宇宙の歩き方

The Astrogators' Guide to the Charted Space.

水界の量を決めるのは大気か規模か?

2012-06-27 | Traveller
 私がちょくちょく利用しているトラベラーファンサイトにZhodani Baseというのがあります。昔からUWPデータや様々なツールを提供していて色々便利なのですが、その中にRandom Subsector Generatorがあります。
 読んで字のごとくランダムに星域データを吐き出してくれる便利なものなのですが、その設定パラメータの中に「Rules:」というのがあって、選択肢に「Book-3」「Book-6」というのが見えると思います。
 下に解説があるので読めば一発でわかりますが、実はトラベラーシリーズの星系作成ルールは、Book 3こと基本ルールの「Worlds and Adventures」と、Book 6の「Scouts(偵察局)」で水界度を決めるルールが異なっています。前者は「水界度=2D-7+大気」で、後者は「水界度=2D-7+規模」とDMの参照先が違うのですが、ややこしいことに後発であるBook 6方式をその後『メガトラベラー(MegaTraveller)』と『Traveller: The New Era』で採用した後、『Marc Miller's Traveller(T4)』と『Traveller 20(T20)』では前者に先祖返りし、現行のMongoose Publishing版ではBook 6方式にまた戻る、と行ったり戻ったりしているのです。

※ちなみに『GURPS Traveller』では『GURPS Space』を利用、『Interstellar Wars』では4D6で決まる惑星の種別ごとにサイコロを振る方式、『Traveller5』では…現物を持ってないのでわかりませんがおそらくT4と同じではないかと思いますなんと「1D-1D+規模」なんだそうです。『Traveller HERO』は…さあ?(笑)

(2019年追記:この記事当時のTraveller5(第5.0版)は確かに規模でしたが、2015年発売の第5.09版(および2019年発売の第5.10版)では大気に戻っています。また、Traveller HEROも大気のようです)

 つまり、Book 3方式では「惑星の水の量は大気の濃さ=雨の量」で決まるとしているのに対し、Book 6方式では「惑星の水の量は規模の大きさ=惑星の重力」で決まるとしているわけです。どちらもありえそうなだけに、悩ましいところです(そして大気自体もDMとして規模=重力の影響を受けているだけに余計に)。
 さてこの2つの方式でどのように差が出るか、1万個ほど星系を作って水界度の分布を集計してみました(なお面倒だったので大気コードの上限は『メガトラベラー』と同様に15としています)。


 ご覧の通り、規模をDMとするBook 6方式では水界1~9で「2D-2」で決定される規模と同じような発生分布となるのに対し、大気をDMとするBook 3方式ではDMに加算される「大気が0、1、A+ならDM-4」がそのままかかってくる分だけ「歪み」が生じているのがわかると思います。大気が薄い惑星が水界0になりやすく、異種大気星系の水界度が高くなりがちになるわけです。
 またBook 3方式で一番影響がでるのは、貿易分類で「氷冠」になる星系が減ることではないかと思います。データの抽出がうまくいかなかったので(汗)具体的な個数を出すことはできませんでしたが、単純に考えても氷冠世界の条件である大気0と1で水界にDM-4がかかるということは、水界度決定の時に2Dで11なり12を出さないと氷冠世界にはなれないわけですから、規模の大きさで救われる可能性がない分だけ氷冠世界は減りそうですね。

 で、どっちが正しいのかというと…おそらくマーク・ミラーの意図としてはT4でも採用しているBook 3方式だったのでしょう(T5ではDMが規模になりましたが)。Book 6でDMが規模に変わったのがそもそも誤植、という話もありますが(そういえばホビージャパンの日本語版でもルールブックとチャートブックで異なっていましたね(笑))、『メガトラベラー』では誤植とされていないので謎は深まるばかりです。
 まあグラフでは大きな差に見えますが、確率に直せば1~2%程度の差、つまり1宙域規模で星系を作ってようやく数個違ってくるぐらいですので、1星域しか作らないのであればそこまで気にしなくてもいいかもしれませんが、一応「Book 3方式は水界0とAが多めになりやすい、氷冠が少なくなりやすい」ということは頭に入れておくといいかもしれません。例えば、ソロマニ・リム宙域のガシッダ星系はUWPが「A36A969-E」(帝国暦1100年代)ですから、Book 3方式でないと規模3で水界Aにはなれません。そういった「極端な」世界を許容するか、「規模3の重力では水界8が限界だよな」と思うかは好みの問題でしょう。

※上の例を見るとソロマニ・リム宙域はBook 3方式で作られていそうですが、その割には氷冠世界もそこそこあるんですよねぇ(汗)。確率的に異常かどうかまでは確認していませんが、そもそもサイコロを振らずに意図的に作っている可能性もありそうです。
(2019年追記:後にガシッダ星系のUWPはT5SSによって「A56A969-E」に修正されました)

 結局何の解決にもなっていませんが(汗)、何かしらの参考になれば。
(追記:T5も規模派に転じたようなので、とりあえずDMを規模にしておけばいいような感じですね

2170AD, Man's Battle for the Stars

2012-06-18 | Imperium/Interstellar Wars
 俗に『トラベラー宇宙』と呼ばれる世界設定は、約3500年先の「超未来」を舞台としていますが、GURPS Travellerではもう一つ、「近未来」を舞台にした世界設定があります。『Interstellar Wars』、つまりジル・シルカ(第一帝国)と地球連合による「恒星間戦争」の時代です。
 『GURPS Traveller: Interstellar Wars』には、その時代の詳細な設定が満載なのですが、星域図や星系データがGURPSルール準拠なので(それはそれでメリットもあるのですが)どうも読みづらい。特に星域図にガスジャイアントや海洋の記載がないのは非常に不便でした(この時代の宇宙船は燃料スクープができないのかと思ったのですが、一応できるようです)。
 無いのならば自分で作ってしまおうか、ということでtravellermap.comのAPIを叩いて星域図を作ってみました。さらにAPIに流しこむにはUWPも必要なので、こちらもせっせと手作業でコンバート。この時代は当然Xボートもないのですが、星と星の間に何か線が引かれていないと寂しいので、この「恒星間戦争」の時代を描いたウォーゲームの古典名作『インペリウム』の航路をヘクスの上に再現しました。


(画像をクリックすると原寸で表示します)

 時は西暦2170年。第三次恒星間戦争と第四次恒星間戦争の間の「空虚な平和(Empty Peace)」と呼ばれる時代です。前の戦争でかろうじてヴィラニ帝国の侵攻を阻止した地球連合は支配下の各星系への植民を拡大し、野心に燃える帝国の新総督は来るべき次の戦争に備えて数々の工作を密かに進め、自由貿易商人たちは様々な恒星間交易を、時には帝国方面へ密輸を行っていた…そんな世界設定です。
 上に再現したのは『インペリウム(第2版)』のゲームボードの範囲のみなので勢力は半々に見えますが、当時のクシュッギ宙域(後のソロマニ・リム宙域)全体にまで拡大すると勢力比は歴然です。これでも帝国にしてみればこの宙域はただのド辺境に過ぎないのですから、『Interstellar Wars』のキャッチコピー"One World Against Thousands"の重さも実感として感じられてきます。帝国側に足を引っ張られまくる数々の大ハンデがあったとはいえ、よく地球人が勝てたものです。

