宇宙の歩き方

The Astrogators' Guide to the Charted Space.

宙域散歩(18) リム・メイン1 ハーレクイン星域

2012-11-30 | Traveller
 ソロマニ・リム宙域を語るなら、まずは「リムの玄関口」であり、「リム・メイン」の一方の端であるハーレクイン星域から。ここは(かつてほどではないにしろ)星間交通の要所であると同時に、数々の冒険の舞台となっています。GDW時代には『アルゴン・ギャンビット(The Argon Gambit)』『デス・ステーション(Death Station)』『逃避行/単独逃避行(Marooned/Marooned Alone)』『The Lost Village(JTAS24号掲載)』『A Body Swayed to Music(Challenge誌37号掲載)』といったシナリオが刊行され、ライブラリ・データやその後のサプリメントでも設定が手厚くサポートされています。古参ファンの方なら「チャンパ中央宇宙港(Champa Interstellar Starport)」(JTAS7号・タクテクス21号掲載)の名前に聞き覚えがあると思いますが、その惑星チャンパがあるのもここです。
 今回はハーレクイン星域に加え、リム・メインで接続された、シナリオ『Prison Planet(GDW版)』の舞台のニューカム星系を含むバナスダン星域の一部も採り上げます。


 ソロマニ・リム宙域の他の銀河核方向星域と同じく、ハーレクイン星域も元はヴィラニ人によって入植され、後にソロマニ人によって開発された星域です。700年から1001年まで続いたソロマニ党政権の間、この星域はテラとオールド・エクスパンス宙域の繁栄地域を結ぶ、非常に重要な位置にありました。しかし戦災によって宙域経済は不況に落ち込み、帝国統治下となってからは大規模交易の流れはハーレクイン星域をあまり経由しなくなりました。1002年に戦争が終わって以後、星域経済はかつてのようには回復しておらず、住民の多くは帝国に不満を持っています。
 戦後、帝国陸軍と海兵隊は各地で、隠匿した武器を引き渡す協定を調印して非暴力に転じさせるなどして、過激なソロマニ運動を根絶していきました。その結果、1047年から星域内における帝国軍による占領統治は徐々に解かれていき、1102年には完全に終了しています。
 それでもソロマニ党はハーレクイン星域の多くの世界でいまだに勢力を保っています。ソロマニ連合は公的には帝国内の地方ソロマニ党の活動との連帯を表明していますが、現実には支持だけに留まっています。稀に狂信的なソロマニ主義者による暴動は発生しますが、星域内に平和と安定は広まっています。
 現在の星域公爵は、「抵抗派」に属するハーレクイン公ドミトリー・オート=フィオンブレア(Dmitri hault-Fionbrea)が勤めています。老境にある彼は、星域内の民族問題を長きに渡る対話と暴力の抑制で解決しようと試みていますが、彼のお膝元である星域首都アルキイルキイ(ここはヴィラニ民族主義の温床です)の反ソロマニ派貴族からは、弱腰であると突き上げられています。また彼はいわゆる「お堅い」人物として知られています。
 おそらくハーレクイン公に対する最も厳しい批判者は、彼の妻であるコムネナ(Commnena)でしょう。かつては名門だった彼女の家は、混血人種だったためにソロマニ統治下の間にほぼ絶えてしまい、さらにソロマニ・リム戦争で祖父を失っているのですから。また、公爵家の跡取り息子であるエンキドゥ(Enkidu)は、まだ未成年ですが、思想面で母親の影響を受けていると言われています。

 ハーレクイン星域には33の世界があり、総人口は671億人です。最も人口が多いのはアオスタの170億人です。帝国海軍第293艦隊が、アルキイルキイ基地とユイ・ブラシール基地に駐留しています。


ガッデン Gadden 2506 D893200-8 低人・非工 G Im
 ガッデンは濃厚で汚染された大気を持つ、乾いた寒冷の惑星です。人口は1000人に満たず、政府組織もこれといった産業もありません。中緯度のツンドラ地帯にある惑星唯一の小さな入植地では、簡単に入手できるタングステンの鉱石を細々と採掘しています。ラッキー地上宇宙港(Lucky Down)はDタイプに分類され、原っぱにかろうじて宇宙船の補修「小屋」と燃料補給ポンプがある程度の代物です。また、惑星の大部分は未探査のままとなっています。
レフリー情報:ここには、鉱夫たちも知らない資源が眠っています。惑星上の植物の中には、戦闘ドラッグの原料になる化学物質を含む品種があるのです。もしも薬品の精製法を発見することができれば、それはSuSAGのような企業にとっては大きな利益となるでしょう。ただし現時点では、その成分が使い物になるかどうかもわかっていません。

