宇宙の歩き方

The Astrogators' Guide to the Charted Space.

宙域散歩(19) リム・メイン2 ヴェガ自治区

2013-01-13 | Traveller
 ヴェガ自治区は、エスペランス星域とヴェガ星域に跨って存在します。この両星域には帝国の星域公爵は置かれておらず、自治区領内の管理はムアン・グウィから行われ、それ以外の帝国領の管理は隣接するアルデラミン、コンコード、バナスダンの各星域公爵が分担しています。この地域には物流の大動脈であるリム・メインが横断しており、経済的に急成長を遂げています。また、ヴェガ自治区自体がソロマニ連合に睨みを効かせるためのものであり、この地域は軍事的にも非常に重要な拠点でもあります。帝国はさらにヴェガ星域内に兵站基地(ディーポ)(1911)を構え、不測の事態に備えています。
 ヴェガ自治区内に住んでいるのは大多数が知的種族ヴェガンですが、彼らは高重力を苦手としているため、ベレロフォン、フランダース、マーガンサー、シュルギアスの4星系はほぼ人類のみが居住しています。また、人工重力によってヴェガンの居住を可能にしようとする試みが、シトゥアン・サール(2144)で最近始まりました。
 現在、ヴェガンの最も有名な政治指導者は、守護者トゥフールのエムテャン・サトウィ(Emtyan Satowy)です。彼女は帝国駐在大使の経歴を持ち、種族に関係なく抑圧や収監されることのないジャーナリストの権利を訴える人物としても知られています。また、ヴェガン版トラベラー・ニュースサービスであるVFP通信社(Vegan Free Press)の共同創設者の一人でもあります。
 帝国のヴェガ自治区駐在大使は、アンソニー・カザ男爵(Baron Anthony Kaza)が務めています。彼はアデアー大公の盟友であり、大公が帝国外交使節団に所属していた時代の良き師でもあります。
 暗黒時代に両星域に広まったヴェガン文化は、ソロマニ自治区時代には一旦衰えたものの、ヴェガ自治区制定後には再び盛り返しました。現在ヴェガ自治区に加盟していない星系の中にも自治区への参加を求める動きはありますが、一方で800~900年代に移住してきたソロマニ系住民(の中でもソロマニ党支持者)はそれに反発を強めており、この火種がいつ暴発するか予断を許しません。ソルセックや過激派武装組織による秘密工作も行われているようです。


エスペランス Esperance 1116 A468878-F N 高技・富裕 A G Im
 エスペランスは人類とヴェガンが共に過ごしやすい環境にある世界です。重力はヴェガンが好む軽さですが、大気は人類にとって十分に濃く、そして多くの水があります。
 この星の歴史は-4300年頃のヴィラニ人の入植から始まり、「人類の支配」期には南アメリカ系ソロマニ人がやってきて、現地のヴィラニ人と入り混じりました。暗黒時代にはヴェガンが惑星最大のボリバル大陸のステップ地帯に植民地を築き、593年にエスペランスが第三帝国に加盟した頃には、この星は40国ほどの独立国家に分かれていました。その当時はボリバル大陸の中心部で栄えていた、人口の95%がヴェガンで占められるワオサン国(Waothan)がエスペランスの政治面や技術面でリードしていましたが、やがて祖先のヒスパニック文化を持ち続けた人類諸国にソロマニ主義が浸透していき、人類とヴェガンの間に対立が生じました。
 720年に人類諸国とワオサン国で戦争が起き、敗れたワオサン国のヴェガンはソロマニ人の支配下で二級市民扱いを受けました。ワオサン国はリム戦争後に独立を回復しましたが、新アルゼンチン国(Nueva Argentina)に代表される親ソロマニ政権の人類諸国とは相互の不信感により現在冷戦状態にあり、惑星の主導権を握るべく、絶えずスパイ同士の諜報戦や傭兵を用いた小規模紛争が繰り広げられています。このような危険な情勢により、トラベラー協会は惑星全土をアンバーゾーンに指定しています。また帝国は海軍基地をエスペランスに置き、事態が激化しないよう監視を続けています。
 なお、ワオサン国の統治者トゥフールは、アルデラミン公やソル大公、そして帝国皇帝にエスペランスのヴェガ自治区への加盟を請願していますが、異星人に統治されることを嫌う人類諸国との全面戦争に火をつけかねないため、請願を却下するようソル大公と海軍は共同でストレフォン皇帝に進言しています。
 ちなみにエスペランスには、ソロマニ・リム宙域最大のチョコレート製造企業のドク・ショコラトル社(Doc Xocolatl)の本社があります。創設者がソルセック高官の一族であったこともあってか、かつてはソルセックに操られたゲリラ部隊が化学兵器工場の隠れ蓑としてこの企業を利用し、1007年に帝国海兵隊の特殊部隊が巨大工場に突入するという事件もありましたが、1030年に新体制で復活した同社は、かつての栄光を取り戻しています。同社製品の「箱入りチョコレート・コインセット(boxed Chocolate Coyns)」は、キーラン新大公が就任式典で美味しそうに食していたことから、ソル領域で大ヒット商品となりました。
(※帝国でCoynというと、貨幣(Coin)ではなく、ドロインが通過儀礼として自らの社会階層を定める際に用いる36枚組の占術コインのことを指します。ですからこのチョコレート・コインも、そういったデザインをしているのでしょう)