 さて、GURPS表記からUWP表記へのコンバートですが、以下の指針で作業を行いました。

1.星系名
 地球連合側が使っていた古星域図的な雰囲気を出すために、『インペリウム』に準拠させました。ただし連星系(ヌスク、ラガシュ、シュルギーリ)に関しては『Supplement 10: The Solomani Rim』に合わせ、アルファ・ベータ・プロクシマと分かれていたケンタウリ星系は全てをまとめた「リジル・ケンタウルス」を星系名としました。
 第三帝国期では「星系名=主要世界の名前」ですが、この措置により星系名に恒星の名前と主要世界の名前が混在してしまっています。この時代はまだ命名ルールが定まっていなかったのだとしましょう。

2.宇宙港タイプ
 『Interstellar Wars』の設定をそのまま採用(GURPS第3版のローマ数字方式が、第4版ではトラベラーと同じアルファベット方式に変更されたので、読みやすくなってありがたいです)。ただしアルタイル星系は『インペリウム』第2版で航路から外されたこともあり、あえてタイプXとしました。

3.規模・大気・水界
 『Interstellar Wars』と『The Solomani Rim』を照らし合わせながら、UWPに置き換えました。基本的には同じなのですが、後に惑星改造が行われたような感じを受ける星系(イプシロン・インディ(後のメシャン星系)やディスマル)は『Interstellar Wars』のデータを優先、『Interstellar Wars』と『The Solomani Rim』で大気組成が食い違っている星系は『The Solomani Rim』の方を採用しています(猛毒性大気が腐食性大気に変わったりはしないだろう、ということで)。貿易分類「氷冠」の星系は、GURPS表記だと水界ゼロ扱いになるので、こちらも『The Solomani Rim』のデータを使っています。
 あと、この照合作業でプロキオン星系が規模からして全く違うことが判明しました。おそらくこの時代の主要世界から、後に「惑星フェンリス」に主要世界が移動したのでしょう。

4.人口
 『Interstellar Wars』のデータをそのまま使い、端数を四捨五入してUWPと人口倍率に当てはめました。

5.政治形態
 『Interstellar Wars』に書いてあることをそのままUWPに当てはめましたが、コード5の「Feudal Technocracy」は「Feudal/Technocracy」と解釈し、ヴィラニ側の「Feudal」と地球側の「Technocracy」の両方ともコード5としました。またヴィラニ特有の「Caste」は、このカースト社会は統治者が誰になっても変化しないという設定があるので、将来地球軍が占領しても変化ないだろうということでコード6(占領統治/植民地)を適用しています。
 まあ、ソル星系は人口Aなので本当はコード4の間接民主制には絶対にならないのですが(2D-7+10の最低値は5)、そこはご愛嬌ということで(笑)。

6.治安レベル
 政治形態が治安レベルに作用するUWPと違って、GURPSのControl Rating値には人口が関わるので、0~6のCR値をそのまま倍にしてUWPに当てはめると、高人口世界のソル星系は間接民主制なのに抑圧的、という「トラベラーらしくない」ことになってしまいます。そこでCR値の2倍を「サイコロの目」として扱い、UWPの式である「2D-7+政治形態」に当てはめました(CRゼロは自動的に治安ゼロに)。ただし、宗教独裁制(コードD)の2星系は両方ともCR6なので、治安レベルJ(UWPはIとOを使わないので、Hの次はJです)が2星系もあることになり、それはそれでどうかと思ったので、TLの低い方の星系は適当にFまで落としました。これでも十分高いですし。
 一方でCR値が1~2の星系が軒並み治安ゼロになってしまっているので、将来的には何らかの補正をかけるかもしれません。

7.テクノロジーレベル
 Traveller Wikiを参照しながらGURPSのTLをトラベラーのTLに変換しました。GURPS(第4版)のTL10はトラベラーだとTL10と11に相当するのですが、TL11は高人口で海軍基地のあるような都会の星系に設定し、他はTL10としてメリハリをつけてみました。

8.貿易分類
 出来上がったUWPを元に、マングース版準拠で分類を行いました。注意しながらやりはしましたが、手作業なので間違っているかも…?(汗) 第三帝国期よりも全体的に人口が少ないので、工業世界がなくなってしまいましたが、これはGURPSのルール下でも同じことなのであまり気にしなくてもいいでしょう。

9.小惑星帯とガスジャイアントの数
 travellermapのソロマニ・リム宙域データから拝借しました。HIWGのデータとの照合はやっていませんが、ガスジャイアントがあるかないか自体は『The Solomani Rim』と一致しているのは確認しているので、まあ大きな問題はないでしょう(汗)。

10.所属
 Zs:ジル・シルカ(ヴィラニ帝国)
 Tc:地球連合
 Tv:地球人・ヴィラニ人共存世界
 Na:所属なし
 本当は『Interstellar Wars』では表記されている、帝国の反政府勢力「キマシャルグル(Kimashargur)」(科学技術の発展や宇宙探検を重んじたために中央の保守派に弾圧され、辺境に落ちのびていた派閥)の領土も記載しても良かったのですが、タウ・セチ、ガシッダ、ディンジールといった重要星系がことごとくキマシャルグル派のものとなっていて(この近辺は彼らが開拓したので当然なのですが)、目に見える範囲の敵領土が反政府勢力だらけ、というのも悪役としてはちょっと格好悪いので(笑)、とりあえず彼らには「潜って」もらうことにしました。
 なお、帝国をViとしなかったのは、iの文字が潰れて読めなかったからです。Imは自動的に非表示となるようなので使えませんし。

11.恒星スペクトル型
 ソル星域やディンジール星域の星々が現実にはどの星に該当するのかは、ファンの間ではほぼ特定されているのですが、マーカシー星系だけはすぐには解決することができない問題があったので、自分で調べたり色々悩んだ結果、思い切って全て『インペリウム』のゲームボードに書かれているスペクトル型に記述を統一しました。
 実際のところ、マーカシー星系こそがイプシロン・エリダニだとし、ヘクス1530にカプタイン星を置いた方が距離的にしっくり来るのですが(ついでに言えば、1429、1529、1530の3星系をもう1ヘクス上にずらすともっとしっくり来る)、これをやってしまうと『インペリウム』から『トラベラー』に繋がる歴史を否定してしまうことになるので、「そういう宇宙なのだ」と割り切ることにしました。リアル志向は他の世界に任せます。