スカラムーシュ Scaramouche 2509 A7C6503-9 非工・非水 R Im
 スカラムーシュの腐食性の大気には、塩酸の蒸気と有毒な化学物質が混じっており、酸性の海は工業用の漂白剤並です。惑星には塩素を呼吸するバクテリアや植物が生息していますが、高等な動物は発見されていません。
 この世界はかつてのヴィラニ人には無視され、暗黒時代の間に入植されたと考えられています。地元の伝承では、自分たちはイースター協定やディンジール連盟(※双方とも暗黒時代~第三帝国初期にかけてこの宙域に存在した小国家)やヴェガンを相手に暴れ、後にこの地に独立国を興したソロマニ系海賊団の末裔であるとしています。その起源の真偽はともかくとして、現在の住民はそのたくましさと自立心で知られています。
 資源の乏しさにも関わらず、彼らは機械技術で人口を支えられるだけの食料と工業力を得ています。多くの住民は、自前の核融合発電所と水耕栽培農地と鉱山を抱える地下都市に住んでいます。ただし、昔から自由貿易商人たちの母港であるブローガン地上宇宙港(Brogan's Down)を抱える、(地上宇宙港を持つ唯一の都市である)ティベリオ(Tiberio)だけは塩酸の海の岸辺に位置しています。
 スカラムーシュの住民は、ほぼ全てが純血のソロマニ人です。帝国の貴族支配に対する嫌悪感から、彼らはソロマニ主義の黎明期から熱心な支持者となり、ソロマニ・リム戦争の頃には、成人の15%が愛国心に燃えてソロマニ連合軍や商船艦隊に志願しました。
 戦争が終わっても、スカラムーシュの惑星防衛艦の小戦隊は降伏を拒否し、最後の1艦まで戦い続けました。その後長い間、進駐した帝国軍が統治を行いましたが、住民は帝国の支配をよしとせず、「古き良き日々」を求める反帝国暴動や小規模なテロ活動が頻発しました。住民の敵意のために、スカラムーシュはハーレクイン星域の中で1090年代末でも軍政が続いた数少ない星系となりました。
 1098年、総督暗殺を発端としたいわゆる「一斉蜂起(Unity Uprisings)」に対し、ティベリオ駐留部隊(海兵隊大隊と陸軍旅団の混成部隊)の指揮官兼代理総督のリンジイル・ウルシュカアン陸軍大将(General Ringiil Urshukaan)が容赦のない対抗措置を行った結果、ゲリラ攻撃は鎮圧され、蜂起の首謀者であるモラデヨ・デービス・アティヤー(Moradeyo Davis Atiyah)は逮捕され、この蜂起が星域全体に飛び火することを未然に防ぎました。
 しかし、ウルシュカアン大将に残虐行為などの疑いが浮上し、紛争終結後に総督に就任したチャンパ出身のローザ・ディミトリュー准男爵(Baronet Rosa Demetriou)は、駐留軍の縮小などを定めた和解案の中に、ウルシュカアン大将の告訴のための追加調査を含めています(一方ウルシュカアン大将は、疑惑をかけられたこと自体に抗議して自ら退役しました)。
 1102年の民政移管後、駐留軍は緊張緩和のために撤退を開始しました。しかしそれ以後、スカラムーシュの政府は非常に不安定な状態が、時には無政府同然となることが続いています。地元のソロマニ党は、有力な政治指導者たちが一斉蜂起の際に殺害されるか収監されたために、複数の派閥に分裂して内紛を起こしました。そしてそれに取って代わる政治勢力は出て来ませんでした。党派間の暴力と犯罪は日常のものです。
 現在、組織化された反帝国ゲリラ部隊の存在は無いように見えますが、将来的にこの混乱した世界にソロマニ主義テロ集団やソルセックが基地ないしは訓練キャンプを建設するのではないかと、帝国の情報部は警戒しています。なお「一斉蜂起」以来、トラベラー協会はこの星をレッド・トラベルゾーンに指定し、帝国も進入禁止指定をいまだ解いていません。
(※この星の進入禁止指定の解除とレッドゾーン指定のアンバーへの格上げがなされるのは、1107年088日のことです(その時期に駐留軍の撤退も完了しています)。元となったGDW版『The Solomani Rim』が1108年設定であるため、一般的な星図でここがアンバー指定されていることと矛盾はしていませんが、紛らわしいため修正を施しました。余談ですが、理由は不明ながら帝国では慣例的に準男爵位は男女で呼び方の区別をしないようなので、女性であるローザ卿が"Baronet"と書かれているのは誤植ではありません)
 1103年にウルシュカアン元大将は、アルクトゥルス星域、バナスダン星域、ソル星域を商圏とするラマルク・ミネラルズ社(Lamarck Minerals, LIC)の社長に就任し、わずか2年で同社の経営の立て直しに成功しています。しかし元々このラマルク社自体が、贈賄や暴力沙汰の話題が絶えない、あまり評判の良くない企業であるのも事実です。