マシャッドゥン Mashaddun 1117 C994210-D 高技・低人・肥沃・非工 Im
 この星はメガコーポレーションのSuSAGが所有していて、現地の動植物を調査しています。

ボスコーン Boskone 1214 E00016A-E 高技・小惑・低人・非工 G Im リュドミラが領有
 ボスコーン自体は「砂利のベルト(資源や氷が少ない、鉱業的価値のない小惑星帯の意味)」でしかありませんが、この地はアルファノール(0914)~ズィム・ジア・グウィ(1515)間(およびエスペランス星団方面)の通商路で燃料補給に立ち寄る星系として、毎週数百万トンの貨物が行き交う要衝です。
 戦後、帝国の様々な運輸企業は自社の燃料補給ステーションをボスコーン星系外周のガスジャイアントの衛星に建設し、それらはロボットや短期労働者によって運営されました。このルートを利用する巨大貨物船の多くは、ガスジャイアントで燃料スクープができなかったため、ステーション群は円滑な恒星間輸送のためには必要不可欠でした。
 しかし競争が激化すると、ボスコーン星系内での通商戦争は日常的となり、企業部隊同士の戦闘によってステーションは破壊されました。1050年には休戦状態が確立されましたが、緊張は高いままでした。
 1053年、近隣のリュドミラ政府はボスコーンの領有を宣言し、有料で全ての運輸会社に対しての安全を保証すると申し出ました。本来は通行税の徴収は帝国法で禁止されていますが、帝国商務省やメガコーポレーションは例外的にこの提案を受け入れました。これでようやく、ボスコーンは静かで退屈な世界になったのです。
 現在もボスコーンは恒星間交通で賑わっています。毎日何十隻もの巨大貨物船が様々な補給ステーションに立ち寄り、小規模運輸会社の船や自由貿易商船はガスジャイアントで燃料を補給して、星系を横断していきます。星系の大部分は無人ですが、小惑星帯にはこの星系唯一の「住民」であるリュドミラ星系海軍が駐屯し、中立の立場で哨戒任務にあたっています。
 なお、海賊や密輸業者が築いた秘密基地がここにあるという噂が絶えませんが、これまで何も発見されていません。

リュドミラ Ludmilla 1216 A45689D-E 高技 G Im
 リュドミラには少なくない数のヴェガンが居住していて、ヴェガ自治区への加盟問題は長年に渡って緊張の源となっていました。
 1104年に人類優先党(Man First Party)が第一党となって政権を握ると、その名の通りに人類を上とし、ヴェガンを抑圧する政策を採り始めました。人類優先党は人種差別やテロリズムへの直接的な肯定を慎重に避けてはいるものの、反ヴェガ系テロリストへの非難をしないなど、ヴェガンと人類の対立を煽っています。
(※なお新政権の対ヴェガン政策が、ボスコーン星系の「中立」の立場まで放棄するに至るのは1116年になってからです)
 人類優先党は、1067年にエスペランスの政治活動家グスタフ・マーフィー(Gustav Murphy)によって設立されました。この党は好戦的な人類至上主義を掲げ、ヴェガ自治区内の人類世界の帝国への再編入を主張しています。人類優先党はソロマニ党に似たイデオロギー政党ですが、人類優先党が人類であるのならば種族に関係なく党員として受け入れている点は異なり、公式にもソロマニ連合への支持を表明していません。しかし一部党員はソロマニ主義への共感を隠さず、中にはヴェガンへの暴力行為に関与している者もいます。