 こうして出来上がったのが以下のUWPです。
Gashidda        1127 A36A85A-B M Ri Wa       823 Zs F5V
Ishkur          1129 B5628DF-3   Lt          413 Zs F9V
Dingir          1222 AA8995A-B M Hi Cp       105 Zs K0V
Kinunir         1224 C532461-8   Ni Po       205 Zs M3V
Shulgi          1324 C512410-8   Ic Ni       103 Zs M2V
Shulgiili       1326 D67A310-A   Ni Lo Wa    302 Zs M2V M2V
Enki Kalamma    1327 C20066B-A   Na Ni Va    213 Zs M2V 
Mirabilis       1332 B553549-A   Ni Po       105 Tc G4V
Karkhar         1424 B675758-9   Ag Ga       513 Zs M1V
Shuruppak       1427 C000465-A   As Ni       243 Zs M3V
Tau Ceti        1429 B4559DJ-5   Hi Lt       124 Zs G8V 
Altair          1522 X000000-0   As Ba       030 Zs A7V 
Zaggisi         1523 B79985A-8               101 Zs M2V
Epsilon Indi    1526 E410000-0   Ni Ba       001 Zs K5V 
Markhashi       1529 C301363-8   Ic Ni Lo Va 105 Zs M3V 
Epsilon Eridani 1530 B783856-9   Ri          602 Zs K2V 
Sarpedon        1533 C312450-9   Ic Ni       101 Tc G5V
Apishal         1622 D633263-8   Lo Ni Po    624 Zs M3V 
Sirius          1629 E000000-0   As Ba       020 Na A1V A2D
Ys              1732 C847427-8   Ni Ga       320 Tc M3V 
Nusku           1822 A569947-B N Hi          114 Tv K1V K5V
Agidda          1824 D972449-5   Ni Lt       401 Tc M3V 
Sol             1827 A867A49-B N Hi Ga Cp    114 Tc G2V 
Procyon         1830 C410440-A   Ni          120 Tc F5V A0D
Remulak         1833 C974425-3   Ni Ga Lt    512 Tc M2V 
Barnard         1926 B200312-A   Ni Lo Va    134 Tc M5V 
Junction        1929 C975549-5   Ag Ga Lt    202 Tc M2V 
Hephaistos      1931 C99A310-A   Ni Lo Wa    602 Tc M3V 
Ishimshulgi     2021 D200210-9   Ni Lo Va    502 Tc K6V
Rigil Kentaurus 2027 B785554-A   Ag Ga Ni    923 Tc G4V K2V M5V
Peraspera       2028 C7A2414-9   Fl Ni       120 Tc M3V 
Midway          2029 E699456-3   Ni Lt       322 Tc M2V 
Hades           2030 C432420-9   Ni Po       112 Tc M3V 
Calgary         2031 CA9A440-8   Ni Wa       125 Tc M2V 
Lagash          2121 C667520-5   Ag Ga Ni Lt 124 Tc K2V K1V
Inferno         2131 C57845A-5   Ni Ga Lt    324 Tc M2V
Forlorn         2132 C596423-7   Ni Ga       124 Tc M5V
Ninkhur Sagga   2222 EAA2000-0   Fl Ba       003 Na M5V
Ember           2227 D412300-A   Ni Lo Ic    312 Tc M3V
Loki            2228 E9CA000-0   Fl Wa Ba    002 Tc M1V 
Mukhaldim       2323 E533000-0   Ba          020 Na M3V
Kagukhasaggan   2325 E648000-0   Ga Ba       001 Na M3V 
Dismal          2330 D410420-8   Ni          112 Tc M2V

 これさえあれば即この時代の冒険へ、というわけにはいきませんが(TL11の宇宙船データは欲しいですし、偵察局もトラベラー協会もたぶんないこの世界ではキャラクター作成も少しいじらないと)、今後暇を見つけてこの時代もちょこちょこフォローしていければ、と思います。

宙域散歩(番外編2) フローリア人とフローリア連盟

2012-06-11 | Traveller
 フローリア人(Floriani)は、フローリア星系(ユグドラシル星域/トロージャン・リーチ宙域)およびその周辺星系に居住している人類系群小種族です。見た目は人類的で、考古学的にも地球に起源を持つと思われるフローリア人は、しかしながら、遺伝子学的には人類どころかヒト科ですらありません。
 彼らは、太古種族によってフローリアに移植され、遺伝子改造を受けた人類の末裔です。その遺伝子構造は、いくつかの遺伝子配列こそ他の人類と同じですが、大部分は全く異なります。
 そして、フローリア人は2つの「種族」に分かれています。バーナイ(Barnai)フェスカル(Feskals)と呼ばれるこの分類は、社会的立場を表す以前に、遺伝子レベルで全く違う存在であり、両者間で(他の人類も含めて)子供を残すことはできません。ですが、一見「主人と奴隷」のように見える両者の関係は、お互いを必要としあう共生関係にあり、他種族から奇妙に思われるほどに、彼らはその関係に満足しあっているのです。


◆フローリア人の歴史
 生物学者や歴史学者は、フローリア星系で約30万年前まで太古種族が活動を行っていたと考えています。研究によれば、太古種族は地球から持ち込んだ人類に遺伝子改造を施し、バーナイとフェスカルを作り上げました。
 両方のフローリア種は、おそらく太古種族の「助手」となるよう設計されており、バーナイには知的労働に向いた高度な知性が与えられる一方で、主を凌駕しないように創造的な考えは苦手なようにされ、肉体労働に最適化されたフェスカルは、理想的な労働者として性格は卑屈なほど従順にされたのだと思われます。
 最終戦争によって太古種族ががフローリアを去った後、残された原始フローリア人は何とか状況に適応しました。太古種族に代わってバーナイがフェスカルの「主人」となり、太古種族が作った機械を動かして生活を営みました。やがて機械が動かなくなると、彼らはゼロから文明を再建しました。今わかっているフローリア最古の文明は、約5万年前の農耕文明です。
 新たな指導者となったバーナイは新しい物事を考え出す能力が欠けさせられていた上に、フローリア星系が周囲から隔離された環境にもあったので(フローリアに最も近い星でも3パーセク離れています)、フローリア文明はまるで氷河の歩みのように非常にゆっくりと進歩していきました。新技術や新しい文化様式が取り入れられるまで、時には数千年を要しました。フローリアで最初の宇宙探査機がやっと投入されたのは、暗黒時代中期の-1000年頃です。
 そのような状況は、-170年に突如終わりました。この年、ミスジャンプを起こしたアスラン偵察艦が惑星フローリアの軌道に入って来ました。難破船を調査したフローリア人は、そこで死んだ「異星人の」乗組員と未知の機械を見て、衝撃を受けました。船は軌道上で分解され、あらゆる機構は精密に調べられました。
 バーナイは創造性には乏しいですが、技術を模倣したり新たな改善を加える能力には非常に長けています。動作原理がわからなくても、彼らは技術を自分のものとすることができるのです。この時でも、ジャンプドライブを解析したフローリア人は、わずか10年後には自分たちで建造した恒星間宇宙船で星々への探検に出かけています。
 フローリア人はゆっくりと、そして秩序だって、近隣の世界を調べていきました。新しい星に到達すると、彼らはまずそこを完全に調べてから、次の星の探検へと向かいました。しかし彼らの保守性も手伝って、一つの前哨基地の建設にも数十年を要しました。
 「生きている」異星人との最初の遭遇は、帝国暦50年頃にトロサックス星系(メノリアル星域/トロージャン・リーチ宙域)においてでした。トロサックスの住民は、第一帝国崩壊後のヴィラニ人難民を起源としていました(※ただしトロサックスという名前は明らかにソロマニ系言語なので、現地では使われていない、帝国偵察局がその星に付けた名前かもしれません)。バーナイは現地人のヴィラニ語を素早く学び、資源交換などの交流が始まりました。当時のフローリア人は未知のアスランの存在に脅威を感じていたので、同じ人類と知り合えたことに感謝しました。
 150年頃、フローリア人は帝国とも接触しました。当初は情報交換のみが行われただけでしたが、185年には正式な外交折衝が始まりました。またゾダーン人も200年頃には当時のフローリア人領域の端に到達し、フローリア人と接触しています。
 これらの事態は、あまりに変化の乏しかったフローリア社会に変革を迫りました。一旦国境を閉鎖したフローリア人は、その間に恒星間情勢を学び、自分たちを守るために恒星間国家としての基盤が必要であると認識しました。
 こうして506年、フローリアと近隣の親しい星系は「フローリア連盟(Florian League)」を結成しました。連盟は帝国、ゾダーン、ソードワールズ、ダリアンなどの勢力と用心深く接触し、自分たちの母星の位置を秘密にしながら、新しいテクノロジーを学びました。
 第一次辺境戦争の勃発で交流は589年に中断され、連盟は孤立主義に戻りました。その後連盟は、周辺のソロマニ人入植地などを(平和的に、特には武力で)取り込みながらゆっくりと拡大を続け、700年頃にはおよそ2星域にまたがる現在の領土に達しました。その頃、首都フローリアから連盟の端まで、中央政府が直接干渉するのに時間が大きくかかっていましたが、フローリア人は組織の新しい形を探すよりも、単に拡大を停止しました。
 近年、フローリア人は自分たちが孤立し続けることができないという事実に対処し始めました。アスランからの増大する圧力は国境付近で紛争を起こしていますし、連盟の世界各地には様々な外国の貿易商人や、太古種族の遺跡目当ての観光客がやって来ています。
 それでもフローリア人は、今もなお非常に保守的です。

