的に古く窮屈になった殻を浜辺に脱ぎ捨てていくため、これを適切に処理すれば重金属の貴重な供給源となるのです。
 現在のクキシュ、そして隣接する農業世界シシュカラ(1607 B686654-C)はヴァルグルの支配を逃れた星系です。それは、別の意味で大きな犠牲を払ってでのことでした。ヴァルグルの侵攻を受けて、クキシュ政府は星系内の海軍戦力を前線に送らず、星域首都であったこの星の防衛に専念させたのです。つまりは他星系の帝国市民を見捨てる格好になったわけですが、ともあれ自前の防衛戦力に他星系からの合流もあって、クキシュの防衛網は鉄壁なものとなりました。ヴァルグル海賊の星系内への侵入は時々ありますが、ヴィラニ流の冷徹な戦術指揮と、何よりもヴァルグルの団結力の無さに助けられてクキシュは守られ続けています。
 クキシュ市民は、刻々と報道で伝えられる星系海軍の活躍によって得られた安全を享受していますが、戦いの推移をどこか他人事のようにも感じています。心配しているのは、軍艦に友人や恋人が乗っている人ぐらいです。いずれにせよ、シシュカラから先の様々な悲惨な出来事にはまるで無関心です。
(※シュシムルは900年代半ばに半知性があることが判明しています。その研究に生物学者に加えて古生物学者が加わったことから、太古種族による関与が疑われているのかもしれません)

【6】抵抗の灯火
コーラグフォーサ Koergfoes 0205 B54359A-B CK 非工・貧困 G Vf ヴァルグル世界 研究基地ε
 この星は農作物と帝国研究基地イプシロンで知られる、のどかな世界でした。ヴァルグルが多数派の40万人に満たない人口は、1119年にゾッロク連邦の標的になるには十分でした。星系政府は襲撃を回避するために早々と宇宙港を明け渡し、ゾッロクは「外部勢力からこの星を守る」ために進駐しました。
 しかしその保身は別の作用を生みました。星系政府が傀儡に成り下がったことで、これまで住民をまとめていた「威信」も失われました。ヴァルグルは威信ある者には従いますが、そうでなくなれば己に従います。かくしてコーラグフォーサは犯罪や暴力、テロ行為が横行する無法地帯となったのです。政権派の自警団も作られましたが、傀儡となった政権が威信を取り戻すには力不足でした。
 そんな中で、民衆の中で抵抗運動が盛り上がりを見せてきました。自警団とは逆に、海賊の傀儡となった官僚機構と戦い、海賊の企てを阻止することで、抵抗組織の闘士たちは人々の英雄となっていきました。
 法的根拠も資金源も、そして圧倒的武力もないコーラグフォーサの抵抗組織は、着実に人気と威信を高めました。最も有名な指導者は「オゾゾク(苦しめる者)」という偽名しか知られていませんが、外部勢力による支配という共通の脅威に対してヴァルグルと人類の団結を促す役割を果たしていました。
 でも、人気と正義だけでは戦いには勝てませんでした。1121年に入り、オゾゾクはついに政権に捕らわれてしまいました。彼は連行され、その裁判の様子は見せしめに星系内全体で生中継されました。
 しかし、オゾゾクの人気は高まる一方です。彼の逮捕と起訴が知れ渡っても、海賊を宙域外に追い返そうとする人々の気持ちは強まるばかりでした。彼が投獄された後も抵抗組織は政権打倒の新たな計画を練り続け、そして実行に移しているのです。
(※現在の設定ではここは「ヴァルグル世界」になっていますが、人類人口が5%未満とすればそこまで矛盾はしないでしょう)


【コリドー宙域の現状】
 1119年半ば現在、海軍による抑止力を失ったコリドーはヴァルグルによって分断されています。宙域では一般的な星間流通が途絶えており、商業宇宙船は自由に往来することはできません。
 今のところ、ゾッロク、トオラスクーラジン、イッロクといったヴァルグル勢力によって星々は制圧され、そうでない星系も襲撃を受けています。しかしそれらの上に立つのが、ディーポ(コリドー宙域 1515)の制圧と人員の強制徴用で最高の地位に上り詰めた海賊団ヴァインググバイです。兵站基地の司令官アンドレアス・シャビエル提督(Depot's commander, Admiral Andreas Xavier)を従えたこの海賊団は、他の海賊や侵略勢力をも支配し、新たな「ウィンドホーン同盟(Windhorn Alliance)」の旗の下に全てを強引に結合しました。
 現在、ここの宇宙空間を支配しているのは、数では劣っているもののヴァルグル海賊です。帝国最強と謳われたコリドー艦隊が対デュリナー戦線へと引き抜かれた後、ヴァルグル海賊に対抗できるのは点在する予備艦隊のみです。
 この特異な状況により、侵略者は限られた人的資源を割いて占領政府を立てることなく宙域を支配することが可能となっています。「ヴァルグルに従えば略奪を免れられる」という甘言は、貿易や通信の途絶への恐怖感も相まって、今の各星系政府には独立の精神よりも魅力的に聞こえるのです。コリドー宙域の人類は恭順派と抵抗派に分裂し、両者の溝は深まる一方です。
 残念ながら、コリドーの安定はすぐには望めそうにはありません。デネブ領域は侵入してくるアスランやヴァルグルへの対処で手一杯で、ヴィラニ人は何の助力もしてくれず、そもそも通信が宙域外に出られないために援軍は期待できません。コリドー艦隊の帰還は近いだの、(壊滅したはずの)レーマン艦隊が研究基地で新開発された超兵器でヴァルグルを蹴散らしているだの、様々な噂は飛び交っていますが、いずれも根拠はありません。
 皮肉なことに、今のコリドーを唯一まとめられそうなのはヴァインググバイなのかもしれません。実はヴァインググバイは内部抗争を抑止したり、星間交易や通信の再建も始めています。あくまでヴァルグルの支配下で、宙域が落ち着きつつあるのは否めません。しかし本当に、抵抗ではなく服従こそが平和な生活を取り戻す近道なのでしょうか…?
(※シャビエル提督が降伏の条件として兵站の人員ごと海賊に従ったのか、海軍を裏切ったのかは不明です)


【ライブラリ・データ】
コリドー宙域 Corridor Sector
 大裂溝によって大きく分断された267星系から成る宙域で、69星系がリムワード側、149星系がコアワード側にあります。コリドー宙域は、ヴランド宙域と辺境のデネブ宙域やスピンワード・マーチ宙域を結ぶ「回廊」であることから、140年にそう名付けられました(それ以前は古ヴィラニ語で「アムシャギ」と呼ばれていました)。
 第一帝国時代はヴィラニ人の関心が他所に向けられていたため、鉱物資源が豊富だったミケシュ(0206)や、貴重な生物の居たクキシュ(1606)などごく限られた入植地しか建設されませんでした。その後、-2400年から-1700年にかけてのヴァルグルの拡大によって大量のヴァルグルがこの宙域に流入し、ここが以前から思われていたよりも遥かに戦略的に重要であることが示されました。
 第三帝国が建国されてスピンワード方面への拡大が始まると、帝国はヴァルグル戦役(220~348年)を起こして暗黒時代から定住していたヴァルグルたちを追い払い、この宙域に確固たる帝国領を確立させました。それ以降コリドー宙域は、中央から辺境方面への交通の要衝としてあり続けてきました。
(※旧設定でのコリドー宙域の古名は「エネリ」でしたが、そのエネリ自体がヴィラニ人の最も典型的な名前(アングリックなら「ジョン」と同等)と被ることもあってか、後に修正されました)

コリドー艦隊 Corridor Fleet
 帝国海軍がコリドー宙域に配備している艦隊の総称です。大裂溝の存在によって平均星系密度が他所より低いにも関わらず、その地理的重要性ゆえに、コリドーには他の宙域と遜色ない戦力が配置されています。基本的に番号艦隊は1星域に1つですが、コリドーのコアワード側では1星域に2個艦隊が配置されているのです。
 コリドー艦隊の主な任務は、商業交通と情報の流れを維持し、海賊や敵国から領土を守ることです。コリドー艦隊はデネブ領域の艦隊の援軍の役割もあり、その地域の安全保障も担っています。そして国境付近に配属された艦隊は常に海賊の襲撃を受けるため、帝国の中でも最も戦闘経験が豊富となっています。

コリドー・クロニクル The Corridor Chronicles
 『コリドー・クロニクル』は、コリドー宙域の歴史・地理・文化・経済・人物・大衆思想等々についての総合百科誌です。183年にカアス(コリドー宙域 1209)にて創刊されたこのクロニクルは、ヴランド(ヴランド宙域 1717)の『AAB百科全書』とトラベラー・ニュースサービス(TNS)の中間的存在です。クロニクル本誌は4年毎に全面改訂されますが、頻繁に情報更新がされています。
 コリドー宙域で最も有名な民間情報企業であるクロニクルは、反乱による混乱にも関わらず、その社是である「真実に忠実であれ」を守るために日々努力しています。偏りのない報道を行うために、2名以上の記者が別々の視点から一つの記事を担当することもよくあります。

ウシャムラ・メイン Ushamla Main
 コリドー宙域のコアワード側に位置する、34星系が連なる星団のことです。古くは重要な貿易航路として多くの船が行き来していましたが、ジャンプ技術の発達によってその流れはリムワード寄りになりました。それでもヴァルグル交易の玄関口としての役割は健在です。
(※この「ウシャムラ」が何を指す言葉なのかは不明です)

ディーポ Depot 1511 A686354-E D 高技・低人・緑地 A G Im 軍政
 帝国暦1世紀に、破天荒な星間探検家H・A・エンダースによってこの星系の探査が行われました(主星エンダースの由来は彼女の名からです)。結局限られた資源しか見つからなかったため、主要航路に近くより豊かな星系への入植が優先され、この星は放置されました。そのため、第一次大探査の時点では686-901と星図に記載されています(ちなみにその後、「カムー・ラーン」と改称されました)。
 帝国はスピンワード方面への探査と入植を切っ掛けにして、この星系に海軍基地を建設して、増加する商船の往来を保護することにしました。数百年間この基地は使命のために拡張を繰り返し、やがて海軍最高司令部はここをコリドー宙域の兵站基地としました。対ヴァルグル戦の補給確保が主任務ではありますが、艦隊の集結拠点としてゾダーン国境の維持にも戦略的役割を果たしています。
 この惑星は海軍施設周辺を除き、ほとんどが未開発です。比較的穏やかな気候で、地軸傾斜が少ないため季節による気温変化があまりないのが特徴です。そのため自動化された農場や牧場が広がり、基地や艦隊に食料を供給しています。
追記:1118年以降、ディーポはヴァルグルに占領されています。
(※帝国暦0年当時の星図には「第二帝国時代の放棄されたルウグ兵站基地」の存在が記されているそうですが、時代背景を考慮すると実在は疑わしいです。また、T5設定ではここは設定不詳の群小種族ミイミンリ(Miiminri)の母星とされました。しかしながら星系総人口9000名の数%と、保護しなくて大丈夫なのか心配な数です)

ウルサ Ursa
 地球連合の企業ジェナシスト社が、ドルフィンなどと同様にテラ原産の動物に遺伝子操作を施して生み出した知性化種族です。
 (彼らの伝承では)第二帝国時代の同社はクマに知性を与えて高重力の植民地開発の手助けをさせる計画を進めていましたが、それは中途で破棄されることとなり、「駆除」を恐れたウルサは脱走しました。そしてヒグマ型のウルサはレイ宙域に、ツキノワグマ型はコリドー宙域のシシュカラ(1607)とタミラア(2006)まで逃げ延びて今の帝国市民としてのウルサの祖先となり、結果的に研究が成功していたことを証明しました。
 ウルサは仲間意識が強く、仲間の命のために自分の命を投げ出すことも厭いません。ただ、他種族との行動は好まず、心を開くまでは話しかけられても最低限の返答しかしない傾向があります。彼らは四つん這いで歩くことが多いですが、二足歩行も可能です。また、普段はズボンや靴の類は着用しません。
 故郷の星を出たウルサのほとんどは、その体格を生かして傭兵や護衛になります。

栄えあるトオラスクーラジン Glory of Taarskoerzn
 869年に結成された「栄えあるトオラスクーラジン」は、元々ウィンドホーン裂溝の端に位置する7つの星系から成る緩やかな集団でした。しかし900年代後半の路線対立の結果、非常に過激な派閥が権力を握りました。それは「選民教会(Church of the Chosen Ones)」の影響を強く受けていて、教義でもある銀河征服に傾倒していました。ただ、当時のトオラスクーラジン軍は比較的小規模だったため、現実味がないことも理解はしていました。
 同時にトオラスクーラジンの歴代指導者たちは、隣接する強国のイッロクの下に甘んじていることを苦々しく思っており、時が来ればイッロクに一泡吹かせようと秘密裏に計画が練られていました。
 ストレフォンの暗殺とそれに続く帝国の分裂により、「その時」は不意にやって来ました。トオラスクーラジン政府は今こそ銀河征服の好機到来と見て、傭兵海賊によって増強された軍隊はイッロクの領土を突っ切ってコリドー宙域に強引になだれ込みました。
 トオラスクーラジンの奇襲は当初はうまくいっていました。略奪は帝国領とイッロク領の双方に対して行われ、機先を制されたイッロクはコリドーの侵略に出遅れて状況はますますトオラスクーラジンに有利に働きました。
 ところが順風満帆に見えたトオラスクーラジンの思惑は大いに狂います。海軍の助勢として加えていた海賊団ヴァインググバイが、帝国海軍の兵站基地(ディーポ)を陥落させるという、誰もなし得なかった偉業を達成したのです。兵站の莫大な軍事資源を手に入れたヴァインググバイは、瞬く間に威信を高めて他の海賊を平らげ、今や海賊の方がかつての主人らに政策の指図をするほどです。

イッロク宣言書国 Irrgh Manifest
 プロヴァンス宙域にある恒星間国家です。400年代初頭に星々を束ねる宣言書が調印されて以後、首都イガンフォクソ(プロヴァンス宙域 1731)を中心にして数星域を支配してきました。
 イッロクはトオラスクーラジンの仇敵で、両国は頻繁に小競り合いを続けてきました。帝国の反乱以前のトオラスクーラジンは小国に過ぎませんでしたが、1117年にトオラスクーラジンは海賊を雇い、イッロク領内を抜けて帝国へと向かう進軍路を切り開きました。これによりイッロクは事実上分断され、スピンワード側とトレイリング側が別々にコリドー宙域に乗り込む羽目になりました。
 結局トオラスクーラジンとの侵略競争では遅れを取った上に、ついにはトレイリング側が他の海賊と同様に、兵站基地を得たヴァインググバイの支配下に置かれてしまいました。ヴァインググバイは元はと言えばトオラスクーラジンの配下でしたから、この下剋上はイッロクの指導層には二重に屈辱的でした。ヴァインググバイが許せばイッロクはトオラスクーラジンの星系に報復したでしょうが、そんな訳にもいかず、現状ではコリドーの人類世界で八つ当たりするほかないのです。
(※現在のT5SSによる「1105年設定の」プロヴァンス宙域図では、「1120年設定の」国境線が反映されてしまったために、早くもイッロク領は分断されてしまっています)
(※本来のManifestには名簿や目録、伝票程度の意味しかないはずです。それでは国家名として威厳がなさすぎるので、Manifestoの方の意味である宣言書を採用しました。ただし本当に「加盟星系の名簿」程度の意味しかないのかもしれません、ヴァルグルなので)