ヒエロニムス Hieronymus 1316 X530622-6 砂漠・非工・非農・貧困 R G Im
 ヒエロニムスは現在、未発達の文明の保護のために進入禁止星系に指定されています。水界も鉱物資源も無く、惑星自体に価値はありません。

レフリー情報:
 ヒエロニムス星系は、初期の偵察局による探査では完全に無人の世界として記録され、590年頃に帝国がエスペランス星域を設置した後も、訪れる人はほとんどいませんでした。
 しかし756年に、とある商船がヒエロニムスへの緊急着陸を迫られ、その際に原住民の人類と接触したのです。その船のカタンガ船長(Captain Katanga)によると、出会った人々は皆礼儀正しく、友好的でした。彼らは古語や古い発音を含めて大きく訛った奇妙な銀河公用語を話し、見るからにソロマニ人を起源としているようでした。そして驚くべきことに、彼らはテレパシーや念動力といった超能力を公然と使いこなしていました。カタンガ船長は原住民に危害を加えられることなく、船の修理を終えて無事に帰還しました。
 カタンガ船長の遭難は超能力弾圧以前の出来事でしたが、未知の超能力者集団の存在はリュドミラのソロマニ当局を慌てさせました。すぐさま探検隊が送り込まれましたが、原住民の痕跡すら発見することができませんでした。カタンガ船長の報告は旅行者の間で噂話として広まり、ソロマニ政府は以来ずっと星系を進入禁止星系として隔離しました。
 ソロマニ・リム戦争後に帝国がこの星域の支配権を取り戻すと、偵察局はヒエロニムスを再探査しました。すると今度は人類の集落を発見できました。住民に対する密かな調査により、かなりの数の超能力者が本当にいたことが判明しました。帝国当局は惑星の「浄化」を真剣に検討しましたが、最終的に偵察局の主張が通り、ガヴィン皇帝はヒエロニムスを進入禁止星系に指定しました。それ以来偵察局は、外部と集落との「不幸な」接触が行われないように警戒を続けています(そもそもテレパシーが当たり前のこの世界で、住民に感付かれずに接近することは潜入捜査官でも困難ですが)。
 偵察局による長期間の観察により、ヒエロニムスの人々は確かにソロマニ人で、集落は暗黒時代末期ないしはそれ以前から存在していることがわかりました。しかし正確な起源や、独特な文化が形成された理由は今もわかりません。


フランダース Flanders 1517 A755A86-F 高技・高人・肥沃 G Ve
 フランダースはヴェガ自治区の一部ですが、惑星の重力がヴェガンにとって快適ではないため、住民のほとんどは人類です。最初はヴィラニ人世界でしたが、「人類の支配」の間に主に西ヨーロッパ系ソロマニ人が移住した結果、フランダースはソロマニ人世界となりました。
 しかしヴェガンとは長年に渡って友好関係を築いており、現在のヴェガン統治も満足して受け入れています。