(※なお、シンダル帝国を専門とする歴史学者の研究によれば、シンダル帝国はスピンワード方面の「子供のような」種族と交易を行っていたようです。実際、帝国企業のFTC(Florian Trade Company)社は創立当初(171年~200年頃)、この説を元に中期シンダル様式を再現した貨物船とシンダル式の貿易儀礼を用いて、一時的ですがフローリア交易で莫大な利益を得ています。ということは、フローリア人のファースト・コンタクトの時期は大幅に早まるのですが、なぜこの接触が歴史の中に消えてしまったのかは謎です)


◆フローリア人の身体的特徴
 フローリア社会におけるバーナイとフェスカルは、お互いを切り離しては生きていけない一対の共生関係にあります。例えるなら、バーナイは「頭」で、フェスカルは「体」といったところです。
 両者は遺伝子レベルで全く異なる生命体ですが、共通点もあります、指は4本で、褐色の肌を持ち、眼窩は深くくぼみ、赤か青色の瞳をしています。また、他の人類に多く見られる「盲腸」や「親知らず」がありません。さらに彼らは、この30万年の間全く変化していないことが研究で明らかになっています。どうやら太古種族は、彼らの遺伝子に突然変異を起こさせないような細工を施したようです。
 フローリア人は、母星の1日32時間という自転周期と寒冷な気候によく適応しています。ただし彼らは1日の6割を睡眠に充てる上に、日中でさえ頻繁に居眠りをし、一旦眠った彼らを起こすのは困難です。また、フローリア人は気温約30度を越える環境には逆に耐えられず、そのような環境下では脱水症状を起こしてしまいます。
 さらにフローリア人には、味覚と嗅覚の鋭敏な感覚があります。彼らは料理を高級な芸術と捉えていますし、どんな場所でも清潔さを非常に気にします。また時として知人を匂いによって特定することもできます。
 フローリア人はあまり感情を表に出しません(太古種族は従者には感情は不必要だと考えたのでしょう)。極限の状況まで追い込まれて、ようやく怒りを見せるぐらいです。

バーナイの特徴
 平均的なバーナイは、身長150~160cm、体重55kgほどです。彼らは貧弱と言えるほどに痩せていて、細い手足と長い指を持ちます。加えて彼らは他の人類よりもやや大きな頭蓋を持ち、それらが彼らをやや子供っぽく見せています。またバーナイは黒や茶色の髪や体毛を伸ばしています。
 彼らの痩せた体型と大きな頭は、生物学的にバーナイ女性の妊娠出産を難しくしています。特に多子出産は非常に危険です。

フェスカルの特徴
 対照的にフェスカルの体格は他の種族よりも抜きん出ています。平均的フェスカルは身長2m、体重135kgにもなります。全てのフェスカルはかなり筋肉質で、とても高い持久力を示します。
 バーナイとは逆に、フェスカルは髪や体毛を決して伸ばしません。その代わりに、彼らは見かけと違って体内に厚い脂肪の層を持ち、体型を丸くしています。この脂肪層は彼らが寒冷気候に耐えることを助けますが、バーナイよりも暑さにさらに影響されやすくもします。
 体格に恵まれているフェスカル女性は簡単に子供を産めますし、多子出産は普通に見られます。よって人口比率は、バーナイ1人に対してフェスカルが5人ほどになります。
 フェスカルの体は、肉体労働のために最適化されています。彼らの筋肉はよく発達している上に、背骨もより重くなっています。また、バーナイや他の人類と比べて皮膚の神経の密度が低いため、フェスカルは痛みをあまり感じません。


◆フローリア人の精神構造
 フローリア人はよく「非創造的な種族」と評されることがあります。間違ってはいないとはいえ、それほど彼らは単純ではありません。
 バーナイは知的で、注目に値する推理能力を備えています。彼らは高いレベルの記憶力を持ち、数学や言語学の才能もあります。それにもかかわらず、バーナイは非常に保守的です(彼らに比べれば、保守的で有名なヴィラニ人ですら急進過激派です)。彼らは創造的な発想や、思考の飛躍がとても苦手です。彼らは変化や革新を悪とは考えていませんが、そういった方向の考えになかなか至りません。
 フェスカルには物凄い身体能力がある一方、彼らは鈍くて、不注意で、抽象的思考がとても苦手です。少数の者しか読み書きはできず、ましてや日常生活や自分の仕事に関係のないことは学ぼうともしません。また彼らは非常に素直で従順でもあります。バーナイがフェスカルに、仮に素手で鉱山を掘るように命令したら、フェスカルの労働者は決して疑わずに応じるでしょう。そして、道具を使うことさえ考えません。
 これらのハンディキャップにより、フローリア人は革新から遠ざかっていますが、特にバーナイには、テクノロジーやアイデアを模倣したり、新たな改善を加える素晴らしい能力があります。
 バーナイの技術者は機械を分解し、機能とメカニズムを観察から推論します。大部分の技術者はある物品がどうやって動くのかを知らず、基本的な科学原理を学ぶことにも関心がありません(そのためフローリアの研究機関にいるのは非フローリア人です)。しかし彼らは、調べ上げたその機械の複製品を、驚くほど早く生産することができます。
 その結果、フローリア社会は保守的であっても決して停滞はしていません。他者のテクノロジーをコピーする機会さえあれば、かつて難破船が漂着しただけでTL8からTL12に駆け上がったように、彼らは物凄い速度で発展することができるのです。
 ただし彼らの技術はあくまで模倣なので、そのスタイルはごちゃ混ぜです。フローリア人は、アスラン型のジャンプドライブを積んだソロマニ様式の宇宙船に乗り、ゾダーン風のプラズマライフルで戦うのです。


◆フローリア人の宗教観
 バーナイは、フェスカルとの1対5の人口比を信仰にも適用しています。教えによると、バーナイには1人につき5人の守護霊がついていて、それらの頂点に宇宙と同等視される全能の神がいます。
 バーナイは魂が死後に、より高位の姿に生まれ変わると信じています。特に賞賛に値する人生を送ったバーナイは、バーナイとして生まれ変わらずに守護霊の段階に進めます。そこから彼は知恵と安らぎのより大いなる極みに昇っていくのです。
 信仰の掟に従って人生を送り、霊界に昇天できるよう努力することは、各々のバーナイの義務とされています。バーナイの信者は、瞑想して、ヨガのような儀式を行うことに時間を費やします。
 フェスカルは、宗教には直接関わりません。一般的な見解では、フェスカルの「奴隷状態」は、魂の進歩における必要な段階であるということです。また、知性の兆候を示したフェスカルは、バーナイへと生まれ変わる段階に進む準備ができていると考えられています。
 異星種族と接触した時、フローリア人の宗教観は大きな修正が必要となりました。多くの議論と瞑想の後、他の人類は「フローリア人に生まれ変わる段階にまだ到達していない魂」であると決められました。さらに非人類の異星人は、動物よりも格が下で、死後に魂は消滅する運命にあるとされています。