ゾッロク連邦 Dzarrgh Federate
 ゾッロヴァイラ(プロヴァンス宙域 0224)で1090年に結成されたゾッロク連邦は、その後6年間、プロヴァンスとトゥグリッキの両宙域にまたがるように拡大を続けました。この近辺で恒星間組織が誕生するのは実に-2530年以来で、長年独立していた各星系は当初抵抗はしましたが、最終的に連邦の理念と軍事力、そして下に入れば得られる利権の方が勝りました。
 実質名ばかり、と言うにふさわしいほどの非常に緩やかな連邦政府の下で、各加盟星系は極めて高度な自治権を持ち、統一された司法制度や通貨もなく、課税すらあまり行われていません。個人の自由は制限されず、海賊行為すら公認で(国軍が行う場合すらあります)、加盟前からの文化風習もそのまま残されています。これらを指して、国家ではなく単なる地域に過ぎない、とまで言う政治学者もいます。
 反乱前の連邦は帝国の主要貿易国であり、友好関係を築いていました。しかし帝国の崩壊とコリドー艦隊の撤退は、彼らには貿易以上の利益を得る好機に映ったのです。加えて帝国領を略奪することで、反帝国の機運が高まっていた加盟星系の不満を宥めることもできます。かくして通商と外交が突然停止され、連邦軍と傘下海賊はデネブとコリドーに押し寄せました。コリドーの物流が寸断されてデネブ領域は孤立し、デネブ領域海軍や国境警備隊も少なからぬ損害を受けました。
 隣国のイッロクとの領土問題で何度か小競り合いが生じた後、1119年初頭にヴァインググバイの仲介でキラグ(同 0731)にて両政府の代表者が会談を持ちました。わずか3時間の協議の末、両国の不可侵と対帝国軍への連携が合意されました。ただ、この会談に人類が立ち会っていたことから、ヴァインググバイの背後にはデネブ関係者がいるのではないかとの疑念も生じています。

ヴァインググバイ Vaenggvae
 元々はトオラスクーラジン配下の海賊に過ぎませんでしたが、コリドー宙域の帝国兵站基地を占拠して威信を極端に高めてからは、コリドーでのあらゆる物事が頭目のラウグズーロの指先一つで動かされています。


【参考文献】
・Short Adventure 8: Memory Alpha (Game Designers' Workshop)
・Vilani & Vargr (Digest Group Publications)
・Travellers' Digest #18,#19 (Digest Group Publications)
・MegaTraveller Digest #1,#2,#3 (Digest Group Publications)
・Traveller20: The Traveller's Handbook (QuickLink Interactive)
・Planetary Survey 5: Tobibak (Steve Jackson Games)
・Planetary Survey 6: Darkmoon (Steve Jackson Games)
・Alien Module 2: Vargr (Mongoose Publishing)
・Great Rift: Book 1 (Mongoose Publishing)

MT日本語版30周年記念企画:クーピッド星域とメンダン宙域

2021-06-12 | MegaTraveller
 1100年代のジュリアン保護領を舞台とした旅や冒険に最適なのが、メンダン宙域と考えられます。ここは保護領国境であり、仮想敵であるガシカン第三帝政と〈帝国〉の両方に近いからです。ただしこの宙域は今でも〈帝国〉に対する根強い反感があるため、プレイヤー・キャラクターは始めからアシミキギル連合などのジュリアン市民としてしまう方が楽でしょう。
 宙域の中心はメンダン・メインと呼ばれる、宙域を横断する長大な星系群であり、第三帝国と保護領の中枢を結んでガシカンまで通じています。以下に紹介するクーピッド星域はそのメインからは外れていますが、多様性に満ち、メンダン全体が今置かれている政治的・軍事的な葛藤の中心にあります。

(※メンダン宙域の星系設定は、設定者がUWPを「これは1065年当時のもので今は違うし、しかも帝国偵察局には偽情報を一部掴ませた」という体で設定を起こした上に、後のT5SSでUWPが更に改変されたため、現行のUWPと設定が噛み合わなくなっています。今回は設定やUWPをなるべく帳尻を合わせましたので、公式ではなく、あくまで独自設定だと思ってください)

クーピッド星域 Kupid Subsector


ギルール         0911 C776431-7 M 非工               G Na ヴァルグル2割
ウドゥビ         0913 C5657BC-6 M 農業             A G Na ヴァルグル1割
アルキム         0914 C564696-6 M 農業・非工・富裕   G Na ヴァルグル2割
シュルカル       0917 C599255-9 M 低人               G Na ヴァルグル2割
アギランニラ     0919 B9D8775-8                      G Va
アウハ・アー     0920 C8575AB-8 C 農業・非工・緑地 A G Va 人類5割
ヴァッチャーショ 1011 B420634-8   砂漠非工非農貧困   G Dr ドロイン4割
ニピトガ         1012 E774433-5   低技・非工         G Va 人類1割
イングシイム     1113 C72547B-7 M 非工               G Na ヴァルグル6割
キガバラ         1116 C200365-8 M 真空・低人         G Na ヴァルグル4割
シャーウトー     1118 D550244-6   砂漠・低人・貧困   G Na
スペクタクル     1119 D548426-7   非工               G JP ヴァルグル5割
カキミル         1211 BADA554-A K 海洋・非工         G Va
ヴウォバウー     1218 CAB9686-9   非工・非水       A G JP ヴァルグル4割
キイリシャル     1220 A100499-C   高技・真空・非工 A G JP ヴァルグル1割
ミコニー         1313 C583541-9   非工               G Na
イリシ           1315 A530463-D   高技砂漠非工貧困   G Jm ヴァルグル4割 クーピッド統治
クーピッド       1316 A99A978-D K 海洋工業高技高人   G Jm ヴァルグル1割
ウマスル         1317 B888449-A M 非工               G Jm ヴァルグル3割
ニイムダル       1320 C000412-8 M 小惑・非工           JP ヴァルグル6割
アマアズ         1411 B7CA131-9 K 海洋・低人・非水   G Na
ギイヌルムウ     1417 B200411-C K 高技・真空・非工   G Jm ヴァルグル7割
ダクド           1513 E969000-0   未開               G Jm
カキグン         1517 A7AA753-D   海洋・高技・非水 A G Jm ヴァルグル4割
サミット         1518 C9D87CC-6 M                  A G JP ヴァルグル3割
オッハイル       1520 B300745-A   真空・非農         G JP ヴァルグル2割
クビリイン       1613 B568556-C K 高技・農業・非工   G Jm ヴァルグル2割
コッシュニヒ     1615 C430100-C   高技砂漠低人貧困   G Jm
ディダグド       1617 D647577-6   農業・非工         G Jm ヴァルグル3割
クヌークスング   1619 A69A534-C   海洋・高技・非工   G JP ヴァルグル5割

 メンダン宙域のFに位置するクーピッド星域には30の星系があり、総人口は約11億人です。最も人口が多いのはクーピッドの10億人で、最も高いテクノロジーレベルはイリシ、クーピッド、カキグンの13です。
 ジュリアン保護領の傘下に16星系が属し、その内9星系がメンダン共同体に加盟しています。中立星系のうち、9星系が人類世界、4星系がヴァルグル世界、1星系がドロイン居住世界です。
(※基地コード:K=海軍基地、M=軍事基地、C=海賊基地 なお、「軍事基地」とは海軍基地機能を持たない基地の総称のため、例えば保護領内の基地Mの星系にあるのは「遠護局基地」です)
(※国籍略号:JP=ジュリアン保護領、Jm=メンダン共同体、Na=人類系中立星系、Va=ヴァルグル系中立星系、Dr=ドロイン居住世界)


シュルカル Shurkar 0917 C599255-9 M 低人 G Na ヴァルグル2割
 ここには恒星間国家の一員となることを長い間拒んできた小さな入植地があります。約400人の住民は全員が同じ「ヘレテック教団(heretech)」に属しており、傷んだ体の一部を同等の機械に置き換えて延命するサイバネティクス技術を信奉しています。住民は機能的な宇宙船を何隻か所有していて、補修部品や材料をレリジェム(メンダン宙域 0718 A562310-B)で定期的に入手しています。
 この星は優れた防衛設備と人口の少なさ、そしてこの奇妙な風習が故にこれまでヴァルグル海賊の標的とならずに済んでいます。それどころか、戦闘で体の一部を失った海賊の中にはサイバー化して欲しさに信者となる者すらいます。
(※レリジェム星系もTL11のため、サイバー化技術には少し届いていません。「レリジェムはサイバー化技術だけ進んでいる」とするか、同じバンメシュカ星域には高技術星系が3つあるので、そのどれかから輸入されたものをレリジェムのAクラス宇宙港で買い付けている、とすれば筋が通ります)

アギランニラ Ugirunnir 0919 B9D8775-8 G Va
 アギランニラは広大で寒冷な世界なため、人類よりは寒さに強いヴァルグルのみが居住しています。ガシカン第二帝政の時代には、人類に支配されない安住の地を求めた多くの逃亡ヴァルグルの避難先となりました。
 この星系では様々な自治体がばらばらに形成されており、それぞれが最適と思われる手法で統治を行っています。自治体相互の協力関係は希薄ですが、紛争も少ないです。そして、同じヴァルグルでも海賊はここでは歓迎されません。
 ジュリアン保護領がメンダン共同体を吸収して以降、この星の貿易量は増加し、人類に対する否定的な見方も和らいできています。
(※超濃厚大気に関する設定はありませんのでレフリーが用意する必要がありますが、大気D世界は「高地に居住している」が定番です)

アウハ・アー Oukh Ull 0920 C8575AB-8 C 農業・非工・緑地 A G Va 人類5割
 この農業星系のヴァルグル住民は人類の農場主の奴隷でしたが、ガシカン第二帝政の崩壊とともにヴァルグル海賊がここを襲撃し、結果的に奴隷たちの反乱を手助けしました。
 それ以来、海賊の長であるヴァイグヴォラ(Vaegvar)はこの星の慈悲深い独裁者となり、若い農民たちに海賊になるよう勧めています。実際、ヴァルグル海賊団アイキ・アイゴ(Aek Aeg)の構成員の多くは、この星の出身者が占めています。

キガバラ Kigabala 1116 C200365-8 M 真空・低人 G Na ヴァルグル4割
 キガバラはユーカジューク(Uekdhuegh)率いるヴァルグル海賊に制圧された小さなドーム型入植地で、7000人の住民は命の危険に晒されています。
 ちなみにユーカジュークは、ガシカン第二帝政の残滓に破壊と破滅をもたらすことを目的とした大海賊団アイキ・アイゴの幹部でもあります。
(※政治6の解釈でこのような設定ができたと思われます。現行設定ではクーピッド(1316)の統治下にありますが、こちらだけメンダン共同体入りしてないのもおかしいため削除しました)

イリシ Irisi 1315 A530463-D 高技・砂漠・非工・貧困 G Jm ヴァルグル4割 クーピッド統治
 イリシはクーピッドの植民地として約150年の歴史があり、悪環境ながらも繁栄を続けています。

クーピッド Kupid 1316 A99A978-D K 海洋・工業・高技・高人 G Jm ヴァルグル1割
 この星域におけるメンダン共同体の中心星系である海洋世界のクーピッドは、天然資源と固有の水生生物に満ちています。気流を利用して繁殖する海棲生物によって大気は汚染されており、特定の季節には(ほとんど害はないとはいえ)肺感染症を防ぐためにフィルタマスクを装着することが推奨されています。
 このクーピッドからジャンプ-1で行き来可能な小星系群を総称して「クーピッド星団(Kupid Cluster)」と呼びます。
(※設定上ここを星図上の貿易・通信路が通らないのは不自然であり、旧設定では確かに通っていたのですが、現在の設定ではおそらく誤植でイリシを経由しているので独自に修正しました)

ウマスル Umasur 1317 B888449-A M 非工 G Jm ヴァルグル3割
 この星は、破滅的な混乱状態から近代的な星系へと変わりつつあります。地表には天然資源が豊富にあって大きな可能性を秘めていますが、産業インフラが整っていないためにこれまで発展を阻まれていました。TL10の新しい技術は地元の人々の再訓練に焦点を当てながら慎重に導入され、限定的な移民と出産への補助金支給によって人口は数十年前と比べて遥かに増加(※人口4が6に)しています。
(※旧設定ではTL7でした。また前述した通り、ここに限らず保護領内の基地コードMは「遠護局(ファーガード)基地」を表します)

ギイヌルムウ Giinurmuu 1417 B200411-C K 高技・真空・非工 G Jm ヴァルグル7割
 ここは、3つのガス惑星の衛星に鉱物資源が見つからなければ入植すらされなかったであろう星系です。ここの実質上の「主要世界」は惑星でも衛星でもなく、ジャンプ点近くに建設された採掘基地「ギイヌルムウ・ステーション」です。
 この星の採掘者のほとんどはメンデレス社の資源開発事業部に属していて、採掘基地は加工と出荷の拠点として稼働しています。ギイヌルムウ・ステーションには星系内の採掘船を修理するための小さな造船所があり、また、地元の鉱夫たちのための娯楽施設や居住区が用意されています。

カキグン Kakigun 1517 A7AA753-D 海洋・高技・非水 A G Jm ヴァルグル4割
 惑星カキグンはメタンの異種大気で、住民のほとんどは希少な陸地の小さな都市に住んでいます。
 この星は現在、スターレギオンの封鎖下にあります。ガシカンの工作員が仕組んだと思われる種族間の争いにより、憎しみの地雷原と化しているのです。メンダン共同体の代理人は対立派閥の武装解除や停戦に持ち込むことができず、スターレギオンの介入を要請しました。しかしそれ以降も状況は悪化しており、技術レベルや文化的行為が著しく低下しています。かつて栄華を誇ったAクラス宇宙港も、今ではCクラス相当のサービスしか提供できなくなっています。
(※ここは旧設定ではTL7のレッド・トラベルゾーンでした。レギオンの介入でアンバー程度にまで抑え込まれているが、生産水準は実質TL7まで低下していると解釈すべきでしょう)

サミット Summit 1518 C9D87CC-6 M A G JP ヴァルグル3割
 サミットは大型な世界で、いくつかの巨大山脈の頂上部に居住可能な地帯が存在します(そしてこれが星系名の由来です)。地元の人々にはヴァルグルに対する古風な偏見が今もあり、保護領から追い出されないためにもそれを抑え込むよう星系政府は強権的で、治安レベルも高く保たれています(※将来の民主化と規制緩和は公約されています)。その努力もあって反ヴァルグル感情は低下しつつありますが、特にヴァルグルの旅行者は今も注意が必要な星であることに変わりはありません。