ミスカトニック Miskatonic 2603 A487863-9 富裕 G Im アルファーが統治
 この星系は当初はヴィラニ人植民地でしたが、後に放棄されて、暗黒時代の間に隣接するアルファー星系(2703)のソロマニ人によって再植民地化されました。現在でも母星との関係は非常に良好で、今ではかなりの自治権を持ってはいるものの、公的にはアルファーの保護領のままとなっています。
 ミスカトニックは低重力ですが、水と自然に溢れた世界です。技術面では少し遅れていますが、人々は友好的ですし、惑星の資源は豊富です。一方で治安レベルは3と低いのですが、別に住民が公然と小銃を携帯しているのではありません。大多数の住民は大地主で、自分の土地を凶暴な害獣から守るために重火器を必要としているのです。
(※Challenge誌37号の記述によれば、時期は不明ですがソロマニ主義者による反乱がここでかつて発生したらしいです)

ビータス Beatus 2608 A688989-E 高技・高人・肥沃 G Im
 この星を統治する伯爵家では、風変わりな継承方法が採られています。家を継承するのは女性に限られますが、女当主の死後に長女が自動的に継ぐのではありません。当主の長男の妻が新たな女伯爵となるのです。

フィリーン Phireene 2807 A469895-D 高技・富裕 G Im
 フィリーンはスコットランド系のソロマニ人によって入植され、今でも儀礼用の衣装などに先祖の文化を見ることができます。
 この星のオトバ宙港街(Otoba startown)の裏の支配者は、「マザー・ショム(Mother Shom)」です。犯罪組織の元締めである彼女は、宙港街の全ての賭博場や、合法な商取引から違法な麻薬取引までを取り仕切り、酒場や歓楽施設から上前をはねています。彼女は太っていてかなり短気な一面もありますが、上流階級の作法や身なりを的確に身に着けていますし、彼女を出し抜こうとする目論見はたいてい死を招きます。
 マザー・ショムは、宙港街で最も大きくて豪華なカジノ複合ホテルである「ゴールデン・ランタン」のスイートルームに住み、そこから通信機器でビジネスの指示を出しています。建物の周囲は子飼いの「警備員」(と言っても凶悪犯やチンピラの集まりですが)によって厳重に守られ、対立組織を寄せ付けません。
 フィリーンの司法当局は、彼女の活動を渋々黙認しています。彼女自身が決して犯罪に「直接には」関与しておらず、また彼女の組織が宙港街における犯罪の横行や薬物の氾濫をある程度抑えているのも事実だからです(両方とも長い目で見れば彼女のビジネスにとっては良くないので、宙港街内のトラブルには「警備員」がすぐに乗り出してきます)。そして彼女には、星系の内外に有力な多くの「友人」がいるのです。
 マザー・ショムを捕らえて有罪判決を下すことは司法当局の悲願ではありますが、彼女は帝国法も犯さないよう注意を払っているため、帝国でさえも彼女に対しては動くことができません。
(※フィリーンは隣接するアンバー(2808 B777464-D)を領有していますが、設定には「比較的最近フィリーンから入植された」としかありません)