ベレロフォン Bellerophon 1519 A88A986-E 海洋・高技・高人 G Ve
 ベレロフォンはヴェガ自治区内で人類が主に居住している海洋世界です。いくつかの島と、干潮時に姿を現す岩礁を除いて、惑星表面は海で覆われています。惑星は過ごしやすい気候を持ち、広大な海は極端な気候を和らげる働きをしていますが、季節性の大嵐(現地語でヤズ・ユギョル)が小型艇や航空機に危険をもたらすこともあります。唯一の大きな衛星アンタイア(Antiea)の影響により潮の干満は非常に激しく、核融合炉が実用化された今でも、入植初期からある時代遅れの潮汐発電施設で住民は電力を補っています。そして海水中には金属成分が豊富です。
 ベレロフォンで最も印象的な海洋生物が「ダガダシ(daghadasi)」です。成熟すると全長2km以上にもなるこの生き物は、まるで動く島です。そしてベレロフォンの特徴的な生態系は、このダガダシを中心にして成り立っています。
 かつてのヴィラニ人は特にこの星系に価値を見出さず、ダガダシを狩って食料にしていただけでした。恒星間戦争時代には地球連合の海軍基地がアンタイアに建設され、その基地に食料や原料を供給するために、ギリシャ系やトルコ系の移民も惑星に定住しました。やがて冒険好きな者はダガダシの群れを追うようになり、遊牧民の社会を形成していきました。他の者は小さな島に都市を築き、段々と海上や海中にも都市が建設されていきました。海軍基地が閉鎖された頃には、ベレロフォンは近隣のヴェガン世界との交易で成功していました。惑星の輸出品は最初は水産物のみでしたが、やがてこの星の生態系を参考にして海水中から金属を抽出する技術が確立され、これらの輸出により大きく栄えたのです。
 暗黒時代の間、この星も衰退を避けられませんでしたが、ヴェガンとの文化的・経済的な結びつきは、先端技術を維持する大きな助けとなりました。ヴェガンの文化多元主義的な考え方の影響を受け、ギリシャ・トルコ系の言語や文化がそのまま守られました。
 第三帝国の台頭と、その後のソロマニ政権支配の間でも、ベレロフォンの日常生活にはほとんど影響がありませんでした。ベレロフォンの住民の大部分は純血のソロマニ人でしたが、過去のヴェガンとの文化的・経済的関係により、ソロマニ主義は根付きませんでした。それどころか、ベレロフォンはソロマニ党内でヴェガンの権利擁護を主張していた「ヴェガ派」の支持者でもありました。そのヴェガ派が権力闘争で敗れると、ベレロフォンはソロマニ連合からほとんど経済支援を受けられなくなり、住民も連合に対して形だけの支持をするようになりました。ソロマニ・リム戦争でも住民のわずかしか連合のために戦いを志願しなかったほどです。戦後、住民はヴェガ自治区への編入を受け入れ、統治機構のトップだけがソロマニ党官僚からヴェガン官僚に入れ替わりました。
 現在の住民は、浅瀬からそびえ立つ高さ2~3kmのパイロン型都市や海中都市に住んでいます。これらの都市に計20億人が居住し、それぞれの都市は自前で工業や食料生産を賄うことができます。惑星の中心地は、ペガサス地上宇宙港から一番近い(といっても375km離れていますが)フォカエア市や、首都コリンシア市などいくつもの超高層パイロン都市が立ち並ぶイサンドロス礁(Isandros Shallows)です。
 それ以外に、1000万人ほどの「海洋遊牧民」が都市部と異なった社会を構成しています。彼らは数千人規模の部族ごとに、核融合炉で動く大きな船、と言うより船上都市に住み、海上を放浪しています。彼らは居住船と同じ大きさのダガダシを、ミサイルとレーザー砲で武装した二人乗りの狩猟船(hunterfoils)の集団で狩っています。しかし遊牧民は、自分たちが生きるのに必要なだけのダガダシを狩るように、狩ったダガダシをなるべく無駄にしないように心がけています。肉はもちろん食べ、脂肪からは燃料と潤滑油を取り出し、繊維質で織物や紙を作り、骨に蓄積された金属分すら集めます。
 恒星間企業のシーハーベスター社は、ダガダシを研究し、生殖前段階の若いダガダシが希少な生化学合成物「PDPT-β」を産出することを最近突き止めました。この物質は癌細胞やウイルスを「一掃する」するような医薬品のために、幅広く応用が期待されています。しかしPDPT-βは現在のところダガダシ以外からは見つかっておらず、人工的な合成手段もありません。
 シーハーベスター社はダガダシを捕獲するために、工場船の小船隊を運営する許可を惑星政府から得ました。しかし近年、シーハーベスター社が許可された捕獲量以上にダガダシを狩り、それが遊牧民社会だけでなくダガダシを含むこの星の生態系にまで危機を及ぼしている、という抗議が遊牧民や外世界の(汎銀河生命友愛協会のような)環境保護活動家の間からなされています。最近では、海洋遊牧民とシーハーベスター社の間の緊張は、両者の激しい対立に繋がっています。シーハーベスター社は疑惑を否定し、問題を遊牧民や外世界人の「テロリスト」の責任だと主張しています。
 ベレロフォンには地方警察以上の軍組織はありません。武器類は都市部では所有できませんが、遊牧民や企業の船にはダガダシを狩るための軍用並の大型武器を保有する免許が発行されています(取得は簡単ではありませんが)。
(※このベレロフォンの詳細な設定は、『Adventure 9: Nomads of the World-Ocean(海洋世界の遊牧民)』を参照してください)
 「ダガダシ(古代テラのトルコ語で「山のような島」)」の名付け親は、エスメレイ・ウズンジャルシリ(Esmeray Uzunjarsili)というトルコ系地球人と言われています。化学者から自由貿易商人となった彼女は、船の故障で2ヶ月間、当時ヴィラニ帝国領だったベレロフォンでの滞在を強いられました。退屈しのぎに現地の生物を調査した彼女は、そのダガダシの体内にアルツハイマー病の特効薬の成分を発見し、後に億万長者となりました。