◆フローリア連盟
 フローリア連盟は、トロージャン・リーチ宙域で最も安定していて安全な政府です。その小さな版図にもかかわらず、フローリア連盟は多くの異文化を取り込んでいます。フローリア人以外にも、多数の非フローリア系人類や、中には連盟市民となったアスランやヴァルグルさえいます。今や連盟内のフローリア人は全人口の4割程度に過ぎません。
 連盟の社会構造は、これらの多様な集団の全てが彼ら自身の習慣で生活することを許容しています。

バーナイの社会
 バーナイは大家族で生活しています。そこでは、数人の大人が責任と性的関係を共有するために同棲しています。バーナイの間には結婚の概念がなく、法律上は個人同士が単純な相互同意によって家族に加わるとしています。
 バーナイは、(苦労して産んだ、貴重な)自分たちの子供を大切に育てます。家族の子供たちは皆、家族の大人たちの協力によって成長します。教育を受けたバーナイが20歳で成人すると、数年の間何らかの公共奉仕を果たすことになっていて、兵役や、連盟を支える官僚機構での仕事に就きます。その後は好きなように民間で仕事に就くことができますし、自分自身で事業を起こすこともできます。
 バーナイは一つの職業に生涯勤めようとする傾向があり、職業を変えようとすると、ひねくれ者であると思われます。

フェスカルの社会
 子供たちと深く結びついたバーナイの家族と異なり、フェスカルは早い年齢で職業訓練のために子供を手放します。稀なケースで、フェスカルの夫婦が子供を手元で大切に育てようとしますが、これは精神病の一種であるとみなされます。
 フェスカルはバーナイによって所有されるわけではありません。しかし、あらゆるフェスカルは、彼に命令を与えて彼の行動に対して責任を持つバーナイの「主人」に割り当てられます。
 フェスカルは、フローリア連盟内でのほぼ全ての肉体労働をこなします。他国ではロボット化されているような場所でも、(高放射線環境のような場所を除いて)ここではフェスカルが働いています。彼らは特定の仕事のために子供の頃からずっと訓練され、仕事を決して変えません。
 フェスカルは、装備の修理や大型兵器の運用のために、技術を学ぶことがあります。そのような技術力を持つフェスカルは、フェスカル社会の上流階級であると見られます。
 フェスカルは、政治的権利をほとんど持ちませんが(そもそも理解もできませんが)、彼らはバーナイの「主人」から食事付きの部屋と適度な賃金を与えられています。休みの時は、彼らは様々な娯楽を楽しんでいます。
 奉仕するには歳を取り過ぎたフェスカルは国営の施設に引退し、そこで静かに余生を送ります。また重い病気にかかるか、致命傷を負ったフェスカルは、安楽死させられる場合があります。

政府機構
 政治哲学は、フローリア人が外世界の模倣をしなかった領域です。フローリア連盟の現在の政府は(産業化前の都市国家時代からほとんど不変の)議会制民主主義を採用しています。
 連盟内ではそれぞれの世界が、テニー(Tenee)と呼ばれる地方議会を持ち、色々な委員会が議会の立法過程を監視しています。1期が約4年のテニーの議席は、抽選で無作為に市民の中から選ばれます。法律によって議員を2期務めることは禁止されているので、一度議員になるとその者の名前はくじの名簿から削除されます。さらに、それぞれのテニーは、フローリア連盟全体の議会であるコンリー(Conlee)のメンバーを選出します。こうして彼らは政治が特定の団体などに左右されることを防いでいるのです。
 連盟内では、全ての加盟世界は中央議会の打ち出した方針に従います。法律は地元の状況によって変化はしますが、総じて軽いものです。連盟市民である全ての知的種族には平等の権利があり、他者を奴隷として扱うことは連盟内では違法です。
 一方でフェスカルは正式な市民ではありません。フェスカルはバーナイの「主人」と共にあるからです。しかしこれは彼らにとっては奴隷制ではなく、お互いの権利を尊重しあったあくまで「平等な関係」であると考えられています。

 現在の連盟内では、帝国のXボート制度に似た「フローリア・メールサービス」というシステムが運用され、ジャンプ-4の郵便船(もちろん帝国のXボートのコピーです)が郵便や小包や情報を各星系とやり取りしています。

 外交の唯一の目的は連盟を守ることです。フローリア連盟は帝国や、ビヨンド宙域のいくつかの勢力と通商・外交関係があります。また、彼らはアスランとも時折外交会談を行っています。ちなみに、外交や外国との貿易の際には、バーナイは(異星人どころかフェスカルにすら難解な)フローリア語ではなく、主に(トロサックス訛りの)ヴィラニ語を使用します(銀河公用語(Galanglic)や主要なアスラン語を話せる者もいます)。

 フローリア連盟内の通商取引は帝国で見られるよりも少ない量です。これは、アスランの攻撃に備えてなるべく各世界が自給自足するよう運営されているからです。よって、外国とのも含めて大部分の恒星間交易では贅沢品が扱われます。
 連盟の通貨はトレンティル(Tlientir)です。トレンティルには帝国クレジットと同じ購買力があります。連盟に加盟するには、このトレンティルの受諾と、全ての貿易障壁の解放が必須とされています。
 連盟の税関パトロールは、危険なテクノロジーの物品などを捜査します。そのような物品は差し押さえられ、まずは詳細に研究されます。
 フローリア企業は連盟の外ではあまり活動を行いませんが、数少ない例外としてグリ・フォン・ウリ・カ(Gli! Fong! Uric! Ka)という商船会社が周辺宙域で貿易商品を探しています。彼らは過去には抗老化薬、ヴァルグル美術品、ライブラリデータ、織物、コインといった物を仕入れています。目先の利く商人は、彼らの船を尾行してフローリア人が今何を求めているか予測しています。

軍組織
 フローリア連盟軍であるアノス(A'noss)は、外敵、特にアスラン氏族に対する連盟の防衛の要です。軍は地上軍と宇宙軍から成ります。彼らは何百年もの間アスランと戦い続け、たいてい勝利しています。アスランは偉大で勇敢な敵手である彼らに、大きな敬意を払っています。ただしこの過大な評価は、フェスカルが命令さえあれば負傷や死を恐れないからであり、連盟市民もフェスカル兵を「消耗品」とみなして死線に送っているからでもあります。またフローリア人はアスランの戦術を研究し尽くしていて、彼らを手玉に取っています。
 宇宙艦隊にはフローリア人を優先して職員を配置しています。知的なバーナイが士官や上級技術者として勤め、フェスカルは熟練した乗組員となるべく特訓を受けます。海軍の中には他の種族の者はほとんどいませんが、いくつかの艦船には連盟内のアスラン乗組員を乗せています。
 地上軍では、フェスカルは優れた兵士として用いられ、戦いを楽しんでいます。彼らには下士官や尉官への道が用意されています。フローリア人ではない人類やバーナイは、将校として司令部に勤めています。初期の連盟ではバーナイが命令系統の上部を占めていましたが、結局、彼らは他の人類がより闘争本能があることを認めました。その結果、今では連盟地上軍の最高幹部でさえ、多くの非フローリア人が含まれています。


◆ゲーム内におけるフローリア人
 バーナイのキャラクターは、筋力と耐久力に-2、知力と教育度に+2されます。逆にフェスカルのキャラクターには、筋力と耐久力に+2、知力と教育度に-2されます。社会身分度は、バーナイは1D+6、フェスカルは1Dで決定されます。
 経歴部門は、バーナイなら陸軍、海軍、偵察局、商人、エージェント、学者、市民の中から、フェスカルなら陸軍、海軍、商人、市民から選びます。また、バーナイは各期ごとにサイコロを振り、12が出た場合はその期だけは(議員に選ばれたので)貴族の経歴部門に進みます。また、議員になっている間の社会身分度は一時的にD(13)となります。
 加えて、バーナイには1+社会身分度DM人のフェスカル従者が付いています。
(※これらはマングース版のルールに合わせてあります。また、フェスカルは(マングース版コアルールにはない)宇宙鉱夫にもなれると思います)