ディダグド Didagud 1617 D647577-6 農業・非工 G Jm ヴァルグル3割
 この星の大気汚染の原因は、発電や暖房で石炭に大きく依存しているためです。メンダン共同体はディダグドを星域中に農産物を広く供給できる可能性のある星と見て、大気を浄化するために水力発電などを導入するよう働きかけています。
 ディダグドには未だに様々な国家が混在していますが、農産物輸出が定期的に行われるようになってから、星系政治にも安定した影響が出始めています。

(※星域設定補足:中立星系にある各種基地ですが、それらの多くの星の人口規模では単独で維持できるとは思えません。特にアマアズ(1411)は旧設定では基地コードMでしたが、誤植によってか「宇宙港Cなのに海軍基地があったニイムダル(1320)」と入れ替えられたのか、人口1なのにも関わらず海軍基地を持たされています。解釈としては「ガシカン第二帝政時代の遺構」としてしまう手もあります)


【ライブラリ・データ】
ケンギコン Kengighon 0122 C30078B-9 C 真空・非農 A G Va 人類2割
 メンダン宙域で未だに奴隷制がある世界の一つです。かつてはヴァルグルには厳しい、時に無慈悲な扱いがなされていましたが、1110年に起きた反乱でヴァルグルは人類を奴隷にし、これまで受けた仕打ち以上に残忍な扱いをしています。この事件に対し、ガシカンやジュリアンが介入すべきなのか、またどのように行うべきかを巡って、今でも多くの論争を引き起こしています。

クフェッラン Kferrun 1126 E568000-0 未開 A G JP
 スターレギオンは「安全保障上の理由」で、この何もないはずの星系になぜか介入を行いました。
 実は古い星図ではこの星系に数百万人のヴァルグルが居住していたことになっており、ここで生物兵器の人体実験が行われたのではないかとの疑惑が浮上しています。その中には、ガシカン第二帝政が狼滅計画で使用したものも含まれているはずだと。
 スターレギオンはこれらの疑惑を古い情報自体が元々誤りだと説明していますが、陰謀論者は駐留部隊が(保護領では極めて異例の)人類のみで構成されているのがその証拠であると指摘しています。

デキイ Dekhii 1321 A57A89C-A 海洋 A G JP ヴァルグル7割
 ヴァルグルと人類がほぼ半々に土地を分け合っているデキイでは、両種族がこの海洋世界の唯一の島の支配権を巡って、約100年間も争っています。

ルムダ Lumda 1329 A4009A6-D 工業・高技・高人・真空・非農 G Jl ヴァルグル4割 ルムダ首都
 ルムダ星系はルムダ寡婦産国の首都であり、ルムダ星域の中心です。この星に最初に入植した時は豊富な鉱物資源目当てでしたが、ジュリアン戦争の際に周辺星系から資本が引き揚げられた結果、行政の中心地にまでなったのです。
(※各種設定との兼ね合いで、現行の政治7を旧設定のAに差し戻しました)

ラスラ Lasla 1634 A532ABA-E 高技・高人・非農・貧困 G Jp ヴァルグル4割 ピルバリシュ首都
 ラスラはピルバリシュ星連の首都ですが、かつてのジュリアン戦争の際には〈帝国〉占領地域での抵抗運動やゲリラ活動を支える秘密拠点として活躍しました。メンダン・メイン上にあることから現在では貿易や商業の中心地となっており、メンデレス社の輸送通信事業部本部や、帝国事業部の主要支社が置かれています。近隣のヴァルグル国家からのほとんどの物流は、このラスラを経由してウホンジ平等国など保護領各国へと向かっていきます。

オジロケ Ozrake 1822 B533776-9 M 非農・貧困 A G Jv ヴァルグル3割 ヴグロラ首都
 この星系にある7国のうち、5国はヴグロラ統治国に加盟していますが、残る2国は統治国にも保護領にも正式加盟していないため、保護領も手を出せません。
 ちなみにオジロケには「ハフェスト・ロッキ種族間関係研究所(Khfesto Rrak Institute of InterSpecies Relations)」という、人類やヴァルグルを社会学的に研究する有名な学術機関があります。

ググド Gugud 2330 D6638AE-6 A G Ja ヴァルグル6割
 この星では、種族ごとに職業に制限があります。例えば、人類は医学や科学や工学に関連する高度技術の専門職に、ヴァルグルは弁護士や経営者や管理職、販売やサービス業などに就いています。他種族の仕事をすることは違法であり、厳しく取り締まられます。

エサソラ Esusar 2435 A79A658-D K 海洋・高技・非工 G Ju ヴァルグル3割 ウホンジ首都
 ウホンジ平等国の首都であるエサソラは、海上に浮かぶ唯一の都市に200万人の人々が住んでいます。人口の7割は人類ですが権力はヴァルグルの方が強く、社会の役職の6割はヴァルグルが占めています。これらのヴァルグルの多くは、かつて〈帝国〉から逃れてきた難民の子孫のため、反帝国感情が保護領の他国よりも残っているのが実情です。
 この星系の経済面での影響力の強さは、ウィンドホーン宙域方面との貿易によるものです。

シャイジ Thaedh 2634 B578888-A K G Ju ヴァルグル3割
 数百年前からヴァルグルと人類が入植し、それぞれが別々の地域に居住していますが、一つの星系政府が統治を行っています。ヴァルグル地域は順調に発展してTL10の恩恵を十分に得られていますが、人類地域は発展途上であり、しかもヴァルグル側からの援助を拒み続けています。

メンダン Mendan 2909 A768988-E K 高技・高人 G Jm メンダン首都
 第一帝国時代のメンダンは、商業・軍事・文化のあらゆる面でメンダン・メインを通じてヴィラニ人統治の中心的な役割を果たしていました。
 ガシカン第二帝政の崩壊後、メンダンおよびメンダンが統治する世界の多くは第三帝政ではなくジュリアン保護領との提携を選びました。これらの世界は現在「メンダン共同体」を形成しており、メンダンはその首都となっています。
 保護領に加盟して以来、種族間の憎しみの過去を克服するための強い努力が一定の成果を上げています。保護領の他の国家との貿易量の増加と、メンダン自身の影響力が相まって、宙域のコアワード方面全体に寛容さが広がっています。近年、メンダンは社会問題に積極的なメンデレス社と手を組み、人々の寛容の模範となるように影響力の高い役職にヴァルグルを積極的に登用しています。

ニイマグ Niimag 3016 C565731-8 M 農業 JP ヴァルグル6割
 ヴァルグルが多数派の世界ですが、人類は貴族、ヴァルグルは召使いとして共存しています。人類はヴァルグルの福祉を真剣に考え、ヴァルグルは誇りを持って人類に忠誠を捧げています。よって、ヴァルグルを「解放」しようなどとする外世界人に対しては激しく抵抗します。
(※元々はユーリジ(1124 C42276B-9)の設定でしたが、内容とUWPが全く噛み合わなくなってしまったので、この星に独自に移植しました)


【参考文献】
・Challenge #49 (Game Designers' Workshop)
・Julian Protectorate (Angus McDonald)
・Zhodani Base

MT日本語版30周年企画:ガシカン帝政とイレアン人

2021-06-06 | MegaTraveller
 人類のヴァルグルに対する対応で、アシミキギル連合(ジュリアン保護領)の対極に位置するのがガシカン第三帝政(Third Empire of Gashikan)のイレアン人(Yileans)です。彼らは人類の闇の部分であり、ある意味で勝利の姿でもあります。
 イレアン人は〈帝国〉の銀河核方向(コアワード)国境外のにあるガシカン星系を母星とする、群小人類の中では最も広い勢力を持つ種族です。彼らは「ガシカン帝政」を築き、ガシカンやトレンチャンなどの宙域を制しています。そして彼らは、ヴァルグルに対する強い憎悪で知られています。


(※現在の設定では「Trenchans」宙域になったようですが、今回は旧設定の「Trenchan」を採用します)

■歴史
 惑星ガシカンは、いくつかの孤島を除けば陸地全体が一つの超大陸にまとまっています。太古種族によってこの星に持ち込まれたイレアン人がTL2手前に到達した頃には、早くもガシカンという名の統一国家を築いていました。この国は反乱や自然災害で崩壊しかけた時もありましたし、時代の流れで世襲君主やカリスマ独裁者や財閥評議会など政権が移り変わりもしましたが、常に統一国家として再建され続けました。その結果、イレアン人は複数の政府が林立することをまるで無政府状態のように恐ろしく思うようになりました。
 -4400年頃、TL2だったガシカン星系にヴィラニ人商人がやって来てイレアン人と初接触し、ヴィラニの政治体制への統合は急速に進みました(※第一帝国はガシカン宙域を正式領土化していなかったはずなので、属領と思われます)。自治権が失われることを危惧した者もいましたが、多くのイレアン人はより大きな恒星間「統一国家」の一部となることを歓迎したのです。その後200年でガシカンは、ヴィラニ人の統治下でTL9の産業世界へと変貌しました。

 第一帝国(ジル・シルカ)の崩壊はイレアン人に大きな落胆と恐怖を与えましたが、代わってやって来たソロマニ人とも彼らはうまくやっていきました。そのソロマニ人の統一国家も混乱の中で呆気なく消え去り、暗黒時代の荒廃の中でガシカンの人々は失われた帝国を一部でも再建し、自分たちの世界を破局から守ろうとしました。
 人類国家の圧力が失われたことで、無防備となったアムドゥカンやガシカンの各宙域にはヴァルグル海賊が侵出してきました。この驚異に対抗するためにイレアン人は-1784年に「ガシカン帝政」を建国しました。彼らは軍艦の建造数を増やし、海賊対策の哨戒を欠かさず、数々の掃討作戦も行いました。初めのうちは成功していましたが、最終的には海賊らは徒党を組んでガシカンの中央へと反撃を加えてきました。-1658年には首星ガシカンが核攻撃を受けて約4億人のイレアン人が犠牲となり、地表は略奪し尽され、ガシカン帝政は滅亡しました。
 ヴァルグルによるこの「ガシカン略奪(Sack of Gashikan)」以来、イレアン人の大半は全てのヴァルグルに対して深い憎悪を抱いています。イレアン人にとってヴァルグルとは、(彼らの信念に反する)混沌と混乱と無秩序の象徴なのです。

 -1646年、イレアン人は「ガシカン第二帝政(Second Empire of Gashikan)」を再建しましたが、この国の指導者たちはヴァルグルを疫病同然の、どんな手段を使ってでも滅ぼすべき存在と考えていました。第二帝政は生物兵器を多用し、ヴァルグルに特化した伝染病をも創り出して、-1000年頃にはガシカンの勢力圏内の全てのヴァルグルを根絶してしまいました。この時の記憶は今でもヴァルグルの中に残っており、いくつかのヴァルグル世界ではこの「種族間戦争(Race Wars)」で亡くなった数多の同胞を慰霊するための祝日が設けられています。
 種族間戦争が終わると、イレアン人のヴァルグルに対する憎悪は薄れていきました。目に見える範囲にはヴァルグルはもう居らず、国境外の大多数のヴァルグルがガシカンとの関わりを一切断ったために、イレアン人は憎むべき「敵」を失ってしまったのです。
 そんなガシカン第二帝政は、隣国のジュリアン保護領(Julian Protectorate)があろうことかヴァルグルと融和したことで急速に勢力を拡大していったため、その影に落ち込んで停滞期に入りました。傘下星系は徐々にまとまりを失い、ついには第二帝政は財政破綻と大規模内戦で1070年に崩壊しました。
 8年後、トレンチャン宙域に本拠を置く国家が内戦に勝利して「ガシカン第三帝政」の成立を宣言しました。この経緯から「トレンチャン帝国」とも揶揄されますが、首都は旧都ガシカンに戻されました。
 しかし内戦はガシカンに大きな傷を残しました。国境付近の、特にメンダン宙域の星系は第三帝政への合流を拒み、中にはより先進的で繁栄しているジュリアン保護領に加盟した星もありました。第三帝政は当然この状況を容認しておらず、国境紛争は頻繁に起こっています。

■イレアン人の特徴
 「純血の」イレアン人は比較的背が高く、体が細いです。成人男性の身長は約180センチメートル、体重は約50キログラムで、女性はそれよりやや小さくなります。興味深い点としては、肥満体にはなかなかならないことが挙げられます。これは、惑星ガシカンの蛋白質に適応したことで脂肪蓄積の仕組みが変化し、他の人類と比べて体脂肪率が著しく低くなったことが医学的研究で明らかになっています。
 変光星の主星(ソロマニ名:カイ・オフィウキ)からの周期的な紫外線から身を守るために、イレアン人は青黒い肌を持ち、頭髪は黒くて直毛(もしくは軽い波状毛)になりました。男女共に体毛や髭はほとんど生えていません。

 あえて「純血の」と但し書きをした通り、現在「純血の」イレアン人は母星であるはずのガシカン星系にはほぼ居らず、ガシカン国内でも5%程度のみとされています。ヴィラニ人の統治下にあった数千年の間に多くのイレアン人がヴィラニ人入植者と結ばれましたし、その後にやって来たソロマニ人とも同様だったからです。それでも国内のほとんどの人類はイレアンの血を引いています。青黒い肌と黒い直毛はこの宙域ではよく見られ、非常に好ましいものとされていますが、そういった容姿の人はたいてい上流階級に属しています。
 今やイレアン人というのは種族ではなく文化であり、ガシカン第三帝政の市民を指す言葉となっています。ガシカン国外にはイレアン人を先祖に持つ人が1億人以上いると言われていますが、自分をイレアン人だと考える人はほとんどいません。近隣諸国の人々には、それほどガシカン帝政の排外主義政策とイレアンの血筋は切っても切れない関係に見えるのです。

 イレアン人は平等主義で社会性を重視する傾向があります。彼らは集団で働くことを好み、社会的流行に流されやすいのですが、これは平均的な人類と大差はありません。
 ただ、イレアン人の心理の特異なことの一つに、ヴァルグルへの不寛容があります。これは文化的なものではありますが、何世紀にも渡って強化されてきたためにしっかりと根付いています。
 ガシカン帝政には400以上の星系があり、それぞれが独自の歴史と文化を持っています。反ヴァルグル感情はほとんど全ての星で共通していますが、その性質は3つの区分けのどれかに分類されます。

●中央
 首都ガシカン付近を含む中央地域では、ヴァルグルはほとんど知られていません。広範囲に及ぶ検閲によって、ヴァルグルに関する情報は一般市民には届かないのです。国外の情勢を知ることが必要な極一部の人々だけが、ヴァルグルに関する情報に接することができます。
 また、ヴァルグルに関する事は口の端に上るのも不適切だという風潮があります。ヴァルグルの映像や情報を見ることは異常者が行う不法行為と考えられていて、中央地域の住民のほとんどは歴史の教科書でヴァルグルに関する一文を見たことがある程度です。そんな人々が本物のヴァルグルに遭遇した場合、彼らは憎しみよりも不安や当惑を感じます。

