コーベ星域(クルーシス・マージン宙域I)
コーベ星域には30の星系があり、総人口は約28億人です。最も人口が多いのはドーゴとオーサカの6億人で、最も高いTLはオーサカの12です。全星系が帝国の傘下にはなく、人類以外の知的種族はほぼ居住していません。
【ライブラリ・データ】
クルーシス・マージン宙域 Crucis Margin sector
この宙域は帝国領の外、銀河辺境/回転尾(リムワード/トレイリング)方面に位置します。ここへはククリーがある程度の影響力を持っていますが、それ以上に影響を持つ大国は(宙域内に領土を持たない)ハイヴ連邦です。ハイヴの貿易船は宙域内の至る所で見かけられます。なお、ハイヴは何事も裏から操りたがる特性があるため、どの星がどの程度ハイヴの影響下にあるかは見た目にはわかりません。
この方面へ入植が始まったのは「人類の支配(第二帝国)」期で、この時はまばらに入植地が作られただけでしたが、やがて帝国の内情が悪化していくと人々はより良い住処を求めて難民となって押し寄せてきました。暗黒時代にはいくつかの星が恒星間航行を維持し、中には新たに植民地を抱えることもありましたが、やがてそのほとんどは独自の道を歩んでいきました。-200年頃には隣接するゲイトウェイ宙域からの入植が始まり、特に銀河核(コアワード)方面の星系に大きな影響と強固な結びつきを与えましたが、結局、宙域全体を覆うような統一国家は誕生せず、今もクルーシス・マージン宙域は独立星系と小国が散在したままです。
(※ちなみに、コーベ星域の辺りともなると他所よりはハイヴ船が訪れることは少なく、むしろソロマニ連合籍の貿易船の方が見られるそうです。それは通商や旅行目的だけではなく、対帝国を睨んだ調略や謀略も含まれ……)
大オーサカ Greater Osaka
かつてシズリン帝国(Syzlin Empire)の一部であったオーサカ(0727)は、778年の流血革命によって独立しました。これを発端に崩壊したシズリン帝国はツ(0627)やブーラ(0827)を放棄したため、オーサカ軍は抵抗されることなくそれらに進出することができました。
前星間技術だったツ星系はオーサカによる「解放」を歓迎し、進んでその傘下に入りました。ブーラ星系は帝国支配下では単なる前哨基地に過ぎませんでしたが、撤退後には小さな入植地が建設されてオーサカ海軍の補給拠点となりました。やがてそれは人口3万の街にまで発展し、星系自治が営まれるまでになりました。
こうして誕生した大オーサカは、恒星間国家というよりも小植民地を抱える星系政府と言った方が適切です。しかしながらオーサカの星域内最高の技術基盤と「2星系を支配している」という事実は一定の威信を得ており、外世界との取引において有利に働いています。
大オーサカは領土拡大に興味を持っていませんが、シズリンによる再併合を阻止するために惑星防衛艦主体の防衛力を保持しています。ジャンプ能力を持たないこの惑星防衛艦を輸送するのはオーサカ特有の「ジャンプ・スピンドル」と呼ばれる商艦で、平時はこのスピンドルに燃料タンクと貨物モジュールを接続して貨物船として運用しながら、戦時には砲塔や戦闘機格納庫のモジュールを施したり、惑星防衛艦を4隻接続して運ぶなど、星系間防衛作戦の機動力を担保する存在です。
(※オーサカは「Overlords」が治めているらしいのですが、今も昔も政治形態は8(官僚制)なので、大阪っぽくするなら「五大老の下に官僚機構がある」ような感じでしょうか)
コーベ企業共和国 Corporate Republic of Kobe
コーベ(0225)は「企業国家」であり、全人口が「コーベ・コーポレーション(Kobe Corporation)」の従業員でもあります。企業共和国は小さいながらも非常に繁栄しており、クルーシス・マージンとグリマードリフト・リーチの両宙域に商圏を持っています。貿易船は主に近隣星域しか行き来しませんが、コーベの資本は数々の星系の事業に分散投資されています。