【参考文献】
・GURPS Traveller Humaniti (Steve Jackson Games)
・Traveller Alien Module 1: Aslan (Mongoose Publishing)
・Third Imperium Fanzine #8

宙域散歩(7) トビア星域

2012-06-04 | Traveller
 2回続けて「危険な」エリアを紹介したので、今回は帝国領内に戻って、でもアウトリム・ヴォイドと密接な関係のあるトビア星域を紹介したいと思います。
 星域内に2つの星団があってジャンプ-1宇宙船でも活動しやすく、異国情緒にあふれ、そしてほどほどに危険な、色々な意味で楽しめそうな地域だと思います。


 トロージャン・リーチ宙域における帝国の中心部であるトビア星域は、宙域経済や先端技術の中心地でもあります。
 人類以外の市民も多く、非常に国際的な星域です。例えば、アイルダム(3013)はドロイン世界ですし、フラードゥス(2714)の人口の8割以上は帝国に帰化したアスランです。トビア(3215)、ニューモスクワ(3119)、プリーム(2513)の街を歩けば、一つの通りで何種類もの知的種族を見かけることができます。恒常的な戒厳下にあるパクス・ルーリン(トロージャン・リーチ宙域 2204)と異なり、トビアは貿易商人と帝国外からの来客を歓迎します。
 トビア公爵アレクサンダー・クイン(Duke Alexander Quinn of Tobia)は宙域公爵でもあり、キャピタル(コア宙域 2118)からの指示を待つことなしに統治できるよう、トロージャン・リーチ(の帝国領)に対する巨大な権限を持っています。なお、トビア星域の貴族は皆、家系図のどこかで公爵一族と関係があります。
 スピンワード・マーチ宙域を通らない帝国中央からの通信ルートは、ウシャー星域(レフト宙域 E)方面からベルク(3212)を経由してトビアまで通じています。毎年何百ものXボートと軍艦がこの航路を行き来していますが、近年、このルートは数回に渡って破綻しました。まず、ドロイン世界であるアイルダムが謎の理由で宇宙港を封鎖しました。帝国は宇宙港をアワー・プラネット(3012)(この世界の正式名はアストロラーベ(Astrolabe)ですが、今では偵察局員だけがこの名前を使っています)に急造しましたが、その宇宙港の建設業者は"我らの惑星"だとして世界の所有権を要求して、今もそこに居座っています(※代金の未払いでもあったのでしょうか?)。
 ドロインは4年前に封鎖を解きましたが、今度はシモク(3113)の内戦によって、Aクラス宇宙港が破壊されました。さらに海賊行為と密輸がルート沿いで多発し、国境沿いからベルク星団により多くの哨戒艦を配置転換せざるを得なくなりました。
 アスラン方面からの主要通商路は、パンドラ(2820)、ウィルデマン(2819)を経て、国境を越えてフィスト(2918)、そして「商人の星」イミサア(2916)へと通じ、そこから輸入品は帝国の様々な世界へと運ばれていきます。

 トビア星域には34の星系があり、総人口は277億8600万人です。最大人口はトビアの約200億人、最大テクノロジーレベルはトビアの15です。29星系が帝国の傘下にあり、トビア軌道上のフォンタナ・アーコロジーに司令本部を置く第218艦隊に守られています(※第204艦隊はおそらく第五次辺境戦争後に転任してきたと思われます)。


ボールダー Boulder 2517 D100758-9 真空・非農 Na
 ボールダーは以前は鉱業惑星でしたが、今では掘り尽くされています。数千万人の住民は刳り抜かれた小惑星に築かれたいくつかの都市に集まっています。
 ボールダーにはBクラス宇宙港がありますが、偏狭的な地元民は外世界との接触を嫌っているので活用されていません(※受けられるサービスはUWPの通りにDクラス並です)。

エグゾセ Exocet 2520 A574126-8 低人・肥沃・非工 G Na
 帝国領周辺で最近確立された入植地であるエグゾセの汚れた大気は、火山噴火によるものです。入植地こそ島にありますが、しかし惑星の本当の富は大陸の火山の多い地域にあるのです。

スカラドン Scaladon 2616 AAD98DK-A A Im
 スカラドンの海は有毒で、致命的です。腐食性の海霧から突き出たいくつかの岩の台地に、全ての住民は集っています。スカラドンの人口密度は恐ろしいほど高く、台地にしがみつく人々と建物の圧倒的な重さのために、崩落を起こした台地があるほどです。
 スカラドン政府は宗教独裁制です。選ばれし者(The Chosen)は民衆の生殺与奪を握り、空をも支配しています。空を飛ぶことはスカラドンでは非常に制限されており、聖職者の管制を受けない、もしくは無許可の飛行車両は、あらゆる寺院に隠された対空ミサイルで撃ち落とされます。
 選ばれし者の教えによると、神は忠実な信者を天に連れていくためにある日戻ってきます。そしてスカラドンに暮らすものだけが救われるというのです。一方で聖職者を怒らせた者は、殺されて硫黄の海に投げ捨てられます。
 人口増加による圧力は、最近選ばれし者に新しい方針を採らせました。くじによって選ばれた者を、崖から海に突き落とすのです。この措置にもかかわらず、スカラドンの人口は増え続け、住める領域は減り続けています。高さ1000階の摩天楼が、直径50メートルほどの台地に建設されています。そして忠実な信者がそこに詰め込まれています。
(※スカラドンの宗教については「ゲイニムの預言者(Prophets of Geynim)」という非公式設定があるのですが、今回は採用しませんでした)

エンパイア Empire 2711 B679334-C N 高技・低人・非工 G Im
 この世界には海軍基地と、それを支える入植地以外にはほとんど何もありません。エンパイアの第3衛星軌道上には、予備役の艦船が停泊しています。
 世界は心地よく肥沃で、大きくうねる海と熱帯の群島があります。エンパイア基地の管理者は、この世界に定住する入植者を積極的に探しています。そして、引退した海軍の軍人に土地はしばしば提供されます。
 この計画には複数の目的があります。世界を保全し、基地に追加の収入を与え、引退した海軍士官と退役艦船を来るべき侵略に備えて確保しておくためです。

フラードゥス Hradus 2714 B54699B-7 S 工業・高人・肥沃 G Im
 この世界の歴史は、数世紀以上前の、数百パーセク離れたアスラン領内から始まります。ツセクホ(進歩派)に属していたエスアヘアカーリョユル(Esuaheakhahryoyulr)氏族は、ウワラリェコセ(文化追放, -7~290年)によって中央を追われ、追撃を受けながら大裂溝を横断して逃げ続け、やがてフラードゥスにぼろぼろになってたどり着きました。
 当時、少数の人類が既にここにはいましたが、彼らは交渉の結果、南大陸に定住することを許されました。
 約1世紀後にフラードゥスが帝国に加盟すると、ここは帝国の中で最もアスラン人口の割合が高い世界となり、「安全保障上の理由」で彼らにはいくつもの規制がかけられました。エスアヘアカーリョユル氏族が「トロイの木馬」となって、帝国に攻撃を開始する懸念があったからです。エスアヘアカーリョユル氏族はTL12の技術を持っていましたが、フラードゥスの技術水準はTL7に抑えられました。さらに、全てのエスアヘアカーリョユル氏族の船はトビア(3215)で登録を受けなくてはならず、氏族軍は常に星域艦隊の管理下に置かれました。
 こうした措置は400年間続けられました。そして多くの市民は、エスアヘアカーリョユル氏族が何度も何度も自分たちが帝国市民であることを証明したことを知っています。彼らの行動により、現在では非人類人口が高い比率の世界でも、それほど規制がかけられないようになりました。
 エスアヘアカーリョユル氏族は帝国のために、戦士として、スパイとして務めました。そして、アスラン式の宇宙船を建造する彼らの能力は、過去に非常に役立ちました。