●国境近辺
 ガシカンの国境付近では、中央とは全く状況が変わってきます。国内全ての星系でヴァルグルに永住権を与えることは有り得ませんが、国境付近の星系には最貧層のヴァルグルが低賃金の契約労働者として多くやって来ています。これらの労働者は二級市民扱いで、5年間の契約期間中は全員自分の位置を継続的に知らせる特殊な無線追跡装置を埋め込まなくてはなりません。
 この慣行は内戦による労働力不足に対処するために1079年頃から始まりました。やがてそれは解消したものの、多くの世界で「出稼ぎヴァルグル(Visit Vargr)」が安価で調整しやすい労働者であることに気が付きました。今ではこの地域のほとんどのガシカン市民は、重い荷物を運んだり、下働きをしているヴァルグルを日常の光景の一部として見ています。
 出稼ぎヴァルグルが人類の仕事を奪うとして嫌がらせを受けることはありますが、意外にも暴力を振るわれることは稀です(ただし時には過剰反応で暴行や殺害にまで至ることもありえます)。しかし政治的活動を行うヴァルグルは例外で、自分たちの社会的地位を向上させようと立ち上がれば、しばしば暴力と法律が襲いかかってきます。国境星系のほとんどには数多くの古い反ヴァルグル法が今もあり、社会的・政治的に問題を起こそうとするヴァルグルに粛々と執行されます。それが嫌なら、社会的差別と不愉快な暴言に耐えながら淡々と契約期間を終えて、蓄えた僅かな貯金を持ってさっさと故郷に帰ればいいだけなのです。

●危険地域
 中央と国境の間は、ヴァルグルに出会うことはほとんどないにも関わらず、彼らに対して最も偏見の深い地域です。ここの星系では公共の場でヴァルグルについて話すことを禁じる法律がありながら、多くの市民がヴァルグルの脅威について日常的に話し合っていますし、ヴァルグルを醜い悪役(出稼ぎヴァルグルがスパイやテロリストになるのは定番です)として描いたホロビデオも人気があります。仮にヴァルグルが地表に降り立てば、集団暴行や誘拐・拷問の対象となるかもしれません。
 この危険地域における一部の人々の言動は、ガシカン帝政やイレアン人全体への「排外主義者」との悪評をより助長しています。


■社会と政府
 多くのイレアン人にとって、地方自治や分権という概念は全く不可解なものとして考えられています。ほとんどの人々は中央集権の統一国家こそが唯一の道で、それ以外は完全な無秩序と捉えています。その結果、イレアン人の政府は何千年もの間、一枚岩で権威主義的でした。ヴァルグル政界の柔軟で混沌とした様相は、イレアン人が彼らを危険な蛮族と見続けている理由の一つです。
 秩序・統制・安定を尊ぶイレアン人の考え方は、政治の枠を越えて浸透しています。全てのイレアン人には社会の役に立つ人材となることが期待されていて、若者は定期的に行われる適性検査によって教育や職業の進路が定まります。進路選択の自由はありますが、身体的・経済的事情の変化によって人生設計が狂った時でもなければ、わざわざそこからはみ出すようなことは普通はしません。

 ガシカン帝政は3宙域の400以上の星々を統治していますが、その政府は極めて中央集権的です。一応国内の各世界はそれぞれ独自の政治形態を持ってはいますが、星系政府は純粋に地元の課題にしか責任を負いません。
 加盟星系にはそれぞれヴェリャ(Velja)と呼ばれる中央からの勅使が配属されています。ヴェリャは星間交易や防衛など、他星系との交流に関わる星系政府のあらゆる政治判断に対して拒否権を持っています。杓子定規過ぎるヴェリャは外交政策を全て自分で制御しようとしますが、ほとんどの場合は穏便に済ませます。ヴェリャの権力を抑えるために、各星系政府は2年に1度、ヴェリャの交代を中央に陳情することができます。また、ヴェリャの勧告を無視した星系政府は経済制裁を受け、最終的には国軍による軍事介入の対象となります。
 実際のところガシカン政府は〈帝国〉よりもかなり厳格なのですが、市民はヴァルグルの侵略から国を守るためにはこうするしかないと考え、統制を受け入れています。
 内戦が終結した今、ガシカン第三帝政はその関心の大半を国境に向けています。中央の星系が厳しく言われることはほとんどありませんが、国境世界には軍事訓練を受けたヴェリャが置かれ、国を危険に晒すような政策は一切許されません。そしてそれへの反発を抑えるために、第三帝政は国境世界の住民が受け取る報道などを厳しく管理しています。近隣のヴァルグル国家を恐れるように住民を扇動することで、政府への反発を減らしているのです。高い税金や厳しい法律に抗議する者は売国奴の烙印を押されるか、もっと悪ければ「愛犬家」という最低の汚名を着せられるのです。
 伝統的にガシカン帝政は養子王制で統治されていて、現在の統治者が予め貴族の中から後継者を定めておくのです。そしてこれは、今の統治者が死ぬか退位するまで秘密にされるのが習わしです。現在のガシカン第三帝政は先の内戦を制した女帝アイシリン(Empress Aithilin)が治めていますが、彼女も伝統に倣い、30歳の誕生日に後継者を定めています。


■情報安全省
 第二帝政の初期から存在する情報安全省は、法律上は政府の一機関ですが、多くの分野で独立して行動しています。省の表向きの使命は有害なヴァルグルの宣伝情報の拡散を防ぎ、国家全体の平和と統一を守ることにあります。
 この目標を達成するために、省職員は全ての報道や情報を慎重に管理しています。ヴァルグルに関する全ての情報は検閲されていて、ヴァルグルを英雄的・肯定的に表現しているものは抹消されるか、逆に悪役的・否定的になるよう編集されます。情安省は国内全星系の電子通信網を注意深く監視し、他国政府やヴァルグルに関する全ての情報を収集しています。
 外国人(※に限らないでしょう)が未検閲情報を国内で流布することは重罪で、監獄惑星での数年間の重労働刑となります。情報を通信網に流そうとすると、それはまず地元の情安省に転送され、職員はその内容次第で検閲を行うか、発信者を捜索します。
 2500年以上の歴史を持つ情安省は、ガシカン社会のあらゆる側面を形成してきました。今ではガシカン市民に提供される歴史・報道・娯楽作品の全てが、全くぶれのない一貫性を持って構成されています。しかしこれらの情報は、〈帝国〉やジュリアン保護領の市民が知っているものと微妙に異なります。例えば、国外に赴いたイレアン人は、ジル・シルカ崩壊の原因がヴァルグルではなかったことや、第五次辺境戦争でゾダーン軍をヴァルグルが大々的に支援していなかったことを知って衝撃を受けるのです。
 情安省は国内のあらゆる情報を統御することで、大きな権力を持っています。情安省職員以外では帝政の支配階級のみが無修正の情報に接触することができます。また、法律上禁止はされていますが、政治家や財界人が情報操作を行うこともあります。
 情安省本庁はガシカン星系の首都カスラ市(Khasla)にあります。現在の情安省長官は、内戦の際に多大な功績を残したヤーロブ・ミリーガル(Jarob Milligar)で、歴代長官と同じく彼もヴァルグルを嫌っていますが、ガシカンの脅威ではないと現状を分析しています。しかし国家の統一を維持するために、彼はヴァルグルへの恐怖心を利用して市民に帝政へ強い支持が向くように操っています(例えば、反出稼ぎデモを裏で支援していたり…)。ミリーガルはある意味で国内最強の権力者で、その強さの実態を市民はおろか女帝本人すら知りません。


■対外関係
 ガシカン帝政は、周辺の全てのヴァルグル国家とヴァルグルに友好的な国を程々に敵視していますが、人類のみのいくつかの小国とは緩やかな関係を維持しています。一方で、ガシカンが冷戦状態にある隣国のジュリアン保護領より経済力・技術力・軍事力の全てでも劣っているのは事実で、あまり刺激したくないと考えている節はあります(※保護領も内戦後のガシカンを脅威とは見ていません)。しかしガシカン第三帝政の存在自体が、過去の亡霊のように周辺宙域全てに微妙に影響を及ぼしているのです。
 〈帝国〉に対しては公式には中立です。両国の間には開かれた交易こそありますが、正式な国交や同盟関係はありません。しかし〈帝国〉内の人類至上主義過激派の中には、ガシカンとの関係を持つものが少なくありません。
 また、距離が離れ過ぎているために意義ある関係を結べてはいませんが、ガシカン帝政はソロマニ連合内の急進的な反異星人派閥と連絡を取り合っています。


■技術と貿易
 ガシカン国内では、首都ガシカンをはじめとするTL12が最高水準の技術で、ヴァルグル諸国との貿易が推奨されていないためにTL13以上の製品が利用できる世界はほとんどありません。
 実は情安省は特権でTL13の宇宙船や装備品を導入しています。特にTL13の200トン武装急使船(armed courier ships)はジャンプ-4が可能で、国内のどんな船よりも早く情報を得られて、反体制派の陰謀が広がる前に行動を起こせるのです。
 ガシカン国内の星系同士では定期便による貿易が行われていますが、国外の星との貿易は厳しく規制されているので珍しいです。国境を出入りする全ての船は、厳重な検査を受けます。
 ヴァルグルは国境星系への渡航が認められていますが、ガシカン国内の多くの世界ではヴァルグルの上陸を許可しません。そのためヴァルグル商人の多くは、人類や他種族を代理人に立てています。また、ヴァルグルがガシカン市民を雇うのは違法ですが、商人の中にはそうした「変り身」を用意して商売する者もいます。


【ライブラリ・データ】
ガシカン Gashikan 2732 A8679AD-C M 高技・高人・緑地 G 3G
 衛星を持たない惑星ガシカンには、古の戦争の傷跡が今もあります。最後のヴァルグルの襲撃から3500年以上が経ちましたが、かつての偉大な都市ニソリス(Nitholis)の放射能汚染は消えておらず、ヴァルグルの強欲さの象徴として廃墟が保存されています。ここで亡くなった人々を悼むため、今でも国内全土から観光客が訪れています。
 このような史跡を除いて、惑星はずっと前に核爆撃から回復して緑豊かな星に戻されました。その美しさを守るために、政府は移住と建築に厳しい制限を課しています。重要な仕事に雇われない限り、来訪者は60日以上滞在することはできません。ただし短期滞在者向けの査証は無料であり、観光業はガシカンの主な収入源となっています。
 ガシカンの土地の35%以上が、公的に保護された自然区域です。保護区域に仮設でない建造物を建てると重い罰金を科されます。誰もがこの広大な公園で自由に野営を楽しむことができますが、軌道上から監視されているので規則違反者は速やかに退去させられます。
 歴史的重要性と自然の美しさに加えて、ガシカンは帝政の伝統的な首都でもあります。1078年から1098年までは内戦の結末でその座を失っていましたが、1099年にガシカンに戻されています。
 女帝や高位貴族を守るために、ガシカンの法律はとても厳しくなっています。武装警察を除いて、誰も小さな刃物以上の武器を所有することはできません。狩猟自体が禁止されているので、来訪客も言い訳は不可能です。一方で、全ての公共の道路や建物内部に監視カメラ網が張り巡らされており、民家の内側を除いて惑星の全ては常時監視下にあります。監視網は武器の使用や暴力行為を自動的に検知し、警察は犯人を素早く特定することができます(ただし監視網は非暴力犯罪の自動検知はできません)。地元警察以外に、全ての監視網の記録は情報安全省からも閲覧できます。ちなみに情安省は、国内の人口5億人以上の全星系で同様の監視網を持っています。

ガントレット級武装急使船 TL13 Gauntlet-class armed courier
 200トンのガントレット級武装急使船は、ガシカン第三帝政情報安全省の特殊精鋭艦です。実はこの船は〈帝国〉製で、ベオウルフ級自由貿易商船を改装したものです。貨物空間の大部分と船室の一部が追加の機関部と燃料タンクに置き換えられたため、一見ただの低速商船のようですが、実際はジャンプ-4が可能です。
 情安省はこの船で、ガシカン国内のどの民間船や軍艦よりも早く星系間の情報や人員のやり取りを可能としています。この船の存在によって、情安省は国内の全ての報道や情報を効率的に管理することができるのです。現在、情安省には約300隻の急使船が配備されています。
 武装急使船の運用には、船長兼操舵士1名、航法士兼索敵士兼通信士1名、砲手2名、機関士2名、医師1名が必要です。また通常は、少なくとも1名の情安省職員(工作員)と2名のコンピュータ技術者が同乗しています。

ブレスカイン騎士軍団 Legion of Breskain
 ヴァルグルと戦うために、-612年に設立されたガシカンの騎士団です。同様の騎士団は先に存在していましたが、後々これに吸収されました。現在では公的機関ではなくなったものの、目的はそのままにいくつかの傭兵部隊を所有・運営しており、ヴァルグルと対立する人類の政府や企業に売り込みをしています。

狼滅計画 Project Wolvesbane
 ガシカン第二帝政は遺伝子操作によってイヌ科動物にのみ致命的なウイルスを創り出し、-1427年にヴァルグルの絶滅を狙って放ちました。それは検出が困難な上に感染力が強く、潜伏期間も長いため、ヴァルグルの交易網を通じて広がっていきました。
 ヴァルグルは無私の、時に英雄的な努力によってこのウイルスの拡散を阻止しましたが、結果的にガシカン国内からヴァルグルはほぼ一掃されてしまいました。


【参考文献】
・Challenge #49 (Game Designers' Workshop)
・Vilani & Vargr (Digest Group Publications)
・GURPS Traveller: Humaniti (Steve Jackson Games)
・Julian Protectorate (Angus McDonald)

MT日本語版30周年企画:ジュリアン保護領とアンタレス(前編)

2021-05-31 | MegaTraveller
 ヴァルグル諸国(Vargr Extents)と飛び地(Vargr Enclaves)に挟まれるように位置し、帝国の銀河核方向(コアワード)側に隣接する「ジュリアン保護領(Julian Protectorate)」では、ヴィラニの血が濃い人類とそのほぼ同数のヴァルグルが共同社会を建設しています。帝国市民には歴史の授業で学んだジュリアン戦争(175年~191年)の交戦国として知られていますが、その戦争での敗戦の屈辱を和らげるためにか、偉大なる第三帝国の影に隠れた小国の一つという認識が長く続けられてきました。
 しかし1116年からの反乱によって、帝国市民はジュリアンの底力を目の当たりにしています。保護領海軍である「護星軍団(スターレギオン)」の戦力はデュリナー麾下のものと比べても遜色はなく、外交の影響力はウィンドホーン裂溝を越えたヴァルグル諸国にまで及んでいます。加えて保護領は、巨大企業メンデレス社(Menderes Corporation)を擁しているのです。



■歴史
 「ジル・シルカ(第一帝国)」の時代、現在のメンダン、メシャン、アムドゥカン宙域はそのほとんどが三部局の一つであるマキドカルンの管理下にありました。例外はヴランド宙域から続くメンダン・メインと、その先にあった資源星団圏で、それら約100星系が共同管轄されていました。この資源星団圏には恒星間戦争終結前の-2219年頃からソロマニ人商人が集まるようになり、彼らの知識と経験の貴重さは、「人類の支配(第二帝国)」の皇帝ヒロシ2世がその地の責任ある地位に軍人ではなく商人を就けたことからも伺えます。やがて第二帝国の多くの地域が衰退していきましたが、その商人らの一族は中央からの先細る支援の中でも地域を維持していけました。

