宇宙の歩き方

The Astrogators' Guide to the Charted Space.

宙域散歩(番外編6) トラベラー協会

2018-06-04 | Traveller
「観光客(ツーリスト)と旅人(トラベラー)の違いは、観光客は災難に遭うと為す術がないが、旅人は災難の中でもどうにかして己を助けられる点だ」

 トラベラー協会。会員権は退職恩典の目玉の一つであり、我々の快適な旅路を陰日向に支えてくれるありがたい存在……の割には、その設定はこれまで全くと言っていいほど明らかになっていません。そこで今回は公式非公式を問わず資料の中から断片的な設定を可能な限り掘り起こし、各設定間の矛盾をできるだけ解消し、考察と推測を含めてその全体像を明らかにしていきたいと思います。
 よって、あくまで以下の文章は非公式の独自設定と考えてください(とはいえ公式資料か公式資料を作った人による設定から引用しているので、準公式程度の精度はあると思いますが……)。


 民間組織である「トラベラー協会(Travellers' Aid Society)」はよく帝国の官庁の一つだと誤解されていますが、それだけ協会が帝国各地で基準となるような高品質で効率的なサービスを提供していることの証です。
 宇宙港内での一流ホテルの運営が最も有名な事業ですが、トラベラー協会は宇宙各地の旅行安全情報の提供や最新事情の報道から船舶検査認証制度や乗組員資格検定まで、会員非会員を問わずあらゆる人々の快適な旅を支えるために日夜活動しています。


■トラベラー協会の歴史
 人類が宇宙にその勢力圏を拡大した時から、宇宙を旅する者(主に自由貿易商人)たちへの保護・互助組織への模索は続けられてきました。一度は暗黒時代(Long Night)の到来で頓挫しますが、第三帝国建国直前の-70年には、現在のトラベラー協会の前身の一つである「コスモス・クラブ(Cosmos Club)」がシレア人のヴェ・ヌー・ラン(Ve Nu Lant)によって結成されています。このコスモス・クラブはヴェ・ヌー・ラン自身の経験を活かし、シレア海軍や海兵隊を退役した経験豊富な軍人たちが自らの冒険心を発揮する場として作られました。
 やがてそれはシレア連邦偵察局にも門戸を開き、高額な入会金と引き換えに経済・政治・科学に通じた民間の優秀な人々も会に招かれるようになりました。-16年に「シレア宇宙協会(Sylean Space Society)」と改称した頃には、各地の宇宙港に直営の宿泊施設をいくつも抱え、その部屋や食事の質は民間のホテルに勝るとも劣らないとの評判を得るほどになっていました。そしてシレア連邦の、後の第三帝国の拡大とともに協会組織も領内各地に広がっていきます。

「シレアの拡大期には多くの人々が宇宙に向かっていった。私はそんな旅人たちに、行くべき・避けるべき場所、食べられる物・食べられない物をまとめてネットワークに情報を流していたが、彼らにはもっと実践的な助けが必要だと感じた。そこで私は友人たちと共にコスモス・クラブを設立し、情報交換の場や寝床を提供するようになった。あとは歴史に記された通りだ」
(協会初代最高経営責任者ヴェ・ヌー・ラン)

 一方、距離などの事情で帝国への編入が遅れたソロマニ・リム宙域では、早くから帝国への友好姿勢を貫いていた小国、イースター協定(Easter Concord)内で「トラベラー連盟(Traveller's League)」という財団が結成されました。財団の目的は帝国本土とイースター間の未編入宙域を安全に航行することで、彼らは助成金で得た軽巡洋艦で宇宙船を護衛し、難破船の救助に向かいました。426年にイースター協定が帝国に編入された後、その任務の多くは帝国海軍に引き継がれましたが、代わりに帝国領内各地の経済・文化・政治情報を集めた旅行情報誌『トラベラーズ・エイド』の発行で、その組織はむしろ拡大に向かいました。
 結成以来トラベラー連盟とシレア宇宙協会は友好関係にありました。ソロマニ・リム方面への安全な旅行には連盟の存在が不可欠でしたし、『トラベラーズ・エイド』の情報の多くは協会会員から得られた上に、協会内で情報を共有するのにも有効でした。かくして両者は488年に合併し、「トラベラー協会」が誕生しました。旧協会の理念に連盟の信念が融合し、トラベラー協会は新たな使命をこう表しました。

「銀河を往く勇敢な魂のために、トラベラー協会は嵐の中の港となり、灼熱の恒星からの日除けとなり、決意と活力を取り戻す場となる。知恵・友情・情報を共有し、協会は英雄たちに奉仕する」