ムアン・グウィ Muan Gwi 1717 A456A86-F NW 高技・高人 G 自治区首都
 知的種族ヴェガンの母星であり、ヴェガ自治区の首都でもあるムアン・グウィは、410億(人類3億人を含む)もの人口を容れるために非常に都会化されています。地表には荒野は既に無く、海洋を含めて郊外は全て食料生産のために開発され、慎重に気象制御がなされています。
 大多数のヴェガンは、そびえ立つアーコロジー(完全環境都市)に住んでいます。惑星表面の開発の余地がなくなって以後も、反重力で支えられる高さ数キロメートルの超高層タワーや、海上の浮遊都市などがこの2世紀の間に建設されました。
 ムアン・グウィはリム宙域の主要な通商路上にあり、宙域内で最も忙しい宇宙港やXボート中継基地、巨大な(帝国軍とヴェガ軍共同の)海軍基地を誇ります。惑星周辺には5つの巨大軌道宇宙港が等間隔で浮かんでおり、6番目の宇宙港も建設中です。年間1億人の旅行者が宇宙港を利用し、無数の宇宙船(小型船から10万トン級の巨大貨物船まで)が常に出入りしています。また工業生産力も強大で、ヴェガンの産業複合体は優れた製品をリム宙域だけでなく、ソル領域全域、さらにアスラン諸氏族などにも輸出しています。またここには、1020年に設立され、異星文化学の研究で高い評価を得ているヴェガ大学や、有名なVFP通信の本社、さらに太古種族の遺跡も存在します。
 大公キーラン・アデアーは、領域首都をこのムアン・グウィに移転させる計画を練っています。これはリムにおけるヴェガンの重要性を考慮してのことですが、非人類の母星に帝国の行政首都を置いた前例がないため、この計画は人類に対する裏切りであるとソロマニ人やヴィラニ人の活動家の怒りを買い、伝統を重んじる貴族からは(第二帝国以来リム宙域の中心地である)ディンジールのような人類世界に首都を置くべきだと非難されています。
 ソロマニ・リム戦争以後、ヴェガ軍は予算の大部分をここムアン・グウィとムアン・イスラーの星系防衛に注ぎ込んでいます。惑星防衛艦の拡充、埋設中間子砲の設置、アーコロジーへの対核ダンパーや中間子スクリーンの連動防御システムの取り付けなどがなされ、最終的には自治区全世界でこういった防衛体制を築くことを目標としています。この受注の多くは自治区内企業が請け負いましたが、一部(それでも数兆クレジット規模)は帝国企業に流れました。当初はデルガドが落札したものの、1102年にデルガド製の対核ダンパーが品質試験で不合格となり、ムアン・グウィの守護者トゥフールは新たな入札の実施を決めました。デルガド以外に、LSPやインステラアームズはヴェガ系企業と手を組んで応札する構えを見せています。
 ヴェガ軍の防御一辺倒の姿勢は、帝国海軍全体の増強には必ずしも繋がらないため、一部の帝国海軍高官を苛立たせてはいますが、ヴェガ市民の安心感の醸成と領域首都誘致での利点の形成に大きく役立っているのも事実です。