アオスタ Aosta 2902 A453A26-F 高技・高人・貧困 G Im
 しばしば「ソロマニ・リムの玄関口」と呼ばれるアオスタ星系は、ディアスポラ宙域やオールド・エクスパンス宙域とソロマニ・リム宙域を結ぶ物流の拠点として位置しています。アオスタ自体は住みにくい惑星で、主星の引力によって自転を固定され、バクテリア以上に進化した生命を持たず、寒冷で乾燥しています。さらに小惑星帯も含めて鉱物資源も少ない星です。つまりアオスタの人々は、資源なしに外世界との交易のみで自活していかなくてはならないのです。しかしこの不利な条件にも関わらず、彼らは長年に渡ってとても成功しています。
 アオスタの社会は、資本主義と共産主義が奇妙に交じり合っています。ここでは従業員が会社を所有し、厳しい法律によって利益は平等に分配されます(仮に重役であっても、給与や配当は新入社員と同じです)。法律は外世界資本の企業がアオスタの従業員に株式を譲渡することまでは求めていませんが、大部分の企業はより良い労使関係を築くために地元の慣習に従っています。よって、メガコーポレーションに勤務しているアオスタの住民は、宙域内のどの支社よりも気前の良いストック・オプションを得ています。また一部のメガコーポレーション従業員は、宇宙船の現物で配当を受け取っているので、アオスタ出身の自由貿易船長は宙域中の至る所で見ることができます。なお、アオスタでの商業活動に対する規制は非常に少ないです。
 アオスタでは、コンピュータのネットワークによって支えられる、あらゆる社会階層が参加する直接民主制が運用されています。地方規模の物事は電子議会(electronic town meeting)で、惑星全体規模の法律は住民投票で決められます。一方で、政府機構自体は非常に小さく、民間企業と多くの業務を契約することで運営されています。
 アオスタの企業は、革新的で、積極的にリスクを取り、常に利潤を求めることで知られています。一方で激烈な競争社会ゆえに、裏取引も辞さず犯罪まがいの手も使う、という悪評もあります。外世界からの訪問者は、あらゆる契約書の細かい字の部分までちゃんと読んでいる者のみに大きな可能性が開けている世界であると思い知ります。

アルキイルキイ Arkiirkii 2905 A66A8AD-F NW 海洋・高技 Im 星域首都
 この海洋世界はハーレクイン星域の首都であり、ハーレクイン公の居住地です。大多数の住民は、潮の満ち干きの激しさを避けて海中か空中の都市に居住しています。惑星唯一の地上宇宙港は、最大大陸の中心にある最も高い休火山の頂上にあります。ここは満潮時でも水没せず、昼季の暴風の影響を比較的受けない数少ない地点です。
 -4900年頃にヴィラニ人によって入植されて以来、約6000年に渡ってこの星系はヴィラニ文化を守り続けてきました。そのため、ソロマニ政権下ではこの星は占領統治の形で支配され、住民は大規模な反乱こそ起こしはしませんでしたが、惑星の広大な海と暴風を利用して反体制派の住民はソロマニによる抑圧から逃れていました。一方で連合は惑星上に軍事基地を建設し、戦争時には重税を科し、生産力を供出させました。
 その間、帝国貴族のオート=フィオンブレア侯爵家はこの地に在り続け、1世紀以上隠遁を続けました。やがて帝国がリム宙域に「戻って」来ると、反体制派住民を率いていた女侯爵シャナ(Shana)は、帝国に対する忠誠を示すために世に出てきました。代々続いた揺ぎない忠誠心と、ソロマニに対する住民の抵抗が皇帝に認められ、彼女にはハーレクイン公爵の称号を与えられ、星系は星域首都となりました。それ以来、オート=フィオンブレアの一族はこのアルキイルキイでハーレクイン星域の統治を続けています。
 比較的脆弱な海中都市には何よりも「安全」が求められるため、アルキイルキイは非常に厳格な規律を持つ階級制社会です。生活のあらゆる局面で規則が定められ、人間とロボットによる大規模な警察と広範囲な市民監視システムが、「清潔」で「静か」な犯罪のない社会を作っています。一般的には軽犯罪とみられる行為(泥酔や風紀紊乱等)でさえ重い罰金を科せられ、懲役刑には重労働が付き物です。さらに重犯罪者を当局に通報しなかったことが証明されると、犯人本人だけでなくその関係者も処罰対象となります。そして死刑となった重犯罪者の資産は、臓器バンクや医学研究用に売られた自身の肉体の売却益も含めて、犯罪被害者の家族への弁済に回されます。
 戦後、アルキイルキイ市民はソロマニの支配下で受けた屈辱を許す気はありませんでした。絶対君主制の星系政府は、ソロマニ政権時代に制定された人種差別的な法律の数々を、立場を逆にして延長したのです。遺伝子検査は義務であり、少数派である純血のソロマニ人市民は所有できる資産や就くことができる社会的地位に制限が課せられ、異民族間での結婚や性的関係を持つことは重罪とされています(罰則は強制的な不妊化から長期の禁固刑までです)。さらにこの「制裁」は外世界からの訪問者にも適用され(ただし公爵宮殿は宇宙港の内部にあるため、治外法権の対象となります)、ソロマニ系であることを明かした、もしくはソロマニ風の名前を持っている外世界人は、遠回しに嫌がらせや差別を受けるかもしれません。
 この政策は親帝国のソロマニ人貴族ですら不愉快に感じるほどで、アデアー大公は外交団を通じて制裁を緩和するようハーレクイン公ドミトリーに圧力をかけましたが、彼は「オート=フィオンブレア家を守ってくれたアルキイルキイに恩義がある」として拒みました。また、帝国が傘下世界の内政に介入すべきではないと考えているディンジール公は、ハーレクイン公を支持しています。