イイルガン Iilgan 2719 C467787-8 農業・富裕 G Na
 イイルガンの大部分の土地は帝国市民が所有しており、近隣のウィルデマン(2819)と共に、近々帝国に編入されそうな有力な候補となっています。
 以前のこの星は開発が計画されていましたが、最近の生命工学の進歩で生成された人工バクテリアは、イイルガンを農産物の生産に向いた星へと変えました。

サウルス Saurus 2813 A350543-B 砂漠・非工・貧困 G Im
 この星土着のとある生物は、古代地球の神話に出てくる「ドラゴン」と驚くべき類似点を持つことで有名です。

971-852 971-852 2814 E78A000-0 海洋・未開 A G Im
 地質学者は、30万年前に太古種族がこの地に居住し、最終戦争で惑星表面をひどく破壊したと考えています。その時火山噴火が長い間日光を遮断したので、多くの種は絶滅しました。世界の地殻プレートは現在でも脆いままです。
 一時は、ここには未知の祖先を持つ人類が住んでいました。504年に帝国が接触した時、島にいた数千人の居住者は、現地の野生生物では摂取不可能な特定の蛋白質を補うため、人肉食の文化を持っていました。
 帝国偵察局は、蛋白質を補うために現地人に家畜を提供しました。住民は、定住した農耕文化から徐々に遊牧的な採取文化に変化していきました。しかし偵察局にとって残念なことに、彼らは年を取って動けなくなった人間を食べることに固執したままでした。
 971-852はめったに訪問されませんでした。そして偵察局が852年に世界を訪れた時には、島民は消えていました。無人の世界となったにもかかわらず、971-852はアンバーゾーン指定のままです。
 971-852の事件は、帝国偵察局にその干渉方針を再考させました。偵察局は島民の文化を修正するよう試みましたが、その干渉が絶滅の原因となったからです。

ウィルデマン Wildeman 2819 B201674-C 高技・真空・非工・非農・氷結 G Na
 ある意味「巨大な小惑星」であるこのウィルデマンの住民の大部分は帝国人(Imperials)の屈強な宇宙鉱夫たちで、2年程度ここで働いては故郷に帰っていきます。
 この星系には宇宙旅行者の間で囁かれる奇怪な噂話が様々に存在します。幽霊船、謎の機械故障、超常現象どころか、中には宇宙怪物(space kraken)の目撃情報すらあります。
 100年ほど前、タンビー・ドール(Tamby Dour)という名の悪名高い海賊がこのウィルデマンから4パーセク以内を荒らし回っていました。帝国海軍はタンビーを追い詰め、殺害しましたが、結局彼の秘密基地を発見することはできませんでした。

パンドラ Pandora 2820 B878313-B 低人・肥沃・非工 G Na
 ジェデコ社(GeDeCo)主導の入植地の一つであるパンドラは、気候の良い緑あふれる世界です。メガコーポレーションのSuSAGもここに製薬工場を置いています
 しかしながら、以前の入植地は暗黒時代に恒星面爆発によって消滅しています。この星系の主星は一定周期で活発化して荒れ狂う、危険な閃光星の側面を持っているのです。
 ジェデコがより多くの入植者を呼び寄せようとしている今、破滅的な爆発の兆候は見られていません。あくまで今のところは。

ダーコナ Darchona 2912 B49A742-A 海洋 G Im
 ダーコナは火山活動の激しい世界です。人々は軌道上の大きな居住施設に住み、地表に降り立つのは鉱業用潜水艇(mining submersibles)やロボット工船(robotic factory ships)の関係者のみです。地表気温は耐えられないほど寒いのですが、海底火山は深海の水温を沸騰させるほどに熱しています。
 ダーコナの周辺には「後光」が射しているように見えますが、これは大気圏に舞った水蒸気と火山灰が日光を反射することによるものです。

イミサア Imisaa 2916 B520867-6 N 砂漠・非農・貧困 G Im アルダシイが統治
 「商人の星(Trader's World)」と呼ばれるイミサアの価値は、アスラン領域への主要通商ルートであるその立地から来ています。珍しいアスラン商品や外国の製品を積んで帝国に戻った商船団や巨大貨物船はこの星に到着すると、陸地に広がった宇宙港に着陸します。そこで彼らは、貿易商人や投機家や仲買人の大群衆と出会います。
 アスラン領域への渡航は危険なものです。そしてイミサアは帝国を去る前の最後の「安全な」停泊地です。世捨て人の住み家と密輸業者の隠れ家以外には、宇宙港の外には何もありません。
 星系政府はイミサアにはなく、宇宙港の管理者が惑星の事実上の統治者です。イミサア海軍基地は名誉ある赴任先で、基地の高級職はトビア公爵家の後継者か、公爵お気に入りの貴族に伝統的に与えられています。
 アスラン領方面への商船団の護衛任務に携わる艦の他にイミサア基地には、国境外からの攻撃を伝えるためにジャンプ-6連絡小艦隊(squadron of Jump-6 couriers)が常に待機しています。同様の連絡小艦隊はネクリノ基地にも配備され、第3の小艦隊は1110年までに配備される予定です。これらの3艦隊は「国境監視隊(Border Watch)」と呼ばれ、アスラン艦船が緩衝地帯に潜んでいると誇大妄想的に確信した公爵によって設置されました。

フィスト Fist 2918 B789430-C 高技・非工 G Im
 この世界は、アスラン領から通商路に沿って帝国領内までやって来た船が訪れる、最初の星です。
 フィスト自体は比較的低人口で目立たない世界ですが、数世紀前の風変わりな宇宙鉱夫によって小惑星は有名になりました。6つのニッケル鉄小惑星はレーザーで彫刻され、帝国の力を示す記念碑となりました。フィスト港で燃料補給する船からは、幅60kmにも及ぶ、初代皇帝の戴冠式や、ヴランド初の恒星間宇宙船が進宙する様子の壁画を見ることができます。
 第7の小惑星も彫刻されましたが、フトホルの和約に至った人類の大勝利の場面を描いているため、アスラン使節の不満を考慮して星系内の別の惑星軌道に移されました。

アイルダム Ayldem 3013 A7407X4-D N 高技・砂漠・貧困 A G Im
 惑星アイルダムは、大気は呼吸可能ですが希薄で、わずか4%の水界は散らばった湖の形で存在しています。8700万人の人口のうち、6300万人がドロインです。残りの人類は、鉱夫、商人、入植者などです。現在の(政治形態コード3の)知事は、ドロインを抑圧もしくは無視しています。
 この星が偵察局によって227年に発見された時、TL8の原始的なドロイン住民は黙殺されました。やがて人類の移民が到着し始めると、彼らは徐々にドロインを不毛な土地に追いやっていきました。
 帝国海軍基地は惑星の主要都市であるダストボウル(Dustbowl)市と、Aクラス宇宙港にあります。人類の入植地は全て湖の周りに位置し、ドロインは乾いた高地に押し出されました。高地の急斜面にドロインは住んでいますが、当地の気温はあまりに高く、ドロインたちに日中の大部分を地下で過ごすことを強いています。
 なお、その斜面は最終戦争の際に太古種族の兵器で粉砕された大地の名残りです。この攻撃は同時に世界の小さな海を破壊し、宇宙空間へ大気を吹き飛ばしました。
(※この情報は宇宙港封鎖事件発生前のものでしょう)