ヴェガ(グウァトゥイ) Vega(Gwathui) 1720 A000786-E 高技・小惑・非農 Ve
 青白いA型恒星であるヴェガは、テラの夜空で5番目に明るい星です。この星系には惑星はなく、塵のディスクや、鉱物の豊富な2本の小惑星帯があるだけです。特に外側の小惑星帯は、炭素や氷の豊富な小惑星から成っています。この星系はヴェガンにはグウァトゥイと呼ばれていて、長らく彼らの鉱物資源の主要な産地でした。
 星系経済は今では多角化されていて、主力産業は造船、鉱業、超密集合金の製造です。2つの小惑星帯には計244基のスペースコロニーがあり、それぞれ数十万人の住民が住んでいます。その中で最大のヴェガン居住区であり、星系首都でもあるのがアズォン・ジー(Adzon Dzi)です。
 かつてのソロマニ政権下では、この星系はソロマニ党が運営する強欲な「ヴェガ工業集団(Vega Industrial Collective)」に支配されていましたが、戦後は一千年以上に渡って小惑星採掘と鉱石処理を担っていた敏腕な商業トゥフールである、ギョ・アシュイ(Gyo Ashui)が星系を管理しています。
 人口の99%はヴェガンですが、わずかながら人類の宇宙鉱夫も星系内で働いています。そのほとんどが渡り労働の帝国人ですが、数千人ほどが頑固にも旧VIC体制に忠実なソロマニ人宇宙鉱夫の子孫です。彼らは星系外縁に浮かぶ荒廃したオリヒメ(Orihime)などのコロニーで生活し、時折訪れる自由貿易商人と取引しています。
 ここでは時々、不審な船が星系外にジャンプしていくのが目撃されていましたが、1104年にヴェガンの惑星防衛艦が、その未確認船がソロマニ連合のインディペンデンス級哨戒艦(Independence-class Solomani patrol cruiser)であることを突き止めました。ギョ・アシュイの治安部隊は、不満を抱いているソロマニ人鉱夫と侵入者の間の結託を恐れ、警戒していますが、ヴェガ海軍はあえて静観しています。
 テラの歴史上の有名な水上艦からその名前が採られた、ソロマニ海軍のSM型インディペンデンス級1000トン哨戒艦(TL13)は、ジャンプ-4と4G加速の性能を持ち、主に国境や主要通商路(時に辺境の低人口世界)の警備、輸送艦の護衛、海賊対策、臨検などに用いられています。武装が全てレーザー砲なのは、地球連合時代から続くソロマニ人の「伝統」です。この船には通常の乗組員や砲手以外に、バトルドレスで武装した兵士を最大2分隊(16名)まで搭乗させることができます。ただし内装は簡素で窮屈なため、この船で赴く長期任務はあまり人気がありません。

ムアン・イスラー Muan Issler 1816 A354A86-F 高技・高人 G Ve
 ムアン・イスラーは「ヴェガン第二の母星」と呼ばれていました。惑星環境は多くの点でムアン・グウィと似ており(低重力・薄い大気・広大な砂漠)、ヴェガンにとって最初の星系外植民地となりました。
 かつてのムアン・イスラーは繁栄したTL10世界でしたが、やがてヴィラニ帝国とヴェガンの戦争が始まりました。ヴィラニ軍はムアン・グウィとムアン・イスラーを何年かけても攻略できず、作戦方針を転換しました。ヴィラニ艦隊は、ムアン・イスラーの鉄壁の防衛網の外から地表へ向けて核ミサイルを一斉射撃したのです。ほとんどのミサイルは防衛艦が防いだものの、ヴィラニ軍の弾薬はそれ以上に膨大でした。攻撃はムアン・イスラー上の全ての文明が消え去るまで続けられ、深度避難所や隔絶した荒地に逃げ延びた数千人を除いて約20億人のヴェガンが死亡しました。
 この残酷な事実はムアン・グウィに伝えられ、次の目標が自分たちであることが明白となりました。40年間ヴィラニ人と戦い続けたヴェガンは、あえなく降伏しました。
 ヴィラニ人の支配下となったヴェガンは、征服されたムアン・イスラーに徐々に移住し、荒廃した生態系を修復し、文明を再建する作業に着手しましたが、恒星間戦争時代にはまだ放射能汚染がひどく、まばらにしか入植はできませんでした。
 ムアン・イスラーの一件は、後にヴェガンが地球連合に加わる理由の一つとなりました(ただし最初は「人類」に対する警戒感はあったようです)。そして「人類の支配」と暗黒時代を通して、ヴェガン政府の主要なプロジェクトはこのムアン・イスラーを栄光の時代へと戻すことでした。そして彼らはやり遂げました。爆撃の傷跡は過去のものとなり、今では爆撃前の人口よりも多い125億人が住み、ヴェガンの工業と商業の騒がしいほどの中心地となりました。
 現在ムアン・イスラーは、首都ムアン・グウィと同様に、帝国で最も強力な防衛力を誇ります。彼らは、決して忘れていないのです。