ユイ・ブラシール Huy Braseal 2910 A255989-F N 高技・高人 Im
 120年間に及んだ第一期探査の末期、帝国偵察局は当時帝国国境外であったソロマニ・リム宙域の探査に着手しました。その際、偵察局はとても資源が豊かな小惑星帯を発見しました。その外側の軌道には小さな惑星が周回しており、こちらは特に鉱物資源は豊富ではありませんでしたが、氷塊で覆われていました。資源と水の両方を兼ね備えた星は開発が容易であり、帝国は420年頃にこの星系を併合して採掘の許可を与えました。
 星系内での活動の拠点となった氷の惑星にはユイ・ブラシールという名前が付けられ、入植地は物凄い勢いで発展しました。ソロマニ自治区初期には星系の人口は約10億人に達し、地元の製造業と造船所は宙域内で最も繁盛していました。ソロマニ党政権下で星域首都となったユイ・ブラシールには大きな海軍基地が建設され、オールド・エクスパンス宙域方面への主要な通商路が通る重要な星系となりました。
 その全てはリム戦争で終わりました。包囲戦によって造船所などの施設に多くの被害が出て、いくつかの入植地は破壊されました。
 現在、ユイ・ブラシールには帝国海軍基地があり、見た目は繁栄しています。しかし星間流通網の変化によって星系の経済は以前のようには回復しておらず、ゆっくりと衰退している社会は内向きに、排他的になっています。
 このような状況では、この星が親ソロマニ感情の温床となるのは避けられませんでした。惑星上の一部地域は既にソロマニ党によって支配されています。帝国の情報部は、この星系の広大な小惑星帯がソロマニ活動家や工作員の隠れ家となっていると考えていて、帝国海軍と星系政府が共同で星系内のパトロールを実施し、帝国の防諜部隊が活発に活動していますが、その任務は困難を極めています。
(※ユイ・ブラシール基地には20万トンのコキラック級弩級戦艦(Kokirrak-Class Dreadnought)で構成される戦艦戦隊(BatRon)が配備されています。通常コキラック級は国境沿いの1宙域で3~5戦隊しかなく、ソロマニ・リム宙域では他にシュルルシシュ、ムアン・グウィ、ディンジール、テラの各海軍基地にしか配備されていません。よってこの星系が帝国海軍の重要拠点であることが伺えます)