 しかしそんなトラベラー協会も、内戦(604年~622年)の時代は苦難を味わいます。その時代に乱立した軍人皇帝の中には、協会を支配への脅威とみなした者もいたのです。特に傘下組織の「トラベラー・ニュースサービス(TNS)」が頑なに中立を守り、新皇帝の宣伝機関となることを拒んだことで危機を迎えたこともありました。
 内戦後のトラベラー協会は教訓を得て、自らの役割と透明性をより明確にし、帝国海軍を後ろ盾にして政府機関との協調関係を強化しました。
 スピンワード・マーチ宙域を含む、辺境のデネブ領域までトラベラー協会が進出したのは意外と遅く、720年までかかります。それまでマーチ宙域では「八角教団(Octagon Society)」のような旅行者互助組織が作られては潰れてきていましたが、これでようやく帝国全土を旅行者が安全に快適に渡り歩くことができるようになったのです。


■トラベラー協会の組織構成
 協会は宙域単位で運営され、その最高の栄誉ある地位が「宙域統括管理者(Sector Aid Administrator)」です。彼は要人との会見や、式典の議事進行、記者会見など様々な公式の場に姿を表します。
 トラベラー協会の驚くほどに均一的なサービス品質の裏には、TASPoC(Travellers' Aid Society Policy Computer)による組織管理があります。部門担当主任(senior administrator)は監査会(Board of Ombudsmen)の管理の下、TASPoCの支援を受けながら財務、人事、会員管理、広報、トラベルゾーン分類といった各部門の運営を担います。TASPoCは運営の立案と調整をし、主任がそれを実行し、監査会が結果をまとめてTASPoCに入力する、というのが一連の流れです。星域・星系の単位でも同様の更に細かい下部組織が築かれています。
 組織全体から独立した機構として、業務改善委員会(Policy Oversight and Review Committee)が挙げられます。委員会はTASPoCの調整をするために10年に1回招集され、宙域ごとの代表者が会議の14週間前から会員の満足度調査や部門ごとの報告書などに基づいて、改善項目の提案を練ります。実際の会議では改善案の討議と承認が行われ、各宙域のTASPoCにその内容が反映されます。


■トラベラー協会正会員
 主に海軍士官や海兵隊員の英雄的な行いや、司法官や外交官の長年の功績に報いるためにトラベラー協会の会員権が与えられることがありますが、他にも一山当てた宇宙鉱夫や引退した貴族・財界人など、余生を旅と冒険に捧げるために100万クレジットの入会金を支払って(かつ入会審査を通過して)会員となる者もいます。
 一度会員になると生涯有効ですが、その権利を他者に譲ることはできません。

 あまり知られていませんが、会員には3段階の位があります。「アルファ」は一般正会員を指し、1宙域で200名程度しかいない「ベータ」は社会に対して著しい貢献をした者に贈られ、著名な旅人兼広報である「ガンマ」には、協会がスポンサーとなってあらゆる旅費を(常識の範囲で)無料としています。そしてガンマ会員に対して他の会員は礼儀を払い、できる限りの手助けをするのが慣例となっています。

 トラベラー協会の会員になると、以下の特典があります。

・TAS IDの発行
全ての会員には会員証と電子財布が一体化した「TAS ID」が発行されます。会員証には所有者の遺伝子など個人識別情報が組み込まれ、協会施設での本人認証に利用されます。また会員証自体が口座機能を持つため、旅先で電子決済による買い物もできます。

・8週間ごとに特等チケット1枚の配当
このチケットはすぐに使用することも、後々のために溜めておくことも自由です。譲渡はできませんが、省令により額面の9割(つまり9000クレジット)で現金化して受け取ることはできます。
ちなみにベータ会員の配当は4週間ごとに1枚となります。

・トラベラー協会系列施設の利用
会員とその同伴者は、ほとんどのAないしBクラス宇宙港内にあるトラベラー協会直営の高級宿泊施設を優待料金(相場の2~3割引程度)で利用できます(※一般的に高級と呼ばれるホテルの宿泊料の相場は1泊250クレジット以上です)。そこでは一流の食事とサービスを受けられます。なお、Cクラス宇宙港外の提携宿泊施設も(あれば)同様に優待料金で利用できます(宿としての質は千差万別ですが)。
各宿泊施設内にトラベラー協会は窓口を構えており、そこで各種手続きや問い合わせ相談が行えます。また、協会の窓口職員はコンシェルジュとしても訓練されていて、会員の細々とした要望(道案内や希少なコンサートチケットの入手等々)にも喜んで応えます。
なお、協会施設に劇場、映画館、ラウンジ、カジノといった娯楽施設が併設されている場合は、そこも優待料金(もしくは無料)で利用できます。