 一方、ミカシルカ圏(現在のアンタレス星団近辺)に目をつけたソロマニ系企業のスコーピオン社(Scorpion Company)は、シャルーシッド社と協力して毎年何千人もの入植者を募集しました。その多くが衰退する故郷を捨てたヴィラニ人でしたが、新天地での一獲千金を夢見たソロマニ人や、手数料目当ての斡旋業者に連れて来られた人々もいました。彼らは冷凍睡眠でアンタレス周辺の世界に入植していきましたが、そこから更にメンダン・メインを通って核方向の世界に向かった者や、国境を越えてガシカン宙域やトレンチャン宙域の未開拓地へ向かった者もいます。開拓者らによってこれら地域の経済は大いに活気付きましたが、衰退を続ける中央との落差は日増しに大きくなっていきました。歴史学者の多くが第二帝国の終焉と位置付ける-1776年は、財務省アンタレス支局が発行した通貨を首都ハブ/エルシュルの財務省が受け取りを拒否した年です。

 第二帝国の衰退が進むと、核方向からヴァルグルが旧マキドカルン区域に流入してくるようになりました。初めは新たな労働者として歓迎されましたが、必然的に海賊や略奪者が付いてくるようになり、人類とヴァルグルの間にまだ共存の作法が見つけられていなかった時代だったこともあり、暗黒時代を通じて両者には諍いが絶えませんでした。特にガシカン宙域では-1658年にヴァルグル海賊がガシカンに核兵器を投下して略奪を働き、それを切っ掛けとした報復の連鎖は遠くアンタレスにまで種族間の憎しみを煽りました。

 ガシカン第二帝政(Second Empire of Gashikan)は、ヴァルグルの台頭が人類の存在を脅かすという信念のもとに-1646年に建国されました。ガシカン宙域から海賊を駆逐するという帝政の努力は正攻法では実らず、むしろ反撃を受けたことで人類のヴァルグルに対する恐怖と憎悪は狂信的な域にまで高まって社会に深く根を下ろしました。異種族排斥の風潮は周辺宙域にも広まり、ガシカンはそんな星々を「保護」することで勢力を拡大していきました。ただ、ガシカンの風下に立つことを良しとしない星系もあったため、熾烈な統一戦争に至りました。最終的に第二帝政はガシカン宙域のほとんどと、トレンチャン宙域やメンダン宙域の半分を支配して、ヴァルグルの侵入を苛烈に防御し続けました。「ガシカン種族間戦争(Gashikan Race Wars)」とも呼ばれる大規模な交戦が終わった-1000年頃には国境内のヴァルグルは根絶やしにされていましたが、それはヴァルグルへの偏見が徐々に反転していく兆しでもあったのです。

 ヴァルグルへの寛容の芽生えは、メンダン宙域やアムドゥカン宙域のガシカン国境外の星系で起こり始めました。人類はそれが自分たちの脅威とならない限り、悪環境の惑星にヴァルグル移民を受け入れるようになったのです。そしてヴァルグルを単に殺すよりも奴隷化した方が利益になることに気付きました。ヴァルグル奴隷は巨大産業になり、-300年頃には最盛期を迎えます。
 そしてここで、宙域史にあのメンデレス社が登場するのです。

「なぜ奴隷を従業員にしたかって? その方が儲かるからだよ」
――カリク・メンデレス
後世の連続ドラマより

 メンデレス社は元々アシミキギル(アムドゥカン宙域 0223)の最大企業でした。その力の源泉は労働力の大半を占めていた数百万人ものヴァルグル奴隷の存在でしたが、同業他社との違いは、メンデレス社は奴隷たちが「幸福」で「やりがいのある」ように職住環境を整えていたことでした。
 同社はついには-321年に奴隷を「従業員」として解放するにまで至りました。利益追求の一環とはいえこれはアシミキギル社会を大きく動かし、-302年には奴隷制が違法となり、それは周辺星系にすぐに飛び火しました。メンデレス社は周辺星系に差別撤廃を「説得」しようなどとはせず、商取引の一要素に加えるに留めましたが、この方針は地域社会に大きく影響を与え、訪れたヴァルグル移民は人類の憎しみを買うことなく定住と有益な交流の機会を得られたのです。
 -275年、メンデレス社は星間輸送をヴァルグル商人に託すという前例破りに踏み切りました。当時はガシカン企業のクドゥカラ運輸(Kudukara Lines)が国境内外の星間輸送を独占しており、ガシカン以外に造船能力を持つ星系は少なかったのですが、メシャン宙域のヴァルグルはそれを持っていたのです。このことによりヴァルグル商人たちが次々とメンデレス社に接近し、同時に彼らもメンデレスの方針を受け入れていきました。とはいえ地元アシミキギルですらそれには賛否両論が沸き起こり、論争の的となりました。しかし当主トラン・メンデレス(Tran Menderes)はそれにもめげず、-247年にはヴァルグルの技術を導入した造船所で初の宇宙船「ミアンダー(Meander)」を完成させました。トラン本人は処女航海で命を落としたものの、造船所で続々と建造された宇宙船はすぐにクドゥカラ運輸との「戦場」に向かっていきました。両社は6度の貿易戦争を行い、いずれもメンデレス社が勝利しました。メンデレス社はヴァルグル諸国と飛び地を結ぶ商社として急成長し、ヴァルグル交易で莫大な利益を得たのです。

 この地域では、シレア連邦(Sylean Federation)が〈帝国〉と国号を改めて台頭してきたことに、ほとんど関心を払っていませんでした。しかしその間にも、メンデレス社の交易圏内にあったアンタレス宙域などの星々が〈帝国〉や帝国企業の手に落ちていきました。〈帝国〉に抗したアンタレスの有力者たちは核方向に逃れ、シレアの新参者への恨みを募らせました。
 当時の〈帝国〉がヴァルグルをほぼ容認していないことは明白でした。ヴァルグル圏にあったコリドー宙域での振る舞いにそれは顕著に表れており、コリドーを通過してより辺境に向かう植民船団を守るために、〈帝国〉は友好的な交渉よりも威嚇や接収を多用したのです(※〈帝国〉はヴァルグル住民を強引に立ち退かせた土地を、由緒の怪しいヴィラニ貴族に「返し」たりしています)。
 そしてメンデレス家は、やがて〈帝国〉が旧領回復を狙って核方向の宙域にも攻め込んでくるだろうと予期していました。それは自社の商売にとっては非常に不都合なことだったので、メンデレス家は両種族に〈帝国〉に対抗する「共通の目的」を与える宣伝戦を仕掛けました。その結果、166年に〈帝国〉は親善大使として偵察局と外交団を派遣して核方向諸国の平和的な再吸収を目論みましたが、メンデレスの影響で冷ややかにあしらわれただけでした。

 この状況に苛立った皇帝マーティン1世は帝国軍をメンダン宙域に送り込み、175年に「ジュリアン戦争(Julian War)」が始まりました。〈帝国〉はこの地を簡単に平定できると見ていましたが、しかし人々は驚くべき抵抗を見せ、予想外の団結力を示しました。戦前、この地域は何十もの独立した小国に分かれていましたが、開戦後にはアシミキギル連合(Asimikigir Confederation)とメンデレス社、そして178年に摂政(regent)位に就いた当主ジュリアン・メンデレス(Julian Menderes)の下に「ジュリアン保護領(Julian Protectorate)」として集結したのです。人類もヴァルグルもジュリアンを威信ある指導者として仰ぎ、狂信的な忠誠心で支えました。ヴァルグルの機知力と人類の決断力が融合した軍隊は「護星軍団(スターレギオン)」と呼ばれ、185年には宙域内の帝国軍を退け、その後もアンタレス宙域の帝国領へ侵攻を続けました。
 191年に〈帝国〉は和平条約の調印に応じ、最終的解決策としてレギオンが占領したアンタレス星団12星系に自治権を与えることで合意しました。レギオンは帝国領内から撤兵し、かつて〈帝国〉に故郷を追われたアンタレスの有力者たちが自治区の領主として舞い戻りました。そしてこの自治区となった12星系は「アンタレス同盟(League of Antares)」を名乗ります。ちなみにアンタレス同盟の設立は、後のソロマニ自治区制定などの手本となっています。
 戦時に急造されながらも「戦勝国」となったジュリアン保護領は解体せずに、同じく191年に恒久組織化されました。〈帝国〉の侵攻を阻止するために結成されたことから保護領は統一された星間国家を目指さず、防衛同盟としての機能を強めました。同時に国防軍としてのスターレギオンも発足しています。



 ジュリアン戦争後、「敵」を失った保護領の結束力は徐々に弱まっていきましたが、過去4度ほどいきおい強まったことがあります。まず1度目が〈帝国〉の第一次大探査(First Grand Survey)の時で、〈帝国〉が収集した情報を再侵攻に利用するのではないかとの疑念が生じたからです。この時は多くの加盟国が帝国偵察局の活動を拒みました。それでも〈帝国〉が秘密裏に探査を続けたため、保護領諸国と〈帝国〉の友好関係は一気に冷え込みました。レギオン海軍が哨戒を続ける中、偵察艦とのいたちごっこは420年に探査結果が公表されるまで続きました。〈帝国〉は数々の妨害に負けずに、かなりの高精度で探査を終えることに成功したのです。
 2度目は486年~499年です。382年に当時の皇帝マーティン3世が開始した「遣星使(Alien Missions)」と呼ばれる一連の計画の一つとして、帝国偵察局はヴァルグルをより深く知ろうと異星生物学者や報道関係者や外交官などをヴァルグル諸国に派遣していました。しかし、保護領内の過激な反帝国派が調査団の先回りをしては地元政府に追い返すよう働きかけていたのです。この企てが失敗すると今度は暴力に訴え、しばしば海賊団を雇っては偵察局の船を襲わせていました。皇帝クレオン4世はそれらに対処するために帝国海軍情報部を派遣し、彼らは反帝国活動を無力化するために「様々な努力」を惜しみませんでした。この「隠密戦争(Hidden War)」は、ジュリアン保護領内の〈帝国〉への感情をより悪化させる結果を招きましたが、妨害を廃された偵察局は計画を当初より縮小しながらも次の段階へと進むことができました。
 3度目は第二次大探査(Second Survey)の時で、前回の大探査の時と同じような事態となりました。しかしこの時は〈帝国〉は秘密裏にではなく外交筋からの正規の申し入れを経て堂々と探査を行っています。とはいえスターレギオンとのいくつかの小競り合いや、偽情報を掴ませようとする妨害など、事件がなかったわけではありません。
 そして4度目が現在(※1120年)です。ヴァルグル諸国で高まった反帝国の「衝動」は保護領内でも全く無関係とは言えず、保護領はそれへの反発に備えて(実戦経験が乏しく「張り子の虎」と揶揄されていた)スターレギオンをジュリアン戦争以来の最大規模の増強を行っています。


■反乱とジュリアン保護領
 〈帝国〉の分裂は、ジュリアン保護領にも大きな変化をもたらしています。ウィンドホーン宙域では、ヴィラニ系巨大企業がメンデレス社の最強の挑戦者として浮上してきました。反乱前はマキドカルン社がヴァルグル諸国内に点在する人類星系を対象に細々と商売をするだけでしたが、今ではヴィラニ系企業はそこを足掛かりにヴァルグル市場に続々と進出してきています。
 何より問題なのが、ヴィラニ人がヴァルグルとの商取引で驚くべき才能を開花させたことです。かつての帝国人はヴァルグル諸国で大規模な交易を行おうとしても不器用に自滅していきましたが、近年のヴィラニ人は素早く学習して適応してきたのです。そしてメンデレス社に数百年の知見があっても、ヴィラニ系4大企業にはそれを補って余りある莫大な資本力があるのです。
 メンデレス社は自社の防衛のために、ヴィラニ企業の進出によって損害を受けた他のヴァルグル系企業と提携して貿易戦争を仕掛けています。メンデレス社は直接行動こそ避けていますが、ヴランド宙域内の競合企業に情報提供を行ったり、時には社内工作員がダグダシャアグ宙域まで出向いてヴランドと近隣勢力の反目を誘発させたりしています。

 そして〈帝国〉のアンタレス領域改め「アンタレス同盟」のブルズク大公も、ジュリアン情勢に大きな影響を与えています。反乱発生までは凡庸な指導者でしたが、政治情勢を巧みに操る外交の天才として瞬く間に頭角を現してきたのです。彼曰く、反乱の混乱で帝国宇宙はヴァルグル指導者が活躍できる環境に変わったとのことです。多くの人類指導者が政治の暴風に振り回される中、自分はその風に乗って飛ぶことを学べたのだ、と。
 ジュリアン系のヴァルグルにも沸き起こった反帝国感情の波は、一般大衆の間でブルズク大公を一躍注目の的としました。そこで彼は、保護領内の人類にも一定の支持が高まるまでそれを利用することを控えてきました。加えて彼は、政治の世界では二面性を持っていました。ジュリアンに対しては自分やアンタレス市民を帝国人としてではなく、キャピタルの支配に憤慨している同胞として見せ、アンタレス市民に対しては〈帝国〉への不忠を否定しつつもルカンの統治は激しく非難してみせました。
 しかし貴族らの支持を得られなかったブルズクは合法的な皇位継承の道を絶たれ、結果的にアンタレスは一時的にでも〈帝国〉から離脱するほかなくなりました。1118年012日、アンタレス同盟は保護領に加盟し、すぐにスターレギオン艦隊がアンタレス艦隊と共にルカン軍との戦いに加わりました。
 時間の経過とともに保護領内で厭戦気分が高まることを承知の上でブルズクは、アンタレスとジュリアンが一体となっている今のうちにルカンを共通の敵、憎しみの対象として描こうとしました。ルカンを生贄とすることで、ルカンを排除した後に保護領が新帝国に加わることを期待したのです。仮にブルズク本人がイリジウム玉座の主になれなくとも、建国以来の悲願を成し遂げたその功績からすれば、新帝国での地位と権力は莫大なものとなるはずなのです。

 1118年から1119年にかけて、ジュリアンとアンタレスは戦友の関係にありました。しかし1120年になると、保護領市民は自分たちを無意味な戦争に巻き込んだアンタレスに憤りを感じ始めました。ブルズクはその空気を感じとるや、保護領が旧ガシカン第二帝政に属していた、そしてヴァルグルへの偏見を未だ隠そうともしない2国を新加盟国として迎えようとしたことを口実に、あっさりと保護領から離脱してみせました。
 その頃にはスターレギオンの援護なしでもアンタレスが自立できるほどに、ルカン軍は弱体化していました。そして距離は離れていても、アンタレスとジュリアンには悠久の強固な絆が残されています。現在でも保護領の辺境方向(リムワード)側の加盟国はアンタレスと密接な関係を保っています。

(※やがてアンタレス同盟は、1123年に〈帝国〉からの完全なる独立を宣言しますが、領内の帝国残留派との溝を深めたブルズク大公は求心力を失い、その勢力は衰退する一方となりました。ついには1129年271日、政府中枢の置かれていた軌道上宮殿セリーズ(Cerise)の核融合炉が爆発し、大公一家やほとんどの政府高官が死亡したため、同盟は混乱と暴動の中で瓦解していきました…。なお、爆発原因についてはルカンの工作員もしくは人類至上主義過激派「スペリオリティ」の犯行と見られていますが、真相は不明です)