ヤノーシュ Janosz 3008 A564978-B S 高人・肥沃 G Im
 ヤノーシュは、いくぶん乾燥したテラ型の惑星です。総人口は10億人をわずかに上回り、それぞれ100万~1億人以上の人口を抱える32もの主権国家に人々は分かれています。そのうち29国が帝国の傘下にありますが、残る3国はソロマニ・リム戦争を経ても帝国に加盟せず、独立したままです。その中の1つであるクロラリー国(Cloralie)は、帝国の介入を避けるために、国内でのソロマニ運動を兆候の段階から情け容赦なく弾圧することで独立を維持しようとしています。
 一方で、帝国参加国の中にはクロラリーと対照的な手法を採っている安定した国もあります。インテネバック(Intanevac)は、首都アルゴンにAタイプ宇宙港を持つ国家です。星系外から沢山の人々が訪れる関係で、アルゴンの治安レベルは4程度に低下しています。インテネバックは個人の高度な自由が保証されている議会制民主主義国家で、政治的にも宗教的にも寛容であることが広く知られています。そのため、現地のソロマニ党は合法政党であり、選挙で親帝国派の政党と戦っています(ただしインテネバックのソロマニ党は、すぐに暴力に訴えるという話もあります)。
 ヤノーシュにおける政治の複雑さと、その多い人口や産業の発展性は、メガコーポレーションや外世界資本の企業の魅力的な進出先と捉えられています。また、帝国の情報部は、ソルセックが連合の利益のためにヤノーシュのいくつかの国家の内政を巧妙に操っているのではないかと考えています。
 1104年末、宇宙鉱夫が小惑星帯にて戦争時に破壊されたと思われるソロマニ連合の救命艇を発見し、艇内を捜索すると冷凍睡眠中の2体の遺体と1人の生存者がいました。しかしその生存者は、身元が確認される前にアルゴン地上宇宙港の偵察局基地から姿を消してしまったのです。
 逃亡した人物は、連合陸軍特別奇襲部隊(Confederation Army Commandos)所属のヘンリク・サルバドーリ大佐(Colonel Henryk Salvadori)と特定されました。彼は先の戦争中にインスラ(オールド・エクスパンス宙域 0607)の重要な生命維持装置を破壊して何百万人もの市民を殺害した、「インスラの虐殺者(Butcher of Inthra)」の悪名を持つ指揮官です。サルバドーリは今もヤノーシュのどこかに潜んでいると思われ、帝国司法省(Imperial Ministry of Justice)は戦犯である彼に50万クレジットの賞金をかけ、彼を捕まえるか、逮捕に繋がる情報を求めています。ただし、惑星内のソロマニ党支持者が彼を援助している可能性もあります。
(※ここはホビージャパン版では「ジェイノス」と訳されていた星です。余談ですが、インテネバックは『アルゴン・ギャンビット』の舞台、インスラはグランドツアー第12話で訪れています)

シャパム Shapam 3009 C232533-C 高技・非工・貧困 G Im 研究基地α
 シャパムは500年頃にチャンパ(3109)から入植が始まり、583年のチャンパの民主化革命によって貴族など上流階級の亡命先となった星です。その後、亡命者がチャンパに帰還しない約束と引き換えに、シャパムは独立を果たしました。現在では、先人のインフラ投資が実ってチャンパよりも技術レベルは上回り、リム・メインを行く低ジャンプ宇宙船の燃料補給拠点として、そして何よりもソロマニ・リム宙域の富裕層のための贅沢なリゾート惑星として有名となっています。
 シャパムは、美しい輪を持つガスジャイアントの小さな衛星です。世界そのものは不毛ですが、氷の山、クレーター、火山は自然の美しさを備えています。
 3つあるドーム都市のうち、最大の人口を抱えているのがザナドゥ・エ・シャナプア(Xanadu et Shanapour)で、その空にはいくつかの重力制御された城が飛んでいます。わずかな例外を除いて、最高級品揃いのシャパムの物価は天文学的な高さです。星域内で最も格の高いホテルやレストランやカジノの全てがここにはありますし、娯楽施設として体験型ホロ映画や低重力スキー場なども整備されています。宇宙港からはガスジャイアントのリングに向けて観光用の小艇が発着しており、リングの氷にレーザーで彫刻された巨大な歴代皇帝像を眺めることができます。
 しかし多くの観光客にとって、シャパムを訪れる理由は風景でも高級ホテルでも料理でもありません。シャパム政府は他の星系では不道徳と考えられていることを大目に見ていて、むしろ助成金さえ支給しているのです。賭博、麻薬、売春、淫靡な格闘技イベント、慰安用ロボットの販売または貸し出し、バイオ技術やサイバー技術による肉体改造手術…双方が合意の上で、金になり、帝国法を犯さない限りは、シャパムでは全てが合法です。
 地元警察は、訪問客用のリゾート区域を主に守っています。犯罪を検挙し、違法武器を取り締まり、プライバシー法を振りかざして外世界からのパパラッチを帝国の著名人から遠ざけています(この星でのご乱行が世に知れ渡ると困る人は多いのです)。
 一方でシャパムの寡頭政府は、土地を帝国研究基地アルファに有償で貸し出しています。研究基地は1043年に、ザナドゥ・エ・シャナプアの反対側にある氷海の無人島に建設されました。精鋭の偵察局保安派遣隊(IISS security detachment)が、施設の周囲20km以内の立入禁止区域を警備しています。研究基地の関係者は必ず小さな専用宇宙港で出入りし、リゾート区域で「交流する」ことは許されていません。なお、この基地が何を研究しているのかは不明で、様々な噂が上がっています。
(※シナリオ『逃避行』で出てくる「ハーレクイン公爵夫人のスキャンダル」は、ここで撮られたもの…らしいです)

