事の始まりは、先日にtravellermap.comがリニューアルされたことでした。星図のフォントや色が『トラベラー』付属のあの宙域図に近くなるように変更され、この方向性自体は別にいいとして、今後の連載のことを考えると、今までアップした星域図を全部差し替えてこれから掲載する星域図と揃えないといけないかなーと、「また余計なことをしやがって」と思わなくもなかったのでした(笑)。
この時、最大の問題となるのがヴランド宙域。実は現行のTravellermapの問題点の一つに「ヴランド宙域のXボート・ネットワークが1120年仕様になっている」のがあり、連載第8~11回のヴランド宙域編では、私が推測して補ったものを(こっそりと)掲載していました。そのものずばりの正解がトラベラーズ・ダイジェスト誌の第5号に載っていることは知っているのですが、残念ながら持っていないので(※ヴランド星系の回は翻訳版のタクテクス第66号を参考にしました)これまでどうすることもできませんでした。
「またあれを作り直さないといけないのか…」と嘆息しつつ、ふといつもお世話になっているThe Zhodani Baseを眺めていると、データの先頭に"Trade routes within the subsector"という文字とともに、数字の羅列が…があるのは知ってはいましたが、どうせ同じだろうと今まで気にも留めていませんでした(汗)。
しかし何の気なしにその数字が示す地点を繋いでみると…これはもしかして?と期待の持てる出力がなされたではありませんか。
ということで前置きが長くなりましたが、信憑度80%ぐらいの1105年仕様のヴランド宙域のXボート・ネットワーク図(と思われる物)を公開いたします。なお、The Zhodani Baseに掲載されているデータは「明らかにこれは誤植だろう」という数字も含まれていたので、そこは独自に直してあります。
ヴランド宙域図(1105年版)(クリックすると拡大)
ではどこが変わっているのか、星域別にざっと検証していきます。
【星域A・B:ヴォスコード星域・ヴォーダン星域】
最大の違いは、カッティ(0404)からルガルル(0502)、そしてオサイルーグー(0902)と国境外へと伸びていくルートの存在ですね。反乱発生後にはルガルルは陥落してしまうので、このルートが1120年に消滅しているのは当然でしょう。またオサイルーグーは国境外かついかにもヴァルグル風な名前とはいえ帝国属領ですし、帝国海軍基地もあるので、そこまでXボートが伸びていてもまあ不思議ではないでしょう(珍しいですがないこともないです)。それだけ重要拠点なのかもしれません。
むしろ不思議なのは、Travellermapにはハッカト(0109)からコリドー宙域方面に繋がるルートが記載されていますが、このルートは今回のデータどころか、DGPの『Vilani & Vargr』に掲載されている1120年仕様のXボート・ルート図にも載っていません。これはトラベラーズ・ダイジェスト誌の第3号があればはっきりするのですが、残念ながらこれも持ってなくて…(涙)。「ハッカト(0109)からコリドー宙域方面に繋がるルート」の存在の裏が取れましたのでこの部分は削除します(『Short Adventure 8: Memory Alpha』内のコリドー宙域図に記載)。
(※今回の宙域図でヴォスコード星系(0706)を星域首都としていますが、これを裏付ける資料は実はありません。1120年版のUWPではミスなのか設定上の理由なのか星域首都ではないことになっています。しかし星域名と名前が同じで、Bクラス宇宙港とはいえTL15で高人口世界で工業世界でXボートの中継拠点になっているのですから、平時に星域首都であったと考えても不自然ではないでしょう)
【星域C・D:アナルシ星域・シートン星域】
両星域を跨ぐルートが全く変わってしまっています。1105年版ではボルジイン(2308)からラルタイズ(2605)を経由してパヴァル(2806)に至るルートが、1120年版ではサルディイカ(2409)からスピンポート(2808)を経由してパヴァルに着いています。これも反乱の発生によってラルタイズがヴァルグルに落とされてしまった影響でしょう。
(※1120年版データではヴォスコードと同じくアナルシ(2205)も星域首都ではないことになっていますが、こちらはダアマ(1904)のライブラリ・データによって1105年設定では星域首都であることが明らかになっています。また、タクサルーグ(1701)とザンノーク(1802)の所属は設定の内容に合わせて、Travellermap掲載のものと意図的に入れ替えています)