大オーサカとの関係は今のところ良好で、人材交流も盛んであり、毎年のようにモリ(0526)で合同軍事演習も行われています。
コーベ軍は小規模ではありますがTL12艦艇を購入配備しており、また企業共和国が危機にさらされた際には複数の友好星系から艦船を借用できるよう提携を結んでいます。つまりコーベとの戦争はその背後の様々な勢力を敵に回すことになり、そのこと自体が抑止力になっているのです。
またコーベは非対称戦を得意とし、通商破壊や軍基地へのテロ攻撃、離間の計など何をしてくるかわからない不気味さがあります。そしてコーベが外交や通商や政治の道具として秘密工作を普段から使っているのではないかという疑惑すら持たれています。
(※「企業共和国(Corporate Republic)」とは、巨大化した企業が政府に成り代わった政体を指す言葉で、共和制であることを意味しません)
(※コーベ星系の政治形態は、旧設定では1(企業統治)でしたがB(非カリスマ独裁制)に変更されたということは、社長職や経営幹部が世襲ないしは特権階級化しているのを表しているのかもしれません)
(※ちなみに「corporation」には株式会社と地方自治体の両方の意味があります)
シズリン共和国 Syzlin Republic
クルーシス・マージン宙域にあるシズリン共和国は、宙域の中でも新参の、しかしながら広い領土を持つ国です。
帝国暦-150年に誕生したシズリン帝国は、最盛期の500年頃には24星系を治める大国でした。しかし778年のオーサカの反乱がきっかけとなって帝国は崩壊し、その後は内戦と改革の嵐が吹き荒れました。803年に「共和国」として再興したシズリンは、旧帝国時代の気風と野心はそのままに再拡大に転じ、950年には14星系、現在では17星系を治めるまでに回復しています。
共和国の首都はシズリン(0831)にあり、そこから傘下星系が統治されています。政治形態はどの星でも民主主義のはずですがその濃淡は星系ごとに異なり、官僚化や形骸化が進んでいる星もあります。そして特徴として、加盟星系は警察権を除いていかなる軍事力の保有は許されず、それらはシズリン大統領の直接管理下に置かれることです。
外交政策は尊大かつ拡大主義的です。貿易船や軍艦は「自由航行権」を主張し、力でそれを押し付けようとします。共和国から派遣された「顧問団」が近隣の様々な独立世界に現れては、シズリンに靡きそうな政府(や反体制派)に軍事・経済・技術のあらゆる面で援助を行うことも有名です。そして、それらが不調に終われば軍事侵攻も辞しません。
グリマードリフト連邦 Glimmerdrift Federation
グリマードリフト宙域(とクルーシス・マージン宙域の極一部)に広がるグリマードリフト連邦は、1090年に旧グリマードリフト交易組合(GTC)を核にして周辺星系が加盟して誕生した恒星間国家です。
政治組織は旧GTCを継承し、加盟世界の自治権と経済連携を重んじた上で相互防衛活動による結束を高めています。領内には人類以外に、数世代を経て地元文化に溶け込んだヴァルグルや様々な種族が住んでいます。また、ククリーの〈二千世界〉とは以前から友好関係にあります。
連邦船籍の商船は宙域を越えて〈第三帝国〉領内まで出向いていますが、加盟星系外に企業が進出することはまずありません。逆に、外国企業は加盟星系では事実上締め出されています。
(※GTC自体は公式設定ですが、連邦に関する部分は非公式設定の帳尻を合わせた独自設定です)
イセ Ise 0729 B641538-9 非工・非農 Sy
シズリン海軍の遊撃艦隊(Ranger Fleet)はこの世界を拠点とし、最前線であるこの星の防衛任務と同時にトレイリング方面国境内外にも睨みを効かせています。
(※UWP上では海軍基地は存在しませんが、Bクラス軌道宇宙港でどうにかしているのでしょうか)