カーライル Carlyle 3101 B9B5865-C 高技・非水 G Im パルヌーが統治
 戦前のカーライルはソロマニ主義運動を熱心に支持していましたが、ここを占領した帝国当局は、駐留軍に統治させるよりもパルヌー(3101)の親帝国政権に委任する方を選びました。元々カーライルとパルヌーは関係が良好だったため、この措置はうまく働きました。現在でもカーライルはパルヌーの信託統治下にあります。
(※ちなみにパルヌーはオパール(3202)にも科学研究拠点(scientific outpost)を置いて統治しています)

キレンヌル Kilennur 3208 B5958BE-B 肥沃 G Im
 世襲の帝国貴族であるキレンヌル侯ファルケンブルグ(Marquis Valkenburg of Kilennur)は、同時にこの星唯一の合法政党の「帝国忠誠党(Imperial Royalists)」の党首でもあります。ソロマニ活動家が激しく非難しているこの支配者一族は、最も過酷なソロマニ党独裁政権よりも専制的な、腐敗した政治を行っているのです。
 侯爵と側近グループは、かなりの不正収入と引き換えに、市場の独占取引や資源の開発契約などをシャルーシッド、LSP、デルガドといったメガコーポレーションと結びました。その収入の一部はセキュリティ強化と武器購入に回され、侯爵が誇る私設軍や秘密警察の装備を充実させました。
 キレンヌル政府は、帝国と強力な後ろ盾であるハーレクイン公(キレンヌル侯の遠い親戚なのです)への忠誠を強要しており、大多数の民衆には嫌われています。しかし、異議申立ては今まで何度も挫かれています。反体制派は外世界の反帝国活動家などとの連携を模索していますが、専制政治を打倒して「自由共和国」を築こうという運動は、冷酷な支配体制の前では今は噂レベルに留まっているのが実情です。
 なお、キレンヌルの南大陸にはドロイン社会(オイトリップ)が存在します。ここのドロインは今でも現地ではヴィラニ語のヌギイリ(Nugiiri)と呼ばれていますが、これは宇宙各地に散らばるドロインたちが一つの種族であると判明していなかった頃の名残りです。523年に当時のハーレクイン公爵が、南大陸におけるドロインの自治権を正式に認めていて、現在のドロイン集落には小さなCタイプ宇宙港と自前の農場や工場があり、数隻の宇宙船を運用しています。キレンヌル侯との関係も落ち着いており、毎年彼らの代表は中央宇宙港まで税を納めに出向いています。
 キレンヌルの人々の間には様々な民間伝承があり、いくつかは妖精の国にまつわる古代テラのお伽話に類似しています。愚かな人間がドロインの住む土地に入り込み(攻め込み)、そして二度と戻って来なかったという類のものです。

パグリアッキ Pagliacci 3209 C754733-6 農業・肥沃 G Im
 パグリアッキは後進の農業世界です。惑星表面のほとんどは無人で、未踏の地となっています。約6500万人の住民は、宇宙港と政治機能がある最大都市ディオン(Dion)を中心として数百km以内の農業入植地に集まっています。ここはソロマニやハイヴの領域に向かう宇宙船が時折燃料補給に立ち寄る程度で、星域経済においてはほとんど目立たない存在です。
(※ここの生態系についてはシナリオ『逃避行』にて詳細に書かれています)