【星域F:カガミラ星域】
星域首都カガミラ(1519)からエストフ(1217)に向かうルートは、1105年にはありませんでした。これはトラベラーズ・ダイジェスト第4号(翻訳版はタクテクス第64号)掲載のカガミラ星域図でも裏付けられています(この図は正確には1102年時点のものですが、1105年設定として扱います)。
【星域G:ヴランド星域】
タウリ(1817)から分岐して、クラ(1919)とシュシュグウム(2020)を通って、カセール星域のカールム(2221)に至るルートも1105年当時には存在しておらず、グランドツアー第5話のヴランド星域図でも確かにそうなっていました(なぜ気づかなかったんだ…)。
【星域H:シイグス星域】
ものすごく地味な違いですが、ダマコ(2912)からオクサナド(リシュン宙域 0111)に向かうルートが、1105年当時はウルキムガル(3211)を経由していません。ウルキムガルでXボートの誘致運動をやっていて、それが実ったのかもしれません(笑)。
【星域M:パルシ星域】
ここに限らず、反乱時代のヴランド宙域のリムワード方面4星域は、新ジル・シルカとストレフォン(もしくはルカン)の「国境線」が走っていた地域です。当然Xボートは国境線で分断されてしまうため、アンスウェリン(0431)~パスパア(0333)間や、キスベル(0834)~サヴッド(0635)間が切り離されていました。
1105年版と1120年版の最大の相違点は、1120年版では星域首都パルシ(0336)をXボートが迂回していることです。後付け設定に近いものですが、星系の政変などによってXボートが一時的に迂回ルートを形成することについてはトビア星域の回で記載したのですが、それにしても星域首都級の星を回避するというのは、なかなかの事態が想像できそうです。
【星域N:ダアンギイル星域】
1105年に星域首都ダアンギイル(1136)からダルム(1339)に向かっていたルートが、1120年にはイギクウニ(1437)に目的地が変更されています。これも国境線によってルートが分断された影響です。
【星域K・O・P:カセール星域・ヌリスド星域・カカダン星域】
大きく異なるのはこの地域でしょう。まず例によって国境線によって、ヌリスド(1937)~イディ(2337)間、イムシイグ(2132)~ミイリインルー(2335)~イディ間、ラアンバッジイル(3037)~アレマン(3137)間、イクスピン(2931)~タマヨ(3232)間が寸断され、カカダン(2635)~ジャルマト(2733)~キッディヌ(2531)~トブルン(2329)~ジクラグ(2227)のルートに至っては消滅してしまっています。一方でイムシイグからギカルルム(2232)、カラアリト(2540)からバコル(2240)に向かうルートが新設され、シャキル(2438)からカカダンへは直接ではなく海軍基地のあるアコン(2637)を経由するようになりました。
ヌリスド~イディのルートで、間にEクラス宇宙港のシャカ(2137)が含まれているのが気になるところです。Xボートのルート選定には、D・Eクラス宇宙港やレッドゾーン星系をなるべく含まない、という不文律がある…ような気が今までしていたのですが、ヴランド宙域をよく見てみると、Eクラス宇宙港だけでもデグラアアルビイス(2210)、ナシャ(2419)、ララジム(1626)、カプレ(2527)、シェルヴァン(3025)とごろごろと存在しているため、どうせEクラス宇宙港の星を「飛び越えて」運用しているんでしょ、と半ば投げやりな気分で黙認することにしました(汗)(飛び越えて運用していると仮定すると、国境線による分断でルートが「大きく」消えていることの説明もつきます)。同様に、海軍基地と偵察局中継基地があるいかにも重要そうなザンスキー(2932)が無視されてしまっていますが、中継基地にXボートが来ないのはよくあることなので、こちらはまあ納得です(笑)。
カカダン~ジグラグ間の長距離ルートの「廃止」が非常に目につきますが、このルートはヴランド(ないしはカセール)でカカダンの情報をいち早く知るためのものだったが、カカダンが「他国」となってしまったので必要がなくなった…とか想像が膨らみます。真相は不明ですが。
ルートや迂回路の新設は、国境沿いの基地間の連携強化を目的としたものと思われますが、だとするとミイリインルー~イディ間の海軍基地星系群のルートがなくなってしまったのが解せません。もしかすると基地の存在は既に星図上だけのもので、基地を放棄せざるを得ないほどの激戦があった…のかも。
以上、あれこれ考察と妄想を交えて解説いたしましたが、皆さんの旅のお役に立てましたら幸いです。