アキタ Akita 0326 B568779-A 農業・富裕 Ko
100年ほど前はこの星の全ては(コーベ社の意を汲んだ)民主議会が統治していました。しかしその後の旺盛な人口増加によって、今では(あくまで星系内では)コーベ社に対抗しうるだけの力をつけた地元有力企業らがそれぞれ「企業城下町」をつくり、独自の「社則」を制定している有様です。
(※政治形態が4(間接民主制)から7(小国分裂)に変更されましたし、人口がコーベの10倍になってしまったのでこんな独自設定をこしらえてみました)
クレ Kure 0623 A544758-B K 農業 Na
ツァボ・リーチ(Tsavo Reach)の端に位置するクレは、人口7000万の有力星系です。統治を担う評議会は企業経営者や行政各局の長で構成され、全ての問題において市民投票の結果を尊重することが法律で義務付けられてはいますが、立法と行政の二権を握っています。
経済立国を標榜するクレは軽武装路線を採り、駆逐艦程度の艦艇しかない海軍は主に地場航路を守るためにあります。商業は星系収入の大きな柱であり、宇宙船の建造や、ツァボ・リーチを抜けてグリマードリフト・リーチ宙域方面に向かう貨物船の入港料などで利益を得ています。
クレは定期航路のあるコーベと友好関係にある一方、長年の貿易紛争の相手である大オーサカとはそうではありません。
ツァボ・リーチ Tsavo Reach
クルーシス・マージン宙域の4星域・29星系に跨る星団の名称です。星図上ではちょうどシズリン共和国や大オーサカの外側を迂回するかのように並んでいます。
カーヒリ Karhyri
母星:スフィリ(クルーシス・マージン宙域 0439)
カーヒリは平均身長2メートル弱で直立二足歩行をする温血の知的種族で、人類からは「嘴のある爬虫類」のように見えます。彼らには男性と女性に加えて「護性」と呼ぶべき第三の中性が存在します。護性のカーヒリには子育てや子供を守る役割がありますが、生殖にも関わっているという説もあります。また、全てのカーヒリは性とは別に遺伝的に定められたと思われる3つの社会層(翼、尾、一般)のどれかに属し、それぞれ微妙に体格や精神性に差異があります。
カーヒリは-2500年頃に亜光速宇宙船でカルド(同 0440)に進出した際、遥か昔に遭難したハイヴの宇宙船を発見しました。その50年後には彼らは拙いながらもジャンプ宇宙船を完成させ、近隣5星系への植民も果たしました。そして-2000年代には、難破船の乗組員の遺骨を故郷に帰すために当時の技術では途方もない旅に赴きました。しかしこれは、彼らにとって当然の行いなのです。
なぜなら、カーヒリの社会は名誉をあらゆる物事の規範に据えています。一例として、彼らには商取引規制の概念がありませんが、これは誠実さや正しさによって信頼が担保されているからです。そして同時に彼らは他種族であっても自分たちと同じ高潔さを求め、監視を怠りません。
話を戻して、とうとうカーヒリはハイヴ領まで遺骨を届けられたのですが、カーヒリにとっては崇高な行いであっても、ハイヴにしてみれば忘れ去られた大昔の行方不明者の死亡が確認されたに過ぎませんでした。この「冷たい対応」に加えて、無駄足となった帰路でカーヒリ乗組員に殉職者が出たこともあって、カーヒリは今もハイヴを軽蔑し、全く信用していません。たとえ彼らの基準ではあっても、名誉を解さない「獣に等しい」ハイヴは対等の知的種族とは見なせないのです。また、隣接する人類国家シズリン共和国とは緊張関係にあるため、シズリンを挟んで反対側にあり共通の敵を持つ大オーサカと協調しています。
種族としてのカーヒリは「名誉への奉仕者」と呼ばれる司祭と行政官を併せ持ったような社会階層によって統治され、保守的で厳格な変化の少ない社会を構築し、現状に満足して領土拡大にも興味はないのですが、個人や小集団が気ままに宇宙を放浪していることはよくあります。宙域内で最もよく見られるのは300トン級の小型船です。