■保護領の知的種族
人類(ソロマニ系・ヴィラニ系) Humaniti
 現在の保護領近辺は第一帝国のヴィラニ人が入植した後に、ソロマニ人が進出してきた宙域です。第二帝国のヴィラニ系市民はソロマニ文化を受け入れたり、ソロマニ人との混血を進めたため、今では両者を区別することは極めて難しくなっています。ただし、文化面ではヴィラニの影響がまだ残っています。
 言語はアングリック(ギャラングリック)のトランスフォーム方言が主に話されています。これは元々アンタレス方言で、第二帝国時代のスコーピオン社による入植事業によって銀河核方向の宙域に広まったと言われています。また、ヴァルグルとの長い付き合いから、いくつかの言語変化を起こしています。

ケデプ人 Kedepu
母星:ケデパー(スターズ・エンド宙域 1005)
 ケデプ人はやや背が低めなこと以外は、平均的な人類と外見面であまり差はありません。しかし、彼らの歴史や文化には豊かな精神性を育むような文学や宗教といったものは全く無く、精神疾患も犯罪もほぼありません。その代わり、人類の中でも比類のない学習欲を持っています(※他の人類より特段知能が優れているわけではありません)。
 彼らにとっては知識と知識の交換こそが最も好まれる娯楽で、社会全体がそのように構築されています。ケデプ人は新しい技能や知識を得るために全く異なる業種に転職を繰り返したり、他者にそれを伝授したりします。ケデプ人はロレアン支配圏の高技術製品に興味を持ちましたが、彼らが熱心に欲しがったのは製品そのものではなく製造工程の方でした。
 そしてケデプ人は、ロレアンから知識や新技術を手に入れては研究を行い、研究成果をロレアンに納めるようになりました。ただしケデプ文化を守るために、現在のケデプ人の技術基盤では維持できないような技術は持ち込まず、導入される際にも事前に十分な教育が施されています。また、ケデパーに住む非ケデプ人口は総人口の35%以下に制限されていますが、これはケデプ人に異民族恐怖症の気があるからです(ケデプ人は認めませんが)。ケデパーに技術支援などで移住する者についても、人種差別的思想がないかどうかまず心理学検査を受けることが義務付けられています。

ヴァルグル Vargr
 宇宙各地に拡散したヴァルグルには様々な民族文化が存在しますが、保護領内のヴァルグルは基本的にイリリトキ文化圏に属しています。他には少ないながらもウルジン族やオヴォホァン族が、保護領の外にはシューズキ族がいます。
 俗に言う「ジュリアン圏」での人口比はヴァルグルと人類がほぼ半々ですが、その分布は均一ではありません。やはり、ガシカン宙域に近くなるほどヴァルグルは少なくなる傾向があります。

イリリトキ Irilitok
 -1000年頃からメンダン宙域周辺で奴隷化され始めたヴァルグルは、外見が人類の好みに合うように「品種改良」が施されました。結果生まれたのが、大きくて愛嬌のある目を持ち、鼻が低く、背筋の伸びた「人間らしい」ヴァルグルでした。
 メンデレス社の功績もあって、彼らは人類に最も好意的な民族集団として知られています。

ウルジン Urzaeng
 その身体的優位性から唯一社会的差別を受けなかった同名のヴァルグル亜種が中心の文化圏です。彼らは太古種族によって肉体を強化された反面、精神性は抑えられたため、粗暴なヴァルグルとなりました。文化圏としての特徴は、縄張り意識が強くて他のヴァルグルよりも「個人的空間」を広く取る傾向があります。例え仲間であっても、船室を共にすることはまずありません。また、弱さを嫌うために障害者や老人や重病者は離れの居住区に集められますし、軽い病気に罹っても人目につかないよう心掛けます。

オヴォホァン Ovaghoun
 端的に言えば「ヴィラニ文化と融合したヴァルグル」で、主にヴランド宙域やアンタレス宙域方面の〈帝国〉領内やその国境近辺に居住しています。彼らの先祖は第一帝国崩壊後にヴィラニ人の星を奪いに来たのですが、取り残されたヴィラニ人の方が人口が多かった星では共存が進み、ヴァルグルの方がヴィラニ文化を一部受け入れて新たな民族集団となったのです。

シューズキ Suedzuk
 主に「ヴァルグルの飛び地」に居住している民族集団ですが、恒星間政府を築くどころか無政府状態が常で、小さな集落に分かれて住んでいます。ここは追放されたヴァルグル亜種や、メンダンやガシカンからのヴァルグル難民の子孫が中心となっています。多くの集落は孤立を好み、他者と関わりたがりません。排他的で閉鎖的な分だけ、内部では生涯に渡る強い絆で結ばれています。
 ここのヴァルグルは人類から「赤いヴァルグル」と呼ばれていますが、これは毛並みが赤がかっていることだけでなく、ガシカン略奪で引き起こされた流血の意味も重なっています(ガシカン略奪を起こした海賊も後にシューズキとなったと言われています)。野蛮で乱暴という印象が強いため、人類やブワップだけでなく、一部のヴァルグルからすらも嫌われています(※赤毛のせいで亜種扱いされているのもあるようです)。

フーカル Hhkar
母星:不明(アムドゥカン宙域内と思われる)
 放浪種族だったフーカルは、少なくともヴィラニ人よりも先に亜光速船で宇宙に進出していたことがわかっています。現在のヒカル星域には最も新しいもので1万年以上前のフーカルの遺跡が点在しており、その中で最も大規模なものが第一帝国時代にスキールク(アムドゥカン宙域 2213)で発見されたものです。彼らが移住と放浪を繰り返している理由は未だに謎で、彼ら自身も全く語ろうとしません。
 現在の研究では、彼らは約5万年前に居住に適さなくなった母星を離れて放浪を始め、現在のスキールクなどに入植を行い、何らかの理由で1万年前にはそこを離れ、そして-222年に帰還したと考えられています。その当時、ウリニルと呼ばれていたスキールクには約1000万人のヴァルグルが居住しており、フーカルはそれらの殲滅を図りました。3年間の戦いの末にヴァルグルに全面降伏の申し出が許されましたが、その条件は、生産性のない者(高齢者・障害者など)の抹殺と出産の完全禁止でした。現在、この星にはフーカル以外に極少数のヴァルグルが地下洞窟で生活していますが、彼らは降伏を拒否して潜伏した入植者の子孫です。フーカルは特に彼らを追い詰めるようなことはしていませんが、発見し次第殺しています。
 この帰還でジャンプドライブを入手したフーカルは、徐々に入植地を拡大していきました。377年、スターレギオンのデイビッド・リンドクィスト提督(Commodore David Lindquist)がカルガル(同 1812)で敗れこそしたものの粘り強く戦術を駆使してフーカルに大損害を与えたことで、それに感服したフーカルは捕虜となった提督に名誉ある処刑を施し、勝利したにもかかわらず撤退を行い、フーカルの入植はそれ以降なぜか停止しました。その後、スターレギオンとの小競り合いこそ何度かありましたが、フーカルは少しずつ保護領やメンデレス社と協調していくようになりました。現在、メンデレス社はフーカル圏内に大規模な工業団地を持っており、全てフーカルによって運営されています。
 フーカルは爬虫類型の肉食獣が進化したもので、身長は2メートル以上、体重は約250キログラムで、二足歩行をしますが重い尾で体を支えています。また、他の爬虫類種と同様に鱗を持ちます。彼らは人類には「汚染」に分類される大気(特に硫黄化合物)を好みます。
 フーカルは肉食ですが、実は肉だけでは栄養が足りません。かつては母星の大気に含まれていた成分を呼吸することで補っていたらしいのですが、今ではとある植物を燃やして「喫煙」しています(当然ながら他種族には有害物質です)。
 彼らは卵から「男性」として生まれ、200年近い生涯の間に最大6回ほど性別を変えます。その際に脱皮が行われるため、他の知的種族のような老化現象とは無縁です。また、彼らの肉体は精神状態と強く結びついており、労働や学習や瞑想や仮死といった様々な精神状態に合わせて肉体を制御することができます。そのため、薬物は精神を乱し、超能力も「倒錯的」だとして嫌悪する傾向があります。

ブワップ Bwaps
母星:マーハバン(エンプティ・クォーター宙域 0426)
 テラのトカゲに似た知的種族であるブワップは、第一帝国時代から優秀な官僚として重用されていて、現在のジュリアン保護領内に彼らが居住しているのもその時代からです。
 平均的なブワップは身長約1.4メートル、体重40キログラム程で、湿度が非常に高い環境を好みます。極端な乾燥地域では密閉型の環境スーツを着用しますが、一般的には保湿機能を持つ特殊な衣服で体を守っています。体色は黄緑・緑・青・茶と様々で、独特の模様があります。
 ブワップは秩序と礼儀を何よりも尊び、急かされたり妥協を勧められることを拒むどころか、そのことに対する説教で余計に時間を浪費することすらあります。この生真面目な性格ゆえにブワップは、優秀な官僚としてだけでなく、会計士、歴史学者、科学者としての適性が高いのです。

ドロイン Droyne
 フーカル圏内のアーブラヅ(アムドゥカン宙域 2217)にはドロインが居住していますが、フーカル以外がドロインに接近することは固く禁じられています。フーカルとドロインの関係も含めて、その理由は不明です。

(※以下の知的種族はT5SSによって存在が記載されましたが、現在のところ非人類であること以外に設定は存在しません)

カアネン Kaanen
母星:マムシュリ(アムドゥカン宙域 0137)

クェルフ Qelf
母星:ヴァルダク(アムドゥカン宙域 1805)


■ジュリアン保護領
 保護領は国家同士の連合体です。個々の国の規模は様々で、その多くは星系内の1小国に過ぎません。全ての国が独自の外交を行い、独自の軍隊を保持しており、アシミキギルの中央当局にはほとんど実権を与えていません。
 しかし保護領は加盟国間の紛争を仲裁し、星間法規を定め、対話と協力を促進しています。また、国境警備や危機的状況に対処するための常設武装組織「スターレギオン」も持っています。
 ジュリアン保護領の境界線は、保護領への加盟状況によって変動します。〈帝国〉の星図業者は保護領をメンダン、アムドゥカン、エンプティ・クォーター、アンタレスの4宙域にまたがる国家として記載しがちですが(※マーク・ミラーが最初期に描いた「既知宇宙図」のことです)、これはあくまで「ジュリアンの中核」に過ぎず、実際には遠くはウィンドホーン宙域にまで飛び地状に「準加盟」星系が存在しています。
 経済面では、保護領の回転方向(スピンワード)側半分が圧倒的に活発です。ここには数千年前からヴィラニ商人が利用してきたメンダン・メインがあり、〈帝国〉と保護領の接点、そして遥かヴァルグルの母星レアまで続く交易路になっているからです。
 保護領の回転尾方向(トレイリング)側は、「ヴァルグルの飛び地」と呼ばれる停滞した地域と重なっています。この周辺はジュリアン保護領に直接加盟している星を除き、恒星間社会からも距離を置く傾向があります。そしてその先には、ジュリアンに冷たい視線を注ぐククリーの領域があります。


■保護領加盟国
アシミキギル連合 Asimikigir Confederation
TD等級:ほぼ9(完全な融和)
 ジュリアン保護領近辺の宙域において、人類とヴァルグルの関係には極端から極端までが存在します。負の極みがガシカン帝政なら、正の極みがこのアシミキギル連合です。ここでは人類とヴァルグルが快く協力しあい、親密な関係を築き、全てが統合された理想的な協同社会が実現しています。生物学・社会学的な違いは完全に受け入れられています。
 同時にアシミキギルはメンデレス社の本拠地です。同社は保護区領最大にして唯一無比の巨大企業で、多様性に富み、進歩的で知られています。あくまで利潤を求める延長線上ではありますが、模範となりうる影響力を持っています。メンデレス社の姿勢は、連合内や保護領内の他国でも人類とヴァルグルが良好な相互関係を築いている最たる要因として挙げられています。

ヴグロラ統治国  Vugurar Dominion
TD等級:8(公的に融和)
 統治国はヴァルグルが多数派の国家で、保護領立法議会(Protectorate legislature)での代議員はあらゆる問題に対して率直に意見を述べる傾向があります。多くのヴグロラ市民は種族平等を声高に主張し、差別問題に対しては強い関心が寄せられます。
 統治国の人権意識は、非常に強力な差別防止法に繋がっています。アシミキギルを手本とした種族融和への躊躇いを克服していくことが現在の統治国政府の主な目標となっており、政府提供の娯楽物語はアシミキギル(や連合星系)を舞台としたものや、統治国を旅するアシミキギル市民が主役のものばかりです。いずれにしても物語の中でパネット関係が主題となるのは必然です。

ルコダコジ共和国 Rukadukaz Republic
TD等級:8(公的に融和)
 共和国はアシミキギル連合やメンダン共同体に次いで、保護領内で影響力のある国です。帝国領アンタレスとの貿易の大部分はこの共和国を経由していて、メンデレス社の帝国事業部はここに拠点を置いています。
 ここは〈帝国〉との戦争が起きた際に「最前線」となるため、最強のスターレギオン戦力が配備されており、共和国の造船業に活力を与えています。一般的に高技術で高級な宇宙船はヴァルグル企業やアシミキギルの造船所で造られていますが、共和国の造船所は頑丈で絶対の信頼性がある船を造ることで知られています。ただし、建造から整備点検までのあらゆる面でレギオンからの発注が優先されるのは否めません。
 ルコダコジ共和国は、ヴァルグルがイリリトキ族ではなくオヴォホァン族がほぼ全てを占める珍しい国です。ただし共和国の回転方向(スピンワード)側国境付近には他文化圏の集落がいくつか存在します。
 共和国での人類とヴァルグルの融和具合は、アシミキギル連合とほぼ同等にまでなっています。種族問題に関しての態度はアシミキギルと共同歩調を採り、一方が積極策を講じるなら他方がそれを支えることで強固な関係を築いています。

ウホンジ平等国 Ukhanzi Coordinate
TD等級:7V(法的には平等)
 ウホンジは歴史的に帝国領アンタレスと密接な関係にありましたが、今となっては〈帝国〉とは明らかに冷え切っています。というのも多数派のヴァルグルの多くが、差別や虐待から逃れてきた帝国系ヴァルグルの子孫だからです。同じヴァルグルである歴代アンタレス大公に対しても、同胞である前に帝国人であり、所詮〈帝国〉の権力者であると見ています。
 ウホンジの多くのヴァルグルは(※ジュリアン市民の)人類との融和に慎重でしたが、ここ数十年でそれは著しく改善されており、遠くない未来にも理想的な関係が築ける可能性は十分にあります。