(※jtas.netのTraveller Atlasのページにあるヴランド宙域図にも独自のXボート・ネットワーク図があるのですが、さすがに独自すぎて参考にすることはできませんでした)
この時、最大の問題となるのがヴランド宙域。実は現行のTravellermapの問題点の一つに「ヴランド宙域のXボート・ネットワークが1120年仕様になっている」のがあり、連載第8~11回のヴランド宙域編では、私が推測して補ったものを(こっそりと)掲載していました。そのものずばりの正解がトラベラーズ・ダイジェスト誌の第5号に載っていることは知っているのですが、残念ながら持っていないので(※ヴランド星系の回は翻訳版のタクテクス第66号を参考にしました)これまでどうすることもできませんでした。
「またあれを作り直さないといけないのか…」と嘆息しつつ、ふといつもお世話になっているThe Zhodani Baseを眺めていると、データの先頭に"Trade routes within the subsector"という文字とともに、数字の羅列が…があるのは知ってはいましたが、どうせ同じだろうと今まで気にも留めていませんでした(汗)。
しかし何の気なしにその数字が示す地点を繋いでみると…これはもしかして?と期待の持てる出力がなされたではありませんか。
ということで前置きが長くなりましたが、信憑度80%ぐらいの1105年仕様のヴランド宙域のXボート・ネットワーク図(と思われる物)を公開いたします。なお、The Zhodani Baseに掲載されているデータは「明らかにこれは誤植だろう」という数字も含まれていたので、そこは独自に直してあります。
ヴランド宙域図(1105年版)(クリックすると拡大)
ではどこが変わっているのか、星域別にざっと検証していきます。
【星域A・B:ヴォスコード星域・ヴォーダン星域】
最大の違いは、カッティ(0404)からルガルル(0502)、そしてオサイルーグー(0902)と国境外へと伸びていくルートの存在ですね。反乱発生後にはルガルルは陥落してしまうので、このルートが1120年に消滅しているのは当然でしょう。またオサイルーグーは国境外かついかにもヴァルグル風な名前とはいえ帝国属領ですし、帝国海軍基地もあるので、そこまでXボートが伸びていてもまあ不思議ではないでしょう(珍しいですがないこともないです)。それだけ重要拠点なのかもしれません。
(※今回の宙域図でヴォスコード星系(0706)を星域首都としていますが、これを裏付ける資料は実はありません。1120年版のUWPではミスなのか設定上の理由なのか星域首都ではないことになっています。しかし星域名と名前が同じで、Bクラス宇宙港とはいえTL15で高人口世界で工業世界でXボートの中継拠点になっているのですから、平時に星域首都であったと考えても不自然ではないでしょう)
【星域C・D:アナルシ星域・シートン星域】
両星域を跨ぐルートが全く変わってしまっています。1105年版ではボルジイン(2308)からラルタイズ(2605)を経由してパヴァル(2806)に至るルートが、1120年版ではサルディイカ(2409)からスピンポート(2808)を経由してパヴァルに着いています。これも反乱の発生によってラルタイズがヴァルグルに落とされてしまった影響でしょう。
(※1120年版データではヴォスコードと同じくアナルシ(2205)も星域首都ではないことになっていますが、こちらはダアマ(1904)のライブラリ・データによって1105年設定では星域首都であることが明らかになっています。また、タクサルーグ(1701)とザンノーク(1802)の所属は設定の内容に合わせて、Travellermap掲載のものと意図的に入れ替えています)
【星域F:カガミラ星域】
星域首都カガミラ(1519)からエストフ(1217)に向かうルートは、1105年にはありませんでした。これはトラベラーズ・ダイジェスト第4号(翻訳版はタクテクス第64号)掲載のカガミラ星域図でも裏付けられています(この図は正確には1102年時点のものですが、1105年設定として扱います)。
【星域G:ヴランド星域】
タウリ(1817)から分岐して、クラ(1919)とシュシュグウム(2020)を通って、カセール星域のカールム(2221)に至るルートも1105年当時には存在しておらず、グランドツアー第5話のヴランド星域図でも確かにそうなっていました(なぜ気づかなかったんだ…)。
【星域H:シイグス星域】