【ライブラリ・データ】
ニシナシャ Nisinasha 2812 A9EA987-E W 海洋・高技・高人 G Im
 ガスジャイアントの衛星であるニシナシャは、遥か昔、よりガスジャイアントに近い軌道を巡っていた頃に潮汐力で歪められて楕円形をしています。しかし大気は球形なので、極点付近はほぼ真空となり、赤道付近ではとても高い気圧となっています。
 第一帝国時代には「ニシナシャ星域」の星域首都として栄えましたが、ヴィラニ系人口は「人類の支配」を経て徐々に減少していきました。ソロマニ自治区の時代には、ヴィラニ文化を根絶しようとした原理主義的なソロマニ党政権が恐怖政治で支配しましたが、結局、混血の住民はソロマニ・リム戦争に呼応して反乱を起こし、帝国軍を解放者として迎え入れました。戦後は速やかに自治を回復し、リム・メインの流通の要所として復興していきました。
 この星系の官僚機構は非常に効率的で、周辺からもお手本とされるほどです。また、優秀な卒業生を輩出しているニシナシャ大学に代表される、充実した教育制度も有名です。
 ニシナシャを代々統治している、由緒ある貴族のガマルキッドゥン伯爵家(Count Gamarkhiddun)は、長年バナスダン(2920)のオート=タゴール公爵家(Duke hault-Tagore)との確執が続いています。伯爵は、ソロマニに対する反抗の恩賞としてニシナシャこそがかつてのように星域首都となるべきで、バナスダン公はただの成り上がり者だと考えているからです。宙域公爵のディンジール公は、その対立を終わらせるために両家の跡継ぎ同士の縁組みを検討するよう、双方に圧力をかけています。
(※ガマルキッドゥン家は、872年に一旦ニシナシャを離れている「亡命派」貴族で、その家系はおそらく第一帝国時代から続いています。一方でオート=タゴール家は、ソロマニ・リム戦争終結までは(バナスダンの大統領とはいえ)平民だった上に、戦争時の功績で侯爵(後に公爵)位まで授与されているのですから、ニシナシャ伯からすれば「成り上がり」に見えるのも無理はありません)

ニューカム Newcomb 2913 D441443-6 非工・貧困 G Im 刑務所
 7つの衛星を持つニューカムは、なんとか居住に適する世界です。濾過マスクを用いて呼吸できる汚れた薄い大気を持ち、惑星の大部分は砂漠です。住民のほとんどは、Dタイプ宇宙港を持つ人口12000人の小さな都市、サークル市(Circle city)に住んでいます。政治制度は、選挙によって市議会(city council)を構成する議員が選ばれ、その議員の投票で市長(mayor)が選ばれる形式が採られています。大多数の住民は代々この地に住んでいて、帝国当局も含めて外世界人に対してよそよそしい態度を取ります。また、地元の名士たちはソロマニ人意識が強い傾向があります。
 この星には帝国の刑務所が存在します。約100年前に倒産したオリオン冶金社(Orion Metallurgy Corporation)が運営していた鉱山キャンプを改築して、当初はソロマニゲリラやテロリストを収容し、現在では普通の刑事犯も収められています(政治犯はここには収容されていません)。
 囚人は鉱山で働き、採掘された鉱石はサークル市に運ばれて宇宙港から輸出され、その利益は賃金ではなく刑務所の維持費に回されています。採掘現場の安全対策は特になされておらず、囚人たちは放射線と高濃度の粉塵にさらされています。
 刑務所は周囲1000kmを砂漠で囲まれた、危険な動物の徘徊する無人地帯にあるため、刑務所自体の警備は軽いものです。ただし月に一度、帝国の軍艦がパトロールを兼ねてこの星を訪れています。


(※現在発売中のマングース版『The Solomani Rim』は、travellermap.com掲載のT5仕様のUWPをそのまま引用してしまったらしく、惑星規模やテックレベルの数値がかなり異なっています。今回はオリジナルのGDW版『The Solomani Rim』に数値を合わせ、貿易分類を手作業で記入しています)


【参考文献】
・Supplement 10: The Solomani Rim (Game Designers' Workshop)
・Adventure 8: Prison Planet (Game Designers' Workshop)
・Adventure 11: Murder on Arcturus Station (Game Designers' Workshop)
・Double Adventure 3: The Argon Gambit (Game Designers' Workshop)
・Double Adventure 3: Death Station (Game Designers' Workshop)
・Double Adventure 4: Marooned (Game Designers' Workshop)
・Traveller News Service: 088-1107 (JTAS #7/Game Designers' Workshop)
・Casual Encounter: Mother Shom (JTAS #19/Game Designers' Workshop)
・Amber Zone: The Lost Village (JTAS #24/Game Designers' Workshop)
・Amber Zone: A Body Swayed to Music(Challenge #37/Game Designers' Workshop)
・Rebellion Sourcebook (Game Designers' Workshop)
・Alien: Solomani & Aslan (Digest Group Publications)
・GURPS Traveller: Rim of Fire (Steve Jackson Games)
・GURPS Traveller: Starships (Steve Jackson Games)
・GURPS Traveller: Nobles (Steve Jackson Games)
・GURPS Traveller: Interstellar Wars (Steve Jackson Games)
・Traveller: The Solomani Rim (Mongoose Publishing)
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その他
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