余談:コーベ星域になぜ和名星系が多いのかについては、正しくは元ネタを書いたJudges Guildの人に聞くしかないのですが、公式設定から想像すると、地球連合か第二帝国の時代に探査を行った際に日系ソロマニ人の担当者が深い意味もなく命名していった……あたりが妥当ではないかと思います。初期入植者が日系人ばかりだったというのは、入植者の多くが「第二帝国からの難民」という公式設定と照らし合わせると無理がありますし。とはいえ「どことなく和風文化がある(靴を脱いで家に入るとか、ライスを箸で食べるとか、名字が名前の先に来るとか、訛りが関西弁とか……)」とするのが、わざわざこの星域で遊ぶ理由の一つにはなろうかと思います。ここは〈帝国〉の外ですし、公式設定もこの先おそらく増えないでしょうから、好き勝手にしても大丈夫でしょう(実際、今回もブーラやアキタの設定で拡大解釈をしていますし)。
また、オーサカ視点で星図に貿易航路を引いてみると色々と見えてくるものがあります。TL12のオーサカが持ってておかしくないのはジャンプ-3なので、次の寄港星はワジール、モリ、ドーゴのどれか(星域外はとりあえず無視)。モリ経由でコーベ方面に向かう航路よりも、ワジールからガーブラ・トゥーラに抜ける(クレとは仲が悪い設定があるので、行きたければワジールで乗り換え)航路の方が栄えている感じなので、コーベとの関係は設定ほどには仲良くはない(そこそこ程度?)でしょうし、ワジールは物流の拠点として栄えていそうです(環境的には輸入依存社会に見えるので、何か有力資源がある?)。リム方面ではイセ港が使えないオーサカの船はドーゴをハブとして様々な星に行くことになりますが、そのドーゴはEクラス宇宙港ですから明らかにガスジャイアントで燃料補給だけして去っています。ということはドーゴには魅力的な貿易産品が本当になさそうです。その割に人口は星域屈指の多さなので何か理由が考えられそう……。
一方、コーベから見るとクジ経由クレ行きの航路は太そうだからクジとも友好的だろうとか、いくら重商主義のグリーマードリフト連邦でもコーベ~オーダテ間の定期航路ぐらいはありそうとか……こうやって設定を詰めていくのは大変ですが(好きな人には)楽しい作業ですので、空想の宇宙を旅してみるのはいかがでしょうか。繰り返しになりますが、おそらく公式設定は今後増えないでしょうから何をやっても安心です(笑)。
【参考文献】
・Gateway to Destiny(Quicklink Interactive)
・Traveller Wiki
オカヤ 0121 A6298C9-A A 104 Gf M3V スワ 0123 D7C5305-9 低人・非水 100 Na M1V ウダ 0124 C641238-5 低技・低人・貧困 703 Na F4V キルチュ 0129 C431141-6 低人・貧困 400 Na F3V M1V オーダテ 0222 A541643-A 非工・貧困 400 Gf M0V コーベ 0225 A5536B9-B K 非工・貧困 A 601 Ko M1V M3V イイダ 0227 D8C4894-9 非水 300 Na M3V M9V ニッコー 0321 E764887-6 富裕 420 Na M2V ミト 0322 D8B9410-9 非工・非水 214 Na M0V ホンジョー 0324 C527598-8 非工 810 Na G0V M0V アキタ 0326 B568779-A 農業・富裕 604 Ko K6V M3V オキ 0330 B424699-B 非工 600 Na M1V ビワ 0421 D527899-7 122 Na F9V M0V クジ 0423 B566624-8 農業・非工 600 Na K8V ドーゴ 0428 E434878-6 624 Na G8V M1V