ものすごく地味な違いですが、ダマコ(2912)からオクサナド(リシュン宙域 0111)に向かうルートが、1105年当時はウルキムガル(3211)を経由していません。ウルキムガルでXボートの誘致運動をやっていて、それが実ったのかもしれません(笑)。
誘致運動は冗談ですが、Xボートのルートは情報の流れだけでなく経済の流れも表現しているので(スピンワード・マーチ宙域のアル・モーレイ社に限らず、大手の運輸会社はだいたいXボートのルートに沿って営業所を置いたり船舶の運行を行っています)、経済的な変化が反映された、と解釈することも可能です。実際、GURPS Travellerの『Starports』のルールでは、どんな田舎星でもXボートのルート上にあるだけで、その星系の物流取扱量を示す宇宙港規模値が最低でも6(結構な高人口かつ高TLで、さらにメインに属するような星系並)が確保されることからもうかがえます)
【星域M:パルシ星域】
ここに限らず、反乱時代のヴランド宙域のリムワード方面4星域は、新ジル・シルカとストレフォン(もしくはルカン)の「国境線」が走っていた地域です。当然Xボートは国境線で分断されてしまうため、アンスウェリン(0431)~パスパア(0333)間や、キスベル(0834)~サヴッド(0635)間が切り離されていました。
1105年版と1120年版の最大の相違点は、1120年版では星域首都パルシ(0336)をXボートが迂回していることです。後付け設定に近いものですが、星系の政変などによってXボートが一時的に迂回ルートを形成することについてはトビア星域の回で記載したのですが、それにしても星域首都級の星を回避するというのは、なかなかの事態が想像できそうです。
【星域N:ダアンギイル星域】
1105年に星域首都ダアンギイル(1136)からダルム(1339)に向かっていたルートが、1120年にはイギクウニ(1437)に目的地が変更されています。これも国境線によってルートが分断された影響です。
【星域K・O・P:カセール星域・ヌリスド星域・カカダン星域】
大きく異なるのはこの地域でしょう。まず例によって国境線によって、ヌリスド(1937)~イディ(2337)間、イムシイグ(2132)~ミイリインルー(2335)~イディ間、ラアンバッジイル(3037)~アレマン(3137)間、イクスピン(2931)~タマヨ(3232)間が寸断され、カカダン(2635)~ジャルマト(2733)~キッディヌ(2531)~トブルン(2329)~ジクラグ(2227)のルートに至っては消滅してしまっています。一方でイムシイグからギカルルム(2232)、カラアリト(2540)からバコル(2240)に向かうルートが新設され、シャキル(2438)からカカダンへは直接ではなく海軍基地のあるアコン(2637)を経由するようになりました。
ヌリスド~イディのルートで、間にEクラス宇宙港のシャカ(2137)が含まれているのが気になるところです。Xボートのルート選定には、D・Eクラス宇宙港やレッドゾーン星系をなるべく含まない、という不文律がある…ような気が今までしていたのですが、ヴランド宙域をよく見てみると、Eクラス宇宙港だけでもデグラアアルビイス(2210)、ナシャ(2419)、ララジム(1626)、カプレ(2527)、シェルヴァン(3025)とごろごろと存在しているため、どうせEクラス宇宙港の星を「飛び越えて」運用しているんでしょ、と半ば投げやりな気分で黙認することにしました(汗)(飛び越えて運用していると仮定すると、国境線による分断でルートが「大きく」消えていることの説明もつきます)。同様に、海軍基地と偵察局中継基地があるいかにも重要そうなザンスキー(2932)が無視されてしまっていますが、中継基地にXボートが来ないのはよくあることなので、こちらはまあ納得です(笑)。
カカダン~ジグラグ間の長距離ルートの「廃止」が非常に目につきますが、このルートはヴランド(ないしはカセール)でカカダンの情報をいち早く知るためのものだったが、カカダンが「他国」となってしまったので必要がなくなった…とか想像が膨らみます。真相は不明ですが。
ルートや迂回路の新設は、国境沿いの基地間の連携強化を目的としたものと思われますが、だとするとミイリインルー~イディ間の海軍基地星系群のルートがなくなってしまったのが解せません。もしかすると基地の存在は既に星図上だけのもので、基地を放棄せざるを得ないほどの激戦があった…のかも。
以上、あれこれ考察と妄想を交えて解説いたしましたが、皆さんの旅のお役に立てましたら幸いです。
(※jtas.netのTraveller Atlasのページにあるヴランド宙域図にも独自のXボート・ネットワーク図があるのですが、さすがに独自すぎて参考にすることはできませんでした)