アステルー・テュイ Asterr Tyui 1917 A666986-F 高技・高人・肥沃 G Ve 研究基地γ
 アステルー・テュイは薄暗い赤色矮星の軌道を周回している昼夜が固定された世界です。惑星の夜側では水分が寒さで凍りつき、昼側は乾燥しきっています。人類の移民は中間帯の湿潤地域に集まる傾向がありますが、ヴェガンにとっては昼側の方が快適でした。
 この星系は-5800年頃にはヴェガンの初期植民地の一つでした。第一帝国の支配下となると、リム・メインの繁盛した中継拠点としてヴィラニ人が入植しました。この世界ではヴェガンとヴィラニ人支配者の関係は緩やかなものでした。その後、地球連合、第二帝国、第三帝国と支配者は代わりましたが、その都度住民は時の支配者に忠誠を誓いました(ソロマニ連合時代には抑圧を受けましたが)。
 アステルー・テュイは、アウシェンヨ(Aushenyo)の存在で有名です。このトゥフールには数百万人が所属し、彼らのほとんどがスコリウム(Scholium)やテラ大学の分校の関係者です。
 一方、帝国はこの地に研究基地ガンマを維持しています。一般的な帝国研究基地と異なり、この研究基地は高人口世界にあり、その研究目的も広く知られています。ガンマ基地の科学者たちは、あらゆる植物や動物、特に人類やヴェガンの遺伝子を詳しく調べています。彼らの目的は遺伝子工学の研究ではなく、遺伝的変異の収集記録にあります。この事業は、帝国内外の人々全ての遺伝子サンプリングを含みます。ここで編纂されたデータベースによって、科学者は種の進化の歴史とその方向性の結論を出すことができます。
 アウシェンヨと研究基地の方向性は一致しているため、両機関は密接な協力関係にあります。ただ、ガンマ基地の事業は時折政治的論争の的となり、不満を持つ者が基地の破壊や任務の妨害を試みていますが、帝国の保安部隊はアウシェンヨ防護隊(Aushenyo protective forces)の支援も受けているため、基地への攻撃はめったに成功していません(一方で、ここの研究者が外世界に出張している際に時々災難に遭っています)。
 アウシェンヨは恒星間戦争時代からの長い歴史を持つトゥフールです。「記憶する者たち」ことアウシェンヨは、全ての知的生命の全ての記録を残すべく、銀河最大の歴史アーカイブを編纂しています。アステルー・テュイにある「アウシェンヨ・スコリウム」は、既知宙域全ての過去15000年間に及ぶ社会経済データや歴史資料の宝庫です。アウシェンヨの研究者(ヴェガンと人類)とは宇宙各地で出会うことができ、彼らは人生の全てをあらゆる事象の記録に捧げています。

マーガンサー Merganser 1919 A942786-F 貧困・高技 Ve
 マーガンサーはあまり居住に適した惑星ではありません。その高重力はヴェガンにとっては心地よくありませんし、薄くてほこりまみれの大気には二酸化炭素と硫黄化合物が多く含まれ、高温で乾燥しています。さらに地殻運動が活発なため、活火山の連山が定期的に灰の雲を吹き上げています。水界はいくつかの内陸海と湖ぐらいしかなく、地表には工業用金属や放射性物質の堆積物が異常に多く見られます。
 当初はディンジール(1222)のソロマニ党と密接な関係のあったマーガンサー鉱業社(Merganser Mining Corporation)によって開発が始まりましたが、ソロマニ・リム戦争後は、MMCの資産はヴェガ自治区への戦後賠償として国有化されました。現在マーガンサーの開発は、守護者トゥフールが直接手掛けています。
 大部分の住民はソロマニ人で、ヴェガ系鉱業会社やサービス産業で働いています。こういった場合種族間の緊張が心配されますが、労働者には高給が支払われているので、両者の関係は円満です。住民の3分の1は定住者で、残りは自治区外の帝国人を含む短期労働者です。彼らは実用優先の家屋に住み、安さと品数だけが魅力の複合型商業施設で買った、大量生産の衣服を身にまとっています。