M3V キターレ 0521 D310487-9 非工 114 Na M1V モリ 0526 C560547-4 砂漠・低技・非工 100 Na G9V ドーゼン 0530 C664612-7 農業・非工 300 Na M3V マララル 0621 C564773-8 農業・富裕 304 Na K4V クレ 0623 A544758-B K 農業 720 Na M3V ツ 0627 D536767-7 302 Os K1V M3V オーサカが統治 ガーブラ・トゥーラ 0722 A696775-A 農業 800 Na F8V M8V ムッド・ガシ 0724 C424502-A 非工 904 Na M2V ワジール 0725 A310642-B 非工・非農 300 Na A6V G1V オーサカ 0727 A867884-C K 高技・富裕・緑地 613 Os M1V イセ 0729 B641538-9 非工・非農 100 Sy F5V カムチナ 0823 C000461-7 小惑・非農 520 Na F5V M1V M4V ブーラ 0827 B310487-A 非工 312 Os M2V ガリッサ 0829 A6A9844-B 非水 400 Sy M3V タナ 0830 C8A7627-9 非工・非水 404 Sy M2V
コーベ星域には30の星系があり、総人口は約28億人です。最も人口が多いのはドーゴとオーサカの6億人で、最も高いTLはオーサカの12です。全星系が帝国の傘下にはなく、人類以外の知的種族はほぼ居住していません。
【ライブラリ・データ】
クルーシス・マージン宙域 Crucis Margin sector
この宙域は帝国領の外、銀河辺境/回転尾(リムワード/トレイリング)方面に位置します。ここへはククリーがある程度の影響力を持っていますが、それ以上に影響を持つ大国は(宙域内に領土を持たない)ハイヴ連邦です。ハイヴの貿易船は宙域内の至る所で見かけられます。なお、ハイヴは何事も裏から操りたがる特性があるため、どの星がどの程度ハイヴの影響下にあるかは見た目にはわかりません。
この方面へ入植が始まったのは「人類の支配(第二帝国)」期で、この時はまばらに入植地が作られただけでしたが、やがて帝国の内情が悪化していくと人々はより良い住処を求めて難民となって押し寄せてきました。暗黒時代にはいくつかの星が恒星間航行を維持し、中には新たに植民地を抱えることもありましたが、やがてそのほとんどは独自の道を歩んでいきました。-200年頃には隣接するゲイトウェイ宙域からの入植が始まり、特に銀河核(コアワード)方面の星系に大きな影響と強固な結びつきを与えましたが、結局、宙域全体を覆うような統一国家は誕生せず、今もクルーシス・マージン宙域は独立星系と小国が散在したままです。
(※ちなみに、コーベ星域の辺りともなると他所よりはハイヴ船が訪れることは少なく、むしろソロマニ連合籍の貿易船の方が見られるそうです。それは通商や旅行目的だけではなく、対帝国を睨んだ調略や謀略も含まれ……)
大オーサカ Greater Osaka
かつてシズリン帝国(Syzlin Empire)の一部であったオーサカ(0727)は、778年の流血革命によって独立しました。これを発端に崩壊したシズリン帝国はツ(0627)やブーラ(0827)を放棄したため、オーサカ軍は抵抗されることなくそれらに進出することができました。
前星間技術だったツ星系はオーサカによる「解放」を歓迎し、進んでその傘下に入りました。ブーラ星系は帝国支配下では単なる前哨基地に過ぎませんでしたが、撤退後には小さな入植地が建設されてオーサカ海軍の補給拠点となりました。やがてそれは人口3万の街にまで発展し、星系自治が営まれるまでになりました。
こうして誕生した大オーサカは、恒星間国家というよりも小植民地を抱える星系政府と言った方が適切です。しかしながらオーサカの星域内最高の技術基盤と「2星系を支配している」という事実は一定の威信を得ており、外世界との取引において有利に働いています。