ディモルス Dimorus 3011 D300755-4 真空・低技・非農 Im
 ディモルスは「人類の支配」期にソロマニ人の植民計画によって入植されました。暗黒時代には交流が断たれましたが、地元政府は居住ドームを千数百年間かろうじて機能させ続けられました。
 第三帝国と再接触したのは340年のことで、外世界との交流も回復しましたが、彼らは元々の自分たちの技術力を取り戻すことはできませんでした。

カリキ Khaliki 3111 D111568-9 非工・氷結 G Im 刑務所
 このカリキは帝国の刑務所星系であり、旅行客の訪問は制限されています。

シモク Simok 3113 DAA08CC-5 砂漠・低技 G Im
 シモクがレッドゾーン指定をされないのは、メガコーポレーションとトビア公爵の政治的圧力によるものです。重要な通商航路上にある世界が血なまぐさい内戦の最中にあると知られれば、商人はリーチを旅する気をなくすでしょう。
 遥か昔から、ファラオ(シンダル帝国崩壊後に興った王朝の王)によってシモクは支配されていました。歴代のファラオの配偶者には、ファラオと同世代の中で最も知的で健康で美しい者が選び抜かれ、計画的に配合されました。約2000年に及ぶ優生学の実践で、ファラオは賢く、長生きで、美形な、完璧に近い人類の見本となりました。
 ところが、今のファラオの配偶者は、シモク政府を崩壊させるために派遣されたゾダーンの工作員だったのです。配偶者ジラー(Zillah)はスパイであることを否定し、ファラオは彼女を支持しました。そしてファラオは、彼女を告発した者の邸宅に軍を送り込みました。貴族たちは、初歩的な原子爆弾を首都と彼らの邸宅の間の砂漠で爆発させて報復し、馬が引く戦車(シモクでは化石燃料が不足しています)に乗った数千人の兵士を殺しました。
 放射性降下物が首都を覆い、火災と飢餓の中、ジラーは引き続いて起きた暴動の犠牲者となりました。悲嘆に暮れたファラオは、裏切り者の貴族とその支持者を皆殺しにすると宣言しました。
 内戦の両勢力は外世界から(帝国が治安維持部隊を投入するまでの間)傭兵部隊を雇い入れ、今日、戦争はシモク全体で荒れ狂っています。ファラオはまだ生きていますが、彼が放射線によって不妊症になったという噂は多く、これが真実なら2000年続いた王朝は終焉を迎えることになります。
 トビア公爵は、シモクの派閥が「整理」されるのをあと1年待つことにしました。シモクがその時まだ戦争状態であるのなら、彼は内戦を終わらせるために帝国軍を投入します。
(※Aクラス宇宙港が破壊されてDクラスになったということは、この星系には元々軌道宇宙港は無かったのかもしれません(Aクラスにしては珍しいですが)。あと、普通は宇宙港に被害が及んだり、そもそも核兵器を保有している時点で「帝国への反逆」とみなされて介入行動が起こされます。宙域経済への影響を考えてわざわざ政治圧力まで使っているのに悠長に介入しない、という矛盾したことになっているのですが、何か別に真の理由でもあるのでしょうか…?)

アッティー Attee 3116 C7529AE-4 高人・低技・貧困 G Im
 アッティーの独裁政権は民主化革命が起こるのを恐れて、警察や治安部隊による弾圧で改革運動を根絶しています。

ベルク Berg 3212 A675542-B 農業・肥沃・非工 G Im
 ここはトビア(3215)の穀物庫として822年に入植されました。厚い藪や雑草は休閑中の畑をあっという間に覆ってしまうため、農民はこまめにこれらの茂みを焼却しなくてはならないのですが、その際に大気中に発生する粒子状物質は人類にとって刺激物でもあります。
 ベルクの人々は仕事中毒として有名です。彼らは日々の仕事にかかりきりになっており、取るに足らないことで時間を奪おうとする外世界人に対して容赦がありません。
 地上港は惑星規模に対して比較的小さめで、沢山の穀物が直接貨物船に運び込まれています。一方、13万5000人が住む軌道港は「グルドヴォの首飾り(Grudovo Pendant)」(※ベルク星団の俗称)でも最大のもので、コロニー・ファイブ(レフト宙域 0707)やリントル(同 0503)とトビアの間を行き来する船の3分の2がここを通過します。

ケダス Kedus 3213 D867400-3 低技・肥沃・非工 G Im
 ケダスには「自然に帰る」ためにあえて低TLの生活を望む集団が惑星各地に散らばって定住しています。トロージャン・リーチ宙域とレフト宙域間の交通量の増大に伴って移民も増加しているのですが、住民は結束して移民を地上港の周辺のみに居住させています。
 現在の宇宙港は交通量を捌くにはあまりに小さいのですが、住民は宇宙港を拡張することよりも高額な入港料を取るだけで満足しています。

トビア Tobia 3215 A444A55-F N 工業・高技・高人 G Im 宙域首都
 惑星全体を取り巻く都市、強力な主力艦の船渠、そびえ立つ摩天楼。様々な世界から訪れた来訪者は、第三帝国の人々の力に驚かされます。これらはトビアが決して陥落しないであろうと皆に確信させます。トビアはトロージャン・リーチの文明の砦であり、トビア公の居住地であり、星域の工業の中心であり、重要な首都です。公爵宮殿は第2の恒星によって華やかに輝き、絶景となっています。
 ここは技術の最先端を行き、非常に国際的な世界です。しかしトビアへの批判者は、その文化は利己的で自分勝手であり、歴代の公爵が貿易の富を浪費していると主張しています。実際、トビアは税と護衛料から毎年何兆クレジットもの収入を得ていますが、その資金は、艦隊の維持費やトロージャン・リーチへの帝国の拡張や文明化に使われる代わりに、贅沢品やスピンワード・マーチ宙域など帝国中央への財政投資に使われています。
 トビアは温暖気候ではありますが大気が不快なため、大部分の住民は極点などに建設された大きなアーコロジー内に住んでいます。トビアはその高い酸素含有量にもかかわらず工業化されており、電子産業や通信技術産業を主に取り扱っています。また建設業や産業デザイン、システム工学といったいわゆる「インフラ企業」も多く見つかります。トビアは高い技術力を持つ労働者の多さで知られています。
 トビアは人口増に対処するため、社会を規格化していきました。トビアの文化は公共への自己犠牲的な奉仕を重んじていて、教師や医師や消防士といった公務員は「役職階層」なる支配階級として持ち上げられています。よってこれらの職務に就くには他の世界での医師と同じぐらい厳しく選抜されます。
 静止軌道上のゴーディアン・ノット複合体(Gordian Knot Complex)は20億人が住む居住区と造船所が一体化したもので、様々な造船企業がここに工場を構えています。またここの住民はスピンワード・マーチ方面への輸出産業でも働いています。


【参考文献】
・Alien Module 1: Aslan (Mongoose Publishing)
・Third Imperium Fanzine #5 (Mike Jackson)
・B.A.R.D.: Office of the Planetary Advisory Liaison (Peter Gray)