【ライブラリ・データ】
シュルギアス Shulgiasu 2319 A758986-F 高技・高人・肥沃 G Ve
 シュルギアスには5500年以上に渡る、長く、そして輝ける歴史があります。第一帝国の下、1600年間この星はクシュッギ宙域(当時の名前)の首都であり、宙域で最も人口稠密な世界であり、リムのヴィラニ文化の中心地でした。ソロマニ人の移住は第九次恒星間戦争以後に始まりましたが、ヴィラニ人住民は決して同化されませんでした。ヴィラニの言葉と文化は、今日でもシュルギアスでは主流です。
 暗黒時代の間に、シュルギアスはヴェガン(特に近隣のムアン・クウォイェン(2218))と強い関係を樹立しました。この関係は暗黒時代による衰退を防ぎ、恒星間交易を保つ助けとなりました。-800年頃には、シュルギアスはヴェガン世界と人類世界(ラガシュ(2121)やガネーシャ(2518)やバナスダン(2920)など)の間の重要な仲介役となっていましたが、独自の「小帝国(pocket empire)」の建設には動きませんでした。それでもこの交易関係はリム宙域の再生に大いに役立ちました。
 しかし、ヴェガンとの関係の深さや強いヴィラニ文化によって、シュルギアスはソロマニ統治下では激しい弾圧を受け、第一帝国時代の多くの建造物や遺産が破壊されてしまいました。やがて帝国の下に戻った後、ヴェガンが帝国以上に地方自治に介入しないように見えたことと、ソロマニ支配の苛烈さでかえって非人類による統治をこの星の人々が容易に受け入れられたことから、1036年にシュルギアスはヴェガ自治区に加盟しました。
 ヴェガンからは、シュルギアスの人類市民は一つのトゥフールとみなされます。星系の名目上の統治者はヴェガンの守護者トゥフールですが、実質的には人類の官僚機構が統治しています。この星の重力と気候はヴェガンにとっては不快で、彼らはあまりシュルギアスには長居しません。結果的に人類の自治権はほぼ無制限となり、この星の繁栄を促進しました。
 現在、ソロマニ支配の間に失われたヴィラニ文化を回復する長期事業に、シュルギアスの人々は挑んでいます。歴史的建造物を再建し、伝統芸術を保護するために、公的私的を問わず資金が投じられています。また、ソロマニ政権下で宙域中に散逸した遺物を取り戻すべく、代理人(一部はフリーランスの)が各地に派遣されています。シュルギアスでは少数派のソロマニ系住民でさえ、地元愛に燃えて、もしくは贖罪意識から、この事業に熱心に取り組んでいます。

カリッカム Khalikkam 2418 B610664-C 高技・非工・非農 G Im ガネーシャが領有
 カリッカムは、ソロマニ政権時代にガネーシャから入植された、円熟した植民地です。現在、非暴力的な独立運動が活発に行われており、ガネーシャ政府にとっては不本意ながらも、ゆっくりではありますが交渉は進んでいます。

汎銀河生命友愛協会 Pan-Galactic Friends of Life
 汎銀河生命友愛協会は、ソロマニ・リム宙域の帝国領内で環境保護活動を行っている団体です。彼らの目標は、基金の調達、現地調査、メディアキャンペーン、不買運動や抗議活動を通して、絶滅の危機にある種や脆弱な生態系を守ることです。協会はラガシュで1073年に設立され、当初は環境過激派集団と思われていましたが、1090年代にフィリーン(2807)で絶滅の危機にあった朝鳴き鳥(dawnsinger)の保護活動で大いに尊敬を集め、会員を増やしました。協会は暴力に頼らず、星系政府やメガコーポレーション、さらには帝国に対しても臆することなく直言しています。


【参考文献】
・Supplement 10: The Solomani Rim (Game Designers' Workshop)
・Adventure 9: Nomads of the World-Ocean (Game Designers' Workshop)
・Alien Module 6: Solomani (Game Designers' Workshop)
・GURPS Traveller: Rim of Fire (Steve Jackson Games)
・GURPS Traveller: Interstellar Wars (Steve Jackson Games)
・Traveller: The Solomani Rim (Mongoose Publishing)
・Alien Module 5: Solomani (Mongoose Publishing)
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