大オーサカは領土拡大に興味を持っていませんが、シズリンによる再併合を阻止するために惑星防衛艦主体の防衛力を保持しています。ジャンプ能力を持たないこの惑星防衛艦を輸送するのはオーサカ特有の「ジャンプ・スピンドル」と呼ばれる商艦で、平時はこのスピンドルに燃料タンクと貨物モジュールを接続して貨物船として運用しながら、戦時には砲塔や戦闘機格納庫のモジュールを施したり、惑星防衛艦を4隻接続して運ぶなど、星系間防衛作戦の機動力を担保する存在です。
(※オーサカは「Overlords」が治めているらしいのですが、今も昔も政治形態は8(官僚制)なので、大阪っぽくするなら「五大老の下に官僚機構がある」ような感じでしょうか)
コーベ企業共和国 Corporate Republic of Kobe
コーベ(0225)は「企業国家」であり、全人口が「コーベ・コーポレーション(Kobe Corporation)」の従業員でもあります。企業共和国は小さいながらも非常に繁栄しており、クルーシス・マージンとグリマードリフト・リーチの両宙域に商圏を持っています。貿易船は主に近隣星域しか行き来しませんが、コーベの資本は数々の星系の事業に分散投資されています。
大オーサカとの関係は今のところ良好で、人材交流も盛んであり、毎年のようにモリ(0526)で合同軍事演習も行われています。
コーベ軍は小規模ではありますがTL12艦艇を購入配備しており、また企業共和国が危機にさらされた際には複数の友好星系から艦船を借用できるよう提携を結んでいます。つまりコーベとの戦争はその背後の様々な勢力を敵に回すことになり、そのこと自体が抑止力になっているのです。
またコーベは非対称戦を得意とし、通商破壊や軍基地へのテロ攻撃、離間の計など何をしてくるかわからない不気味さがあります。そしてコーベが外交や通商や政治の道具として秘密工作を普段から使っているのではないかという疑惑すら持たれています。
(※「企業共和国(Corporate Republic)」とは、巨大化した企業が政府に成り代わった政体を指す言葉で、共和制であることを意味しません)
(※コーベ星系の政治形態は、旧設定では1(企業統治)でしたがB(非カリスマ独裁制)に変更されたということは、社長職や経営幹部が世襲ないしは特権階級化しているのを表しているのかもしれません)
(※ちなみに「corporation」には株式会社と地方自治体の両方の意味があります)
シズリン共和国 Syzlin Republic
クルーシス・マージン宙域にあるシズリン共和国は、宙域の中でも新参の、しかしながら広い領土を持つ国です。
帝国暦-150年に誕生したシズリン帝国は、最盛期の500年頃には24星系を治める大国でした。しかし778年のオーサカの反乱がきっかけとなって帝国は崩壊し、その後は内戦と改革の嵐が吹き荒れました。803年に「共和国」として再興したシズリンは、旧帝国時代の気風と野心はそのままに再拡大に転じ、950年には14星系、現在では17星系を治めるまでに回復しています。
共和国の首都はシズリン(0831)にあり、そこから傘下星系が統治されています。政治形態はどの星でも民主主義のはずですがその濃淡は星系ごとに異なり、官僚化や形骸化が進んでいる星もあります。そして特徴として、加盟星系は警察権を除いていかなる軍事力の保有は許されず、それらはシズリン大統領の直接管理下に置かれることです。
外交政策は尊大かつ拡大主義的です。貿易船や軍艦は「自由航行権」を主張し、力でそれを押し付けようとします。共和国から派遣された「顧問団」が近隣の様々な独立世界に現れては、シズリンに靡きそうな政府(や反体制派)に軍事・経済・技術のあらゆる面で援助を行うことも有名です。そして、それらが不調に終われば軍事侵攻も辞しません。