・情報の入手
協会発行の「ジャーナル」誌(JTAS)の割引購読に加え、トラベラー・ニュースサービス(TNS)や膨大なライブラリ・データや最新の星図・航路情報への無料接続権もあるので、端末一つであらゆる情報を簡単に得ることができます。
(※ジャーナル誌には印刷版も存在し、協会窓口で購入することができます)

・法律相談
旅先で何か災難に巻き込まれた際には、協会窓口に常駐している(または協会と提携した)弁護士が無料で相談に乗り、場合によっては比較的低額で弁護を買って出てくれます。

・翻訳機の貸与
トラベラー協会には高性能の翻訳機(もしくはソフトウェア)があるので、難解な方言や他種族との会話も問題ありません。そしてその翻訳性能は、使用者の反応を基にして日々強化され続けています。

・会員限定ツアーへの参加
旅の素晴らしい思い出となるような星系内の有名観光地を巡るツアーに、会員とその同伴者は優待価格で参加できます。

・旅行保険への加入
医療保険と携行品損害保険が一体となった旅行保険に格安で加入できます。

・協会総会への出席権
(※詳細は不明ですが、おそらく株主総会のようなものでしょう)

 会員となる利点は、パンフレットにありがちなこういったものだけではありません。社会的信用が増すことで周囲から好感をもって見られたり、雇用者(やパトロン)との接触が容易になるのが一番わかり易い利点でしょう。

(※協会の理念を考えると、おそらく非会員でも「優待」や「格安」でない価格で旅の手助けをしてくれると思われますが、判断はレフリーに任されます)


■協会による資格認定制度
 トラベラー協会は安全で快適な旅の確保のため、宇宙船や宇宙港職員の技能訓練や資格認定制度の事業も担っています。世間から信頼されている機関が発行する資格なので、帝国内での就職に有利に働くことが期待されます。
 協会が発行している各種資格は以下の通りで、試験や訓練受講の手続きも各宇宙港の協会窓口で行えます。

航宙士免状 Operator's Cretificates
 宇宙船の乗組員となるのにまず必要な資格です。通信手や探知手といった分野ごとに応じて、〈コンピュータ〉〈エレクトロニクス〉〈メカニクス〉〈パイロット(小艇)〉〈運転〉〈砲術〉〈探知機〉〈通信機〉〈スチュワード〉などの技能がそれぞれ求められます。

宙技士資格 Mate's Licence
 航宙士免状の次の段階の資格です。1000トン未満の船を扱える二級(Limited)と、それ以上の一級(Unlimited)があります。航宙士に加えて〈航法〉〈パイロット(宇宙船)〉が求められます。

航宙長資格 Master's Licence
 宙技士資格を経て、宇宙船の船長となるのに必要な資格です。宙技士と同様に二級と一級があり、1000トン以上の宇宙船の船長になるには一級資格が必要です。宙技士に加えて〈管理〉〈法律〉〈リーダー〉〈戦術(艦艇)〉といった技能が求められます。

機関士資格 Engineer's License
 補助機関士(Assistant Engineer)と主任機関士(Chief Engineer)の2種類があり、機関長として勤めるには後者が必要です。補助機関士は〈エンジニアリング〉のうち(ジャンプドライブ)(通常ドライブ)(パワープラント)(生命維持装置)の中から2分野が、主任機関士は4分野全てが求められます。

医療技師免状 Certified Medical Technician
 応急手当てなど基礎的な医療技術を習得し、〈医学-0〉に相当する技量を持つことを示す資格です。
(※原文では他に「医師免許(Medical Doctor)」「外科医資格(Surgeon's License)」がありますが、本来は大学医学部卒業が必須である(原文にもそうある)医師免許を民間資格で取り直す必然性が感じられなかったので削除しました)

貨物取扱免状 Cargomaster's Certificate
 宇宙船と宇宙港の間で貨物を運搬する仕事に就く際に必要な資格です。貨物に関する知識と〈運転〉が求められます。

危険物取扱者免状 Hazardous Material Handler's Certificate
 貨物取扱免状に加えて危険物を扱う際に必要な資格です。乙種(Basic)と甲種(Advanced)があり、扱える危険物の範囲が乙種では限定されています。
(※本当はBasicの方はCertificateではなくEndorsementなのですが、意図的に揃えました)

仲買人資格 Broker's License
 宇宙港の仲買人(ブローカー)となるための資格です。〈ブローカー〉〈法律〉が求められます。

(※これらの技能はマングース初版に合わせて調整しましたが、基本的に雰囲気を出すための設定なので、厳密に当てはめるようなことはしないでください)