クーホン星宿国 Constellation of Koekhon
TD等級:7(法的には平等)
 この国ではヴァルグルが行政を担い、人類が司法を担当しています。ここの人類はほとんどがソロマニ系で、ヴァルグルはイリリトキ族が主ですが極少数のウルジン族やオヴォホァン族も居ます。
 クーホン社会はいくつかの点で矛盾を含んでいます。人類とヴァルグルの協力が非常に進められている割に、一方が他方に強い偏見を抱いているのです。共存はできていても、社会的な場面で両種族が共にいることは珍しく、アシミキギルでは一般的な連愛関係も、ここでは倒錯的なものものと見られています。また、ジェッサ・ハウス(アムドゥカン宙域 1432)の人類社会は、人類のみが神によって創られたものであり、他の知的種族は存在自体が神の御業を愚弄していると捉え、真なる知的種族である人類と付き合うには値しないと信じている宗教団体なのです。
 クーホンは保護領の中央部に位置するため、保護領外の国家や文化との接触から比較的切り離されており、保護領内でもルコダコジ共和国とのみ国交があります。保護領立法議会でもクーホンの代議員は孤立主義的主張をしています。

ピルバリシュ星連 Pirbarish Starlane
TD等級:7H(法的には平等)
 その国号は、「人類の支配」が崩壊する前にメンダン・メインを守っていたヴィラニ人権力者に由来します。首都ラスラ(メンダン宙域 1634)はジュリアン戦争以前はこの地域で2番目に重要な星系であり、〈帝国〉占領下では抵抗活動の主な拠点となっていました。現在ではアシミキギル連合に主導権こそ譲ってはいますが、依然としてこの地域での影響力を保っています。
 ピルバリシュでは種族間の法的な差別は禁止されていますが、慣習的に社会的分離を行っている星系は未だ多いです。

ルムダ寡婦産国 Lumda Dower
TD等級:7H(法的には平等)
 ルムダに属する3星系は、人類とヴァルグルの双方が重要な役割を果たす立憲君主制によって統治されています。行政の長であるルムダ領主(Lord of Lumda)は常に人類の男性ですが(ただし後継者は妻の家族から選ばれます)、司法はヴァルグルに委ねられ、立法は人類院とヴァルグル院の二院制です。
 ここでは種族間に強制的な隔離はありませんが、全体的な傾向として他種族との間に居心地の悪さを感じています。これは保護領であっても特に珍しいことではありませんが、他国よりも大きな割合で見られます。
(※Dowerとは夫の死後に未亡人が分与される財産を意味します。おそらく領主の地位の継承の仕方を表しているものと思われます)

ロレアン支配圏 Lorean Hegemony
TD等級:7(法的には平等)
 942年に保護領に加盟したロレアン支配圏は、保護領加盟国の中でも星系数では最大でないにしろ最大級の国家です。しかし保護領の端に位置していること、自国優先の政策を採っていることから、保護領内での影響力は限定的です。とはいえメンデレス社の資源開発事業部を最も積極的に支援しているのが、実はこの国です。
 ロレアンは保護領の中で唯一、ククリーとの関係拡大を模索しています。その努力は保護領とククリーの双方から無視されていますが、将来的にククリー交易は保護領内でのロレアンの影響力を高める可能性があるため、水面下で調整が続けられています。
 ロレアンでは種族間の社会的分離は、差別政策ではなく心理的・文化的な差異を配慮した結果として行われています。両種族の関係は良好であり、市民は何事もなく共働することができます。

メンダン共同体 Commonwealth of Mendan
TD等級:6H(弱い差別政策)
 共同体は元々ガシカン第二帝政に属していたのですが、今ではアシミキギル連合に次ぐ影響力と政治力を持っています。共同体は保護領立法議会では保守派に属し、対外外交を控えるよう訴え、保護領への新規加盟に対しても消極的です。
 共同体は種族平等の原則を受け入れてはいますが、まだ種族間の憎しみは残っており、両種族が一緒に居たり、協力関係にあることは保護領の他国と比べても少ないです。共同体内で少数派であるヴァルグルに未だに参政権を与えていない星系はありませんが、制度化された差別はまだ残っています。とはいえそれは少しずつではあるものの変化してきており、ヴァルグルに強い反感を持つガシカン第三帝政に馳せ参じるのではなく保護領残留を選んだことにも、その変化があると言えます。

オズヴォン連盟 Alliance of Ozuvon
TD等級:5V(強い差別政策)
 ヴァルグルが多数派であるこの国は、元々はガシカン第二帝政(しかも現在のメンダン共同体に属する星々)から逃れてきたヴァルグルによって建国されたものです。ヴァルグルの民族構成はイリリトキ、ウルジン、オヴォホァンですが、イリリトキの比率は他所よりも少な目です。
 ここでは人類、特にメンダン共同体の人類への恨みや敵意が蔓延しており、連盟の多くの星で人類はせいぜい参政権のない二級市民や不可触賤民、少数の星では奴隷とは名ばかりの存在として扱われています。他国や保護領はこの措置を公式に非難していますが、まだほどんど改善されていません。

「群狼の巣(ローラ・エロル)」 Rar Errall
TD等級:2V(消極的な排斥)
 「群狼の巣」は保護領では珍しいヴァルグル単一の国家で、その多くをガシカンやトレンチャンからの難民やその子孫となるウルジン族が占めています。この国がガシカン第三帝政への海賊行為の拠点となっているという疑惑がありますが、証明はされていません。
 長い間、ここに入国した人類の保護領市民は冷たいとはいえ許容範囲内の扱いを受ける一方、保護領外の人類は即時退去させられていましたが、近年では暴力こそ無いものの保護領市民すら退去させられることがあり、正式な抗議が度々行われてきました。保護領立法議会では一部から加盟国資格の剥奪を求める動きもあります。

フーカル圏 Hhkar Sphere
TD等級:0(接触なし)
 フーカル圏はジュリアン保護領内で唯一、人類もヴァルグルも多数派ではありません。その代わりにこの国を治めているのは恐竜人のフーカルです。フーカルとの最初の接触は戦争に至り、やがて保護領に併合されましたが、彼らに対しては未だに警戒感があるため、カルガル(アムドゥカン宙域 1812)には十分すぎる人員と装備を整えたスターレギオン基地があって睨みを利かせています。
 基本的にフーカルは交易以外で他種族と交流することがないため、厳密にはテツス=デネ等級は0となりますが、過去の実績から実質2~3はあると考えられます。

単独加盟星系 Unincorporated
 多くの星系は加盟国の下に入ることなく、または加盟国を形成することなく保護領に加わっています。これらの星系はスターレギオンの保護を受けつつ独立を謳歌し、自国の利益を追求していますが、その分議決権は弱められています。

準加盟:サルカン星宿国 Sarkan Constellation
TD等級:5H(強い差別政策)
 サルカンは、メンダン宙域に存在したものの種族間対立から崩壊したホルミン同盟(Hormine League)の残滓です。住民の大半はヴァルグルですが、ヴァルグルは公職に就いたり企業を所有することができず、ヴァルグル向けの公共施設の質はほとんどが水準以下です。
 人類のみによるサルカン政府はほぼ、傘下星系を抑えることができていません。ジュリアン保護領との関係すら名ばかりで、ここを拠点とする海賊団がジュリアンの船を襲うことも珍しくありません。

準加盟:ズウガビシュ三国同盟 Zuugabish Tripartite
TD等級:5H(強い差別政策)
 ズウガビシュがジュリアン保護国への正式加盟を実現できなかったのは、主にアシミキギルとルコダコジの反対によるものでした。両国は三国同盟内でのヴァルグルの扱いに異議を唱えたのです。この国では少数派の人類が三国同盟を統治する一方で、多数派のヴァルグルは蜂起と(暴力的な)鎮圧が繰り返されてきています。
 そして国内外のヴァルグル海賊団の存在が、更に状況を不安定化させています。弱小の星系政府は自領内に海賊基地が建設されるのを止めることができていません。有力な3つの星系政府に至っては、海賊団を自分たちの非合法な利益のために利用しているとすら疑われています。
 しかし、正式加盟への道は海賊対策にこそあるのです。より強力な中央政府さえできれば、種族間問題も大きく進展することが期待できます。同盟政府は目標達成のための支援を求めて、メンダン共同体との緊密な関係を築こうとしています。

準加盟:バンメシュカ連合 Confederation of Bammesuka
TD等級:4H(隔離政策)
 バンメシュカ連合は、ガシカン第二帝政崩壊後に残された弱小星系の集まりで、分権型の星間国家です。多くの点でこの国の文化はメンダン共同体に似ています。しかし連合政府は国内をまとめられるだけの余力がなく、国内だけでなくサルカンやズウガビシュやメンダン宙域に拠点を置く海賊団に常に襲われています。
 人類のヴァルグルに対する態度も、ガシカン統治時代からさほど変わっていません。しかし弱いながらも連合政府は、そんな状況を変えようと努力はしています。

非加盟:保護領属領 Client States
 ククリー国家「二千世界」との間には、いくつかの保護領属領があります。これらの星系は天政学的(astrographical)利点を保護領に提供することで、スターレギオンによる最低限の庇護を受けています。中には、本格的に保護領加盟を目指している星もあります。

(後編に続く)

MT日本語版30周年企画:ジュリアン保護領とアンタレス(後編)

2021-05-31 | MegaTraveller
■護星軍団(スターレギオン)
 スターレギオンはジュリアン保護領の軍事機関です。その任務は、第三帝国を始めとする外部の脅威や、内部の好戦主義国から保護領を守ることです。
 団員は当然保護領内から採用されます。スターレギオンは建前上中立のため、団員は入団の際に出身国の市民権を放棄することが求められます。これは祖国の敵として任務を遂行しなければならない際に、団員の立場を守るためでもあります。
 最初のスターレギオンはメンデレス社によって結成されたため、当初は伝統的な軍隊のような指揮系統や階級制度はありませんでした。代わりにあったのは、様々な傭兵部隊や星系海軍や海賊団を継ぎ接ぎしたような奇妙なものでした。最終的にメンデレスの軍事顧問が整理をして、今のような既存の軍隊とは全く違う階級制度が完成しました。
 スターレギオンはその下に「海軍(Navy)」「海兵隊(Marine)」「遠護局(Far Guard)」の3軍を置いています。

●レギオン海軍
 軍団の予算の大部分は、恒星間国家の軍隊として恥ずかしくないように海軍に回されています。海軍は、戦艦から護衛艦までジャンプ可能艦による「主力艦隊」、戦闘機や小艇による「飛行隊」、バトルライダーやテンダーによる「地方隊」から成っています。
 主力艦隊や飛行隊はスターレギオンの打撃力を担い、通商破壊任務にも就きます。
 地方隊はしばしば比較対象となる帝国海軍と最も異なる部分で、保護領の加盟国はレギオン海軍に一定数のバトルライダーを供出する義務があります。ライダー艦は平時は自国を守るために配備されますが、有事の際には海軍所属のテンダー艦によって保護領全体で戦略的再配置を行えるよう規定されています。このことからライダー艦には海軍の艦艇で唯一、保護領と加盟国の両方を合わせた紋章が描かれています。
 レギオン海軍では、配属された艦船の規模によって「狼群(Wolfpack)」「艦隊(Fleet)」「艦隊群(Horde)」と呼び分けています。

●レギオン海兵隊
 海兵隊は海兵科、支援車両科、重砲科の3科から成りますが、レギオン海兵隊には特筆すべき2つの精鋭部隊があります。バトルドレスで装備した「重装突襲撃展開分隊(HARDS)」と、水中作戦や隠密行動や爆破解体に長けた「地下専科孔入爆破分隊(SQuIDS)」です。双方とも、海兵科部隊では危険過ぎると判断されるような作戦を得意とします。例えば、HARDSは海軍艦艇が敵地でも給油や修復を行えるよう事前に軌道宇宙港を占拠しますし、SQuIDSは防衛用の海中中間子砲を無力化して軌道上の味方艦の脅威を取り除きます。

●レギオン遠護局
 遠護局は〈帝国〉の偵察局や情報部に該当する部隊で、その下には斥候部、情報部、監査部の3部門があります。斥候部は国境哨戒や兵力調査を担当し、早期警戒の役割を担っています。情報部は諜報、防諜、テロ対策を保護領全体規模で行い、時には加盟国の同様組織ともやり合います。監査部はレギオン全体の法務や人事経理を担当し、加えて独立監査官として加盟国の軍事力の透明化を担保しています。


■ジュリアンの紋章
 メンデレス社は「円の中にトロイの兜」を社章として採用しています。これは「メンデレス」の語源が、古代都市イリオス(トロイ)近辺を流れる「マイアンドロス(Maiandros)川」であることが由来です(※余談として、同社初の宇宙船「ミアンダー(曲流)」の語源も同じです)。
 ジュリアン保護領成立後、スターレギオンは「三角形の中にトロイの兜」を団章としていましたが、1118年にアンタレスが加盟したことを記念して「3つの逆三角形に囲まれたトロイの兜」に変更されました。
 なお、加盟国所属のテンダー艦には3つの逆三角形の中にそれぞれの国の象徴が描かれています(アシミキギル所属の艦はトロイの兜です)。そのためアンタレス海軍の艦艇には、(住民の強い要望により)帝国の日輪(Imperial sunburst)が描かれていました。
 ちなみにアンタレス離脱後は、アンタレス海軍は元々の領域章である「並列する3つの三角形」に戻しましたが、ジュリアン側の紋章に変化はありませんでした。
(※結局、ジュリアン保護領の国章が何なのかは不明確です。歴史的経緯からトロイの兜ではありそうなのですが…?)