グリマードリフト連邦 Glimmerdrift Federation
グリマードリフト宙域(とクルーシス・マージン宙域の極一部)に広がるグリマードリフト連邦は、1090年に旧グリマードリフト交易組合(GTC)を核にして周辺星系が加盟して誕生した恒星間国家です。
政治組織は旧GTCを継承し、加盟世界の自治権と経済連携を重んじた上で相互防衛活動による結束を高めています。領内には人類以外に、数世代を経て地元文化に溶け込んだヴァルグルや様々な種族が住んでいます。また、ククリーの〈二千世界〉とは以前から友好関係にあります。
連邦船籍の商船は宙域を越えて〈第三帝国〉領内まで出向いていますが、加盟星系外に企業が進出することはまずありません。逆に、外国企業は加盟星系では事実上締め出されています。
(※GTC自体は公式設定ですが、連邦に関する部分は非公式設定の帳尻を合わせた独自設定です)
イセ Ise 0729 B641538-9 非工・非農 Sy
シズリン海軍の遊撃艦隊(Ranger Fleet)はこの世界を拠点とし、最前線であるこの星の防衛任務と同時にトレイリング方面国境内外にも睨みを効かせています。
(※UWP上では海軍基地は存在しませんが、Bクラス軌道宇宙港でどうにかしているのでしょうか)
アキタ Akita 0326 B568779-A 農業・富裕 Ko
100年ほど前はこの星の全ては(コーベ社の意を汲んだ)民主議会が統治していました。しかしその後の旺盛な人口増加によって、今では(あくまで星系内では)コーベ社に対抗しうるだけの力をつけた地元有力企業らがそれぞれ「企業城下町」をつくり、独自の「社則」を制定している有様です。
(※政治形態が4(間接民主制)から7(小国分裂)に変更されましたし、人口がコーベの10倍になってしまったのでこんな独自設定をこしらえてみました)
クレ Kure 0623 A544758-B K 農業 Na
ツァボ・リーチ(Tsavo Reach)の端に位置するクレは、人口7000万の有力星系です。統治を担う評議会は企業経営者や行政各局の長で構成され、全ての問題において市民投票の結果を尊重することが法律で義務付けられてはいますが、立法と行政の二権を握っています。
経済立国を標榜するクレは軽武装路線を採り、駆逐艦程度の艦艇しかない海軍は主に地場航路を守るためにあります。商業は星系収入の大きな柱であり、宇宙船の建造や、ツァボ・リーチを抜けてグリマードリフト・リーチ宙域方面に向かう貨物船の入港料などで利益を得ています。
クレは定期航路のあるコーベと友好関係にある一方、長年の貿易紛争の相手である大オーサカとはそうではありません。
ツァボ・リーチ Tsavo Reach
クルーシス・マージン宙域の4星域・29星系に跨る星団の名称です。星図上ではちょうどシズリン共和国や大オーサカの外側を迂回するかのように並んでいます。
カーヒリ Karhyri
母星:スフィリ(クルーシス・マージン宙域 0439)
カーヒリは平均身長2メートル弱で直立二足歩行をする温血の知的種族で、人類からは「嘴のある爬虫類」のように見えます。彼らには男性と女性に加えて「護性」と呼ぶべき第三の中性が存在します。護性のカーヒリには子育てや子供を守る役割がありますが、生殖にも関わっているという説もあります。また、全てのカーヒリは性とは別に遺伝的に定められたと思われる3つの社会層(翼、尾、一般)のどれかに属し、それぞれ微妙に体格や精神性に差異があります。
カーヒリは-2500年頃に亜光速宇宙船でカルド(同 0440)に進出した際、遥か昔に遭難したハイヴの宇宙船を発見しました。その50年後には彼らは拙いながらもジャンプ宇宙船を完成させ、近隣5星系への植民も果たしました。そして-2000年代には、難破船の乗組員の遺骨を故郷に帰すために当時の技術では途方もない旅に赴きました。しかしこれは、彼らにとって当然の行いなのです。