■プレイへの導入
 トラベラー協会をキャンペーンで扱う際、プレイヤー・キャラクター(PC)が作成時に会員である必要はありません。むしろキャンペーンの目標として残しておいた方が良いかもしれません。その場合レフリーは、プレイヤーが会員権を欲しくなるように促すべきです。
 例えば、印象深いノンプレイヤー・キャラクター(NPC)をトラベラー協会員にします。決して悪人ではなく、PCが親しみやすくて友情を築きたいような好人物です。そしてそのNPCの同伴者として一度、会員の世界を体験させるのです。ホテルでの豪華な夕食、会員専用のラウンジ、数々の優待特典…。そして将来トラベラー協会員になるには、協会員に信頼されるような(反対投票をされないような)人物であり続けることを心に刻ませるのです。
 宇宙は危険に満ちています。PCを危機に追い込むNPCでいっぱいです。雇い主の貴族が突然手のひらを返すかもしれませんし、可哀想な女性が実は狡猾な詐欺師なのかもしれません。しかしトラベラー協会員だけは、御都合主義的であってもその例外とすべきです。協会に対して悪印象を持たせないことが、会員権の報酬としての価値を高めるのです。プレイヤーには協会員が友好的で信頼できる相手だと、経験を通して学ばせるべきです。
(※ルール上「悪党」でも会員になれますが、悪党を「退職」しているわけですから「足を洗った」ものと考えた方が良いでしょう)

 トラベラー協会が雇用主となる展開もありえます。報道や調査に通じた経歴の持ち主に、例えばとある世界をアンバーゾーンに指定すべきかどうか、もしくはアンバー指定を解除すべきかどうかの情報を現地で収集するよう依頼することが考えられます。または調査に向かう協会職員の護衛を引き受ける、というのもありえるでしょう。
 他には、PCが協会のコンシェルジュ・サービスの「下請け」を行う展開もあります。とある会員が求めた、限定品のレーザー・シガレットライターを探して東奔西走するなど……?

 協会員は8週に1枚貰える特等チケットで旅を続けられますが、当然最低7週間分の滞在費が必要となります。貯蓄を崩すのが主でしょうが、中には「滞在中に何らかの依頼を受けて旅費を稼ぐ」旅人もいるようです。もしかしたら協会が窓口となって、そういった「冒険」の斡旋をやっているのかもしれません(もしくは大抵どこの宙港街にも「冒険者」の集まる酒場がある……とか)。
 また、あの莫大な入会金が無料となる「抜け道」の存在が示唆されています。おそらく、キャンペーンなどで多大な功績を挙げたことへの恩賞として用意されているのだと思われます。

 このようにトラベラー協会は旅の支援だけでなく、文字通り冒険の人生を豊かにしてくれる存在です。うまく活用することで、キャンペーン・シナリオにより厚みと深みをつけることができるでしょう。


【ライブラリ・データ】
八角教団 Octagon Society
 342年にリジャイナ(スピンワード・マーチ宙域 1910)で設立された八角教団は、この宙域初の大規模な旅行者援助団体でした。教団の施設は基本的に八角形に造られ、主要世界には大型施設を、辺境や未開拓の世界には避難所となるように小さな施設を建てています。
 教団の起源は326年まで遡ります。測量の仕事で各地を巡っていたフォーレン・カリフレン・ドゥーン(Foren Caliphren Doon)は、宇宙船の機関故障によりフリジニ星系(現ベックス・ワールド(スピンワード・マーチ宙域 2204))で遭難し、約10年間の「島流し」に遭いました。やがて救助された後のドゥーンはまるで宗教めいた熱情で、あらゆる世界に宇宙旅行者のための避難所の設置を目指し、そのための資金調達と組織作りを始めました。こうして誕生したのが八角教団です。
 最盛期の教団は活動範囲をリジャイナ、ランス、ライラナー、アラミスの各星域だけでなく、デネブ宙域やグヴァードン宙域の一部にまで広げていましたが、400年代末に施設の施工不良や補助金横領といった不祥事が次々に明らかとなり、499年に教団は解散しました。教団施設は全て売却か放棄されましたが、リジャイナの現在のトラベラー協会施設には増改築が繰り返されたもののかつての名残りが見えます。


【参考文献】
Book 1: Characters and Combat (Game Designers' Workshop)
Adventure 3: Twilight's Peak (Game Designers' Workshop)
MegaTraveller: Players' Manual (Game Designers' Workshop)
MegaTraveller Journal #1, #3 (Digest Group Publications)
GURPS Traveller (Steve Jackson Games)
GURPS Traveller: Far Trader (Steve Jackson Games)
GURPS Traveller: Starports (Steve Jackson Games)
Starports (Mongoose Publishing)
The Travellers' Aid Society (Greg Videll, Mike Mikesh, 1990)
Traveller Wiki
ジャンル:
その他
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