■アシミキギルでの生活
 帝国人は「2種族の共同社会」と聞いても、何かしらの障壁があるものと考えがちですが、少なくともアシミキギルにはそういったものは全くありません。人類とヴァルグルは相互に同じ文化を共有し、その周辺星系でも親密な共有文化が形成されています。端的に言えば、この地域では人類とヴァルグルはお互いを「好き合っている」のです。
 この両種族は本来同じ星に起源を持つため、親近感を持つのは不思議ではないかもしれません。実際、人類は他の異星人ほどにはヴァルグルを異質には思わない傾向があり、理解や付き合いが容易になっています。489年に帝国政府が行ったテラへの遣星使では、どの知的種族よりもヴァルグルがテラ市民に熱烈に歓迎されたという一例もあります。
 アシミキギル社会では、人類もヴァルグルも、男性も女性も全て平等でですが、社会はそれぞれの違いにも十分対応できています。そして同種族間の伴侶の絆、家族の絆、友情の絆といったものに加えて、〈帝国〉にはない異種族同士の絆が存在します。
 ジュリアン市民はどちらの種族でも、別種族との特別な絆を「連愛(つれあい/パネット)」と表現します。これは「連れ(comPANion)」と「愛玩(pET)」を合わせた造語で、帝国人に説明する際には「ペットへの情愛」によく例えられます。ただし両者の間には一定の敬意があり、どちらが「主人」かどうかという見方はしません。言い換えれば、お互いがお互いを家族や恋人に等しいペットと見ているとも言えます。
 パネット関係にある二人は当然親密になることが多く、ジュリアン市民以外には受け入れがたい光景が公共の場であっても普通に見られます。例えば、人類が飼い犬に対して行うようにパネットとじゃれあったり、頬を舐め回しあったりするのです。また、社交行事で〈帝国〉社会で友人や配偶者の同伴を求めるように、アシミキギルではパネットの同伴を求められることもあります。そしてパネットは個人間に限らず、長年の家族ぐるみのパネットが形成されることもあります。


■メンデレス社
 第N次恒星間戦争(-2235年~-2219年)の頃、ソロマニ人商人のメンデレス家はメンダン・メインに沿って成功した交易路を確立しました。その後皇帝ヒロシ2世が権力を握ると、他のソロマニ企業家と同じようにメンデレス家はアシミキギルの総督に任命されました。
 その後、メンデレス家はアシミキギル全体を覆う「企業王朝」を築き、暗黒時代での経済・技術の衰退を巧みに乗り切りました。メンデレス家は決して独占を追い求めたわけではないのですが、他者では対処できないような様々な危機に対して一番貢献できたのが結果的にメンデレスだったのです。これは-247年に宇宙に進出した際にも見られ、メンデレスはクドゥカラ運輸の独占を崩すために手段を尽くしましたが、優勢が得られたと見るやクドゥカラへの追撃を止めました。
 シレアとヴィラニ企業の連携は、メンデレス経済圏への最も好ましくない敵手となりました。平定作戦(76年~120年)の際には貿易戦争が繰り広げられ、最終的にメンデレス社はリシュン、アンタレス、エンプティ・クォーターの各宙域の市場を手放さざるを得ませんでした。それ以来、メンデレス社はヴァルグル諸国に残された市場と交易路を大切に守ってきました。
 メンデレス社が成功したのは、帝国企業と違ってヴァルグルの経済を熟知していたからです。メンデレス社は可能な限りヴァルグル企業に投資を行います。なぜならヴァルグル諸国の人類企業は帝国企業の進出口となり得る上に、安定しすぎていて周辺のヴァルグル企業を駆逐しかねず、それは結果的にメンデレス社の利益にはならないのです。

 メンデレス社は常に営利を求めており、社会的な施作もあくまでより有利な商環境を整えるために行っています。それでもメンデレス社がジュリアン社会に与えた影響は多大で、ほとんどのジュリアン市民は同社を人類とヴァルグルの友好関係を促進する先駆者と見ています。
 例えば、同社は何世紀にも渡って様々な運動競技を後援し、公共放送で広めていますが、これらは全て人類とヴァルグルの混成チームで行われ、両種族の長所短所を補完できるように意図的に規則が設計されているのです。
 同様に、社内組織も両種族の長所を活かせるように調整がされています。
 メンデレス社には以下の事業部が存在します。

輸送通信事業部
社の恒星間貨物船団を運営し、営業圏内での星間通信サービスを提供しています。
宇宙機器事業部
軍艦から宇宙服まで、宇宙に関わるあらゆる製品を製造しています。ヴァルグル諸国では宇宙船丸々一隻ではなく搭載機関や交換部品を主に販売しています。
情報事業部
ヴァルグル諸国で偶然に頼らず活動するためには、優れた情報収集活動が必須です。加えてこの事業部は〈帝国〉の競合企業を監視し、必要に応じて秘密工作や産業スパイ活動を行います。
兵器事業部
拳銃から惑星防衛システムまで、あらゆる兵器を製造しています。これらの製品はヴァルグル市場で高い競争力を持っており、特に磁気銃器や質量投射砲(mass drivers)が優れています。
重機械事業部
フュージョン削岩機、大型発電所、都市交通システムなどを製造しています。
電子機器事業部
電子製品やコンピュータに関連するあらゆるものを製造しています。ヴァルグルの技術革新をどこよりも丁寧に研究し、優れたものを取り入れています。
資源開発事業部
メンデレス社のほとんどの子会社がこの事業部に属しています。ここは何世紀にも渡って農地や鉱山、加工工場に投資してきました。現在はアーズル宙域に注力しています。
帝国事業部
1085年に設立された最も新しい事業部で、〈帝国〉領内の事業を管轄しています。


■〈帝国〉との関係
 帝国内戦(604年~622年)以降、ジュリアン市民が第三帝国からの侵略を恐れる理由はほとんどありません。しかし保護領では未だに、〈帝国〉が自分たちの理想にとって常に脅威であると考えられています。これは、ジュリアン市民が保守的なヴィラニ哲学の影響を色濃く受けているからです。このゆっくりとした変化を好む傾向はヴァルグル諸国との交流でも大きな強みになっていますし、保護領内のヴァルグル市民の気まぐれな性格を相殺し、補完する役割も果たしています。また、メンデレス社が市民に〈帝国〉への疑念を抱かせるような世論誘導を行っているのも事実です。〈帝国〉をヴァルグル市場から締め出すことは長い間メンデレス社の利益になっており、反帝国感情が高まれば同社にとって有利に働くのです。
 〈帝国〉からヴァルグル諸国を守るために、メンデレス社はヴァルグル市場で帝国クレジットを切り下げ、ジュリアン通貨のスターを普及させることに努めています(※1保護領スター≒1帝国クレジット)。また顧客に対しても、〈帝国〉の規格ではなくジュリアンの規格を採用することを勧めています。保護領では暦や単位系からコンピュータの仕様に至るまで、古のヴィラニ帝国のものを意図的に採用していますが、そうすることで〈帝国〉の商品とは互換性がなくなり、それが貿易障壁として機能するのです。
 しかし〈帝国〉とはそうであっても、ジュリアン市民は昔からアンタレスには「同じ起源」ゆえに親近感を抱いていました。内戦前のアンタレス大公位はジュリアン市民にとって宿敵とも言えるディアディン家が務めていましたが、内戦後にグラズドン・ディアディン(Glazdon Deirdin)大公が、アルベラトラの意を受けたヴァルグルの腹心ソウグズ提督に粛清され、大公位を取って代わられてからは良好な関係が築けています。残念なことに第四次辺境戦争(1082年~1084年)まで歴代のヴァルグル大公には両者の関係を積極的に改善する権限がありませんでしたが、戦後、ストレフォン皇帝が領域大公の権限を拡大する勅令を出すと、早速メンデレス社にアンタレス領域内での営業認可を与えるなどしています。


■保護領での冒険について
 ここは多くの点で〈帝国〉に似ており「異質」と考える必要はありませんが、最も重要な特徴はヴァルグルの存在です。2つの種族が混じり合うことで生じる複雑な問題がありますが、人類とヴァルグルの距離感は星系ごとに異なります。

種族問題:
 冒険に役立つ主題として、種族間の憎悪と調和の対立があります。この地域では人類とヴァルグルの関係は改善されつつありますが、その歩みは遅いです。ガシカンの略奪に始まる一連の悲劇の恨みは完全には消えていません。ヴァルグル社会の多くは依然として人類を憎んでおり、一部の人類は未だに種族間の争いを助長する古い思想を掲げています。バンメシュカやズウガビシュの資本家はヴァルグルから収奪して人類を富ませており、ガシカンが仕掛ける策謀は最も陰湿で冒険の悪役として最適です。

〈帝国〉への偏見:
 プレイヤー・キャラクターが〈帝国〉出身であれば、保護領では有形無形の困難に遭遇することでしょう。多くのジュリアン市民は帝国人には冷たく接し、しばしば非協力的です。ただでさえ困難な状況をより悪化させるようなこともしかねません。
 もちろん、アンタレス市民は例外です。アンタレス発行の旅券や登録証を持つ旅行者は、単に近隣の国から来たというだけの扱いを受けます。ジュリアン市民が皆ブルズク大公に好意的ということもなく、むしろ反発してる人も少なくありません。しかしブルズクやアンタレスを〈帝国〉とも考えておらず、少なくともアンタレス出身者は〈帝国〉に向けられる偏見を受けることはありません。
 ただしブルズクをめぐる保護領内の論争は、それ自体が冒険の種となる可能性があります。旅人はアンタレス市民だというだけで強制的に政治に巻き込まれるかもしれませんし、アンタレス同盟の諜報組織トラシロン(Trasilon)の工作員に「なる/雇われる」キャンペーンもありえます。この場合の保護領内での活動目的は、保護領とアンタレスの距離を縮め、大公の影響力を高めることになります。

保護領内での貿易と企業:
 (反乱前の)〈帝国〉の貿易商人は、統一された恒星間政府と複数の巨大企業という環境で商売をしていました。しかし保護領は、多数の恒星間政府と一社独占の巨大企業という全く逆の環境となります。保護領内には星域規模企業すらほとんどないですし、それ以前に統治領自体がメンデレス社と言っても過言ではありません。一方で、加盟国はそれぞれ自前の宇宙港を(保護領の指導を受けながら)管理していますし、法律どころか社会の仕組みすらまちまちです。
 したがって星間企業が雇い主となることは〈帝国〉よりは珍しいでしょうが、代わりに星間政治が冒険の基盤となります。現代地球の国家と同じように加盟国はそれぞれ貿易を行い、資源を奪い合い、事件を口実に戦争を警告し、自国の威信を高めます。旅人はそんな政治状況に翻弄されることになるでしょう。


【ライブラリ・データ】
アンタレス家 House Antares
 622年にアンタレス大公に就任したソウグズから続くヴァルグルの一族のことです。ヴァルグルは基本「姓」を持たないため、便宜上こう呼ばれます。現在の大公は、1100年に就任した10代目となるブルズクです。ちなみに意外に思われるかもしれませんが、帝国の今の大公家の中では2番目に古くから続いている家系です。
 アンタレス家の特徴として、長子継承ではなく、ヴァルグルらしく子の中から最も優秀な者が指名されて後継者となることが挙げられます。また、一夫一婦制を採用はしていますが、生涯仲睦まじく添い遂げることまでは流石に期待されていません。
(※1番古いのはヴランド大公のタウリビ家で76年から、他はアルカリコイ家のシレア大公兼務が629年、ソル大公のアデアー家が1003年から、ゲイトウェイ大公のミノモル家が1076年から、イレリシュ大公のイレシアン家が1104年からです。そして御存知の通り、デネブ大公は589年の設置当初から空位が続いています)

遣星使 Alien Missions
 382年から行われた、帝国と周辺国の間の外交的・文化的交流を深めるために派遣された使節団、及び様々な関連事業のことです。ユージン・スウカル大使(Ambassador Eugene Suukar)の助言の下、皇帝マーティン3世は偵察局にアスランを学ぶための使節団を送るよう命じました。ヤク・バーロダ卿(Sir Yaku Barroda)の指揮の下、使節団はクーシュー(ダーク・ネビュラ宙域 1919)に382年に到着しました。
 颯爽とした性格のバーロダ卿は現地でどこに行ってもアスランから尊敬を集めました。その後彼はゾディア氏族のイェレァ(Yelea)という人類の妻を娶り、ウイクトオコー氏族に与えられた土地に定住することを決めました。バーロダ卿は429年に「戦士として」死を迎えましたが、現在でもバーロダ卿夫妻の功績はアスランと帝国人の間で語り継がれています。
(※この設定は本来は「アスラン使節団(Aslan Mission)」だったはずなのですが、見間違えたのか拡大解釈されたのかヴァルグルにも適用されたようです。確かにありえなくもないため、独自に表現を擦り合わせています)
(※ゾディア氏族こと「ゾディア入植地(Zodia Colonies)」は、アスラン領内にある人類の入植地です。アスランが宇宙に乗り出すより先に地球人はイウォファーハ宙域の各地に入植していましたが、やがてアスランの拡大で吸収されていきました。そして、入植者の中でも日系人はアスラン文化と親和性が高かったため、最終的にゾディア全体の長となりました。現在、ゾディア氏族はトローヱァエァウィ氏族の配下として繁栄しています)

摂政 Regent
 ジュリアン保護領内で頻繁に使われる政治の最高指導者の称号のことです。アシミキギルでは、第二帝国首都ハブ/エルシュルからの新総督任命書を待つ間の政治指導者を指す言葉でしたが、第二帝国崩壊後、「摂政」は政界の頂点にいる者として扱われるようになりました。諸説ありますが、偉大なるヒロシ1世が生涯あくまで摂政であることを貫いた故事に由来したとも、もはや新総督はやってこないからとも言われています。
 現在のジュリアン保護領の摂政は、1112年に選出されたガーリン・デイドライエ・カアリシュウ(Garin Deidrie Kaarishuu)です。カアリシュウ家はアンタレス平定作戦の際に〈帝国〉から逃れてきた一族であり、その後メンデレス家と婚姻関係を結んでいます。彼女は政治指導者としては(良くも悪くも)自己主張を控え、配下の意見に耳を傾けています。

ディアディン大公家 Archduke Deirdin Family
 ディアディン家は、帝国暦97年にアンタレス平定作戦の開始で設置された「アンタレス領域」の大公として採り立てられました(※領域の正式設置は110年という設定もあります)。その任務は大公領である自領、つまりアンタレス宙域とリシュン宙域を第三帝国領として編入することで、ディアディン大公はそれを114年までに完了させました。
 それに続いたジュリアン戦争でも、ディアディン大公家はアンタレス領域の残された部分であるメシャン宙域とメンダン宙域、つまり旧第二帝国領を回復させるべく先頭に立ちましたが、これは現地の激しい抵抗に遭って頓挫しました。そしてディアディン家は代々、622年に反逆罪で大公位を失うまでアンタレス領域を統治していました。

テツス=デネ(TD)等級 Tetusu-Dene Scale
 ヴァルグルが人類社会にどう溶け込んでいるかを解りやすく数値化したもので、スピンワード・マーチ宙域で開発されました。数値は1(積極的な排斥)から9(完全な融和)に0(接触なし)を加えた10段階で、更にジュリアン保護領では末尾にどちらの種族が主流派かを意味するHもしくはVを付加するよう改良されました。

ミカシルカ圏 Mikashirka sphere
 現在のアンタレス近郊に位置するこれらの星系は、第一帝国時代の-8150年頃からナアシルカ局が探査・採掘を始めていて、このことからミカシルカ圏は第一帝国時代を通じてナアシルカの「飛び地」のままでした。
 しかし本格的にこの地が発展するのは、第二帝国時代にソロマニ系企業スコーピオン社と旧三部局のシャルーシッドが共同で行った大規模入植事業以降です。

メンダン・メイン Mendan main
 リシュン、アンタレス、メンダン、アムドゥカン、トレンチャン、ガシカンの各宙域をジャンプ-1で行き来可能な、総計1037星系にも及ぶ巨大星団のことです。古くは第一帝国首都ヴランドと最辺境の資源星団圏を結ぶ重要な輸送路「ヌダシイル・ラガニ」として機能し、現在でも主要交易路として数多くの宇宙船が往来しています。「リシュン~ガシカン・メイン」とも呼ばれます。



【参考文献】
・Challenge #49 (Game Designers' Workshop)
・Rebellion Sourcebook (Game Designers' Workshop)
・Hard Times (Game Designers' Workshop)
・Vilani & Vargr (Digest Group Publications)
・Solomani & Aslan (Digest Group Publications)
・Travellers' Digest #18 (Digest Group Publications)
・GURPS Traveller: Alien Races 4 (Steve Jackson Games)
・GURPS Traveller: Humaniti (Steve Jackson Games)
・GURPS Traveller: Nobles (Steve Jackson Games)
・Julian Protectorate (Angus McDonald)