なぜなら、カーヒリの社会は名誉をあらゆる物事の規範に据えています。一例として、彼らには商取引規制の概念がありませんが、これは誠実さや正しさによって信頼が担保されているからです。そして同時に彼らは他種族であっても自分たちと同じ高潔さを求め、監視を怠りません。
話を戻して、とうとうカーヒリはハイヴ領まで遺骨を届けられたのですが、カーヒリにとっては崇高な行いであっても、ハイヴにしてみれば忘れ去られた大昔の行方不明者の死亡が確認されたに過ぎませんでした。この「冷たい対応」に加えて、無駄足となった帰路でカーヒリ乗組員に殉職者が出たこともあって、カーヒリは今もハイヴを軽蔑し、全く信用していません。たとえ彼らの基準ではあっても、名誉を解さない「獣に等しい」ハイヴは対等の知的種族とは見なせないのです。また、隣接する人類国家シズリン共和国とは緊張関係にあるため、シズリンを挟んで反対側にあり共通の敵を持つ大オーサカと協調しています。
種族としてのカーヒリは「名誉への奉仕者」と呼ばれる司祭と行政官を併せ持ったような社会階層によって統治され、保守的で厳格な変化の少ない社会を構築し、現状に満足して領土拡大にも興味はないのですが、個人や小集団が気ままに宇宙を放浪していることはよくあります。宙域内で最もよく見られるのは300トン級の小型船です。
余談:コーベ星域になぜ和名星系が多いのかについては、正しくは元ネタを書いたJudges Guildの人に聞くしかないのですが、公式設定から想像すると、地球連合か第二帝国の時代に探査を行った際に日系ソロマニ人の担当者が深い意味もなく命名していった……あたりが妥当ではないかと思います。初期入植者が日系人ばかりだったというのは、入植者の多くが「第二帝国からの難民」という公式設定と照らし合わせると無理がありますし。とはいえ「どことなく和風文化がある(靴を脱いで家に入るとか、ライスを箸で食べるとか、名字が名前の先に来るとか、訛りが関西弁とか……)」とするのが、わざわざこの星域で遊ぶ理由の一つにはなろうかと思います。ここは〈帝国〉の外ですし、公式設定もこの先おそらく増えないでしょうから、好き勝手にしても大丈夫でしょう(実際、今回もブーラやアキタの設定で拡大解釈をしていますし)。
また、オーサカ視点で星図に貿易航路を引いてみると色々と見えてくるものがあります。TL12のオーサカが持ってておかしくないのはジャンプ-3なので、次の寄港星はワジール、モリ、ドーゴのどれか(星域外はとりあえず無視)。モリ経由でコーベ方面に向かう航路よりも、ワジールからガーブラ・トゥーラに抜ける(クレとは仲が悪い設定があるので、行きたければワジールで乗り換え)航路の方が栄えている感じなので、コーベとの関係は設定ほどには仲良くはない(そこそこ程度?)でしょうし、ワジールは物流の拠点として栄えていそうです(環境的には輸入依存社会に見えるので、何か有力資源がある?)。リム方面ではイセ港が使えないオーサカの船はドーゴをハブとして様々な星に行くことになりますが、そのドーゴはEクラス宇宙港ですから明らかにガスジャイアントで燃料補給だけして去っています。ということはドーゴには魅力的な貿易産品が本当になさそうです。その割に人口は星域屈指の多さなので何か理由が考えられそう……。
一方、コーベから見るとクジ経由クレ行きの航路は太そうだからクジとも友好的だろうとか、いくら重商主義のグリーマードリフト連邦でもコーベ~オーダテ間の定期航路ぐらいはありそうとか……こうやって設定を詰めていくのは大変ですが(好きな人には)楽しい作業ですので、空想の宇宙を旅してみるのはいかがでしょうか。繰り返しになりますが、おそらく公式設定は今後増えないでしょうから何をやっても安心です(笑)。
【参考文献】
・Gateway to Destiny(Quicklink Interactive)
・Traveller Wiki